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DUO  作者: 一狼
第10章 運命分岐
52/81

51.その永遠は名もなき神の御業

 永遠の巫女。その名の通り永遠を生き続けていると言われている巫女だ。

 何百年も生きていると言われ、何処とも分からない場所で神に祈りをささげていると噂されていた。


 だが謎のジジイによると、永遠の巫女はかつて滅んだと言われている月神の巫女であり、今も尚ルナムーン神殿で100年も前から巫女を続けていると言う。


「まさか噂ばかりだと思っていた永遠の巫女が実在するとは・・・」


「でも噂の無いところに煙は立たないって言うじゃない。もしかしたらあたし達が知らなかっただけで他の冒険者とか知っていたのかもね」


 永遠の巫女が月神の巫女だと言うのなら、サンフレア神殿やブルブレイヴ神殿のように世界を支える為の役割を担っているかもしれない。

 そうだとすれば他の冒険者との接触もあるだろう。おそらくだがそこから噂が流れて来たのではないか。と、デュオはそう判断した。


「それでお爺ちゃん、あたし達は何処へ向かっているのかな?」


 周りは高速で風を切っているのだが、風切用の風属性魔法でも掛かっているのか、音は遮られることは無く大声を出さなくても周囲にもしっかりと聞こえる。


「直ぐそこじゃよ」


「確かに直ぐそこだよなぁ・・・これだと」


 ウィルは凄い速度で景色が流れていく様を見ながら今自分が乗っているものの存在を強く感じる。


「・・・ん、何時の間にこんなものを手に入れたの?」


「わははっ、何時の間にも何も100年も生きておれば自然と足が必要になる。どうせなら儂に相応しい相手を求めるのが当然じゃ。何しろ入手方法は前例者からバッチリ聞いておるしの」


「・・・ん、だからってこれはやり過ぎじゃないの?」


 今デュオ達が乗っているのは10mサイズの巨大な黄金のドラゴンだ。

 永遠の巫女が居るルナムーン神殿に行くために、まずは水の都市ウエストヨルパへ王都中央に設置されている転移魔法陣で移動し、水の都市から少し離れた後、謎のジジイが呼び出した騎獣が黄金騎竜(ゴールデンドラゴン)だったのだ。


