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DUO  作者: 一狼
第12章 正義経典
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62.その正義は誰がための正義

 神秘界の使徒(アルカナナイト)Justiceのジャクスに連れられ、デュオ達は金曜都市の一角にある闘技場へ連れてこられた。


 闘技場はかなりの広さを有しており、娯楽の為か観客席も設けていた。

 金曜都市の住民に今回の善悪の判決を行う事を通達されていたので、デュオ達の判決を一目見ようと観客席には大勢の人が集っていた・・・と思いきや、まばらにしか人は集まっていなかった。

 どうやらこの善悪の判決はジャクスの独善的な正義の為か、金曜都市の住民にはそれ程好評でもなさそうだ。


 当のジャクス本人は人の集まりはどうでもいいのか、それ程気にした様子も無くデュオ達を準備も無しに闘技場の真ん中へ導く。


「さて、これから僕の用意した魔物と戦ってもらう訳ですが、その前に金曜都市の支配者である金曜創造神・小金井鉄也様からお言葉を頂戴しますので静粛に聞く様に」


 そう言って、観客席の一角に設けられた如何にも特別な者が座るボックスを示す。

 そこにはこちらを見下すように1人の男が不遜な態度で座っていた。


「お前らが俺の都市に不法侵入した者達か。

 ジャクスから聞いていたと思うが、この都市は俺が絶対だ。俺が正義だと言えば正義だし、悪だと言えば悪になる。

 とは言え、全てが思うがままだと面白くも無い。そこで今回のような余興を思着いたわけだ。精々俺を楽しませてくれよ」


 ジャクスもジャクスならその主も主だった。

 まぁジャクスとは違い正義を盲目する子供ではないが、小金井は自分を絶対者として君臨しようとしている支配欲の強い男だった。

 この1週間の間、デュオの向かいの牢獄に捕らわれた男にジャクスや金曜創造神――小金井の事を聞いた結論がそれだった。


 小金井のその支配欲は都市一つでは収まらず、いずれは神秘界(アルカディア)全域を支配しようと目論んでいるらしい。

 最終的には他の八天創造神を排除して絶対王者に君臨するつもりだとか。

 この金曜都市はその為の実験都市であり、第一歩でもあると言う。


「なるほどね。最初の頃は良かったけど、次第に付いていけなくなったってところかしら?」


「ジャクスは自分勝手な正義を振りかざし、金曜創造神は自分に従わない者は排除する独裁者様だからねー。そりゃあ付いてくる人はいないよ」


 ベルザは観客席に座るアルカディア住人を見渡してはそう呟く。

 それに追従するようにデュオも周囲を見ては納得する。


「あのさー、そんな事よりこれからの事を心配しようよー。そりゃあ、お2人は強いんだろうけど、あたし達は普通の強さだよ? 魔物の相手次第じゃこっちの命が危ないっての」


「アイリス、諦めるニー。デュオ達と一緒に行動することになった時点であたし達の運命は決まっていたようなものだニー」


 緊張感のないデュオとベルザにアイリスは不安を隠せないでいた。

 A級冒険者と七王神にとってはこの善悪の判決はそれ程脅威ではないのだろうが、アイリスにとっては十分警戒する必要があるものだった。

 それに対しミュリアリアは僅かな付き合いではあるが、デュオと一緒に居ると言う事はこのような事なのだと獣人の本能?から諦めていた。


「随分と余裕がお有りのようで。まぁその余裕が何時まで持つのか・・・精々足掻きに足掻いてください。正義の名の元によって裁かれる悪を見るのが僕の楽しみでもありますから」


 そんな様子のデュオ達を見ていたジャクスはそう言いながら数歩下がり、対戦相手の魔物を呼び出す召喚魔法を唱える。


 流石に魔物が現れる前にしてはデュオとベルザも気を引き締め戦闘態勢に入った。


 デュオ達の前に召喚用の魔法陣が輝き、そこからオーガが現れた。

 何故か全身真っ白で頭から背中にかけて(たてがみ)のある3mの巨体の一本角(・・・)のオーガだった。


 そのオーガを眼にしたとたん、先程まで和やかだったデュオの雰囲気がガラリと変わる。

 それと同時に周囲の空気も下がったようにひんやりと冷たく漂う。


「え? 何か急に周りの気温が下がったような・・・」


 デュオの様子がおかしくなったのを敏感に感じながらも急激な変化に戸惑うアイリス達。


「さて、それでは始めてください」


 ドガンッ!!


