44.その来訪者は神の住む世界を目指す友
デュオ、フェルと再会する。
デュオ、巫女神の噂を聞く。
デュオ、第三王子の救出に向かう。
デュオ、シクレットの隠密忍士と対決する。
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第二衛星都市カレミアの某所にある建物内で4人の男女が集まっていた。
「皆様、お集まりのようですね」
金髪で男か女か分からない中性的な若者がこの場に集まった者へ声を掛ける。
このグループを統括している人物だ。
「ナイトハートとアムルスズが来ていないけどね」
そう言ったのは約一ヶ月ほど前に王都エレミアで街中に魔物を召喚して混乱に導いた召喚従魔師のアレスト=グロリワールだった。
「彼らは仕方ありません。肩書や商売がありますからね。彼らには私の方から伝えておきます」
「それで? 今回ボク達を集めた理由を教えてくれる? 今まで何度か顔合わせをしたことはあるけど、全員集合って初めてじゃない?」
そんなことはどうでもいいとばかりに、壁を背にした美少女がややつまらなそうに言ってくる。
但し彼女の頭には生えている二本の角が獣人であることを示していた。
それも希少種である麒麟の獣人である麒麟だ。
「ええ、そうですね。これまでは皆様の自主性に任せ自由に動いてもらいましたが、機が熟しました。我々の目的を果たす為、計画を実行に移す時が来ました。今回はその為に集まってもらったのです」
「ああ・・・遂に実行ですか。これは腕が鳴りますね」
「計画ってよく分かんないあの計画? って、アレストはフライングしてもう王都で暴れたじゃん」
「あ、あれはあれ。これはこれですよ」
女麒麟の物言いにアレストは少々バツが悪そうに言い訳をする。
彼女にしてみれば自分も暴れたかったのだが、いずれ王都で行動を実行するからそれまでは王都内では出来るだけ騒ぎを起こさないよう統括者から言われていたのだ。
それなのに仲間であるアレストがその定めを破り騒動を起こしたので当然面白くなかった。
「まぁまぁ、アレストさんのあの事件も今回の計画の一手にもなっています。確かに1人だけ先走ったのはいただけませんが、その分今回の計画では私のいう事はよく聞いて十二分に働いてもらいます。
勿論ジェニファーさんにも思う存分働いてもらいます。それでよろしいですね?」
「まぁ、ボクは思う存分暴れればそれでいいけどね。それが面白ければなお最高だね」
統率者に言われ、女麒麟は渋々言いつつも来たるべき計画に獣人らしく獰猛な笑みを浮かべていた。
「ああ、楽しみですね。王都に住む住人全てを僕の召喚した魔物が喰らい尽くす。それが魔王様へ捧げられる供物ともなれば尚更ですね」
「アレストさん、我々の計画は王都の殲滅ではありませんよ。我々に与えられた任は天と地を支える世界に住まう天地人と異世界から訪れている異世界人に死なない程度の負荷を与える事です」
「わ、分かってますよ。言ってみただけです」
王都を襲撃する想像を搔き立てていたアレストは統率者に窘められ慌てて言い繕う。
重度の魔王信者であるアレストにしてみれば負荷よりも世界の破滅の方がより魅力的だったりするのだ。
「はぁ、計画の行動範囲内であればアレストさんの自由にしてもいいですよ」
統率者はそんなアレストを見て、この前のように勝手に行動して計画に狂いが出ないようにある程度の自由を与えることにした。
「本当ですか? いやぁ、楽しみですね。この前のように人を調教してもいいし、蠱毒法で育てた魔物を解き放つのもいいですね」
「ジェニファーさんには冒険者としての立場を生かしつつ今回の計画の障害になりそうな冒険者を目星を付けておいてください。
まぁ、おそらくですがクラン『月下』の人たちを狙う事になると思います」
「了~解~。クラン『月下』ね。出来ればS級冒険者の絶剣とやりあってみたいなぁ」
クラン『月下』と戦えることを楽しみにしているジェニファーとは反対に、前回の事件で立ち塞がったデュオや『月下』のメンバーを思いだしアレストは苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
そしてクラン『月下』の名前が出ると、今まで一言も発していなかった青年が口をはさむ。
「今回の計画、どうしても俺も参加しなきゃならないのか?」
「ええ、貴方には必ず参加してもらいます。貴方のような絶対的力を持つ者が今回の計画には必要不可欠なのですから」
「そうは思えないんだがな。俺の力はあまりにも桁が違いすぎる。それこそ王都全てを蹂躙できるだけの力がな。アレストよりも尚たちが悪い」
「だからこそですよ。貴方の絶対的力を見せ占める必要があります。それが最大の負荷を与える一番の手段なのですから。
そう、絶対的力を持つ『最強の正体不明の使徒』・ソロ、貴方のね」
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
デュオはいつもの日課の九尾城にてクオの再生水晶に魔力を注ぎ込む作業を終え、少し早めに『月下』の仮クランホームへと戻ってきていた。
