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DUO  作者: 一狼
第10章 運命分岐
53/81

52.その襲撃者は世界を総べる時の王

 ルナムーン神殿を覆う薄い光の幕――結界は魔物を寄せ付けない為のものだ。

 だが、それ以外にも結界には2つの役割が隠されていた。


 1つは永遠の巫女こと月神の巫女ルーナをこの地に封印し外に出さない事。

 『不老不死』の秘密を持つ彼女の存在を第三者へ晒さない為の処置だ。

 尤も秘密は漏れるもので、永遠の巫女という二つ名が広まり世間が注目し始めている。


 もう1つの役割は、魔物とのは別に神、或いは神に仕えし者の侵入を拒む事。

 ルーナの秘密を嗅ぎつけた神――謎のジジイの話によれば八天創造神となる――に見つからないように隠す幕でもあり、近づけさせない結界でもあるのだ。


 その結界が今まさに壊されようとしていた。


 おそらく噂から嗅ぎつけたのであろう。ルーナの居場所を探し当てた神が使いを出し連れ出そうと現れた。

 しかし結界が邪魔をし、使いの者の侵入を拒む。

 そこで使いの者が取った行動は、力尽くと言うものだった。


 結界を外から思いっきり殴る。

 その一撃ごとに大気が震える。


 そうして何度も殴りつけることにより、結界は維持できなくなりガラスが割れるような音と共に砕け散った。


「ふぅ、漸く中に入ることが出来ますね。

 しかし・・・この結界、何者が張ったのでしょうか? 私の能力すら通さない結界などありえないはずなんですが・・・」


 取り敢えずその疑問は寄せておき、『世界を総べる王』が使える主の為に目的であるルーナの元へ向かう。

 だがその前に1匹の獣人が立ちはだかる。

 ルーナの巫女騎士(メイデンナイト)・アルベルトだ。


「ここは通さねえだ」


 手にはハルバードを持ち、その構えは堂に入っている。


「ふむ、巫女を守る騎士ですか。悪いことは言いません。素直にそこを退く事です」


「退けと言われて素直に退く奴は居ねえだ。ここを通りたければオラを倒していくだ!」


「失礼、貴方は騎士、でしたね。でしたら私が言った事は無粋でした。貴方の言う通りここは貴方を倒して通ります」


 『世界を総べる王』は防具は身に付けてはいない。普通のシャツにズボンと腰には申し訳なさそうに剣を差しているだけだった。

 強いて言えば服も剣も全てが真っ白であった事ぐらいだろう。


 だが『世界を総べる王』は剣を手にはせず、両手を広げた構えを取る。


「オラをバカにしているだか?」


「いえ、そうではありませんよ。私には剣は不要なのです。これは一応念のため、と言うやつです」


「やっぱりバカにしてるだ! 幾らなんでも素手で武器を持った奴に敵うわけねえだ!!」


 アルベルトはハルバードを掲げ一気に間合いを詰め振り降ろす。

 『世界を総べる王』は素手のままで右手を添えアルベルトのハルバードを受け止めた。


「なっ!?」


 そしてそのまま左手でアルベルトの体に掌打を討つ。

 添える様な掌打にも関わらずアルベルトは数十mも吹き飛ばされた。


「な、何にが起こっただ!?」


 アルベルトは慌てて起き上がり、より一層警戒を露わにして構え直す。


「奴を常識で図ろうとすること自体が間違いじゃな。何せ奴は『世界を総べる王』なのじゃから」


「じっちゃん!」


 アルベルトが『世界を総べる王』を警戒し攻めあぐねている所へ謎のジジイ達がルナムーン神殿より現れた。

 謎のジジイは珍しく既に戦闘状態で主戦力の巨大な黄金のハンマーを手にしている。

 その隣では美刃が完全戦闘状態――モード剣閃満月(フルムーン)で剣を抜き放っている。

 2人に負けじとデュオとウィルもそれぞれの武器を手に『世界を総べる王』に対峙する。


「おや? 私の事を知っているのですか? 貴方方とは初対面のはずですが」


「そうじゃの。こうして会うのは初めてじゃの。じゃがお前さんの事はよぉぉく知っておるよ。何せ魔王エーアイを含む26の王の1人じゃからの。

 それともアルカディアを守護する神秘界の騎士(アルカナナイト)・The Worldと言った方が良いかのう?」


「なっ!? 何故それを・・・貴方は何者ですか・・・? その名を知る者はこの世界には居ないはず」


 悠然とした態度であった『世界を総べる王』・・・いや、神秘界の騎士(アルカナナイト)・The Worldは一変し、動揺を顕にする。

 それは謎のジジイと共に肩を並べていたデュオとウィルもだ。

 そして滅多に表情を表に出さない美刃も同様だった。


「・・・ん、後でその事も詳しく聞くわ」


