表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/150

第31話 友達の部屋は荒らすもの

 部屋で勉強会となればジュースとお菓子は必須だ。自明の理。ファミレスでポテト大盛りを頼むくらい自明の理だ。ライブハウスと言えばドリンクは別料金くらい自明の理だ。風邪ひいたら冷えピタを貼る並みに自明の、あ、しつこい? 俺もそう思う。

 キッチンへ向かうと、猫かぶりモードを解除したエセ関西弁の母さんがジュースを取り出していた。


「ええタイミングやな。これ持ってけ」


 トレイの上には高級ブドウジュースとミルミルが置かれていた。

 そうですか、俺はミルミル飲めってことですね。よーし、今日もビフィズス菌を摂っちゃうぞ~。


「ところでクソ愚息」


クソ愚息ってシンプルにキツイな……。


「んだよ」

「金城さんは彼女か?」

「違う。友達だ」

「せやろな。だとは思てたで。アンタに彼女なんて不可能やし」


 思春期の息子に恋人つくるのは不可能と断言しちゃ駄目だろ。TPOによっては寝込むレベルに落ち込んでいるぞ。


「まあ友達がおるだけで十分に奇跡やな。良かったやん、シーマン以外に話し相手ができて」

「今日は随分と喋るんだな。さっさとお菓子も寄越せ」

「これ金城さん用のお菓子、アンタはこっち食え」

「ミルミルじゃねーか!」


 なんで俺はお菓子としてミルミル食べないといけないの!? 飲料水だろうが二本目だろうがっ。

 ちっ、あーそーですかクソ愚息に高いジュースと菓子は与えたくないんだねへいへい分かりやした。


「はあ……勉強するから静かにな」

「ちょいと待ちいや」


 溜め息一つ、諦観の境地で去ろうとする俺を母さんは呼び止める。今日はやけに絡んでくるなぁ。


「金城さんと久奈ちん、どっちが好きなん?」

「はい? 何言ってんだ」

「どっちと結婚するん」

「話が飛躍しすぎだ馬鹿っ。お前は飛車か!」

「ツッコミどした。アンタが人並みに持つ唯一の長所やろ」


 俺の長所ツッコミオンリーかよ。そしてそれも人並みなんかい!

 ……つーか、質問の意味が分かりません。なんで久奈の名前が出てくるんだよ。


「どっちも可愛いもんなぁ。私だったら選べへんわ」

「知るか」

「アンタは恵まれとる。モブキャラのくせに幸運やで」

「実子のことをモブキャラって言うか? いいからおとなしくドラマでも観てろ」

「二股する際は呼び名を統一にした方がしいや。呼び間違えしないから便利や」

「ホントもう黙っていやがれください!」


 母さんを振り切って自分の部屋に向かう。

 女の子の友達を連れてきただけでテンション上げやがって、あー鬱陶しい。

 別に、金城はただの友達で久奈はただの幼馴染だっての。結婚とか頭おかしいんじゃねーの? 出川さん風に言えば、お前は馬鹿か? ボビー風に言えば、オマエバカカ?


「げんなりしている場合じゃない、テス勉しなくちゃな」


 母さんの鬱陶しさに精神ポイント削られたがへこたれるな。よしっ、勉強するぜ。


「お待たせ、勉強しようぜ」


 気持ち切り替えて部屋に戻ると、金城はベッドに腰かけてアルバムを見ていた。俺の小学校の卒業アルバムだ。


「何してんのおおおぉ!?」

「とりあえず漁るのがセオリーっしょ」

「とりあえずツボ割ろうみたいな行動やめろ! ドラクエ脳か!」

「何言ってんのー、アルバム見るのは自明の理じゃん」

「それは本人が任意した上での話だろ。無許可での閲覧はプライバシーの侵害&辱めだからな!?」

「久土のツッコミがくどい。もっと磨いて。簡潔に鋭くさ~」


 またしてもツッコミにダメ出しされちゃったよ普通にショック! 鬼道の才能があると思いきや護廷十三隊では並だったルキアの気分だ。ちなみにあの漫画で一番好きなキャラは、え、どうでもいい? すいません……。


「小学生の久土が可愛い、って思ったんだけどそれ以上に久奈ちゃんが可愛すぎる。めちゃくちゃ可愛い~!」


 金城がトロンと目を潤ませて見つめる先には小さな久奈の写真。

 小学校の久奈はそりゃーもう可愛かった。今も抜群に可愛いですけどね。ベタ褒めしまっせ、だって幼馴染だもんっ。

 にしても卒業アルバムとは随分懐かしいものを……って、よく見たらベッドの上は本や漫画が散在していた。こいつ、荒らしやがったな……!


「アハ~ンな本はどこに隠したんだい久土少年~」

「思春期男子が最も敏感なテーマに触れるな。誰が言うか!」

「ベッドの下にはなかったよー」

「ベッド下は久奈が来る度にチェックするから隠していな、って言わせんな! コラッ、金城コラッ!」


 もう一度言おう。本当にこの調子で試験勉強は捗るのか……?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