 その姿はまるで鈴鹿達が乗っていた白銀騎竜(シルバードラゴン)であるスノウを髣髴させる。


 ただでさえ白銀の竜は珍しいのに、それと対を為す様な黄金の竜ともなれば目立つことこの上ない。

 美刃はスノウを上回る目立つ竜を作り上げたこと(・・・・・・・)に対してやり過ぎじゃないかと言っているのだ。


「細かい事は気にするな。寧ろこれの方が儂らしいじゃろう!」


「・・・ん、確かに。それは100年前から変わってなさそう」


 黙って謎のジジイと美刃との会話を聞いていたデュオ。

 美刃が天と地を支える世界(エンジェリンワールド)に来たのは3年前。

 2人は遠い昔の知り合いと言うが、謎のジジイの年齢を考えれば計算が合わない。

 だが2人の話しぶりからすると本当に遠い昔――それこそ100年前以来の知り合いみたいだ。


 デュオは2人が再会した時は敢えて深くは聞かなかったが、これまでの2人の態度を見る限りそれは確信に近いと感じた。

 だとすれば美刃とは、謎のジジイとは、2人はいったい何者なんだろうか。

 今更ながらに謎のジジイに関しては知らないことが多い事に気が付いた。

 そして美刃に関しても異世界人と言うこと以外、大したことを知らない事にも。


 そんなデュオの心情はお構いなしに一行を乗せた黄金騎竜(ゴールデンドラゴン)――ガジェットは目的のルナムーン神殿へと辿り着く。




◇ ◆ ◇ ◆ ◇



 森と湖に挟まれた平地にルナムーン神殿が立っている。

 そしてその神殿の正面には1匹の魔物が手にしたハルバードを振り回していた。


「魔物!?」


「オークか!? こんなところに!」


 オークを目の当たりにしたデュオとウィルはすぐさま武器を構える。

 デュオ達の来訪に気が付いたオークもこちらに気が付き警戒を露わにした。


「なっ! 侵入者だか!?」


「喋った!?」


 ウィルはオークが喋ったことに驚いたが、デュオはそれを含めてこのオークの異様さに気が付き警戒を怠らないようにしながら観察する。

  見た目はオークなのだが、口から生える大きな牙、引き締まった体、何より全身が毛に覆われていた。

 どちらかと言うと(オーク)と言うより(ボア)と言った方がしっくりくる。


「久しぶりじゃの、アルベルト」


「あ! じっちゃん! じっちゃんじゃないか!」


 謎のジジイの姿を見つけた猪オークは警戒を解き、嬉しそうに駆け寄ってきた。

 どうやら謎のジジイはこの猪オークを知っているらしいが、デュオとウィルは完全には警戒を解かずに武器を降ろす。


「お爺ちゃん、彼?の事を知っているの?」


「ああ、こやつは魔物じゃないよ。オークから進化した猪の獣人じゃ。儂等は猪人(ボアーク)と呼んでおる」


「はぁぁ!? 猪の獣人だって? 魔物が獣人になるなんて初めて聞くぞ?」


「あり得んことは無いじゃろう。元々獣人は魔物の進化した姿とも言われておる」


「そうね。犬人(コボルト)も元々魔物だったし、蛇人(ラミア)人馬(ケンタウルス)羽鳥人(ハーピー)達なんかもそうだしね」


 犬人(コボルト)を例に挙げれば、獣人の犬人(コボルト)も元をたどれば魔物だったのだが、理性を宿し知性を備えてから全く別の進化をたどり獣人への地位を確立したのだ。

 基本的には野生で襲い掛かるのが魔獣コボルトで、知性をもって会話するのが獣人犬人(コボルト)と言うのが世間一般の解釈だ。


「じっちゃん、久しぶりだべ。オラ、じっちゃんに言われた通りちゃんと鍛錬をしていただ!」


「ああ、随分と逞しくなったみたいじゃないか。男子三日会わざれば括目してみよ、じゃな」


「オラ1人の力じゃねえだ。色んな人がオラに力を貸してくれただ」


 アルベルトは獣人らしく表情豊かに謎のジジイと会話をする。

 その様子を見てようやく警戒を解いたデュオ達はアルベルトへ話しかけた。


「初めまして。あたしはデュオよ」


「俺はウィルだ。さっきは済まねえな。てっきり魔物だとばかり思ってしまって」


「オラは気にしてないだ。じっちゃんが連れて来た人だから悪い人じゃないって分かっているだ。

 そっちの女の人も初めましてだ」


 アルベルトは最後尾に控えていた美刃に声を掛ける。

 その美刃はアルベルトの持っているハルバートに注目していた。


「・・・ん、初めまして。そのハルバートは何処で手に入れたの?」


「これだか? これはじっちゃんがしばらく会えないからオラにこれで強くなるように選別で貰っただ」