「・・・お爺ちゃん、お爺ちゃんは本当に何者なの?」


「秘密は男のロマンだが、爺さんのは少々心臓に悪いな」


「おや? 何故か味方からもディスられている気がするのは気のせいじゃろうか?」


 おどけて場を和ませようとする謎のジジイだったが、それは火に油だったらしく、The Worldは射抜き殺さんばかりの真剣な眼差しで謎のジジイに問い詰める。


「はぐらかさないで頂きたい。貴方は何処まで何を知っているのですか?」


「さぁて、何処まで何を知っているのじゃろうな? 仮に全てを知っていたとしてもお主にそれを明かす理由が無いのだがのう。

 まぁ、ここは定番通り、知りたければ儂を倒すことじゃな。とでも言っておこうか」


「・・・よろしい。そこまで言うのでしたら巫女を連れて行くついでに貴方を倒して知っている事を吐いてもらいます」


 そこで初めてThe Worldが構えを取る。

 先ほどの両手を広げた迎え撃つ構えではなく、自ら攻め入る為に腕を掲げる。

 そして呪文を唱え魔法を放つ。


「フロストレイン!」


 The Worldの唱えた氷属性魔法によりデュオ達の頭上より鋭利な刃物と化した氷の雨が降り注ぐ。

 デュオは火属性魔法、ウィルと美刃とアルベルトは降り注ぐ氷の雨をそれぞれの武器で弾き飛ばす。

 謎のジジイは頭上に無属性魔法のマジックシールドを張り被弾を防ぐ。


 デュオ達がフロストレインを防いでいる間にThe Worldは謎のジジイとの間合いを詰める。

 謎のジジイは迎撃の為に黄金のハンマーを振り下ろすも、左手を添えてハンマーの軌道をずらし躱す。そして右手を突き出し掌打を放とうとする。

 しかし謎のジジイもその程度の事は予測しており、逸らされたハンマーを地面へ叩きつけることなく切り替えし掬い上げの一撃を放つ。


「くっ!!」


 既に掌打の動作に入っていたThe Worldは無理やり体を捻りハンマーの一撃を躱す。が、躱したはずのハンマーが再びThe Worldの頭上より振り降ろされた。


 謎のジジイの一撃を受けたThe Worldは後方へ吹き飛ぶもその足は地をしっかりと踏みしめており倒すまでは至らなかった。

 よく見れば腕を交差しながらもハンマーの一撃に備え、且つ無属性魔法のマテリアルプチシールドで致命傷を防いでいたのだ。


 謎のジジイのハンマーを扱った攻撃は至極単純だ。

 ハンマーを敵に振り降ろし、そのまま掬い上げの一撃を放ち、止めの一撃を振り下ろす単純な三連続攻撃だ。

 だがその単純な攻撃であるにも拘らず、愚直にも同じ動作を繰り返し身に着けた精度により躱し辛く、単純な動作から生み出される威力は驚異的なものになっていた。

 初見であればほぼ間違いなく決まる必殺の攻撃だ。


 だが、初見にも拘らずThe Worldはその攻撃を凌ぎきった。


「ち、仕留め損ねたか。出来れば今の一撃で決めてしまいたかったんじゃが」


「舐めないで頂きたい。私はアルカディアを守護する神秘界の騎士(アルカナナイト)ですよ。そんな単純な攻撃で倒せるほどやわな騎士ではないのです」


「ん、ならこれも避けてみれば?」


 ドヤ顔で語っているThe Worldにいつの間に近づいた美刃が刀を振るう。

 同様に反対側からウィルがオリハルコンの剣を突きつける。


「くっ、マテリアルダブルシールド!」


 The Worldは咄嗟に呪文を唱え左右に腕を伸ばし2つのマテリアルシールドを張り2人の攻撃を防ぐ。

 そして両腕が塞がれがら空きになった胴へアルベルトの一撃が放たれた。


「槍戦技・雷鳴一閃牙!」


 アルベルトの放った一撃は正に雷鳴と呼ぶに相応しく、一条の雷となってThe Worldへ突き刺さる。

 それもそのはず、アルベルトの持つハルバードは神槍と呼ばれるグングニルと雷斧と呼ばれるゼウスケラウノスを融合した2つの伝説級の力を持つハルバードなのだ。

 そのハルバードの力も合わさりアルベルトの一撃は神の雷と言っていいほどだ。


「がぁぁっ・・・! まさか獣人如きにこの私が傷つけられるとは・・・!」


「おいおい、今のも防ぐのかよ。幾らなんでも呪文を唱えるの早くね?」


 ウィルがそうぼやくのも無理はない。

 アルベルトの一撃は間違いなく決まったものの、その直前でマテリアルプチシールドを一点集中してアルベルトの一撃を削いでいたのだ。


「詠唱破棄か。また厄介なものを身に着けおってからに」


 謎のジジイの言葉にデュオは素直に感心した。

 詠唱破棄は魔法をメインに使う者にとっては憧れにして究極の秘術だ。

 七王神でも大賢神しか使いこなすことが出来なかったと言われている。

