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DUO  作者: 一狼
第11章 神界来訪
58/81

57.その領域の支配者は女帝

「理由をお聞きしても?」


 ソロは協力を断ったエレナーデにその理由を訊ねる。

 先程まで協力的だったのに何故ここに来て拒否の態度を示すのか。『AliveOut』の協力を得られるようになった今、絶対的にエレナーデの力は必要なわけではないが、理由を聞いておかねば納得は出来なかった。

 それだけ戦闘面での神秘界の騎士(アルカナナイト)の力は強力なのだ。


「何、簡単な事だ。ジジ様からこの山から動かないように言われている。よって妾は貴様らに付いて行く事が出来ないと言う事だ」


「何故この山から離れられないのですか?」


「さぁ? そこまでは聞いていないが、ジジ様の命令は絶対だ。

 貴様らにジジ様は妾に協力を頼むように言ったらしいが、妾が直接ジジ様に言われたわけじゃないからな。もし妾の協力が必要ならジジ様を連れてきて直接言ってもらわなければ言う事は聞けんよ。

 ・・・ん? 待てよ。ジジ様が妾に直接言ったわけじゃないんだから・・・貴様らがジジ様の名を騙って妾を騙していることもありうるのか!?」


「今更かよっ!?」


「うわっ、この人簡単に男に騙されるタイプの人だ」


 今更の事に呆れるウィルに、異世界(テラサード)でもこういう人居たなぁと可哀相な目でエレナーデを見てくるアイリス。


「ええい、よってたかって妾を騙そうなどといい度胸だ。二度とジジ様の名を騙れぬよう成敗してくれる」


 先程までの空気が一変、頭に血が上ったエレナーデは立ち上がり表に出ろとばかりに怒りを撒き散らす。


「いや、あたし等は別に騙してないじゃない・・・」


「うーむ、思い込みの激しい女性と言うのは厄介だな」


「嫉妬に狂ってないだけまだマシじゃないですかニー?」


「それだけThe Empressの謎のジジイに対する恋心は深いものがあるのでしょうね。見習いたくはないけど」


 とばっちりに巻き込まれたアイリス達は恋する乙女が怒りに染まる姿を見ながら素早く戦闘準備に入る。

 もともとエレナーデから緊急避難口(エスケープゲート)のカードキーを奪うために戦いに来たのだ。

 今はデュオ達が乱入したことで一時休戦の体を取っていたが、カードキーを手に入れられるのなら戦闘が再開されるのも吝かではない。


 そんな戦闘の心構えをしているフレンダ達を余所にウィル達はエレナーデを説得していた。


「あ~あ、ここで俺達を拒否したと後で爺さんにばれたら後でどうなる事やら・・・

 あ、ついでに言えばデュオは爺さんの一番のお気に入りだからな。孫みたいに可愛がっているデュオを追い出すとか、呆れられるんじゃないのか?」


「じ・じっちゃんはオラ達と一緒に神秘界(アルカディア)に来ただ。何かよく分かんねぇが急に用事があるって居なくなっただ。オラ達は嘘なんかついてねぇだ!」


 ウィルは敢えて強気の姿勢を見せる事で後の事を心配させ、アルベルトは本人の意思とは裏腹にその田舎臭さがかえって嘘が付けず純粋な心で言っていると伺わせていた。


