59.その道を妨げしものは災いの塔
デュオ、神秘界の騎士・The Empressのエレナーデと会う。
デュオ、『AliveOut』のメンバーと会う。
デュオ、『AliveOut』のメンバーと一緒にエレナーデと戦う。
デュオ、七王神・戦女神ローズマリーと出会う。
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「ひゅう♪ 流石戦女神様だぜ。10mクラスのロックワームを1人で押し止めるどころか押し返すなんて流石だぜ」
「あの、その戦女神様と言うのはやめて下さるかしら? 昔のこととは言え、流石に恥ずかしいものがありますので。
普通にローズマリーと、もしくはマリーとお呼び下さいまし」
「え? いいのか? まぁ本人がそう言うのなら・・・」
デュオ達一行は『AliveOut』の拠点である木曜都市に向かっていた。
屠龍で襲い掛かる魔物は過剰戦力とも言えるメンバーにより問題なく対処していた。
特に七王神の戦女神・ローズマリーが加わったことにより、戦闘が劇的に安定したのだ。
ウィルはその時の様子を思いだし興奮してローズマリーを褒め称えていた。
七王神と言えば、冒険者に取っては天上の人物として目の前に居る事すらあり得ず、話をすることすら躊躇われるのだが、ウィルは従来の性格ゆえか物おじせずに話しかけていた。
その証拠に『AliveOut』のメンバーであるフレンダ達は恐縮して付かず離れず微妙な距離を保っていた。
「そう言えばマリーは戦女神・・・全ての武器に通じる七王神として有名だけど、盾を使うなんて聞いた事が無いんだけど」
「戦乙女のスキル・・・今は戦女神ですのね。その職に就くことにより、わたくしは全ての武器を扱う事が出来るようになりました。
ですが、わたくしは元々盾職ですので戦女神のスキルとは別にサブスキルに盾スキルを取って鍛えましたの」
「スキルとかよく分からないけど、マリーが戦女神の力だけでなく、それとは別に盾戦技を鍛えてきたのがよく分かった。やっぱすげえよ」
あまりにもストレートな褒め言葉にローズマリーは年甲斐も無く頬を染めていた。
ウィルにとっては純粋に戦闘に関する事で話していたのだが、デュオは楽しそうに話すウィルを見ては少しばかり面白くなかった。
「どうした、デュオ。ヤキモチか?」
「ち・違うわよ! 何であんなデレデレした顔を見て焼きもちを焼かなきゃならないのよ!」
ソロにからかわれデュオは思わず否定してしまったが、何処から見てもヤキモチをしているようにしか見えなかった。
ソロはデュオをからかいながらもローズマリーの話していた事に付いて考える。
最強の七王神として名高い巫女神だが、ソロが『最強の正体不明の使徒』の力を使って再現したとしても他の七王神に比べて決して強くは無いのだ。
その理由が今話していたローズマリーの中にあるのかもしれないと。
七王神の力とは別にそれぞれの七王神が持つ固有能力からこその七王神なのだろう。
ただ七王神の力を手にしただけでは七王神にはなれないのだ。
自惚れていたわけではないが、ソロは『最強の正体不明の使徒』の名に恥じないつもりでいた。
だが、まだ上には上が居た。ソロは身の引き締まる思いでローズマリーの言葉を心に刻み込んでいた。
「それにしてもローズマリーさんの加入は助かります。私達の目的の為にもローズマリーさんの力は必要ですので。
ローズマリーさんも異世界に帰るのに私たちに協力をして下さるのが最短だと思いますし」
ルーナは打算があるとは言え、ローズマリーが協力してもらう事に感謝を述べる。
それに対し、ローズマリーはその答えに至る経緯を思い出していた。
「いえ、わたくしにもわたくしの理由がありますわ。23年前・・・いえ。100年前の本当の決着も付けなければいけませんし、謎のジジイと言う方にも会ってみたいと思いますから」
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「え? ローズマリーに神秘界の真実を話すの?」
デュオは思わずルーナの意図が分からずに聞き返した。
ローズマリーと合流したことにより、互いの事情を説明するために休憩地を捜しだし、一行は今は思い思いに休んでいた。
互いの事情と言ったところでローズマリーに関しては合流時に聞いた事が全てでデュオ達が一方的に話すだけなのだが。
それをどこまで話すかをデュオ達は相談していたのだ。