 それを人ならざる身とは言え使いこなしているのだ。同じ魔法使いとして素直に感心してしまう。


 とは言え勝敗は別だ。


「ん、憤る暇があったなら反撃すれば?」


 次第に化けの皮が剥がれて来たのか、悠然とした態度は鳴りを潜め、怒りに滲んだ表情をするThe World。

 その怒りの矛先がアルベルトへ向かう間もなく、美刃は追撃の手を緩めない。


 あり得ない程の剣閃がThe Worldを襲う。

 先ほどの攻撃も手加減したのではないかと思うほどの斬撃の嵐だ。


 今の美刃は剣閃を最速の状態まで上げた、モード剣閃満月(フルムーン)状態だ。

 デュオはこの状態での美刃を見たことがあるのは数えるほどしかない。

 殆んどが剣閃満月(フルムーン)状態になるまで持たず、剣閃半月(ハーフムーン)剣閃三日月(クレセント)で決着が付いてしまうからだ。


 故に、デュオはそう遠からず決着が付くだろうと思っていた。

 が、予想に反してThe Worldはマテリアルシールドや腰に差した剣を使って美刃の攻撃を凌いでいたのだ。


 謎のジジイが美刃とS級2人掛かりでも勝てないと言ったのも頷ける。

 とは言え、あり得ない速度の剣速の美刃の攻撃を凌ぐので精一杯でこちらへ攻撃をする余裕ななさそうだ。


「うおぉ・・・手が出せねえ・・・」


「あう、これは別次元の戦いだべ・・・」


 あまりの速度の攻防にウィルとアルベルトは割って入ることが出来ない。

 この状態の攻防に手を出せばかえって美刃の足を引っ張りかねないのだ。


 そして流石S級と言うべきか。謎のジジイはそんな攻防の間を縫って魔法を放つ。

 流石に巨大なハンマーは邪魔でしかないので魔法の援護となるが。


 デュオはと言うと、長年美刃と組んでいたので美刃の攻撃の呼吸は読める。

 謎のジジイと同様に、いや魔法職として負けておれず美刃の援護を積極的に行う。


 美刃の攻撃、デュオと謎のジジイの援護がThe Worldを焦らせる。


 美刃はThe Worldから常に離れず反撃の隙を与えない連続攻撃を行っている。

 The Worldも単体の魔法ではなく広範囲の魔法で迎撃しようにも、デュオや謎のジジイの援護により阻まれていた。


「ああ、ウザったい。そんなちまちました攻撃では私は倒せませんよ? 貴女も名のある者なら潔い攻撃をしたらどうですか?」


「ん、その手には乗らないわ。貴方に一番効率的な手段は反撃の隙を与えない程の連続攻撃よ」


「ちっ、何処の誰の入れ知恵か知りませんが、確かに今の私には効果的な手段ですね」


 謎のジジイは勿論、美刃もThe Worldの本当の力を知っていた。

 それを出させないための接敵しての連続攻撃でもあった。


 だが、永遠に続くかのように思えた美刃とThe Worldの互いの攻防の均衡はThe Worldの取った手によって崩れ去る。


 美刃の放つ連続斬撃を防ごうとはせず、その身でまともに受けたのだ。

 それにより吹き飛ばされたThe Worldは美刃から距離を取ることに成功した。


 The Worldは素早く治癒魔法を唱え傷を治しながらも美刃を近寄らせないよう牽制の魔法を放ち、漸く人心地ついた。


「この私をここまで追い詰めるとは、異世界人もなかなか侮れませんね。流石は一度は私を倒した者と同郷なだけありますか」


 言葉使いは元に戻ったように見えるが、内心では怒り狂っていた。

 かつては王であり、今は神の徒である自分に傷をつけたと言う事実がThe Worldのプライドを傷つけていたのだ。


 美刃はそれには答えず再び間合いを詰めようと試みるも、The Worldは絶妙なタイミングで牽制の魔法を示唆しながら間合いをずらしていた。


「・・・え? お爺ちゃん、どういう事・・・?」


 代わりと言う訳ではないが、デュオがThe Worldの言葉に反応する。

 謎のジジイの言葉によれば、The Worldは100年前の魔王エーアイと同じ26の王の1人だと言う。

 しかしThe Worldの言葉によればその当時の自分を倒したのは異世界人だと。


 だとすれば疑問が浮かび上がる。

 異世界人が異世界(テラサード)より天と地を支える世界エンジェリンワールドを訪れるようになったのはここ最近――約3年前からだ。


 デュオは謎のジジイの言葉、The Worldの言葉、100年前の状況、最近の出来事、それらから1つの答えを導き出す。


 (実は100年前にも異世界人は来訪していた・・・?)


 そしてもう1つの答えにも辿り着く。


(100年前の冒険者に異世界人が居たとしたら・・・七王神の中にも異世界人が居た!?)