 ジャクスの開始宣言と同時に純白の一本角オーガが爆発した。


 ドガガガガガッ!!


 立て続けに爆発を起こす一本角オーガ。

 よく見ればデュオが呪文を唱え容赦なく火属性魔法を叩き込んでいた。


 だが爆炎が収まるとそこには現れた当初と変わらぬ一本角オーガが佇んでいた。無傷で。


「・・・いきなりの攻撃にはビックリしましたが、それくらいの攻撃はこのユニコーンオーガには効きませんよ。何せ治癒能力を持つ耐久性のあるオーガですから」


「ユニコーンオーガ?」


 いきなりの速攻に驚いたものの、ジャクスは平然と佇むユニコーンオーガを見ては余裕の表情を見せていた。

 そんなジャクスを見てベルザは思わず聞き返す。


「ええ、ユニコーンの能力を持つオーガ変異種ですよ。主に女性を付け狙う魔物です。特に処女を好みますね」


 だがそんなのはお構いなしにデュオは次々魔法をユニコーンオーガに叩き込んでいた。


「ファイヤーブラスト。ストーンブラスト。アイスブラスト」


 デュオの放つ火属性魔法・土属性魔法・氷属性魔法のそれぞれの散弾がユニコーンオーガの体を貫く。

 特に下半身――足を中心に攻撃を集中させて歩けない様にしてその場に蹲らせた。


 しかしユニコーンオーガの特性で直ぐに足の傷は再生し何事も無かったかのように立ち上がる。

 そしてユニコーンオーガも為すが儘にされているわけではなく、デュオ達に向かって襲い掛かる。


「へぇ、思ったよりも直ぐに傷が治るのね。ならこれならどうかしら?」


 そして次にデュオが放ったのが風属性魔法のウインドカッターだった。

 放たれた風の刃はユニコーンオーガの両腕を切り落とす。


「グガァ!?」


 一時的に怯んだユニコーンオーガだが、直ぐに両腕が再生された。


「無駄ですよ。ユニコーンの治癒能力に加えオーガの体力も加わった再生能力です。ほぼ無限に再生し続けますよ」


「そう。それは良い事を聞いたわ。それなら無限に嬲り殺すことが出来るじゃないの」


 そう言ってデュオは薄笑いを浮かべて容赦なく次々の魔法を叩き込んでいく。


 ――ファイヤージャベリン、シャイニングフェザー、フロストレイン、ウォータースラッシュ、スネークボルト、バーストフレア、ホーリーブラスト――


 魔法を受けては直ぐに再生、それの繰り返しでユニコーンオーガはほぼ一歩も動けずにその場で嬲り続けられていた。

 その様子に流石にアイリス達も慄いて見ていた。


「(ちょっと、明らかにデュオの様子がおかしいんだけど!?)」


「(流石にあれは尋常じゃないわね。何かあったのかしら?)」


「(噂には聞いていたけど、ここまで酷いとは思ってなかったニー)」


「(ミュリアリア、何か知っているの?)」


「(デュオは小さい頃のトラウマでオーガに関しては人が変わるって話しニー。特に一本角のオーガには)」


 ミュリアリアの言葉に改めてデュオを見るアイリス達。

 確かにユニコーンオーガを容赦なく屠るこの姿のデュオを見れば、その噂は間違いないものだと言えた。そしてデュオには一本角オーガは禁句だと言う事も。


 小一時間ほど嬲り者にされただろうか。

 遂にはユニコーンオーガはその再生力の能力が無くなり、デュオの魔法によりボロボロにされて地に伏した。


「さて、これで善悪の判決とやらは終わりかしら? このオーガを倒したんだからあたし達は無罪放免でいいのね?」


 絶対の自信を持って放ったユニコーンオーガがこうもう一方的に屠られる姿を見て言葉を失っていたジャクスはデュオの言葉にハッと我に返る。


「・・・いえ、善悪の判決はまだあと2つあります。3回の魔物との戦いを勝利してこそ正義の証明となるのです」


「何それ、聞いてないんだけど? だったら初めから言いなさいよ。まさかこの後3回勝った後に実は3回戦の10本勝負とか言わないわよね?

