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見浦堅という空手少年

 

(ここは、何処だ?)


 意識を取り戻した時、彼が思ったのはまずその事だった。

 そして思い返す。確か、薄汚い裏路地に入った。で、さっさと通り抜けようと思っていたら背後から声をかけられて…………。

 目の前は薄暗く、殆ど何も見えない。もしかしたら今は夜中なのかも知れない。

 何はなくとも、とりあえず起き上がろうとしたが、身体の自由が利かない。しばらく藻掻いている内に、徐々にこの薄暗い場所にも目が馴れてきたらしく、自分と周囲の様子が理解出来た。

 彼は椅子に座らされていた。勿論、只の椅子では無い。手足のみならず、無数の拘束具が椅子に付けられており、これが原因で身体の自由が利かなかった。そこで、力づくで椅子を壊そうと試みるものの、どうやらこの椅子自体が床に固定されているらしくビクともしない。その上、材質は鋼鉄製らしい。まさに至れり尽くせり、といった所だろうか。


(くそっ、駄目か)

 舌打ちしたくなる様な状態だと言える。

 このリーゼント頭の彼の名前は見浦みうらけん。年齢は十八歳。隣の滋賀県に住む元高校生だ。

 身長は一八〇を優に越え、その恵まれた体格を活かし、子供の頃から習っていた空手の腕前は優に全国レベルだった。

 そのまま順調でさえあれば、大学の進学も決まっていたし、ゆくゆくは国際大会にも出場出来るだろう、と周囲からその将来を有望視されていた彼が何故、九頭龍に来たのか?

 それは、およそ半年前の事がキッカケだった。



 ◆◆◆



 その日。空手部での練習を終えた堅は、帰路に付いていてそれを目にした。最近彼は、日常に何処か物足りなさを感じていた。漠然とした不安を覚える事があったのだ。


(何か足りない、そいつが何かは分からないけど)

 時折、自分の身体が自分の物とは思えない瞬間があった。

 空手部の稽古中にそうした感覚によく陥る。

 気が付くと、相手が倒れているのだが、自分が何をしたのかは全く分からない。


 そんな鬱屈した気持ちを抱えていたその夜。

 聞こえて来たのはガシュ、ガシュ、という何かに食い付く様な音。……それは最初、大きな犬か何かに見えた。

 彼が通う高校への通学路はこの当時、街灯がいくつも故障していて、夜は真っ暗だった。それに加えて、田舎の田んぼ道で家々が遠くにあるということもあり、夜になると人気は殆ど無くなる。

 一説じゃ、ここ数日間で、近所の老人が行方不明になったとも言われていた……丁度この近所で。

 たまに光が見えたかと思えば、それは、バイクの爆音と共に駆け抜けていく暴走族位。そんな彼らでさえ、街灯の途切れたここいらには敢えて近付こうとはしない。ここいらは以前から人が行方不明になる、とか言われる都市伝説がまことしやかに囁かれる場所だったから。

 だが、見浦堅は違った。

 彼は、少なくとも自分の目で見て、自分の耳で聞いた事しか信じない性格だった。だから、暗闇の向こうで蠢くそれに興味を抱いたのだ。

 それは、ガサガサと草陰でしきりに動いていおり、近寄っても反応しない。何かに夢中になっているらしい。

 そろりそろりとなおも近付く。息を殺し、そっと。

 そうして、それにあとほんの二歩から三歩にまで近付いた時だった。

 突然、それはこちらへ振り返る。


「う、嘘だろ? 何だこいつは……?」

 有り得ない物を目にして思わず絶句する。

 それは奇妙な生き物だった。確かに犬だった、それもかなり大型の種類……シベリアンハスキーのようだ。ただ、それに一ヶ所だけ奇妙な点があった。それ本来必要ではない物。いや、無くてはならない物ではあったが、そこにあるのはおかしい物。


「あ! 何見てんだよ、お前」

 そうガラの悪い声をあげるのは、見た所は三十代から四十代位の髭面の中年の顔。人の顔がその犬に乗っかっていたのだった。

 まさに人面犬、とでも言えばいいのだろうか? 奇妙な生き物だった。その口元は汚れている。

 見浦は思わずたじろいだものの、まだ冷静さを保っている。

 それは目の前にいる相手には、言葉が通じるから。

 言葉を返せるのなら、コミュニケーションが取れる。それなら話も通じるだろう、と思ったからだ。

 だが、それは相手がマトモな思考をしているのなら、だった。

 不意に月明かりが雲の隙間から覗き込み、光が暗闇を晴らす。

 そこに浮かび上がるのは、人面犬が草陰で喰っていた獲物。


「うっっ」

 思わず吐き気を催した見浦の視界に映ったのは……それは人。

 顔等は見えない。だが、倒れているのは紛れも無く人間の、恐らくは青年。夥しく出血しているのか、その全身は不自然な位に真っ赤に染まっていた。見ただけで理解出来た。既に死んでいる、と。