「ミス・エレナーデ。私たちは貴女に我が師・謎のジジイとの繋がりを示す物を持ってない為見せることは出来ません。あるのは私たちの言葉のみです。

 弟子としての私の言葉、彼のような人を騙すことの知らない純朴さを信じてはもらえないでしょうか?」


 ソロが示す先には先ほど嘘なんかついてねぇと熱弁を振るっていたアルベルトが居た。

 確かにあのアルベルトの様子なら嘘はついてないと思われる。

 もしこれが演技だとしたら異世界(テラサード)の言葉でいうアカデミー賞ものだろう。


「もし我々の言葉を信じてもらえないのならそれはそれで構いません。ただ一つだけ。我々がこの山を下りるのを黙って見逃してもらえないでしょうか。

 それならば後で我が師に事の事態が判明した時にミス・エレナーデも言い訳が利くでしょう」


「む? うむむむむ・・・む? 待てよ、もう1つだけ貴様らの言葉が本当だと言う事が分かる証明があるじゃないか。

 貴様――ソロはジジ様の弟子だ。だったらその強さジジ様に通じるものがあるはず。それを妾に見せて見ろ。そうしたら信じてやろう」


「えーと、ミス・エレナーデと私達で戦うのですか・・・?」


 流石にこの展開にはソロもビックリしていた。エレナーデは脳筋ではないとは思うが、突発的に出たその発想はそれに近いものがある。

 それとも謎のジジイが絡むことによってポンコツぶりを発揮するのか。


「そうだ。ああ、妾勝てばこのカードキーもやろう。一石二鳥だ。うむ、いいアイディアじゃないか。

 なんならそこの小娘共も加えても構わんぞ。その方が貴様らも都合がよかろう?」


 どんどん話を進めるエレナーデに戸惑うソロ。

 確かにデュオ達にとっては都合のいい話ばかりだ。何かの罠じゃないかと疑ってしまうほどに。

 だがそんなのは些細な事だとデュオがとんでもない事を口にする。


「ソロお兄ちゃん、いいじゃない。ソロお兄ちゃんがお爺ちゃんの弟子だと言う事、あたし達はお爺ちゃんに力を見込まれ神秘界(アルカディア)に連れられてきた事、それらをエレナーデに示してやろうじゃない。

 力を見せろと言うのなら見せてやりましょ。

 ううん、もうお爺ちゃんの助言云々よりも、あたし達がエレナーデより強いと言う事を示して力で従わせましょう」


「おいおいおい、お前まで脳筋になってどうすんだよ・・・ったく、我が妹ながら随分と逞しく野蛮になったものだ」


 それには流石にソロも呆れてしまう。が、考えようによっては冒険者らしいと言えばらしいのだ。


 ほぼ決まりかけた対エレナーデ戦だが、それに待ったを掛けたのはアイリスだった。


「え? ちょっと待ってよ。それってフェアじゃないんじゃないの? だってあんたのEmpressフィールドは男には効果てき面じゃないの」


「ミス・アイリス。どういう事ですか?」


「こいつの神秘界の使徒(アルカナナイト)としての特殊能力にEmpressフィールドと言うのがあるのよ。展開すると大体半径50mくらいのフィールドが形成されるんだけど、その中に居ると女は身体能力の上昇、男は低下と言った効果が発揮されるのよ」


