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第57話 床の上ライフ

 雪降り風吹く寒々とした通学路を耐えて耐えて歩き、到着した教室は暖房で満たされてぽかぽかと暖かい。冷えた体がほんわかすりゅ~。え、キモイ? 反省しまーす。


「おはよう! 直弥とひいらぐふっ!?」


 ひいらぐふ?


「おはー、久奈ちゃんと久土~」


 俺の視界からウザキモ笑顔が消えて代わりにニコッと快活な笑みで挨拶する金城の姿が映る。

 麺太の声が聞こえたのは気のせいだろう。突き飛ばされて床に倒れている姿が見えるのも幻覚だし麺の匂いがするのも錯覚だ。おいおいどうしたんだい俺の五感♪


「おう、おはよう。……久しぶりだな金城」

「は? いつも学校で会ってるじゃん」


 いやなんか最近会っていなかった気がするんだわ。登場していなかった? これ以上は何かに抵触しそうなので考えるのをやめて席に着く。途端に、金城が背後に回って俺の頭を撫でてきた。


「これこれ~」

「お前ホントこれ好きな」


 出会って十ヶ月が経つのに未だ飽きないらしい。クシャクシャと、美容師並みにこれでもかと撫でてきやがる。ちなみに金城が俺の頭を撫でる度にクラスの男子達から「久土死すべし」といった視線を向けられています。


「お客様痒いところはありますかー?」

「現状が歯痒い」

「やーん、久土が可愛くないー」

「なお君可愛くない」

「おい久奈なんで今追撃した」

「久土死すべし」

「おい誰だ今言った奴。聞こえているからな」


 されるがまま五分、ようやく金城がナデナデするのをやめてくれた。五分間触られても乱れることのない俺の髪、いつも通りへにゃへにゃペッタンコだ。俺もトップを立たせてウルフカットな髪型にしたいっす……。

 せめてアホ毛が欲しい。あれがあると主人公っぽい見た目になるじゃん? 阿良々木先輩や比企谷先輩みたいな。偉大なる先輩方。


「舞花ちゃん髪の毛切った?」

「あ、分かる? 毛先をちょっとね~」

「良い感じ」

「うふふっ、オッケー」


 女子二人がキャピキャピと盛り上がっている。キャピキャピ以外の表現が分からない。とにかくキャピキャピだ。

 へえー、金城が髪を切ったらしい……そうなのか。毛先を数ミリ切ったとか言われても分からんよ。ともあれ金城はご機嫌。


「舞花ちゃんの長い髪羨ましい」

「久奈ちゃんは伸ばさないの? ずっとセミロングじゃん」

「私はこれでいい。……ね、なお君」

「なぜ俺に聞く。俺はどうでもいいよ」


 別にあなたの好きなようにすればいいと思うよ。久奈はロングヘアーも似合うだろうし。

 ……え、何その顔。久奈がすごく不服そうな無表情で俺を見てくる。不服そうな無表情ってなんだ。


「どうした」

「別に」

「えぇ……?」


 久奈はしばらく俺を見つめていたがぷいと逸らして再び金城とキャピキャピ話す。

 うーん、分からぬ。因数分解くらい分からない。解と係数の関係くらい分からない。数学大嫌いです。


「第二位のアホは放っておこー。あ、これ見て見て、最近ブレイクしているコンビ芸人でさー」


 携帯を操作する金城に突き飛ばされて俺は床に倒れ込む。

 ひ、酷いっ。さっきまで俺の髪を撫でていたくせに私はもう用済み!? だから私、女って嫌いなの。メンヘラ化しちゃうぞ!


「ねっ、ちょっと面白いっしょ」

「ん、面白い」


 あ!? 今、久奈が……クスッと微笑んだ……?

 見間違いじゃない、金城の携帯を見て久奈が笑う。やはり金城相手だと笑うのだ。俺には一切笑顔を見せないくせに!


「えへへ直弥ぁ、僕ら惨めだね」

「お前まだ倒れていたんかい」


 ショックを受けている俺の元へ麺太が這いずってきた。いつまで床で伸びているつもりだ。麺だけに伸びるってか? 馬鹿野郎! と俺は一人でボケとツッコミなう。

 ん? ボケとツッコミ? お笑い……。


「待てよ?」


 金城が見せている動画って、最近ブレイクしている芸人と言ったよな。久奈はそれを見て笑っている。

 これは、使えるかもしれない。


「何を考えているのん? それより僕と一緒に床の上ライフを楽しもうよ。機を伺って金城さんや柊木さんのパンツを見ようよグヘヘ、ぐあぁ!?」

「今すぐ立て! 久奈のパンツは誰にも見せんわ!」


 麺太に四の字固めを決めて足を締め上げてやった。俺でも最近は見ていないんだからなぁ! 絶対に見せてたまるかボケが!

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