「・・・ん、そう」


「何か言いたそうじゃな?」


 美刃からの何か言いた気な視線を受けて、謎のジジイは思わず聞き返す。


「・・・ん、別に。随分とこの子に入れ込んでいるみたいだと思っただけ。それとも過保護だと言った方がいいかしら?」


「・・・気のせいじゃろ。

 それよりアルベルト、ルーナは何処じゃ?」


 何を持ってして入れ込んでいるのか。謎のジジイも心当たりがあるみたいだが、敢えて恍けて話を逸らす。ここへ来た本来の目的の為に。


「ルーナ様は神殿の中に居るだ。と言うより、ルーナ様はこの場から離れられないから神殿にしか居られないのはじっちゃんも知っているはずだべ」


「何、確認じゃよ、確認。今のルーナは狙われておるからの。儂等が来る前に襲われていないかの確認じゃ」


「ル、ルーナ様が狙われているだか!? それってずっと前に言っていたルーナ様を攫う悪漢だか!?」


「そうじゃ。もう暫くは隠せるかと思っていたが、見つかってしまったみたいでのう」


「オ、オラ、ルーナ様を守るだ! ルーナ様に助けてもらった恩を返す為にも必ず守るだ!!」


「助けてもらったって?」


 意気込んでいるアルベルトを見て、デュオは謎のジジイにルーナとアルベルトの関係を聞いた。


「何、よくある話じゃ。元々オーク生まれだったアルベルトがオークの群れからはじき出され彷徨ってルナムーン神殿に辿り着いたところを助けたのがルーナじゃ」


「まぁ・・・よくある話だな。だけど本人にとってはそれは何にも変え難いものなんだな」


 意気込んでいるアルベルトをその場に置いて、謎のジジイはデュオ達を引きつれてルナムーン神殿へと入っていく。

 アルベルトを置いて行ったのは、彼は頑なに神殿に入ろうとはしないからだ。

 自分は元々魔物上がりであるが故に、神聖な神殿に足を踏み入れることを躊躇っていたからだ。

 それ故、神殿の前で侵入者を防ぐ警備としてその場に残ったのだ。


「ルーナ、居るか?」


「あら、御爺様。お久しぶりでございます」


「うむ、久しぶりじゃの」


 ルナムーン神殿の中に入ると、そこには1人の少女が居た。

 10歳にも満たない感じに見える銀髪のポニーテールをした巫女だ。


「ちょっと待って。この子が永遠の巫女? どう見ても小さな子供じゃない」


「・・・マジか。これは流石に予想しなかったなー」


 その巫女の姿にデュオは信じられないような表情をしていた。

 ウィルも同様に巫女と言う言葉から大人の女性をイメージしていたのだが、まさかの少女巫女に驚きを隠せないでいた。


「こう見えてもルーナはお主らよりは何倍も生きておるのじゃぞ。もう少し敬意を持って接しろ」


「御爺様、仕方ありません。私の姿は12歳の時で止まってしまっていますから。この姿から年長者として接しろと言うのはあまりにも酷かと」


「姿形で判断するのは愚者の行いじゃぞ」


「それでもですよ、御爺様。私たちは永い(とき)を生きて来たからこそ人々の姿形に捉われず接することが出来ます。

 ですが彼女らはまだ若いのです。そこは大目に見てあげませんと」


 そのやり取りを見て、デュオはルーナが謎のジジイと同じく100年の時を生きながらえていると言う事が分かった。

 幼い姿でありながら、落ち着いた雰囲気を醸し出しているのだ。この落ち付き具合は一夕一丁で身に付くようなものじゃない。


「しかし・・・儂を御爺様と呼ぶのは構わぬが、お主も・・・」


「何か言いましたか?」


 謎のジジイが自分と同じ100年生きた老人だと言おうとしたが、その瞬間だけはルーナはS級冒険者に匹敵するほどの殺気を放ち黙らせる。


「お、おぅ、何でもないです・・・

 っと、こんなことを話ししている暇は無かったわい。とうとうお主の事がばれた。お主を攫いに『奴ら』の手先がもうじきここへ来る」


「何時か御爺様が言っていた者達ですね。それで御爺様が直接護衛に来て下さったと」


「うむ、儂等に任せておけ。じゃが万が一の事を考えておかなければならん。

 もしもの場合は儂が密かに用意した隠れ家へ逃げるのじゃ」


「あの・・・私はこの場から離れることが出来ないのですが・・・」


 ルーナは何故かこの場――ルナムーン神殿を離れることが出来ない。

 だからこそ月神の巫女の存在は世間に知れ渡っておらず、この場に訪れる冒険者たち以外に忘れ去られているものとなっていたのだ。


「何、『奴ら』の手先がこの場に来た時点でお主を縛り付ける封印は解かれるようになっておる」