 さらに詳細を聞けば、特に男性に頼らず自尊心の高い女性は2倍近くの上昇率になり、男性は女性を蔑視していればいるほど低下し、最低1/10まで下がるらしい。


「ちょっ! それって俺ら殆んど役立たずじゃん!」


「この場合、役立たずになるのはウィルだけね」


 ソロは図らずとも女性擁護主義者(フェミニスト)が故にそれ程フィールドの効果は現れず、アルベルトに至っては女性差別云々がよく分かってないのだ。

 2人に関しては精々1/2程度の低下になると思われる。

 まぁ、それでも結構な戦力の低下になるのだが。


「なんだ、戦う前から諦めるのか? 言っておくがジジ様は妾のEmpressフィールドの中でもものともせずに妾に勝ったぞ。

 ジジ様の弟子だったらそれくらい簡単だろうよ」


 エレナーデはと言うと、そんな慌てているウィル達を見て面白げに挑発を重ねてくる。

 そう言われれば引けないのがソロだ。

 ソロにとってはクソジジイなのだがS級冒険者『古強者(オールドマスター)・謎のジジイの弟子としてのプライドもある。


「いいでしょう、ミス・エレナーデ。貴女のそのEmpressフィールドを跳ね除け私たちの力を示し貴女を従えましょう」


「くくく、期待しているぞ。ジジ様の弟子としての力を示し見事妾を討ち破って見せよ」




◇ ◆ ◇ ◆ ◇



「まぁ、そう言う訳でいきなりだけど神秘界の騎士(アルカナナイト)The Empressの攻略に協力してもらうわよ」


「それは構わないわ。元々私たちはThe Empressの攻略を命じられたわけだし。寧ろデュオ達が加わってくれれば百人力よ」


 突然成り行きで決まった事にデュオは申し訳なさそうにフレンダに言う。

 フレンダ達にしてみればそれは願ったり叶ったりだった。元々エレナーデを攻略するためにこの山に来ていたのだ。これまで攻略できていなかった対エレナーデ戦にデュオ達の加入はこの上ない戦力の増加になる。


 取り敢えず一行はエレナーデと戦う為の準備としてログハウスの外に出て打ち合わせをする。


「とは言え、いきなりパーティーを組んで戦いましょうって訳にもいかないわよねー」


 アイリスの言う通り、いきなり2チーム合同で戦うのだ。互いの連携など打ち合わせを念入りにしなければならない為、準備の時間を1時間ほど貰った。

 しかし1時間で互いの連携が密に出来るかと言えば否としか言いようがない。

 だがその1時間でエレナーデを打ち破るだけの築かなければならないのだ。

 もしくは初めから連携をせずに各パーティーの力だけで挑むか。


「その事なんだけど、攻撃のメインはフレンダ達に任せたいんだけどどうかな?

 やることは今までエレナーデに挑んでいた形をそのままでお願いしたいんだけど」


 そんな風に悩んでいるメンバーにデュオは簡単な策を考えそれをみんなに伝える。


「え? それじゃあデュオ達はどうするの?」


 アイリスのその言葉には少し険が混じっていた。

 見方によっては一番きつい部分をフレンダ達パーティーに押し付けることになるからだ。


「あたし達は元々このメンバーでパーティーを組んでいたわけじゃないから連携と言う連係も無いのよ。精々ここに来るまでのクォーツタスクを相手したくらいだし」


「いや、臨時パーティーでクォーツタスクを相手しただけでも凄いと思うぞ。流石A級クランと言う事か」


 何気なく言うが、クォーツタスクは標準でA級の魔物だ。それを倒して山頂まで来たと言う事はそれなりの実力を持っていることに他ならない。

 そんなデュオ達をリュナウディアは呆れながらそう呟く。


「こほん。まぁ、そう言う訳であたし達はフレンダ達がサポートしながら遊撃に回らせてもらうわ」


 元々パーティーとして組んでいたことがあるのはデュオとウィルだけだ。ソロは元々単独行動派だし、アルベルトに至っては彼の生い立ちの所為で対人関係が壊滅的で複雑な連携など出来ないのだ。

 それ故、デュオが取った策は個性的なメンバーによる遊撃だった。

 まぁ、ソロとウィルに関してはEmpressフィールドの影響がある為に前線に加えるのが不安だったと言うのもある。


「実際に遊撃に回るのはソロお兄ちゃんとウィルの2人ね。あたしはフレンダ達の後方でミュリアリアと一緒に魔法で攻撃&サポートをするわ。これなら貴女達の連携の邪魔にはならないはずよ。

