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第25話 決戦は月曜日

 月曜日、今日からまた鬱屈な授業の始まりだ。溜め息がこぼれて気が滅入るのは、それだけが要因ではない。

 まさかの真実、金城をストーカーしていたのは麺太だった。もうね、最悪。この上なく最悪だよコンチクショー! ふざけんな! 何してくれとんじゃい!

 発覚した時はなんとも言えない虚しさに包まれた。家族が逮捕される時ってああいう気持ちなのかな……はぁ。

 あの後、問い詰めると麺太は罪を認めて次のように供述した。


『日曜のパーティーで金城さんのコスプレが超可愛くてエロかった。気づいたらストーカーしていました。罪の意識はあった。今は反省しています』


 普通に犯罪者の供述じゃねぇか! ニュースのテロップで見たことあるぞ!

 ……麺太が犯人。奴を金城に突き出せば事件は解決する。


「そのはずだったのに……うーむ」


 事件は終わっていなかった。麺太の話を聞くにつれ、辻褄が合わない点がいくつか浮上したのだ。

 結論から言えば、金城をストーカーした奴は麺太の他に……もう一人いた。






 昨日、日曜日の向日葵家。


「じゃあ今から金城と学校に連絡する」

「待って!? 親友を見捨てるつもりかよぉ!」


 俺の腰にしがみつく麺太は両目から涙を流し、必死の形相で懇願してくる。いやお前のこと親友と思っていない。美味い麺屋を紹介してくれる人としか認識してないから。

 残念だが諦めろ、俺は金城の味方だ。よってお前を通報する。


「金城は怖がっているんだぞ。何回も尾行しやがってこの野郎。情状酌量の余地はない」

「……何回も? え、僕は一回しかやってないよ」

「この期に及んで虚言を吐くとは自ら刑を重くしたいのか!」

「違う違うこれは本当に! 月曜にストーキングしただけだよ!」


 麺太はさらにわんわんと泣き喚く。俺のズボンは涙と鼻水でずぶ濡れだ。


「嘘つくな。金城は先週の日曜と月曜、さらに昨日と計三回もストーキングされたんだぞ」

「昨日……いや昨日はしていないし、先週の日曜もしてないよ」


 何ぃ~? じゃあお前がストーキングしたのは月曜の一回のみだと? んなわけあるか、じゃあ他の二回は誰だって話になる。


「ちなみに火曜からはどうした」

「火曜に直弥とはち合わせになったからやめたんだよ。その翌朝に直弥がストーカーを探していることを知ってからは完全に手を引いたよ。これは本当だよ信じて直弥……!」


 麺太は必死に懇願してくる。そのせいで俺のズボンは涙と鼻水でビチャビチャだ。服着たまま湯船浸かった並みに濡れているんだが。

 うーん……観察する限り、麺太が嘘を言っているようには見えない。つーかこいつの場合、嘘ならもっと態度に表れるだろう。

 となると辻褄が合わない。金城は昨日もストーキングされたのだから。


「頼むから信じてよぉ……!」

「とりあえず俺から離れようか」

「直弥、お願い……あぁん……」

「だからセンシュアルな声やめろ必殺・麺打ちパンチ!」

「どんべえ!?」


 あまりにウザイので殴ってしまった。麺太は奇声と共に吹き飛んだ。


「い、痛い。でもそれでも! 僕はやってないんだってばよ!」

「お前の気持ち分からないってばよ」

「そんなこと言わないでおくれよぉ。僕は一回だけなんだ!」


 いや一回でアウトだからね? イエローカードじゃないんだから。


「まあ、俺がストーカー追跡していることを知ったら再犯はしないか。この部屋に黒パーカーはないっぽいし」

「黒パーカー? えっと、黒パーカーが関係あるの?」

「は? え……麺太、ストーキングした時の服装は?」

「そりゃ学校帰りなんだから制服だよ」

「だとしたら黒パーカー野郎は一体……っ!? 待て、ということはストーカー野郎は他にもいるってことか!?」






 学校に到着。教室に入れば金城が駆け寄ってきて俺の頭を撫でてうっとり顔。


「やっぱこれだね~」

「トッポか」

「一週間の始まりはこれと決めてるのだよー。……ところで久土」


 頭を撫でるのをやめて金城は目配せする。昨日のうちに決めた合図だ。

 俺は口を尖らせると金城に言い放つ。


「例の件、やっぱりお前の勘違いだろ。俺はもう手伝わないからな」

「えー? なんでー!?」

「時間の無駄だ。俺だって暇じゃないんでね」

「そんなこと言わないで手伝ってよっ」

「嫌だね」

「お願い」

「嫌だ」

「おねが~い」

「い・や・だ」

「百人乗っても大丈夫なのは」

「い・な・ば、って何言わせてんだ!」


 俺と金城はなんやかんや口論になって次第に声を荒げ、最後には教室全体に轟かせんばかりの大きな声で叫び合う。


「仕方ねぇなぁ! 今日までだからな!」

「分かった! 今日までね! ありがとうね! 頭撫でるね!」

「最後のはおかしい!」


 突然叫ぶし内容はよく分からない。大半はそう思うだろう。

 だが、その中に理解した奴がいる。俺と金城と久奈と麺太に……あと一人。このクラスに、いるはずだ。

 さあ逃げずに食いつけよ。心の中で呟き、俺は金城のナデナデに蹂躙され尽くした。


「っておい金城? 作戦は終わったんだから撫でるのやめい」

「まあいいじゃん、も少し撫でた~い」

「少しってどれくらいだよ」

「一時間」

「長い!」

「を三セット」

「三時間じゃねぇか!」

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