「さて、このような状況で本気を出すのはみっともないですが、やられっぱなしと言うのも性に合わないからね。

 この私を倒せると自惚れている時点で貴方方は万死に値する!!」


 そんな突拍子もない考察をしていたデュオは、慌てて現状へ目を向ける。

 どうやら怒り狂ったThe Worldが本気を出すと言うのだ。

 それによりデュオはこれからが本番だと気合を入れ直す。


 だが、謎のジジイや美刃が出した答えは全くの正反対だった。


「ちぃ、もう少し時間を稼げるかと思ったが・・・デュオ! ウィル! アルベルト! お主らは逃げろ!」


「え? でも押してるじゃない。このままいけば・・・」


「儂の言う事は聞く約束じゃろう! いいから逃げろ!」


 なまじこちら側が有利だったのが災いした。

 デュオ達は謎のジジイ達が善戦していることにより、僅かばかりの希望を見出してしまったのだ。

 謎のジジイが言ったS級2人掛かりでも倒せないと言った事を忘れて。


「大地を支配し、空を支配し、空間を支配し、時間を支配する。

 ――クロノスワールド」


 次の瞬間、謎のジジイは両腕を切り落とされ地面に伏し、The Worldの剣に胴を貫かれ地面へと縫い付けられていた。

 そしていつの間にか間合いを詰めたThe Worldが謎のジジイを地面へ縫い付けている剣を足で押し込んでいる。


「――え?」


 デュオは一瞬何が起こったのか分からずに驚愕する。

 思わず美刃の方を見ればそちらでも何が起こったのか、火属性、水属性、風属性、土属性、氷属性、雷属性のそれぞれの槍の魔法により体を貫かれ地面へ倒れるところだった。


「美刃さん!?」


 あれは下手をすれば致命傷だ。

 デュオは思わず駆け寄ろうとするが、もう一方の謎のジジイも放ってはおけない。

 だが、謎のジジイの前にはThe Worldが居る。


「さて、漸く大人しくなりましたね。私の質問に答えてもらいますよ。

 貴方は何者ですか? 何故、私の今の名を知っているのですか?」


 既に決着がついたとばかりに、The Worldは謎のジジイに尋問を始める。


「デュオ! お前は美刃さんの所へ行け! 爺さんは俺とアルベルトが何とかする!」


 一瞬迷うそぶりを見せたデュオに、ウィルは声をかけ美刃へ行くように促す。

 無論、謎のジジイを足蹴にしているThe Worldに敵うつもりはない。

 あくまで時間稼ぎのつもりだった。

 だがそれすらも謎のジジイは許可しなった。


「馬鹿者!! 儂の言う事を聞くんじゃなかったのか!! 儂等の事は構うでない! ルーナを連れてこの場から離れろ!!」


「この期に及んでまだそんな事を言う余裕があるんですか。随分と私を舐めてくれたものですね。

 大人しく私の質問に答えてください。それとも、彼らをも倒せば素直に答えてくれますか?」


「ちぃ! 逃げろと言うのが分からんのか! この馬鹿者どもが!!」


 謎のジジイの言葉を無視し救助に入るデュオとアルベルト。

 それを標的に見据えるThe World。

 何とかそれを阻止し、デュオ達の逃げる時間を稼ごうともがく謎のジジイ。


 デュオの方も、魔法の効果が切れて穴だらけになった美刃に治癒魔法を掛けるも、The Worldに見据えられ激しい悪寒に襲われる。


 標的にされたウィル、アルベルト、そしてデュオ。