 アルベルトは後方であたしとミュリアリアの護衛ね。エレナーデが遠距離であたし達を攻撃してくるかもしれないから」


 因みにルーナは戦闘員じゃないので見学だ。スノウも実力を見ると言う点では規格外戦力と言う事でエレナーデからは対象外にされていてルーナの肩に止まっていた。


「そう言う事ね。まぁ、A級なんて随分贅沢な遊撃だけど、それならあたしからは文句は無いわよ。

 フレンダもそれでいいわよね?」


「そうね。前衛は連携がシビアだから2人を外すことには賛成よ。寧ろ遊撃に回って意識をそちらへ裂いてもらえればこっちの前衛の攻撃も通りやすくなるわ」


 パーティーリーダーのフレンダの決定によりフォーメーションが決まる。

 後はエレナーデの戦闘方法と対策を打ち合わせする。

 それを見計らったかのようにログハウスからエレナーデが現れた。


「打ち合わせは済んだか? なら一戦交えようじゃないか」


 そう言いながら腰帯に差した2本の鉄扇を取出し左右に広げる。

 エレナーデを前に打ち合わせ通り攻撃を受け止める盾役(タンカー)としてフレンダが最前列に立ち、その左右をアイリスとリュナウディアが固める。

 後方にはデュオとミュリアリアがそれぞれ杖を構え、その前をアルベルトがハルバートを構え攻撃を通さまいと息巻いていた。

 ソロとウィルはデュオ達の陣形の外を左右に挟むように立つ。


「Empressフィールド」


 エレナーデがEmpressフィールドを展開すると、身体能力の向上によりデュオ達は体が軽くなるのを感じた。

 尤もこのフィールドの中で一番効果があるのは男嫌いで男に頼らず女が自立できる自尊心(プライド)を持っているエレナーデだ。

 逆に男のウィル、ソロ、アルベルトは身体能力の低下により体が重く感じられた。

 ソロ、アルベルトに関しては1/2程度の低下で、ウィルは1/3程度でまだ何とか戦闘にはなるような感じだ。


「ちっ、こんなにも影響があるのかよ」


「ふむ、この程度なら差して問題は無いな」


「あうう、こんなの初めてだべ。オラ上手く動けねぇだ」


 戦闘経験の差か、ウィルとソロは何とかなるが、アルベルトは如実に影響が出ていた。

 それを見越してなのか、デュオがアルベルトを後方に配置したので戦闘にはさほど影響はない。


「泣き言を言う暇があったらしっかり仕事してよね!」


 そんな男性陣を尻目に、アイリスは盾を構え接近するフレンダに沿ってエレナーデに攻撃を仕掛ける。


 エレナーデは鉄扇で左右に衝撃波を放ち、フレンダがそれを盾を巧みに操り弾き返す。

 フレンダが衝撃波を防ぐと同時にアイリスは姿勢を低くして地面から掬い上げるように斬撃を放つ。


 鉄扇を翻しアイリスの剣を弾きながら反対の手で鉄扇を広げて顔の前に翳す。

 同時にリュナウディアの拳が鉄扇に弾かれた。


 アイリスが低姿勢から攻撃を放つことにより意識を下に向け、その反対側からリュナウディアが攻撃を仕掛けたのだ。

 尤もエレナーデには読まれていたらしく、あっさりと防がれてしまったが。


 アイリスとリュナウディアは追撃を行わず、素早く距離を取る。


「スネークボルト!」


「ストーンウォール!」


 2人がエレナーデから離れると同時にミュリアリアとデュオの2人から魔法が飛んだのだ。


 地面を這う蛇のように襲い掛かる雷撃をエレナーデは衝撃波で防ごうと鉄扇を振るう。

 が、目の前に穿つように地面から生えた土壁の槍がエレナーデを仰け反らせ衝撃波を放つことが出来なかった。


(何だこれは!? 土槍を生やす魔法なんて聞いた事ないぞ!?)


 しかも地面を這っていたはずの雷撃は、目の前に生えた土壁の槍を駆けのぼり目の前に襲い掛かる。


「くっ!」


 エレナーデは左右の鉄扇を広げ雷撃を防ぐも、仰け反った姿勢のままの為、この後の追撃に備えることが出来なかった。

 そう、この隙を狙い、アイリスとリュナウディアが左右から襲い掛かる。

 と思いきや、意識を左右に散らされ、しかも土壁の槍で視界を遮られていたフレンダの盾戦技が土壁の槍をぶち破る勢いで跳んできたのだ。


「シールドバッシュ!!」


 ズドンッ!