ルーナの意見としては謎のジジイから聞いた事を包み隠さずローズマリーに話すと言うものだった。
「はい、ローズマリーさんには全てを話した方がいいと思います。あの方は100年前の事情も知っておりますし、おそらくですが・・・ローズマリーさんは異世界人だと思います。
なればこそ、この神秘界の現状を一番よく知る方なのかもしれません」
異世界人であれば神秘界や天と地を支える世界の外の世界――異世界をよく知る人物でもある。
この創られた世界が異世界で置かれている状況も知っているのかもしれないのだ。
「確かに100年前の出来事を知っているとすれば神秘界の真実を理解してくれる可能性も高いですね。
あのクソジジイも全ては100年前から始まったとか言ってたし・・・」
ソロもルーナの意見に賛成のようだった。特に謎のジジイが口にしていた戯言が気になったと言うのが少々不満だったが。
それにこれからソロが行おうとしている事を考えれば、七王神の力は大きく進捗すると言えよう。
それには事情を知ってもらった方が話が通りやすい。
「なぁ、ルーナ。もしかしてそれはフレンダ達にも、と言う事か?」
「ええ、彼女たちにも真実を話そうと思います」
話の流れからローズマリーにだけは為す者だと思っていたが、どうやらルーナはこの休憩所に居る全員に話すつもりでいた。
それにいち早く気が付いたウィルはまさかと思いつつルーナに確認を取ったのだが、正にその通りだったので慌てた。
「おいおいおいおい、流石にそれはやべぇんじゃねぇの? あの真実を知ったらフレンダ達パニックを起こすぜ」
ウィルは今でも思い出すと震えがくる。
謎のジジイに神秘界や天と地を支える世界が異世界で創られた世界だと言う事に。
特に異世界人が戯れに創ったゲームの世界だと言う真実に。
いつ消されるか分からない天と地を支える世界の状況に、謎のジジイやソロが対策を立てているからこそ今では落ち着いてはいるが、一抹の不安が無いとは言えない。それがフレンダ達には耐えられるかが心配でもある。
「ウィルさんの心配も分かります。ですが、このまま黙っているのが最善とも言えません。
それにソロさんが成し遂げようとしている事は、1人では到底不可能なものです。私たちも協力は致しますが、これは人数が多ければ多いほど成功率が上がります。
勿論、真実を話すのは限られた者に限定足しますが。その点、彼女らは信に足りうる人物だと思いますが、如何でしょう?」
確かに、ソロが成し遂げようとしている事は1人では不可能ではないが、限りなく成功率が低いものでもあった。
八天創造神を全て倒し神秘界を天地人達の物とする。又は天と地を支える世界を神秘界のように『生きた』世界にする。
ソロがこれらの事を成し遂げる前に、異世界人又は異世界に天と地を支える世界が消される可能性の方が高い。
ソロは悩んだ末にルーナの意見を採用することにした。
パニックを恐れる為にフレンダ達に真実を話さなかった事は何だったのか。だが考えてみればルーナの言う通り黙っていることが最善とも言えないのだ。
ならば協力者を募るのもまた1つの手だ。
そうしてデュオ達はフレンダ達とローズマリーに謎のジジイから聞かされた真実を話した。
ルーナの予想通り、ローズマリーは異世界人であり、フレンダ達のパーティーの1人アイリスも異世界人だったため、この真実にはそれ程動揺が見えなかった。
尤も八天創造神が行っている悪事――異世界人や天地人の魂を神秘界に捧げる行為――には憤りを感じてはいたが。
そしてやはりフレンダ達天地人は騒ぎはしなかったもののショックを隠し切れないでいた。
自分たちが創られた幻の存在だと言う事実を認めたくなかったのだ。
そこからソロの天地人や天と地を支える世界を救う計画を提示されて落ち着きを取り戻し、ソロはフレンダ達に協力を約束してもらえた。
ローズマリーも謎のジジイの正体を気にしつつも八天創造神が100年前の事件の真相の黒幕だと理解し、デュオの目的である八天創造神の討伐に協力してもらう事になった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
道中、襲ってくる魔物を狩りながら『AliveOut』の本拠地である木曜都市に向かっているのだが、唐突にデュオ達の目の前に塔が出現した。
先程まで何も無かったのだが、蜃気楼のように揺らめいたかと思うと気が付けば天まで届く塔が目の前とは言わないが、数キロ先にそびえ立っていた。
「何あれ・・・? ねぇ、フレンダ。あれって元からあったものかしら?」