 貴方あれでしょ。自分に不利になると屁理屈をこねて勝負回数を増やし勝ちに回る卑怯者でしょ」


「なっ!? 正義である僕がそんな卑怯な真似をするわけないじゃないですか! この事はしっかりとこの正義の書に書かれている事ですよ!

 このところ2回戦に進む善悪の判決が無かったから言い忘れていたのです。その事は謝罪しますが、この僕を卑怯者と言うのは許しませんよ!」


 アイリスの言葉にジャクスは激昂する。

 ジャクスにとって卑怯者と言うのは悪であり、自分自身が悪であると言うのは到底許せるものではなかったからだ。


「ふーん、何処まで本当の事なんだか・・・まぁ良いわ。それじゃあ次の対戦相手を寄越しなさいよ。あたし達がちゃっちゃと片付けてあげるから」


 ここぞとばかりにアイリスはジャクスを挑発する。

 その間にベルザ達はデュオを落ち着かせていた。


「デュオちゃん、落ち着いた? もう、1人で魔物の相手をするなんて無茶苦茶よ」


「あ・・・ごめんなさい。あのオーガを見たら居ても経っても居られなくて・・・」


「何かトラウマがあるみたいね。お説教は後にして、今は次の魔物を倒すことに集中しましょう。

 デュオちゃんは魔力とかは大丈夫?」


 小一時間ほども魔法を放っていたのだ。ベルザが心配するのも当然と言えた。

 だが、デュオにはS級祝福(ギフト)の極大魔力に近しい魔力を持っていた。


「あ、大丈夫。あたし人並み以上に魔力があるから」


 一般的な魔術師(ソーサラー)の魔力を100とした場合、デュオの魔力は3,000となる。つまりまだまだ余裕と言う事だ。

 因みにS級祝福(ギフト)の極大魔力は5,000となっている。


「人並み以上過ぎると思うニー」


「それなら連戦も大丈夫ね。あ、次の対戦相手が召喚されたみたい」


 ベルザ達がデュオを落ち着かせている間にジャクスが2回戦の魔物を召喚していた。


 召喚魔法陣から現れたのは10mもの巨体のオオトカゲ――ギガントリザードだった。


「GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA――――――ッ!!!」


「ちょっ!? うそ、マジでティラノサウルス!?