「ぐっ・・・!!」


 エレナーデはまともにシールドバッシュを受けて後方へ飛ばされる。

 そこへ待ち構えていたのはウィルだ。


「スラッシュストライク! って、おせぇ!?」


 本来の威力なら決まっていた剣戦技は、思ったよりもEmpressフィールドの影響を受けていた為辛うじてエレナーデの鉄扇に防がれた。


「ソードリニアー!」


「旋風脚!」


 飛ばされたエレナーデを追いかけるようにアイリスの剣戦技とリュナウディアの蹴り戦技の追撃が迫る。


「扇戦技・蜂閃華の舞」


 左右の鉄扇を素早く翻し、蜂の様に刺す攻撃がアイリスとリュナウディアの戦技を悉く撃ち落としていく。



「ちぃ、相変わらず出鱈目ね。その戦技」


「ふん、褒めても何も出んよ。貴様らも少しはマシな攻撃をするようになったではないか」


 天と地を支える世界(エンジェリンワールド)では聞いた事も無い戦技に当初は驚いていたが、何度もエレナーデと戦ううちにそれなりに対応することが出来るようになっていた。

 とは言え、鉄扇とは言えたかが扇に剣戦技が撃ち負けると言う事実には理不尽さを感じていた。


 一方、エレナーデもパーティーメンバーが少し変わっただけでここまで攻撃の幅が広がったことに慄いていた。

 これまでフレンダ達4人をずっと相手にしていただけに、攻撃パターンが刷り込まれていた影響も大きかった。

 実はそれすらも今日のための布石だと言われればフレンダ達の評価を修正する必要があるとエレナーデは考える。

 尤もデュオ達が加わったのはただの偶然に過ぎない。勿論これまでの戦いも刷り込みの為なんかじゃ無く、フレンダ達は真面目に戦っただけに過ぎない。


「それで、貴様はいつ挑んでくるんだ?」


 攻撃に一切加わってこなかったソロにエレナーデは視線を向ける。


「妾はジジ様の弟子の力を見せて見ろ、と言ったのだが、まさか小娘らをけしかけるのがジジ様の弟子のやり方ではないだろう?

 それとも女性擁護主義者(フェミニスト)だから手を上げられないとでも言うつもりか?」


「勿論このまま高みの見物を決め込むつもりはありませんよ。それに戦場に立つ以上そこには男も女もありません。私の前に立ち塞がるのなら容赦はしませんのでご安心を」


「ふん、ならさっさとかかってこないか」


 エレナーデは鉄扇を掌代わりに手招くようにかかってこいと挑発する。


「いえいえ、私こう見えても『最強の正躰不明の使徒』なんで、参戦するタイミングを見計らっているんですよ。

 簡単に戦いに加わるとあっさり勝ってしまうんで」


「ぬかせ。最強はジジ様だ。貴様のような若造が名乗っていいほどの称号じゃない」


 挑発に挑発で返したソロに、エレナーデは内心激高して睨みつける。

 彼女にとっては最強で最高の男が謎のジジイなのだ。

 幾ら弟子とてそれは許されるものでは無かった。


「そうですか。ではお言葉に甘えて、私も攻撃に加わりましょうか・・・と見せかけて」


「ゲヘナストーン・ペンタグラム!

 ――サンダーストーム・ゲヘナプリズン!」


 デュオの放った六角柱の石柱が六芒星上にエレナーデを取り囲み、雷の嵐が石柱内で暴れまわる。

 ソロの会話で注意を引き、その間にアイリスたちは僅かに距離を取っていたのだ。


「ぐううううううっ!!?