「何だ、今日はついてやがるな」

 人面犬は、嬉しそうに声を出した。その顔の表情を大きく歪めながら。新たな”獲物”を見つけた事で上機嫌なのは、その声の調子で理解した。

 その口からは人とは思えない程に、鋭く大きな犬歯が覗き出し……血が滴り落ちている。

 ガウウッッ、と一吠えして人面犬は襲いかかってくる。

 その動きはやはり犬のそれらしく、四本足で素早い。

 飛びかかりながら大きく突き出した犬歯――いや牙で喉元へ突き立てようとする。

 バチン、乾いた甲高い音が響く。

 ギャウン、と声を出して地面に転がるのはあの人面犬。

 まさに間一髪だった。襲い来る牙を防ぐ為に左拳で横っ面を弾く。そこへ踏み込みながらの右正拳突きを叩き込んだのだ。


「はぁ、はぁ……やれる。大丈夫だ」

 初めての実戦、それを意識して身体が緊張するかとも思ったが、どうやら杞憂だったらしい。

 それどころか、不思議と気分が高揚していく。

 身体が熱い。興奮している為か、心臓の鼓動が心無し早く感じる。

「てめえ、やりやがったな」

 人面犬は、怒りで表情を一変させていた。

 その顔形そのものが、より犬に近付いていく。

 同時に、突き出していた犬歯がさらに鋭く、大きくなっているのが目に見えて分かる。明らかに獰猛さを増した、人面犬だった者は持ち得るその凶暴性を剥き出しにした。

 だが、見浦堅はあくまで冷静だった。自分へと向かい来る攻撃を一つ一つ、確実に。左右の手で捌き、躱し――反撃に入る。

 下段蹴り、中段蹴り、膝蹴り、そうして上段蹴りが敵を直撃。

 メキメキ、という嫌な音と手応えがあった。

「せやあっっっっ」

 掛け声と共に放つのは相手の首元への蹴撃。

 その右上段蹴りをマトモに喰らった人面犬は、地面を転がる。

 見浦の感じた手応えは確かで、人面犬の首が不自然に折れ曲がっている。間違いなく死んだ、そう思った。

 嫌な気分だった、そう思う。いくら、自分の身を守るためとはいえ、殺生を行ってしまったのだから。


 だが、その認識は甘かった。

「てめえ、随分好き勝手してくれたな」

 人面犬はそう言いながらムクリと起き上がったのだから。

 首は相変わらず、プラン、プラン、と揺れている。

 な、なんで、と驚愕の声を出す空手少年は、次の瞬間さらに驚愕の光景を目にしたのだった。

 揺れていた首が元に戻っていく。折れていたのに、間違いなく、不自然な角度で揺れていたはずだったのに。

 いとも容易く元通りになった。


 見浦堅は、知る由も無かったが、この人面犬は当然、マイノリティ。そして、既にフリークだった。

 彼は夜な夜なシベリアンハスキーの姿を取り、獲物を探し、暗闇の中で襲いかかる。そうしてその場で何一つ残さずに”処理”する事で、証拠になるものを殆ど残さなかったのだ。

 着衣だけは処理した後に、燃やしたり、川に流したが。

 今夜も既に獲物を処理しようとしていた所で、この生意気に抵抗する空手少年に遭遇したのだった。

 人の顔をしていたのは、処理する時にこの方が楽だからであり、本来は犬の顔をしていた。


「ぶっ殺す、ブッコロス、ぶっころす」

 見る見る内に、その顔は更に変化。今度こそ完全に犬の顔に変わっていく。だがその顔には普通の犬とは比して明らかに異形。伸びた歯の一本一本が、人の指程もある。それから、舌も明らかに長い。まるでカメレオンの様に長い。

 犬と評するにはあまりにも異形なその目に浮かぶのは只々、目の前にいる新たな獲物へ対する”害意”のみ。

「あ、ああ……」

 自分へ対するその気配を敏感に感じ取った見浦少年は、生まれて初めて心底から震えるのを実感した。足がすくみ、その場から逃げようにも力が入らない。


 これは、この犬の姿を取ったフリークの展開した”フィールド”の効力だった。獲物の自由を奪うのが目的で、意識は意図的に残すのが彼なりのこだわり…………理由は獲物が恐怖に慄く表情をじっくりと堪能する為だ。

 声しか出せない状況で、全身を噛み切る。そうして、いたぶり尽くした所でとどめに頸動脈を切り裂く。派手に血を撒き散らし、絶命する最期の瞬間こそが至福の一時だった。

 処理するのは、次いでに過ぎず、手間がかかるのが難点ではあったが、そんな事はもうどうでも良かった。目の前にはとびきり活きの良さそうな獲物がいるのだから。

(コイツがどんな叫びを上げるのか……考えただけでゾクゾクするなああああ)

 そう思いながらゆっくりと躙り寄っていく。

 そして、まずはいつもの様に相手のアキレス腱を噛み切るべく襲いかかろうとした時だった。

 突然、自分へと襲いかかろうとしていた化け物は反転した。


(一体何が?)

