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第102話 本日もイチャイチャ甘えモード

 日曜日。ショッピングモール。数多くの専門店や飲食店がズララ~ンと並ぶ。ズララ~ン? ババーン? 表現方法はおかしいがとりあえずショッピングモールというものは高校生にとってデートスポットの定番ってこと。

 そう、デートだ。今日は久奈とデート。うん、デート。でぇと……。


「なお君見て、クレープ屋さんがオープンしてる。食べよ」


 ベビーピンクのニットセーターに白色のスカーチョと春らしいコーデを身に包み、毛先をふんわりウェーブさせた久奈は俺の手を引っ張る。

 えー、昨日は半日中ずっと抱きつかれて、今日は久奈に言われて外出した次第です。


「今日は普段と少し違う髪型だよな」

「ん、気づいてくれて嬉しい。だって今日はデートだもん」


 あ、言っちゃうんだ。そっか普通にデートなんだね、普通に手を繋ぐんだね。今日も所謂イチャイチャ甘えモードですか。俺のハート持ちませんわよ?


「早く」

「大丈夫だって。クレープ屋は逃げません」

「分からない。はぐれメタル気質のクレープ屋かもしれない」

「すごいフレーズ出してきたな。はぐれメタル気質のクレープ屋? 値段じゃなくて経験値が高いのか? どんなクレープ屋だよ!」

「くどいツッコミはいいから早く」


 ひ、ひどぅい!


「辛口だな。クレープは甘いのにねっ」

「……」

「すみません無言だけは勘弁してください。スベッてる感が出ちゃうだろ」

「心配しなくてもなお君はいつでもフィギュアスケート」

「婉曲的ぃ! 俺は常にスベッてるってか!?」

「なお君うるさい。店員さんがイエローカード出してるよ」

「店員さん!?」


 クレープ屋の列に並んでいるとお姉さん店員がメニュー表と共に黄色のカードを差し出してきた。

 え、それポイントカードの類ではないですよね。次大声出したら出禁なの? イエローカード採用しているクレープ屋なんて初めて!


「なお君静かにね」


 はいはい分かりましたよ黙りますシャラップしますぅ! お口にチャックしてメニュー表に目を落とす。


「色んな種類がある」

「そだな。……久奈近い」


 一つのメニュー表を二人で見ているから距離は近づくのだろうけど、何も頬同士が触れるまで密着しなくても……っ。


「んーん、昨日に比べたら全然近くない」

「昨日のは特例だから」

「……じゃあ、もうしてくれないの?」


 そりゃそうでしょ。抱き合ったまま半日を過ごすってのが日常化したら俺はふやけて液体になっちゃいま……な、何?

 じぃー、と上目遣いで見てくる久奈。ドキッとする自分ガイル。


「しないからな。あれは駄目」

「んーん」

「んーん、じゃない。駄目なものは駄目だ」

「んーん、月に一回」

「月一!? 悶え死ぬわ!」

「……」


 久奈は上目遣いのまま、少し口を尖らせた。

 ほんの少し、俺じゃないと気づかない微かな変化を表情に出すと思いきり腕に抱きついてきた。っ~!?


「ばっ、い、今抱きつくなって」


 人前では駄目だってば! どうしたウチの幼馴染、抱きつく頻度が増していないか!?

 つーか上目遣いやめてっ。ズルイよ、こんなの可愛すぎて上目遣いだけで心身共にトロトロふやけてしまう。


「……むぅ」

「お、おやめになってぇ。抱きつくの禁止!」

「……」


 腕を圧迫する力が弱まりドキドキが収まった。

 久奈は離れてくれて、しかし上目遣いはやめない。愁いを帯びた瞳は潤んで、潤んで、俺を見上げ続ける。俺だけを見つめる。

 ドキドキが収まったとは嘘だった。鼓動が加速していく。


「どうして」

「ひ、久奈?」

「どうして、そんなイジワルなこと言うの……?」


 ズバババーン。俺のハートは射抜かれた。

 表現がおかしいとか知るか、おかしいのは俺の鼓動だ。ドッキドキ、バックバク、心臓が飛散しそう。

 待てぇええぇ、上目遣いと今の台詞は反則だろおおおおお!? 悶えたよ、腕に抱きつかれるより悶えたよ!?


「いえ決して意地悪しているつもりは」

「……なお君は嫌なの? 私と一緒にいるの、嫌?」


 上目遣いは継続。変化があるとすれば、瞳に一抹の不安がよぎったように見えた。

 久奈と一緒にいるのが嫌だって? ……っ、うぐぐぐぐ、うぐぐのうぐぐぅ! それも反則だよ!


「……嫌だったら今日ここにいないだろ」

「つまり?」

「……」

「ねえ、つまり?」


 聞くんだね、ハッキリと聞くんだね!?

 う、うぬぬ。うぬぬのうぬぬぅ! 不安にさせないと誓ったばかりだるぉ、分かったよハッキリ言ってやる!


「俺だって同じ気持ちだよ。久奈と、もっと一緒にいたい」

「本当?」

「本当だよ。久奈といる時が一番の幸せだっつーの……」

「っ~……ん、じゃあいいよね」


 再び腕に抱きつかれた。今度は顔をうずめてきた久奈が何度も何度も頬をすり寄せてくる。


「なお君~っ」


 すりすりするのも好きだよねあなた。それも俺のハートをズッキュンキュンと射抜くから勘弁してほしい。

 ……お前の可愛さ、反則だっての。


「お客様」


 先程のお姉さん店員がやって来た。


「に、二枚目っすか!?」

「いえ騒いではいなかったのでイエローカードは出しません。ただ、お客様のイチャイチャにやられた店長が発狂してしまいまして」


 この店員さんは何言ってんだ?と思った矢先、店の奥が騒がしくなって一人の男性が逃亡していった。店長はぐれメタル気質!?


「このままでは業務に多大な影響が出るのでイチャイチャは控えてもらえないでしょうか。というかお客様は既に甘々なので当店の甘いクレープは必要ないのでは?」

「は、はい? 俺らイチャイチャしているわけでは……」

「カップルでも人前での過度のスキンシップは控えていただきたいです」

「俺らカップルじゃないです」

「……恋人同士じゃないのにそれ?」

「ま、まあ幼馴染なんで」

「え、幼馴染……。あ、ムカつくので個人的にイエローカード出します」

「店員さぁん!?」


 結局二枚目を食らい俺は出禁となった。二枚目は私怨が入ってない!?

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