 先程と同様にThe Worldは不可視の攻撃を解き放つ。


「クロノスワールド」




◇ ◆ ◇ ◆ ◇



 The Worldは時の止まった空間を歩き、こちらへ向かってこようとしているウィルとアルベルトに火属性、水属性、風属性、土属性、それぞれの空間一点圧縮魔法を放つ。


「バーストフレア

 アクアプレッシャー

 サイクロンバースト

 グランドプレス」


 The Worldの放った魔法は一瞬起動はするも、次の瞬間には魔法が弾けた状態で停止する。

 ウィルとアルベルトはその事すら認識できずに空間一点圧縮の魔法に巻き込まれた状態で同様に停止した。


 クロノスワールド。時間を停止し、停止した空間を自在に動く事が出来る特殊能力だ。

 The Worldがかつて『世界を総べる王』として生きていた時に使用していた特殊能力であり、無論神秘界の騎士(アルカナナイト)となった今でも使う事が出来る。

 使用時間の制限や、再使用時間(リキャストタイム)があるが一度発動すれば何者もThe Worldに敵う者はいない。


「ふ、こうまで一方的だと何の面白味も無いでね。使えば勝つと分かる能力を使用する。まるでむきになっているようで見っともないですが、負けるよりはいい。

 さて、今度はこちらのお嬢さんですか」


 The Worldは今度はデュオの方へ向き直り、必死になって美刃を治療しているデュオに向けて手を翳す。


「ゲヘナストーン」


 デュオに向けられ放たれた六角柱。

 ウィル達と同様にそれに弾き飛ばされ汰状態で停止するはずだった。


「エアスラッシュ!」


 何処かより放たれた剣戦技の斬撃により六角柱の軌道がずらされ、そのまま後方へ流れて辛うじてデュオに命中することは無かった。


「なっ!?」


 これには流石にThe Worldも驚いた。

 この停止した時間内で動くことが出来るのはただ一人、The Worldのだけのはずだ。


「悪いが、デュオはやらせないよ。無論、デュオだけじゃない。皆もお前の思い通りにはさせないよ」


「馬鹿な・・・何故、この停止した時間で動く事が出来る!」


 そこに現れたのはつい数日前、王都エレミアで召喚魔物の事件を起こした『正躰不明の使徒』達の内の1人、そしてデュオの兄のソロだった。


 The Worldはデュオを襲おうとした六角柱が弾かれたことに目が行って、ソロがウィル達が空間一点圧縮の魔法から助け出され治癒を施していたのを見逃していた。


「何故って? そりゃあこの時間停止を行えるのはお前だけじゃないからさ。

 かつて100年前お前を倒したことのある七王神の1人、時間と空間を司る時空神の存在を忘れていやしないか?」


「ふざけた事を抜かさないで下さい。貴方は彼じゃない」


「世の中って例外ってあるよなぁ。そう、俺は時空神じゃない。じゃないが、残念なことに俺も時空神と同じ能力を持ってるんだな、これが」


「あり得ない、そんな事が・・・」


 驚愕の表情をするThe Worldを見てしたり顔をするソロ。


「冥途の土産に覚えておけ。俺は七王神の全ての能力を司る『最強の正躰不明の使徒』・ソロ。お前を倒す者だ」









次回更新は6/30になります。

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