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難易度ベリーハードの異世界生活  作者: 秋野 錦
閑話

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27/27

エピローグ

 3年前、普通の高校生だった俺は異世界に召還された。

 剣と魔法のロマン溢れる冒険を期待する俺を待っていたのは、物語にある夢のような世界……ではなかった。そして、そんな世界で俺はたった1人の大切な妹を失ってしまった。


 ……3年が経ち、成長した俺は自堕落な生活を送っていた。

 適当に働き、適当に過ごし、適当に生きる。

 そんなある日、友人のアトラからとある依頼が俺の元に訪れた。


 それが、俺の人生の大きな転換期になったんだと思う。

 皆が俺に、「変わったな」なんて言ってくるけど、それは違う。俺はただ「戻った」だけだ。剣と魔法のロマン溢れる冒険を、期待していたあの頃に……

 

「兄さん、手を繋ぎませんか?」

「師匠! 早く来ないと置いて行くよー!」


 最近出会った、2人の少女の声が聞こえた。

 ミリィは俺の傍で手を取り、ニーナは先を歩きながら手を振ってくる。

 誰かと一緒に道を歩くことなんて、ほとんどなかった俺にはその光景が……ひどく輝いて見えた。

 だからだろうか……


「2人とも、ありがとうな」


 俺の口から漏れたのは、真っ直ぐな感謝だった。本当に、思わずといった風に出てきてしまったのだ。

 俺の突然の感謝に、2人は首をかしげて口を開く。


「兄さん、いきなりどうしたんですか?」

「師匠、お金がないからって道端で悪いもの食べたらいけないよ?」

「別に悪いもの食っておかしなこと言ってるわけじゃねえよ!」


 確かに、少し急すぎたかも知れないな。

 だけど、いいんだ。こういうのは言える時に言っておかないと。

 俺は澪に……言葉を残してやることが出来なかったから……


「今度は黙りこんじゃったよ。ねえミリィ、今日の師匠はヘンじゃない?」

「兄さんが変なのはいつものことだけど……今日はちょっと様子が違うね」

「……おい、聞こえてるぞ。2人とも」


 やれやれ、本当に口の減らないやつらだよ。

 俺は改めて、2人の少女に視線を送る。

 ミリィは出会った頃に比べて元気になったな。本当に良かった。

 ニーナは少し、表情から影が消えたな。何か吹っ切れたのかもしれない。


 右手をミリィに握られ、左手をニーナに引っ張られながら、俺は自分自身のことを思う。

 俺は今度こそ、ちゃんと守れるのだろうか……この地獄のような世界で……

 

「兄さん」


 俺の不安げな様子を察してか、ミリィが少し強めに手を握ってくる。

 そこにある温もりを、確かに感じる。


「私は兄さんのことが好きです……だから、兄さんが苦しいときは傍にいてあげますからね」


 そう言って微笑むミリィ。

 『傍にいる』……それは、いつか俺がミリィに言った言葉だ。


「師匠」


 今度は反対側、ニーナが腕を引っ張りながら口を開く。

 そこにある温もりを、確かに感じる。


「ボクは師匠のことが好きだよ……だから、師匠が苦しんでるときはボクが守ってあげる」


 そう言ってニカッと笑うニーナ。

 『守ってやる』……それは、いつか俺がニーナに言った言葉だ。


 2人の言葉を受けて……俺はそのとき、気付いたのだ。

 俺は2人を助けたんじゃない。本当は……2人に助けられていたんじゃないかって。

 だったら、『守ってやる』なんてことは考えなくてもいいのかもしれない。

 2人の前に出て守ってやるのではなく、2人と並んで『寄り添えばいい』のだ。

 そしてそういう関係を、きっと……『家族』と、そう呼ぶのだ。


「あ、あれっ!?」

「師匠泣いてる!?」

「な、泣いてねぇよぉっ!」

「「めっちゃ鼻声じゃん!?」」


 俺は……幸せ者かもしれない。

 この地獄のような異世界で、見つけることが出来たのだから。

 

 澪……ありがとう。『生きろ』と俺に、言ってくれて。

 その言葉がなければ、俺は再び立ち上がることが出来なかっただろう。

 俺はかつての家族に思いをはせて、前を向く。


 俺は歩いていくよ……新しく出来た、『家族』と共に。

 きっとこの先、多くの困難が俺達を待っているだろう。

 それでも、俺はもう迷ったりしない。

 もう二度と失いたくない、大切なものができちまったんだから。


「ミリィ、ニーナ……本当に、ありがとう」


 俺の言葉に、2人は嬉しそうに微笑んだ。




 俺達は笑いあいながら歩き続ける。

 いつまでも、いつまでも…………








どうも、秋野錦です。

今回が初投稿となった本作ですが、予想以上に多くの方に見ていただけて非常に嬉しかったです!

最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。また、どこかの作品でお会いしましょう。

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