「封印・・・そのようなものが私に掛けられていたのですね。何故そのような封印を掛けられたのですか?」


「お主には悪い事をしたと思っておる。じゃが、お主の存在は『奴ら』には知られてはならん。あちこち動き回られてその存在を振り撒くわけにはいかんかったのじゃ」


 最初の数年は構わない。だが、20年も30年もすれば年を取らないルーナを周囲の人間は不審に思う。

 そうなればルーナは住む場所を変えねばならない。そうなれば数年ごとに周囲の人間にルーナの奇特な存在が知れ渡ることになる。

 それを恐れての封印だったのだ。


「尤も、神狼の奴はお主を封印したことに憤慨しており、寂しさを紛らわせるために冒険者をここへ寄越すようにしておったみたいじゃがの」


「彼には感謝していますよ。ここ数年は人と話す楽しさを思い出させてもらっています。

 ですが・・・それとこれとは話が別です。

 そこまでして『彼ら』に私の存在を知られたくない理由は何故ですか? 何故私は永い刻を生きながらえなければならなかったのですか?

 以前聞いた時は今は理由は言えないと教えていただけませんでした。今ならばその理由をお教え願いますよね?」


「そうよ! こんな小さい女の子に永い間1人っきりで過ごさせるなんて酷い!

 ちゃんと納得いく理由を教えなきゃ可哀相よ!」


「・・・ん、『彼ら』に見つからないようにする理由は分かるけど、流石にこれは無いわよ?」


 これまで黙って聞いていたデュオと美刃はルーナの動きを封じていた謎のジジイを非難する。

 デュオと美刃の2人を加えたまさかの女性陣の攻撃に謎のジジイも及び腰になった。


「待て待て、その封印を施したのは儂じゃない。寧ろ儂も被害者の部類に入るのじゃぞ」


「どういう事?」


「・・・美刃、お主なら知っておるじゃろう。儂に与えられた過酷な試練を。運命を」


 謎のジジイに対して美刃は神妙に頷く。

 それは直接関わり合いの無いものの、美刃にとっては謎のジジイに対して後ろめたさがあるからだ。

 そうして気が付く。当時起こった出来事の中で今回の件・・・いや、一連の事件に関わっている人物を。


「・・・ん、裏切りの神・サカキバラゲンジロウ・・・!!」


「そうじゃ、全ては奴の指示であり、後始末でもある。厄介な置き土産をしてくれたものじゃ」


「ねぇ、裏切りの神って、天使エーアイに魔王の力を与えた八天創造神の裏切りの者の神の事?」


「そうじゃ。奴がルーナにこの地に止まる封印を施したのじゃ。そして永い刻を生きる『不老不死』を与えたのも奴じゃ。

 尤も与えられた『不老不死』も不完全でどこまで効力があるのかは不明じゃがの」


 謎のジジイのもたらした答えは衝撃の事実だった。

 まさか出てきた答えが存在がおとぎ話や伝説とされている神――八天創造神の裏切りの神だと言う事実にデュオやウィルは驚愕する。

 しかもルーナの『不老不死』も裏切りの神が与えたものだと言う事も衝撃だった。


「ん? じゃあそうすると、爺さんはその裏切りの神に指示を受けているって事か? それでこうしてルーナの護衛に来ていると」


「100年も前のことじゃがの。奴から直接指示――この場合は神勅か?を受け取った。奴の作ったシステムに組み込まれてしまった儂には拒否権が無かったからのう」


「えええええ!? ちょっと待ってよ。じゃあ、お爺ちゃんは私達天地人(ノピス)の敵・・・?」


 基本的に、世間では裏切りの神は悪とされている。

 天使エーアイに魔王の力を与え、世界を破滅に導こうとしたのだから当然と言えよう。

 そして謎のジジイが告げている事が事実だとすれば彼もまた悪と言う事になる。


「いや、それは違う。裏切ったのは奴じゃない。八天創造神が奴を裏切ったのじゃ。奴はその対策を取っただけに過ぎん。

 それが儂でありルーナでもある」


「・・・ん、それは本当よ。本当に裏切ったのは八天創造神の方。裏切りの神は彼らの策に嵌まり騙されたの」


「え、美刃さんまで・・・って、え? 何で美刃さんがその事を知っているの(・・・・・・・・・・)? え? え?」


 衝撃の事実の連続にデュオの頭はパニック状態になる。

 そして更なる追い討ちが掛けられる。だがそれはデュオがここ最近求めて止まないものだった。


「・・・ん、まだ気が付かない? 八天創造神は『彼ら』よ」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?」