 大人気ないわね! か弱い女性4人にこんな大物をぶつけるなんて!」


 まさかこれ程までの巨体の魔物を充てて来るとは思わなかったアイリスは思わず愚痴をこぼす。

 しかも召喚された魔物はアイリスの世界――異世界(テラサード)で恐竜と呼ばれる太古の竜だったからだ。


「これはまた大物を呼び出したわねー」


「でもさっきのオーガに比べれば図体がデカいだけで大したことない魔物よ」


「そう言えるのはデュオだけだと思うニー」


 ギガントリザードを見上げるベルザに、大したことないと嘯くデュオ。そんなデュオを見ては呆れるミュリアリア。


「・・・ねぇ、まさかとは思うけど、こいつを引き付ける相手ってあたし1人だけ?」


 若干青褪めた表情でデュオ達を見渡すアイリス。


 現在のパーティーでは前衛1・後衛3の魔法寄りの構成となっている。

 と言うか、完全に魔法アタッカーの構成だ。

 唯一の前衛――戦士(ファイター)のアイリスは後衛にギガントリザードが向かわない様に(タンク)役をしなければならないのだ。10mクラスの魔物を相手に。


「無茶しない程度でいいから」


「別にこっちに流しても大丈夫よ。ちゃんと対処するから」


「ガンバ」


 ベルザは無理をするなと言い、デュオは別に(タンク)役をこなせなくても構わないと。

 唯一元々のパーティーのミュリアリアはただ一言だけを添えてくる。


「ああもう! やってやろうじゃないの!」


 デュオは後ろに流してもいいと言うが、流石に前衛としてのプライドがある。

 アイリスは半ばやけになりながらもギガントリザードと対峙する。


 ジャクスの合図と共にギガントリザードがアイリス目がけて突進する。


 まずはその動きを止めるべく、アイリスは数少ない使える魔法――どんな攻撃も防ぐ物理防御魔法壁のマテリアルシールドを放つ。

 ギガントリザードはその魔法壁にぶつかり突進を遮られ、その隙にアイリスはギガントリザードの足下を剣戦技で斬りつける。


「GUAAA!?」


 ギガントリザードは足元をうろちょろするアイリスに苛立ちを覚えながら踏み潰そうと何度もスタンプを繰り返すも一向に当たらずに更なる苛立ちが募っていた。


 そうしてギガントリザードの意識を足下に向けさせておいて、3方向から魔法使い達の魔法が飛ぶ。


「マグナギガ!」


「シャイニングファランクス!」


「ブリッツスパーク!」


 魔法が放たれるタイミングを見計らってアイリスは素早く離脱する。


 ギガントリザードに襲い掛かる溶岩石・乱閃光・雷電光。

 だがギガントの名は伊達じゃない。

 あれだけの攻撃を喰らってもギガントリザードはまだ健在だった。


「GAAAAAAAAAAAAッ!!!」


「うわー、タフねー。まさかマグナギガを喰らってもまだ生きているなんて」


「聞いた事ない魔法だけど、今の何属性なの?」


「属性と言うより古式魔法ね。属性魔法の上位互換と言ったところかしら? 詳しく知りたいのならあとで教えてあげるわ」


「古式魔法・・・それって伝説級の魔法じゃないの。流石は大賢神って訳ね。仕える魔法の種類がハンパないわ」


「あう・・・どう見てもあたしだけが見通りしているニー。しかも天上の会話までしているし」


 魔法を放ったデュオ達に向かおうとするギガントリザード。

 特に一番痛かったベルザへと歩を進めようとする。

 無論(タンク)役のアイリスはそれを許さず再びギガントリザードの足下を攻撃する。


「ワイドスラッシュ!」


 剣戦技の広範囲攻撃でギガントリザードの足を狙い注意を引きつける。

 再び足下でうろちょろし始めたアイリスにイラつきながらもギガントリザードはベルザを付け狙う。


「あ、こら! あたしを無視するなんていい度胸じゃないの!」


 アイリスはギガントリザードの足の動きに注意しながらうまく回り込んで足の指の付け根を狙う。


「ソードリニアー!」


 アイリスの攻撃を受けたギガントリザードは人間で言うところの小指を角にぶつけた痛みを味わう事になりその場で転げまわるように身悶える。

 そして攻撃のチャンスとデュオ達が再び用意していた魔法を放つ。


「デモンディザスター!」


「ゲヘナストーン!」


「ファイヤージャベリン!」


 3人の集中砲火を浴びたギガントリザードは虫の息だったがそれでも尚まだ辛うじて生きて立ち上がろうとしていた。


「うわぁ・・・あれだけの魔法を喰らってもまだ生きているんだ」


 最早原型を止めていないくらいボロボロのギガントリザードの生命力にデュオは呆れていた。

 本来であれば既に倒していてもおかしくないのだが、もしかしたらユニコーンオーガみたいに亜種か変異種なのかもしれない。


「じゃあ決定的な止めを刺しましょう。恐竜に相応しい、ね」


 そう言ってベルザは呪文を唱える。


「メテオストライク!」


 ベルザの放った魔法は上空から隕石を召喚しギガントリザードの頭上へと降り注いだ。

 流石に地面にクレーターが出来上がるほどの威力の隕石にギガントリザードは完全に潰されて息絶えた。