 そう思った見浦堅は、目を凝らして化け物が何を見ているかを確認してみた。

 そこにいたのは一人の男だった。

 その着衣は、白のワイシャツに緑色のカーゴパンツに手には脱いだばかりらしいレザージャケット。とてもこんな田舎の田んぼ道の散歩をする様な格好ではない。


「今日は最高だな、三匹も殺せるんて……!」

 嬉々とした声を出すフリークの声が聞こえたのか、男も言葉を返す。

「全くだよ、さっさと【獲物】が見つかるなんて、俺って運が良いなぁ」

 その男は、そうハッキリと返した。獲物、だと。顔が見えてきた、どうやら年齢は二十歳前後だろう。異形の怪物相手にも動揺する素振りはなく、不敵な笑みを浮かべている。

「なんだと……」

 その言葉にフリークがピクリ、と全身を震わせる。

 それは決して怯えではない、侮られた事に対する怒りの発露。

 その証拠に見浦は全身が震えた、相手が発する殺意に身が竦む。

 情けない、そう思った。この空手少年の人生に於いて、自分がこんなにも弱いのだ、と思わされた事は無かった。

 実際には、自分の直ぐ目前にいる犬のフリークに攻撃された訳ではない。今の所は自分が一方的に空手の技を用いて相手に攻撃を加えてはいた。

 しかし、分かっていた。自分では目の前の化け物を倒せない、と。空手の技では、いや、人間の手であの化け物を何とか出来る訳がない……そう理解していた。


「お前、殺す……苦しめて殺す!!」

 言葉を発し、飛びかかっていく。その速度はさっきまでとは段違いに早く、相手が全力なんかこれっぽっちも出していなかったと確信させる。

 があああああっっっ、と言う唸り声をあげつつ、フリークは爪でアキレス腱を断ち切ろうと回り込んだ……はずだった。

「え、何で?」

 思わず見浦堅は戸惑いの言葉を口にした。

 間違いなく犬の化け物は回り込んだはずだった。

 だが、実際には彼は逆に敵の背後に回り込んでいたのだ。

 困惑したのはフリークも同様。何故、自分が相手に背後を取られたのか分かるはずもない。


「あ、何かしたか?」

 青年の言葉を聞き、怒りが溢れ出す。即座に振り向いて……飛び付こうと試みる。

「────おせえな、アンタ」

 そう言葉を発した時にはもう全ては終わっていた。

 いつの間にか、その手には”ナイフ”が握られている。

 それは真っ赤な刀身を持っており普通の刃物とは思えない。

 青年は、何事も無かったかの様に、フリークを通り過ぎて見浦の元に近付く。


「おい、大丈夫かい?」

「な、何を言ってるんだよ化け……」

 物がいるんだぞ? と言葉を言い終わる前だった。


 ぐぎゃあああああ。


 悲鳴が巻き起こる。そう甲高い声を出すのは、あの犬の化け物。

 声を上げると同時に、その身体が崩れていく。

 それは冗談みたいな光景だった。

 殆ど数秒足らずで、あの化け物が跡形も無く消えていた。

(ま、まさかこれを目の前の奴が……)

 一体どうやったらああなると言うのだろうか?