 一瞬思考が停止し、頭の中が真っ白になる。

 そしてその意味を理解する前に、事態は動く。そう、ここへ来た本来の目的の為に。


 ドォォォォォォォォォォォォォォン・・・!!


「なんだぁ!?」


「な、今度は何!?」


 地震の揺れとも違う大気の震えにルナムーン神殿が揺れる。


「ふむ、どうやら奴が来たようだな。どれ、相手をしてくるか。

 色々聞きたいことがあるじゃろうが、奴――『世界を総べる王』を倒してからじゃな。」


 そして謎のジジイはルーナはここで待機するように命じ、外へと向かう。

 当然のように美刃もそれに付いて行く。

 美刃がここへ来たのは謎のジジイと共に戦う為だから。


「・・・ん、どうするの? あの王の特殊スキルはチートと言っても差し支えないわよ」


「んーー、まぁ一応対策はあることはあるんじゃが・・・『世界を総べる王』に対抗できる人物を呼んでいるので、そいつが来るまでの時間稼ぎじゃな」


「・・・ん、分かった。それなら私も時間稼ぎに徹すればいいのね」


「デュオ、ウィル、お主たちはどうする?」


 目まぐるしく移り変わる展開に付いて行けず呆然としていたデュオ達に謎のジジイが問いかける。

 謎のジジイを信じて一緒に戦いに参加するか。それとも信じられずこの場に止まるのか。


 裏切りの神の神勅を受けていた謎のジジイは信用に値するのか?

 そう問われればデュオは答えに窮する。

 だが、デュオはこれまでの謎のジジイや、デュオ本来の目的の『彼ら』であることを考えれば答えは一つだった。


「今来ている『世界を総べる王』とやらが『彼ら』に関係しているんでしょ? だったら言われるまでも無いわ。

 確かにお爺ちゃんの事も信じきれないけど、よくよく考えたら神話や伝説は真実が捻じ曲がって伝わっていることがざらだしね。そう考えるとお爺ちゃんが悪って決めつけるのもどうかと思うし」


「そうそう。それに爺さんは最初から『謎』のジジイって名前じゃねぇか。今さら謎の1つや2つ出てきたところで驚く方が間違っているんだよ」


「何とまぁ・・・単純と言うか、素直と言うか。これが若さと言うものなのかのう・・・」


「・・・ん、ここは素直に信じてくれてありがとう、じゃないの?」


 照れ隠しなのか、美刃に指摘されて謎のジジイは頭を搔きながら今一度ルーナに振り返り改めて敵を倒してくると宣言する。


「ルーナ、お主を守るために奴を・・・『世界を総べる王』を倒してくる。

 その後でお主に答えられることは答えよう。儂に恨みを晴らしたいのならそれも甘んじて受け入れよう」


「いえ、御爺様も彼の神の被害者と言う事。ならば私からは何も言う事はありません。

 強いて言えば、移り変わった世界を見せてください。この戦いが終わった後なら私はこの場を離れることが出来るのですよね?」


 ルーナがこの地に動きを封じられて100年。

 訪れる冒険者から外の世界の話を聞くも、永い刻を行き過ぎたせいか最早外の景色を見ることは叶わず諦めの境地に達していた。

 だが、それが覆ると分かり外への興味が再び湧き上がるのを感じていた。


 それを謎のジジイへの願いとして、謎のジジイからの謝罪として、自分をこの地から連れ去ってほしいと己の運命を託す。


「うむ。任せておくがよい。なんせ儂は世界を救う勇者じゃからな。お主の世界も救って見せよう!!」









次回更新は6/28になります。

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