「いえ、あんなのは見たことないわ。だけど何なのかは予想がつく。おそらく神秘界の騎士・The Towerの関係するものだろう」
「どうする? このまま真っ直ぐ突っ込んでThe Towerも撃破するか?」
好戦的なウィルの問いに、フレンダは少し考えて戦闘を回避する方を選んだ。
「ここは迂回して木曜都市に向かう。極力戦闘は避けたい」
「おいおい、ここにはA級冒険者が2人も居るんだぜ。しかも七王神や26の使徒までも居る。戦力的には何の問題も無いと思うが?」
「それでもよ。あの塔は不意に現れた。単純な戦闘力だけじゃ図り切れないものがあるかもしれない」
「そうね。エレナーデのような力が無いとも限らないし。The Towerの情報を集めないうちには下手に突っかからない方がいいわ」
不満を顕わにしたウィルだが、フレンダとデュオに諭されて渋々引き下がった。
まだ距離がある内に大きく塔を迂回するルートを取ったデュオ達だが、直ぐに異変に気が付いた。
迂回するルートを取っていたはずなのだが、何故か塔が近づいているのだ。
そこで一行は迂回するルートもやめ、時間がロスすることになるが、一旦来た道を戻ることにした。
だが――
「おいおいおいおい、どうなっているんだこれ!? 離れているはずなのに近づいてきているぞ!?」
ウィルは何故か近づいて来ている塔に焦りを感じる。
それはウィルだけではなくデュオ達他のメンバーも同じだった。
「蜃気楼だと距離感があやふやになると言うが、アレは明らかに移動して近づいてきているな」
「た・建物なのに動いているだ! 田舎者のオラでも分かるだ。あんなの普通じゃねぇべ!」
竜人であるリュナウディアや、アルベルトは比較的目が良いのでその近づいてきている塔が動いているのが見えたらしい。
逃げるデュオ達を嘲笑うかのように塔は真後ろへと位置する。
すると正面の扉が開き、デュオ達を飲み込むように風が内側へと吸い上げる。
「くっ・・・! デュオ達は私たちに構わず全力で逃げなさい!」
フレンダ達の乗る走竜は吸い込む力に負け、踏ん張りが利かなくなり、徐々に扉へと引きずられる。
青水晶のクォーツタスクに乗るアルベルトとルーナも今は踏ん張りが効いて前へ進んでいるが、飲み込まれるのも時間の問題だろう。
そう判断したフレンダはデュオ達に逃げろと指示を出す。
この場で一番の機動力を持ったスノウならまだ逃れられる可能性があるからだ。
だが――
「どうも無理っぽいわね。スノウの速度を以ってしても逃げられないみたい」
そう、既にスノウは全力で飛翔しているにも関わらず、吸い込む力から逃れられなかったのだ。
「ちっ、エレナーデみたいに何か特殊な力が働いているかもしれないな。しゃぁねぇ、やってやろうじゃないか」
「仕方がない。情報不足なのは否めないが、ここはThe Towerを突破していこうじゃないか」
ウィルとソロは塔から逃れられないと判断し、逆に神秘界の使徒を倒す事で状況を打破しようと決める。
「これが神秘界の騎士ですのね・・・確かにこの理不尽さ、26の王に匹敵しますわ。
ですがあの激闘を潜り抜けてきた私達をこの程度で止めれらるとお思いなら随分と舐められたものですわね」
強制的に神秘界に連れてこられたと思われるローズマリーも神秘界の騎士を見てはどうやらやる気になっていた。
「なら作戦変更よ。塔に入ったら出来るだけ一塊になってThe Towerを撃破する」
フレンダの合図と共に踏ん張りを聞かせていたデュオ達は一斉に反転して塔の扉へと自ら進んで潜っていった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
デュオは気が付けば石畳の部屋に居た。
隣にはアイリスとミュリアリアが倒れている。
「ここは・・・塔の中?」
周囲を警戒しながらデュオはアイリスとミュリアリアを起こす。
石畳の部屋はかなり広めで50m四方の広さとなっており、デュオたち以外には何も物が存在しない殺風景の部屋だった。
「った~。何なのよ、もう!」
「スンスン。塔の中みたいだけど、塔の中っぽく無いような感じだニー」
アイリスはブツブツ文句を言いながらも剣を抜いて周囲に気を配る。
ミュリアリアも猫人の獣人らしく、匂いを嗅ぎながら部屋の中の状況を確認しようとしていた。
「どうやら他の皆とははぐれたみたいね。まぁウィル達の事だから大丈夫だと思うけど。
さてと、予定とは少し違うくなったけどこれからあたし達だけで当初の目的であるThe Towerを倒しに行くわけだけど、どうする?」
