『死神さん』の噂
皆様お久しぶりです!(=゜ω゜)ノ
近日中に次話の更新も出来るかと思います!
長かった夏休みが終わり、暑さが徐々に寒さに変わる頃、晶たちの通う櫂耀高校に奇妙な噂が流れ始めた。
―ねえ知ってる?隣の町に『死神さん』が出たらしいよ
―あっ、その話私も知ってる!私の友達の友達が実際に見たらしいよ?
―えっ、それ大丈夫なの!?マズいんじゃない?
―でも、話によると、助かった子もいるらしいし大丈夫なんじゃない?
―えっ!?私の聞いた噂だと実際に遭った人はみんな行方不明になったって聞いてるよ?
―それだと、結局誰も噂を流すことが出来ないんじゃないの?
―多分、『死神さん』に遭った本人からその話を聞いた友達が流したんじゃない?
始まりは、晶たちの隣のクラスで『死神さん』という名の噂が広がり始めたことだった。
最初の内は、噂話というだけで誰も気にすることはなかったのだが、徐々に噂の内容が具体的になり始め、その内に知り合いの知り合いが実際に遭ったという話まで出始めるようになると、誰もがその噂話のことを気にするようになり、いつの間にか櫂耀高校全体にまで広まり始めていた。
「何か、妙な噂が流れ始めているみたいだな、冬亜ちゃん?」
「……そうだね、晶ちゃん」
雨雲が空を覆う光景しか見えない生徒会室で、晶と冬亜はいつもの様に生徒会役員たちと共に生徒会の雑用に取り組んでいた。
「どうした冬亜ちゃん、元気ないな?」
「ううん、大丈夫だよ…晶ちゃん」
「顔色悪そうなら代わりに俺がやるぞ?」
「ありがとう、晶ちゃん。でも、大丈夫だから…」
いつもとは違う暗い表情の冬亜を見た晶は、作業の手を止めて冬亜に声を掛けた。
「あっ…!!もしかして、生『違うからね!?』」
「手前ら…雑談する暇があったらまずは手を動かせ…!!」
「…ZZZ……ZZZ…」
「手前は手前で生徒会長なんだから、むしろちゃんと仕事をこなせよ!?」
暗い表情を浮かべていた冬亜を励まそう(?)と晶は声を掛けたが、冬亜の暗い表情が変わることはなかった。
………。
……。
「そういえば、冬亜ちゃん。さっきは元気なかったけど、どうしたんだ?」
「大丈夫だよ、晶ちゃん。ちょっと調子が悪かっただけだから……」
その後、生徒会の雑用を終えた2人は、それぞれの家に向けて傘を差しながら通学を歩いていた。
「そっか…何か悩みごとがあったらいつでも俺を頼ってくれよな!絶対に力になるからよ!」
「晶ちゃん…ありがとう!」
いつも通りの明るく元気な晶の様子を見た冬亜は、胸のつかえが取れたような笑顔を浮かべるのだった。
「それにしても、最近『死神さん』に関わる噂が多いみたいだな」
「……うん、そうだね。しかも、複数の種類があるみたいだよ…」
「そうなのか?どんな種類の噂があるんだ?」
「うんと……ちょっと待ってね…?」
そう言って冬亜は、通学用の鞄から小さな黒い手帳を取り出した。
「えっとね、大まかな流れは、町を歩いていると『死神さん』と呼ばれる髑髏のお面に全身を覆う黒い外套に身を包んだ人が突然現れて、それを目撃すると1週間以内に不幸な出来事に遭遇する、というのが共通した噂みたいなんだ。それでね、いくつかのバリエーションがあって、『目撃した人以外には見えない』や『大きな鎌を持っていたり』、『不幸な出来事がやけに具体的な内容』だったり、『実は『死神さん』の正体は本物の死神』だったり、面白おかしく噂を広めようとしている人がいるんじゃないかとも言われているみたいだよ…」
冬亜は手帳にメモをしていた自分の調べた内容を、晶に噛み砕いた形でそう伝えるのだった。
「へえ、その様子だと昔からあった噂じゃなくて、つい最近出来た噂なんだな」
「うん…それに、僕はこの噂はあまり面白可笑しく広めていい内容のものじゃないんだ…絶対に…!!」
「冬亜ちゃん?」
いつになく真剣な表情をしている冬亜を見た晶は一抹の不安を覚えつつも、敢えてその理由について追及をしようとはしなかった。
「うーん……じゃあさ、冬亜ちゃん。俺たちでその噂の真相を確かめれば良いんじゃないか?」
「えっと、どういうこと晶ちゃん?」
冬亜の話を聞いた晶は、少しの間考えた後にそのような提案をしてきた。
「曖昧でモヤモヤする部分や又聞きしたような出来事だから、面白おかしく広めようとしたりそのまま鵜呑みにしたりする奴がいるってことだろ? だったら、直接噂の真相がどこまで本当か明らかにすればいいんじゃないか?そうすればそれ以上、噂に尾ひれが付いたりすることもないんじゃないか?」
そう言って晶は自分の考えを述べた。
「でも、晶ちゃん?噂の通りだとしたら、危ない目に遭うかもしれないんだよ?」
「その時はすぐにでも引き返して、会長さんにでも相談したらいいんじゃないか?」
何でもないかのように晶はそう答えた。
「それって、何の解決にもなっていないんだと思うんだけどな…」
「それでも、冬亜ちゃんがいつまでも暗い顔をしているよりは良いと思うぜ?」
そう言って晶は冬亜の肩に手を掛けると、冬亜を自分の胸元辺りに来るように引き寄せた。
「えっ…!?ちょ、ちょっと晶ちゃん!?」
「やる前から不安を摘もうとするのも大事だけど、やってから解決策を考えることも大事だと思うぜ?いつまでもくよくよしていると、周りの奴らだって不安な顔になることだってあるんだからよ?」
「でもそれじゃあ、晶ちゃんが危ない目に遭うかもしれないんだよ!?」
「少なくとも俺は、冬亜ちゃんがいつまでも悲しそうな顔をしている方が辛いんだぜ?だから冬亜ちゃんが笑顔になれるなら、多少の危険も何のそので乗り越えるからよ!じゃあ、早速行くか!」
「行くって……どこへ…?」
尋ねるような口調の冬亜に対して、晶は満面の笑みを浮かべながら答える。
「もちろん、『死神さん』が目撃された場所に決まってんだろ!!」
そう言って晶は冬亜と共に『死神さん』の噂の真相を解明するために雨の降り続ける町中へと繰り出すのだった。