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第20話 ときめかないあーん

 夕飯の買い出しを終えた。家に帰り、俺はテーブルを拭いたり食器の準備をして、久奈はキッチンで調理を開始。

 自前の可愛らしい赤色のエプロンを着けた久奈は無表情のままレタスをカットしていく。この子は何を着ても映えるなぁ。


「なんか手伝おうか?」

「んーん、大丈夫」


 久奈は一人で作りたいらしく、俺がキッチンへ行くとこちらをチラチラと見て「見ないで」と言う。邪険にされていますねー。ここ俺の家なんだぞっ。ディスイズ俺のマイホームなんだぞ。


「なあ、何作るの?」

「見ないで。恥ずかしい」

「そういう台詞は頬を赤らめて言ってほしい」


 久奈の頬は赤くならない。いつも通り、柔和で白桃を思わせるような綺麗なほっぺただ。ノーリアクションこそ久奈のデフォルトなり。


「見ちゃ駄目」

「暇なんだよ。何かさせてよ」

「じゃあ腕立て二十回と腹筋三十回」

「ただの筋トレじゃねぇか」

「を十セット」

「じゃなくて料理の手伝い、てか十セット!? 意外とハードなメニューなんですけど!?」






「二十七……二十八、ぜぇ、二十……っ、く、九……っ、ぜえ、三十!」


 お、終わった…………二セット目が。

 いや俺にしては二セットでも頑張った方だからね? 文化部なめたらあかんよ?

 腹筋がビクンビクン!とエロ漫画みたいな擬音をあげて痙攣しているのを感じつつ、リビングに仰向けで倒れる。額から汗がにじんで全身が火照って、あー、筋トレしんどいっす。


「できた」

「待ってました!」


 良い匂いがすると思ったら完成ですかっ。汗と涎を垂らしながら椅子に座る。

 テーブルにはサラダや野菜スープ、揚げたてのポテトやヒレカツなど、食欲そそる様々なメニュー! ……なんだけど、


「久奈、それは?」

「メインのおかず」

「……めちゃくちゃ熱そうだな」

「煮込みハンバーグ」


 ただの煮込みハンバーグではない。耐熱容器に入ったソースの中に沈むそいつは尋常ではない湯気を立ててソースは溶岩の如くゴポゴポ噴いている。もしカード化したらカードの右上に『炎』のマークがあるだろう。こいつ炎属性だ。

 た、確かにすげー美味そうだよ。でも今の俺は筋トレを終えたばかりで汗ダラダラなの。この状態で熱々の炎属性ハンバーグは……。


「冷めないうちに食べよ」

「いやこれ絶対に冷まさないと食えないやーつ。見てよこのゴポゴポ感、どうやったらこんなに熱く作れたの?」

「気合い」

「無表情のくせに!?」

「いただきます」

「出たよ無視だよ! チクショーいただきますぅ!」


 熱々の煮込みハンバーグを食べて俺の体はさらに火照り、十一月なのにTシャツ一枚になっていた。


「超熱い! そして超美味い!」


 嫌がらせとも言える灼熱の如き煮込みハンバーグも味は絶品。衣がサクサクのヒレカツや、サラダのドレッシングは久奈が一から作ったオリジナルらしく程良い酸味でサッパリして美味い。小さく正方形に切られた野菜のスープは何杯でも飲めそうだ。この味付け好き。


「ごちそーさま!」


 朝昼と食事がミルミルだった俺はあっという間に完食。汗もたくさんかいて代謝もグッド。

 自然と笑顔になって久奈に向けてニパァ!と笑う。


「すげー美味かった。久奈って料理上手いんだなっ」

「ありがと」


 淡々と返す久奈。この、このっ~。もっと照れやがれ。漫画なら女の子は赤らめて手をモジモジしながら「あ、ありがと」と言うんやで。つーか笑えええぇ!

 ま、久奈だしいいや。俺は食器を持っていこうと席を立


「なお君待って」

「……何?」

「隠しても駄目。トマト、残ってる」


 俺の皿にはトマトが乗ってある。このままキッチンへ持っていってダストシュート決めたる!と画策していたのがバレていた。


「い、いやこれはあれだぞ? 美味しいものは最後まで取っておくみたいな?」

「好き嫌いは駄目だって。ちゃんと食べよ」


 密輸がバレて言い訳するも久奈はピシャリと言い放つ。くっ、こ、こいつめ!


「そーゆー久奈だってピーマン大嫌いだろっ。給食でいつも俺が食べてやったの忘れたかー!」

「はい、あーん」

「また無視かあばばば!?」


 強制的にトマトを食わされて俺は白目を剥いた。あーんってイチャラブの象徴はずなのに全然ときめかないっす……。

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