 扇戦技・亀甲蘭の舞!!」


 エレナーデの放つ舞は鉄扇の軌道がそのまま防御壁となり、舞い続ける事により亀の甲羅のようにエレナーデを雷撃の嵐から身を守る。


 雷の嵐が収まるころには所々雷による焦げ跡が見えるエレナーデが立っていた。

 流石にあの雷の嵐の中では完全には防御が出来ずに無傷ではいられなかったようだ。


「やってくれるね」


 忌々しげにソロを睨むエレナーデ。


「さぁ、続きと行きましょうか」


 そんなエレナーデにソロはにこやかにほほ笑みを返しながら戦闘の続きを促す。




◇ ◆ ◇ ◆ ◇



 デュオ達とエレナーデの戦いは幾度の攻防が続き、半ば膠着していた。

 フレンダ達だけだと技巧派であるエレナーデが上だったが、デュオ達が加わった今は接近戦や火力でも大きく上回っていた。

 が、そこは神秘界の騎士(アルカナナイト)と言うべきか、神秘界の騎士(アルカナナイト)の身体能力とエレナーデがこれまで培ってきた技術が加わることによって戦況は一進一退の状態が続いていた。


「ちっ、いい加減貴様も掛かってきたらどうだ?」


「これは心外な。私もちゃんと攻撃に加わっているじゃないですか」


「ふざけた事を抜かすな! 明らかに他の奴らに比べ手数が少ないじゃないか!

 貴様、それでもジジ様の弟子か!」


 そう、この攻防にはソロは殆んど攻撃に加わっていないのだ。

 ちょこっとの隙をついて攻撃魔法を放つ程度で、知る者が見れば明らかに手を抜いているのが丸分かりだ。


 エレナーデにしてみれば謎のジジイの弟子と証明するために今回の戦いを提唱したのにも拘らず、当の本人がこうも手抜きをするともなればイラつくのも当然と言えた。


「ミス・エレナーデはこうも仰ったではないですか。『なんならそこの小娘共も加えても構わんぞ』と。それは即ち仲間の攻撃も私の攻撃として見なす事。

 ならば私は彼女たちを利用し効率よい攻撃を行うまでです」


 その言葉にエレナーデはついにキレた。

 ただでさえ手を抜いているのに、フレンダ達を利用していると抜かしたのだ。

 これは女性の権利を主張するThe Empress・エレナーデとして許せるものではなかった。


「もういい。もう終わりにしよう。貴様はジジ様の弟子に相応しくない。

 ――扇戦技・終の舞・風塵鳳華乱舞!!」


 エレナーデが鉄扇を広げ舞うと、彼女を中心にまるで竜巻のように突風が巻き起こった。

 砂を含んだ風が周囲の物をやすりで擦るように削り取り、そしてその竜巻からは風の刃が周囲にの物をり刻むように舞い踊る。

 これまでフレンダ達にも放ったことの無いエレナーデ最大の攻撃だった。


 塵と刃。2つの波状攻撃の前にデュオ達は防御に徹しなければならなかった。


「ストーンウォール!」


 ミュリアリアが苦肉の策として土壁をそれぞれのメンバーの前に突き出すも、土壁は風塵に削り取られ風刃によりあっけなく瓦解する。


「降参するのなら今の内だ! ズタボロになりたくなければな!」


 せめての温情とばかりにエレナーデはソロへ最後通告を言い渡す。

 しかしソロの口から出たのは戦闘継続の言葉だった。


「降参? 何を言っているんですか。これが良いんですよ。貴女の最高の技を打ち破ってこその我々の勝利でしょう?」


 ソロのその言葉が示す通り、デュオ達はこの状況でもまだ諦めていなかった。

 寧ろここからが本番だと。


「ソニックタービュランス・サンドエッジ!」


 何とデュオはその場でエレナーデの風塵鳳華乱舞を風属性魔法のソニックタービュランスをアレンジして再現して見せたのだ。

 デュオの放ったソニックタービュランス・サンドエッジがエレナーデの風塵鳳華乱舞を相殺する。


 デュオのその才能にエレナーデは驚愕していた。

 そしてその驚愕により一瞬動きが止まり、風塵鳳華乱舞に隙間が生じた。


 その隙間に一条の閃光がエレナーデを貫いた。









次回更新は8/30になります。

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