 そして隕石の墜落はギガントリザードだけに止まらず、その余波が闘技場内にも撒き散らされる。

 クレーターで飛ばされた石飛礫に突風。観客席にも被害が及び観客から悲鳴や怒号が響き渡っていた。


「あらぁ・・・狙いを絞ったつもりだったけど、思ったよりも威力があったわね・・・」


 ベルザはピンポイントでギガントリザードを倒そうと、極小の隕石を以って落としたつもりだったが、その威力はそれでもかなりのものであった。


「ちょっと! こっちにまで被害を被ったじゃないの!」


 辛うじて余波を逃れていたアイリスがベルザに詰め寄る。


「そんな事より今の何!? 今のも古式魔法なの? そう言えばさっきのデモンディザスターって魔法も聞いた事ないわね。当然詳しく教えてくれるのでしょう?」


 当然デュオとミュリアリアも余波を逃れていたが、デュオに関してはそんな事よりもベルザの使った魔法の方に興味が向いていた。


 メテオストライクの余波が完全に収まるとそこには呆然とギガントリザードを見つめるジャクスの姿があった。


「馬鹿な・・・ギガントリザードの変異種であるマキシマムリザードをこうも簡単に倒すですって・・・?」


 デュオの思っていた通り変異種のギガントリザードのようだった。

 どうやらジャクスは余程自信があったらしく、マキシマムリザードが倒された事が信じられない面持ちで見ていた。


「あんたさ、善悪の判決とか言いながらあたし達の事を悪と決めつけているでしょ? どう見たって初めからあたし達の事潰しにかかってきてるじゃない。よくそれで正義とか言えたものね」


 デュオやベルザが居たから良かったものの、これまでの魔物2匹は間違いなく一般的な冒険者等じゃ相手にするのは難しい魔物だ。

 アイリスはそんな魔物をけしかけるジャクスを胡乱な目で問いかける。


「何度も同じことを言わせないで下さい! 僕は悪じゃない!

 それにこれも言った筈ですよ。力なき正義は無力だと。君たちが不法侵入した悪だと言うのは事実です。その悪を覆すための正義を証明するのなら当然それなりの相手が必要になるじゃないですか。

 つまり君たちはそれだけの悪を犯しているのです。それを自覚してください!」


「はぁ~、あのさ、あんたの言う力なき正義は無力って、もう1つ頭に文が付くって知ってる?

 正義無き力は暴力、力無き正義は無力、ってね。力だけじゃ正義とは言えないし、正しき心が無ければ力は暴力になるのよ。

 さて、あんたのやってることって本当に正義なのかしら? ただ力を奮っているだけであたしには暴力に見えるけど」


「うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいっ!!

 僕は正義だ、僕が正義なんだ! 僕に逆らう奴は容赦しない! 僕の言う事を聞けぇぇぇぇ!!」


 最早支離滅裂になってきたジャクスに警戒しながらアイリスは指摘する。


「自分で言って気が付いている? 貴方のその「自分の言う事を聞け」「逆らう奴は容赦しない」ってセリフ、まるっきりの独裁者のセリフよ」


「・・・っ!!」


 アイリスの指摘にジャクスは自分の行いが正しいのか間違っているのか分からなくなっていた。

 自分はこの金曜都市に正義を行い平和をもたらしてきたものだと信じていたからだ。

 それが間違っていると、自分の独りよがりだと言われて心が揺らぐ。


「そんな事はどうでもいいわ。それよりも次を始めてもらえないかしら。善悪の判決は3回何でしょ?

 さっさとあたし達の力を証明してあのいけ好かない金曜創造神様を引きずり降ろしたいんだけど」


「善悪の判決で証明されるのはあくまで保留だったニー。八天創造神まで手に掛けようとするなんてデュオは欲張りニー」


 悩むジャクスをデュオはそんな事とバッサリと切り捨てる。

 デュオに取ってこの善悪の判決は自由を得るための戦いであり、ジャクスの正義は興味が無いのだ。


「っ!! いいでしょう! 3回戦は僕が相手です。但し僕は正義の書で正義の執行者として悪は僕に一切傷をつけることは出来ない様になってます。

 何時までもその余裕を保っていられるか見物ですね!」


 ジャクスの啖呵にアイリス達は眉を潜める。

 つまりジャクスに取ってデュオ達は不法侵入の悪であり、正義の執行者のジャクスには攻撃が効かない事になっているのだ。

 すなわちこの善悪の判決はデュオ達を悪と決めつける出来レースとも言える。


「もう御託は結構よ。貴方の口だけの正義はもう飽き飽きなの。口よりも行動で正義を示して欲しいところね。

 口や正義の書じゃない貴方の正義としての行動をね」


 だがデュオだけはジャクスの啖呵にも動じず早く3回戦をと催促をする。

 そう、デュオにとってはジャクスは正義の名を騙るお子様にしか過ぎなかった。

 ジャクスのチグハグな正義は簡単に論破できるとデュオは宣言する。










次回更新は10/30になります。

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