デュオは取り敢えず今は周囲に脅威が無いと判断し、すぐさま次の行動に移ろうとしたのだが、どうするかアイリスとミュリアリア尋ねた。
「どうするって・・・まずはThe Towerを捜しに行かないと」
「そうだニー、探しにって・・・あ」
アイリスは何を言っているんだか、と言った風にデュオを見たが、ミュリアリアの方が先にデュオが何を言いたいのかが分かった。
「そうなのよね。ざっと見た感じ、この部屋外に行く扉が無いのよね」
「・・・あ」
何も無い石畳の部屋。扉すらない完全なる密室の部屋だったのだ。
「ちょ、ちょっと! じゃあどうやってあたし達この部屋に入ったのよ!?」
「そこはThe Towerの不思議能力で?」
「じゃあThe Towerが現れない限りあたし達何もできないじゃない!」
閉じ込められたと理解してからアイリスは目に見えて慌て始めた。
石畳の部屋が広いにも拘らず、扉が無いと言う状況が心理的に圧迫を感じてしまったのだ。
「落ち着くニー、アイリス。出口が無いなら作ればいいニー」
「あら、いい事言うじゃない、ミュリアリア。そうよ、ここには魔術師と魔導師が居るのよ。この程度の壁、なんてことないわよ」
「え? あ、そ・そうよね。出口が無ければ作ればいいのよね」
2人の言葉に落ち着きを取り戻すアイリス。
だが、ただ単純に壁を壊せばいいわけではない。
ここは塔の中で、どの辺の位置にある部屋なのか分からないのだ。
もしかすれば塔の最上階で、壁の向こうは空中と言う事もありうるし、逆に地下で壁を壊しても意味が無いのかもしれないのだ。
デュオはその事を考慮しながらも慎重に部屋の状況を確かめ、同時に壁の向こうも探る。
だがその前に部屋の中に異変が生じた。
部屋の真ん中、そこに3人の姿が現れたのだ。
真っ赤な杖とローブを身に纏った魔導師。
革鎧を着た藍色の髪をポニーテールにした剣戦士。
幼い猫人の魔術師。
何処からどう見てもデュオ達だった。
「え? なにこれ? もしかしてお約束のあたし達のニセモノと戦えってこと?」
「The Towerも悪趣味ね。有りがちな手だけど相手の戦力を削るには有効な手だわ」
「ここまでそっくりだとちょっとビビるニー」
デュオ達は中央のニセモノに向かって構えると、ニセモノも同時に構える。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「あー、これはちょっと無いんじゃないかなぁ~」
「ウィ・ウィル! 暢気に見上げてないで構えるだよ!」
「あらぁ~、これはちょっと想定外ですわね」
この場に居るのはウィル、アルベルト、ルーナの3人と青水晶のクォーツタスクの1匹だ。
デュオ達と同様に石畳の部屋だが、部屋の大きさは比較にならない程高かった。
部屋の広さは同じ50m四方の広さなのだが、高さが頂きが霞むほど高いのだ。
そしてこの部屋にはその高さを十分生かした30mゴーレムが佇んでいる。
勿論、ウィル達を敵と認識して今まさに攻撃を加えようとしていたのだ。
30mの高さから放たれる拳は意図も容易く石畳を砕く。
その巨体故に鈍重に思われた一撃だが、以外にも早く、ウィル達は辛うじて躱すのが精一杯だった。
拳が大きく攻撃範囲が広かったのも躱し辛かった要因でもあったが。
「オ・オラ、ゴーレムと戦うのは初めてだべ! どどどうしたらいいだっ!?」
「落ち着け、アルベルト。俺もこのサイズのゴーレムと戦うのは初めてだよ。
さて、どうしたらいいもんか・・・」
アルベルトはルーナと青水晶のクォーツタスクを背に庇いながらハルバートを構え、ウィルにアドバイスを乞おうとする。
青水晶のクォーツタスクも健気にもルーナを庇っていた。
ウィルもアルベルトに応え様とはするが、流石にこの規模の魔物と戦うのは初めてなためどうしようか頭を悩ませる。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「おいおい、それって反則だろう」
「ですね。こちらの攻撃は全部素通り、向こうの攻撃は当たる。対抗手段が見出せませんね」
ソロとフレンダは目の前の魔物に辟易としていた。
フレンダの言う通り、ソロたちの攻撃は幻の様にすり抜けるのに、魔物攻撃は実体を伴ってソロたちに当たるのだ。
こんな理不尽な戦いはやってられないと言うのが本音だ。
「とは言え、こんなところで躓いてられないのもまた事実。さっさと片付けてデュオ達と合流してThe Towerを叩きましょう、ミス・フレンダ」