 全く信じられなかった。

 それはまさに、自分の理解を完全に越えた物を目にした瞬間だった。



 それから半年後。

 そうして、紆余曲折あって命を拾った彼は九頭龍を訪れた。

 青年はこう言った。

 ――気が向いたら、九頭龍に行ってみるといい。その時には頼みがあるんだ。

 ――あの街の繁華街にちょっとした知り合いがいるんだ。そいつに言伝てを頼むよ。

 と、そう頼まれた。青年は、見浦堅の師匠は、自分が何者なのかは決して語らなかった。

 だが、そんな事はどうでも良かった。

 高校を中退し、空手も止めた。

 だが、決して後悔はしていない。



 ――うん、どうやらお前、【無自覚】なだけだな。

 あの化け物がいなくなって直ぐに何の事かは分からないが、そう言葉をかけられた。

 ――どうする? お前には選択肢が二つある。まず片方は、今晩の事を綺麗サッパリ忘れちまう事だ。こっちはまぁ楽な方だな。

 で、もう残った選択肢は…………。

「……お、俺あんたに付いていくよ!!!」

 思わずそう言葉を上げていた。ハッキリと感じたのだ。

 何処かこれ迄の人生に疑問を感じていた。

 何がしたいのか、どうしたいのかなんて分からず、悶々とする事もあった。

 でも、分かった。自分は、この青年に会う為にここに足を運んだのだ、と。


「俺に何が出来るかなんて分からないけど……あんたに付いていくよ。止めても駄目だからな、もう決めたんだ」

 後は勢いだった。ひらすらに押して押して押しまくった。

 高校も中退し、家族とは喧嘩別れして飛び出し、青年の宿泊先のホテルに押し掛けたのだ。

「もう、俺はあんたに付いていくだけだ。諦めろ」

 その勢いと剣幕に青年はやれやれとばかりに嘆息する。

 そして、それから。

 青年はあちこちを転々とした生活をしていた。

 一ヶ所に長期滞在する事はなく、精々一週間置きに違う街へと移る。日中は特に何かする訳でもなく、街中をぶらついてしょっちゅうナンパばかりしている。軽薄そうな笑顔を浮かべてばかりで、見浦は呆れるばかりだった。

 だが、夜になると彼は一変する。

 彼は自分の仕事を詳しくは語らなかったが、どうやらあの人面犬のような化け物を”狩る”のが仕事らしい。

 手伝おうにも、自分が役立たずなのは分かっていた。

 だから、仕事をしようかとも思ったが、高校中退で、おまけに頻繁に居住先が変わる少年を雇う場所なんか無かった。


「金の事は気にすんな、俺は意外と金持ちなんだぜ」

 確かに、青年が金に困っている所を見た事は無かった。

 いつもホテルは一番いい部屋を取るし、乗っている車は赤いジャガーだったり、青のポルシェだったりと高級車を複数持っているらしい。

 それから時折、青年は見浦を鍛えた。

 正直言って、手も足も出なかった。この青年はとんでもなく強い。兎に角、場数が段違いだと思った。どんな攻撃でも捌き、あっさりと返される。だからある日、どうしたら強くなれるかを聞いてみた。


「うーん、答えにくいなぁ。俺のは【反則技】みたいなもんだからさ。多分、単純に戦えば堅の方が強いんじゃないかな」

 それだけしか答えてはくれなかった。

 そうこうしている内に月日が流れ、空手少年は自分に気合いを入れる為に、髪型をリーゼントにしたのだ。


「おお、前のお前よりも強そうでいいじゃんか」

 青年は、そう言って笑った。

 その頃になると、流石に名乗ってくれた。

 青年の名字は”春日”。名前はまだ内緒だとか言っていた。


 何だかんだで見浦堅は、春日に鍛えられ、以前よりも強くなった自信も出来た。しかし、それでも”仕事”の手伝いだけは認めなかった。

「お前はまだ化け物とは戦えないよ」

 そう言って取り合ってはくれなかった。

 だから、ある日こっそりと跡を尾けて、仕事の手伝いをしようとして……春日は大怪我を負った。

 理由は単純だった。自分が何も出来なかったからだ。

 何故か、身体が相手の前で竦む。心では足掻けても身体が動かなかった。そこを化け物に狙われ、庇われた。


 春日はそれでも化け物を倒したものの、しばらく病院に入院する事になった。その際に、春日の仕事の関係者にこう言われた。


「お前、あいつから離れろ。お前がいるとあいつがいつか死んじまう」

 返す言葉も無かった。実際、死んでいたかも知れなかったのだから、自分のせいで。

 だから、意を決して病室に足を運ぶ。


「俺、春日さんの前から消えるよ。今まで有難うございました」

 そう言うと頭を深々と下げた。春日が尋ねた。


「で、お前どうすんだ? 実家に戻るのか?」

「しばらくはあちこち回ってみようかと……」

「んならよ、俺から頼みがあるんだけど……いいか?」


 こうして、彼は九頭龍へと足を運んだのだった。



 ◆◆◆



 そして、現在。

 目の前には一見すると小学生か中学生位の少年が立っている。

 まだあどけない顔をしているのに、その目だけは酷く冷めているような、冷たい印象を受ける。


「やぁ、見浦堅君だね。ボクは【パペット】。君の友達だよ」

 その言葉に怖気が走った。あまりにも感情がこもっていない声に、目の前にいる少年が完全に異常だと理解出来た。

「くふふ、心配はいらないよ。君には【才能】が眠ってるんだよ。そいつを使いこなしてみたくはないかい? そうしたら、君はあの武藤零二にだって勝てるかも知れないよ」


 その言葉に、動揺した。自分に何の才能があるのか分からない。

「心配は要らないさ…………ボクに全てを任せるといい」

 パペットと名乗る少年はそう言うと、楽しそうに笑って何かを嗅がせる。

「さ、ボクを楽しませて。……新しい玩具として、ね」

 それが薄れゆく意識の中で、見浦堅が最後に聞いた言葉だった。




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