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幕間――白い箱庭①

 

 よ、どうだい? びっくりしたか?

 ここはただ白い場所なンだよ。

 壁も天井も床も、そう何もかもが白い空間。

 いる人も真っ白の服を着ているンだ。もちろんオレも。

 ここにはたくさんの子供がいるンだぜ。多分オレと同い年位の奴らがよ。

 とにかく、誰もが白い半袖の服に白いズボンを履いている。

 大人も大勢いたけど、あっちはさ、白衣ってのを着ていたり、または重そうな宇宙服ってのによく似た感じのスーツを着たりしている。

 こう見えてもオレって結構モノシリなンだ。

 だってさ、ここじゃ本を読むのが一番の楽しみなンだからさ。

 意外と面白いンだぜ、ドクショってのはさ。


 ここじゃオレはフルカブってヤツでよ、オレより前にいた連中はもう殆どいねェ。何故って、……考えりゃカンタンじゃねェかよ。

 もちろん皆死ンじまったからさ。

 何でって、つまンねェコト気にすンだな、アンタもさ。

 色々だよ。例えばさオレの部屋の三つ向こうだった”0052”は確か、実験中にバクハツしたンだと。バッカだな、ほンと。

 で、第二棟にいる0093は逃げようと思って失敗だとよ。ムダなコトしてまさにムダ死にってヤツさ。

 ああ、あとは一番多いのは戦闘実験だな、やっぱさ。

 ン? 知らねェのかよ?

 戦闘実験ってのは、オレらみたいな”実験素体”が戦って性能を試すンだ。

 それで、負けた方が死ぬまで続ける。

 カンタンだろ?

 ああ、ちなみに一番ソレで戦ってるのがオレなンだぜ♪

 な、すっげェだろうオレ? こう見えて強いンだよな。


 ……ああ、そういやまだ名乗ってなかったよな。

 オレは”02”。ナンバーの通りに、最初期からの”コサン”ってヤツだよ、ヨロシクな。



 そう言ってその少年はニカッ、と笑う。

 無邪気にすら見えるその少年を見た時にぼくが思ったのは、カッコイイなぁ、ってことだった。

 ぼくは一目あった時にもう、彼に憧れを抱いた。


 ぼくがここに来たのはつい昨日の事だ。

 前の研究所が閉鎖になってしまって、行き場を無くしたぼくを引き取ってくれたのが、この真っ白な研究所だった。

 ここはすごくすごく大きい。

 前の研究所なんてせいぜいが体育館位だった。

 それに比べて、この研究所はまるで一つの町みたいに大きい。

 車で送られる前に説明を受けたけど、ここの周辺の山々まで、研究所の私有地らしい。


 ワクワクしていた。

 これからここで新しい生活が始まるのだ、とそう思うと。

 たくさんの仲間がいるのも楽しみだし、何よりもそう、あの02ってヤツが明るくていいヤツそうだったのがここの印象を良くする要因だったのだろう。


 だから、その時、舞い上がっていたぼくは分かっていなかった。

 02はキチンと口にしていたのに、ここでは仲間が”死ぬ”のだと。

 なのにぼくはそれを聞き逃した。

 でもそれも、大した問題じゃない。

 だってすぐに理解する事になるのだから。

 ここがいかに非道な実験施設なのかを、この身を持って。


 そこは決して楽しい場所じゃなかった。

 そここそは、こう言い表すに相応しい場所だろうと思う。

 そう、そこは”生き地獄”だった。

 そして、ぼくがその事を自覚するのに、時間はそれ程かからなかった。


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