「攻撃が通じないのに強気ですね。何か策でも?」
「それをこれから考えるのですよ」
そう言いながら攻撃が通じないと分かっていながらもソロは目の前の魔物――ガーゴイルに攻撃魔法を叩き込む。
盾役であるフレンダは、反撃してくるガーゴイルの攻撃を一手に引き受けてソロに攻撃に専念させていた。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「貴方が神秘界の使徒・The Towerで宜しいのかしら?」
「ああ、俺がThe Towerだ」
ローズマリーとリュナウディアの目の前に立っているのは山羊の頭を持ち、背中には蝙蝠のような皮膜の翼、赤銅肌の上半身に動物の下半身をした如何にも悪魔と言った風貌の男だった。
どちらかと言うと、The TowerよりもThe Devilと言った方がしっくりくる。
「こうして塔に招いたと言う事はわたくし達に用があってと言う事でしょうか?」
「用があるのは俺じゃない。俺はただお前たちを連れて来いと命じられただけだ」
「八天創造神と言う方のどなたか、と言う事ですか」
「そうだ。正確にはお前――七王神を連れてこいと言う命令だがな」
「七王神・・・またそれですか。恥ずかしいので言わないで貰えると助かるのですが」
ローズマリーには異世界での中二病と言う病には罹ってはいないが、流石に気恥ずかしいものがあった為に七王神の名は受け入れられないみたいだ。
「待て、七王神を八天創造神の元へ連れて来いと命じられたと言ったな。ならばローズマリー殿が唐突に神秘界に現れたこともその八天創造神と関係があると言う事か?」
七王神であるローズマリーを知ってて狙ったともなれば、流石に何かあるのではと勘繰るのは当然と言えた。
リュナウディアはその事をThe Towerに指摘するも、当の本人は本当に何も知らされていなかったらしい。
「だから言ったろ? 俺は命じられただけで理由は知らんよ」
「それを信じろと? ならば何故ピンポイントでローズマリー殿を狙ってこれた。それはローズマリー殿の出現位置を知っていたからであろう」
「あー、それな。それは俺の塔の特性だよ。
この塔は何処にでも存在し何処にも存在しない。故に何処にでも現れる。誰かの前に塔を現す事なんざ俺にとっては朝飯前なんだよ」
The Towerに命じた八天創造神もこの特性を大いに重宝していた。
言うなれば何処にでも現れる移動要塞とも言えたからだ。
この塔の移動方法、収容能力を考えれば移動要塞と言っても過言ではない。
尤も当の本人は意外と面倒な事は嫌いらしく、あくまで移動の為の能力しか使用していなかった。
「なるほどな。確かに人を攫ってくるのには便利な能力だ。だが肝心な事が抜けているぞ。私達が大人しく付いていくと思ったのか?」
そう言いながらリュナウディアは拳を構える。
当然ローズマリーも剣を抜いて大盾を掲げ、徹底抗戦の構えを見せた。
「まぁ、普通はそうなるよなぁ。はぁ、姐さん面倒な仕事を押し付けてからに。
言っておくけど、この俺が許可しない限り塔からは抜け出すことは出来ないぞ。部屋の壁を壊しても無駄。
さっきも言ったけど、この塔は何処にでも存在しどこにも存在しないからな。この部屋も部屋と言う体裁を取っているが、部屋じゃないから」
「あら、それならばわたくし達をこの部屋に閉じ込めておけばそれで済んだことではないですの? 何故わざわざわたくし達の前に姿を現したのかしら」
「そりゃあ、あんたらを嬲って遊ぶためだよ。人間の絶望する顔は何よりも悪魔の享楽だからな。
ああそうそう、逆らっても無駄だと言う事を教える為でもあるか。
まぁ、あまり派手にやり過ぎると姐さんにシバかれるから命を失わない程度だがな」
七王神よりも八天創造神の方が怖いのか。The Towerは思いだし身震いをしていた。
好んで呼ばれたくはないが、七王神――かつての魔王討伐のメンバーが持つユニーク職――の名は決して軽いものではない。
ローズマリーは自分だけではなくかつての仲間をも舐められたと感じ、この者に身の程を教えなければと久々に好戦的に意識を覚醒する。
当然、リュナウディアも舐められっぱなしじゃ竜人の名が廃る。
「逆らっても無駄かどうかは貴方の体を以って教えて差し上げますわ。それとどちらが本当に恐ろしいのかも」
「舐めるなよ。竜人を前にして軽口を叩いた事を後悔させてやる」
次回更新は10/24になります。




