第27話 スイーツバイキングで打ち上げ
ストーカー事件が解決した翌日、今日も授業が大変でした。もっとすごく頑張ろうと思いました。作文?
「わーい、スイーツバイキング大好きっ」
放課後、お礼をしたいと言う金城に先導されてオシャレなカフェに到着。
金城がはしゃぎ喜びながらトレイを持ち、もう片方の手でカチカチするやつをカチカチさせながら様々なケーキをカチカチするやつで掴みトレイに載せていく。俺もカチカチするやつをカチカチしてケーキを眺める。カチカチするやつって手に持つとなぜかカチカチしてしまうんだよなぁ。
「久奈ちゃんも遠慮せず食べよーよー」
「ん」
甘いもの大好き久奈は無表情を崩さないながらも頬に喜色の赤みが差して普段よりテンションが上がっており、金城と同じようにカチカチするやつでケーキを取るとカチカチするやつをカチカチと音立たせている。
各々がカチカチするやつでスイーツを取ってはカチカチするやつをカチカチさせながらトレイの端に置く。うんそうだね、さっきからカチカチうるさいよね。
「でわでわ、今から『ストーカーは 許しませんよ ホントだよ』の打ち上げを始めま~す!」
「「おー」」
金城に合わせて俺と久奈もフォークを持って声高らかに喜びを表す。
女子二人はすぐさまフォークでケーキを切り取り掬い取り、頬緩ませて幸せそうに感想を漏らす。
「んーっ、最高~!」
「美味しい」
「どやどや、ここ美味しいでしょ~?」
「さすが舞花ちゃん」
金城がニコニコと満足げにショコラケーキを食べて、久奈は同じ表情のままモグモグとモンブランを口に運ぶ。二人は仲良くスイーツバイキングを満喫していらっしゃる。ほほえま。
店内は大半を女性客で占めており、皆さん食べたり写真撮ったりツイートしたりして幸せなムードがカフェの中に満ち満ちる。ほほえま。
「無事に解決して良かったよ~。事件解決後のケーキは格別~」
「にしても、罰なしで許すだなんて優しいな」
俺の問いかけに金城は「そう?」とフォークをはむはむしたまま首を傾げる。あざとい仕草ですね。
金城は西大路橋君を許した。今日学校でも周りに西大路橋君のことを言いふらしたり本人を責めたりしなかった。ストーカーされたのに少し怒っただけで許す慈悲の深さたるよ。ナウシカレベルだ。
「まっ、向日葵君には一ヶ月間のパシリを命じたけどねー」
「麺太にはちゃっかりペナルティ!」
そういや昼休みに麺太が大量のお菓子とジュースを抱えていた。恐らく学校を抜け出して買いに行かされていたのだろう。
大変だな。だが同情はしない。悪いのは完全に麺太だから。
「てゆーか向日葵君はキモかったし」
「否定はしない」
俺もあいつは気持ち悪いと思う。教室で平然と麺を茹でるところとか。
「キモさを図で表すとこんな感じー」
金城は鞄から取り出したノートにシャーペンを走らせる。書き終えるとニッコリ笑い、俺と久奈に見せてくれた。
『向日葵君>>>>西大路橋君>久土』
「俺の位置どうした、ストーカー男と接戦じゃねぇか!」
「舞花ちゃん中々いい線いってる」
「久奈!? 君が賛同したらこの図の信頼度が増すんだよ!?」
いいのかよ! 自分の幼馴染がストーカー男と大差ないキモさを誇っているんだぞ! それはとてもとても悲しいことだよ?
「おかしいって! 異議を申し立てる!」
「うるさいな~。じゃあ書き直すよ」
『向日葵君>>>>>>>>>西大路橋君≧久土』
「=が入っちゃったよ! ほぼイコールって! 俺はほぼストーカーなの!?」
「いつも久奈ちゃんの家近くまで行っているじゃん」
「同じマンションだからね、同じ階だからね! 横に並ぶ歩くストーカーがいますか!?」
「パフェ美味しい」
「おいコラ久奈! パフェ食ってる場合か! 援護しろよ!」
久奈は我関せずとパフェをはむはむ食べる。はむはむうぅ! とっとこはむはむぅ! 大好きなのはスイパラのパフェ~!?
「ぐす、久奈ぁ……お前だけは俺の味方じゃないのか?」
「ん」
「幼馴染が可哀想だとは思わないのか!」
「ごめんごめん、訂正する」
久奈がやれやれといった具合にペンを手に取る。
お、おお、嬉しいよ。君だけは俺の味方だ。久奈最高、久奈ちゃん愛してるっ。
「ん、できた」
『向日葵君>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>西大路橋君>>なお君』
「大して変わってない!? そしてさっきから麺太のキモさが増していくばかり! 圧倒的王者じゃねぇか!」
女子二名から俺はストーカー男と大差なくキモがられていることを知って傷心。ショックから立ち直れないままバイキングは制限時間を迎えた。
「はー、悲しい」
「なお君ドンマイ」
「あなたのせいなんですよぉ」
「?」
はてなマーク浮かべてんじゃねぇ! きょとんって顔しやがって、なんだそれ可愛いなおい。だから許そう。許しちゃったよ俺!
「とんだ打ち上げだった……帰ろうぜ」
「ん」
「二人とも待って」
席を立とうとする俺と久奈を金城が呼び止める。椅子に座ったまま金城は俯いて、スッと顔をあげると微笑んだ。
「本当にありがと。二人のおかげだよ」
照れを含んだ桃色の頬で金城はニコリと笑う。涙ぐみながら、けれど明るく心の底から嬉しそうに。
「すごく怖かったけど久土が大丈夫って言ってくれて、久奈ちゃんが手伝ってくれて、二人に助けてもらえて……あたし嬉しかった」
「……まっ、友達の為だからな」
「ん。私達は舞花ちゃんの味方」
「えへへ……ちょー嬉しい」
外の夕日にも負けない、とろけるような笑み。凛々とした瞳からこぼれる涙をすくって金城は何度もお礼の言葉を述べる。
気にするなって、困っていたら助けるのは当然だろ。俺達、友達なんだから。
「えへへ。あっ、久奈ちゃんの分はあたしが払うー」
伝票を持った金城。お礼と言っていたし、どうやら奢ってくれるらしい。んじゃここはお言葉に甘えて。
「久土はあたしの分よろしくね~」
「……ん?」
金城のニッコリ笑顔が変化する。……ニヤニヤと意地悪い微笑みになって俺を指差す様に嫌な予感ががが。
「……金城が奢ってくれるんじゃないのん?」
「え~? 寧ろ逆~、みたいなぁ?」
「なんで俺が奢らなくちゃいけないんだよ!」
「この前サンドイッチあげた時に言ったじゃん。スイーツバイキング奢ってくれるって」
「何を言…………あ!?」
「てことでゴチになりまーすっ」
一人分だけの料金を俺に渡すと、金城は久奈と一緒にお店から出ていった。残された俺、二人分を支払うことに。
「て、テメ、最初から奢らせるつもりでカフェに誘っただろ!?」
「聞こえませ~ん」
「お前の聴覚都合良すぎぃ!」
泣きたくなる俺を声出して笑う、あざとくて小悪魔系ギャル風ゆる~い女子。こちらを見てニヤニヤと、ニヨニヨと、ニンマリ微笑んでタレ目が楽しげに光っていた。
やはり俺は金城に弱いらしい。はあ……。