復讐ではない、これ以上の被害を出さないためにも『彼ら』を追いかけるデュオ。
その為の調査を地道にしていこうとシフィルらと協力して行っているのだが、今の段階では手掛かりすら見つかっていない。
既にセントラル遺跡での手掛かりが無い事は判明しており(正確には手を出せない場所がある)、別のアプローチから探す方法を模索している途中だ。
その内の1つ、神界アルカディアより降臨した巫女神フェンリルから情報を得られないかとも思ったが、当の巫女神フェンリルは偽物で手掛かりにはならなかったのだ。
「うーん・・・ここはやっぱりプレミアム共和国にある魔導技術大全を狙うのはどうかな? デュオっち。
世界の秘密が隠されているセントラル遺跡の地下資料室。そこにあったとされる魔導技術大全に手掛かりがあると思うの」
「そうね。フェルさんの助言に従って魔導技術大全の入手も視野に入れておきましょう。
魔導の真髄が世界の秘密に迫っているって言うのは良く聞く話だけど、実際のところは見てみないと分からないけどね。
まぁそれとは別に、クオを一日でも早く解放する手段が見つかるかもしれないし」
「じゃあ手に入れてみる価値はある?」
「でもねぇ・・・紫電さん曰く、プレミアム共和国で厳重に封印してあるらしいし。一介の冒険者が見せてくださいって訪ねても門前払いでしょうね」
それでも調べておく価値はあると判断したシフィルは情報を集めに盗賊ギルドへと向かう事にする。
デュオの方でも魔導技術大全とは別に『彼ら』に通じる世界の秘密の手掛かりを探す為に頭を悩ませるが、考えてばかりでは気が滅入ってしまうので気分転換に外へ出ようとしたところへデュオの妹であるトリニティが訪ねて来た。
トリニティの仲間である鈴鹿とアイを伴って。
「トリニティ! いつ王都に戻ってきたの?」
「お姉ちゃん、ただいま。王都に戻ってきたのはついさっきよ」
そう言って抱擁を交わしたトリニティは以前とは見違えるほど凛とした佇まいをしていた。
『災厄の使徒』の討伐から約1ヶ月、たったそれだけの間あっていなかっただけでデュオの妹は限りない成長をしていたのだ。
流石は血を分けた妹と言うべきか。
「鈴鹿も久しぶりね。ちゃんとあたしの言いつけを守ってトリニティを守っているみたいね」
「当たり前だ。大事な仲間だからな」
「アイさんも久しぶり。トリニティは迷惑かけてなかった?」
「大丈夫よ。トリニティは優秀な盗賊だから。私の教えをどんどん吸収してるわ」
「ちょ、ちょっと。鈴鹿もアイさんも何を言っているのよ。いつもはそんなことを言わないのに!」
デュオはトリニティを頼んだ鈴鹿とアイともお互い挨拶を交わす。
鈴鹿やアイの言葉にトリニティは少し照れくさくて誤魔化すように文句を言ってくる。
そんな様子をデュオは微笑ましそうに見ていた。
「もう・・・えっと、何か色々報告もあるけど、お姉ちゃんの方も色々ありそうだね」
「ええ、まぁね。色々あったわよ。色々とね」
別れてからの1ヶ月。トリニティの成長を見ればそれこそ色々な事があったのだろうとデュオは感じたが、それこそデュオの方も色々あったのだ。
そのことを思いだし、少し気分が落ち込んでしまう。
「まぁ、トリニティは歌手デビューもしたからなぁ」
「え? 何それ。もう少し詳しく聞きたいわね」
「ほう、やっぱり気になる?」
「ええ」
「鈴鹿! お姉ちゃん!」
どうやらデュオの様子を察した鈴鹿が気を遣って場を和ませながらお互いの近況報告をしようと提案してきた。
そこで鈴鹿がトリニティをからかうのはご愛嬌だ。
お互い仮のクランホームでくつろぎながらサーズライ村で別れてからのこれまでの経緯を報告し合った。
鈴鹿達はあの後、羊王国と獣人王国を経由しながら『旋律の使徒』と『勇敢な使徒』のクエストをクリアし、獣人王国の四天王である『逃走の使徒』『投槍の使徒』『闘争の使徒』『刀装の使徒』をもクリアしたそうだ。
そして第四衛星都市ハレミアで違法獣人奴隷を扱う貴族やガルバッハ魔徒野盗団を相手しながら『力の使徒』と『知恵と直感と想像の使徒』をもクリアしてきて今に至るそうだ。
その中で驚いたのが、デュオたちが獣人王国にブラント商会の護衛で赴いた時にその時鈴鹿達も居たと言う事だ。しかもその時鈴鹿はウィルと会っていたと言う。
「ウィル~? あたし聞いていないんだけどぉ~?」
「あ、あ~~。そう言えばそんなこともあったなぁ~あはは。あの時は色々あったから忘れてた・・・すまん」
「もう、ちゃんと報告してよね」
後もう1つ特筆すべき点は、『刀装の使徒』だろう。
九尾の狐・玉藻の前の召喚獣である地穂との戦闘中にハルトが『刀装の使徒』に任命されたのは同時期に鈴鹿が『刀装の使徒』を倒したからだろう。
聞くところによると、妖刀である魂鋼が『刀装の使徒』そのものだったらしい。
その妖刀を破壊することにより、『刀装の使徒』がハルトへと移ったと言う事だ。
まぁ、そのことでハルトが鈴鹿に八つ当たりしたのは言うまでもない。
「で、鈴鹿達は『模倣の使徒』のクエストに挑みたいからあたしか美刃さんに王宮に口添えをして欲しいと」
「後は王都の状況やら他の使徒の情報を集めに、だな」
『模倣の使徒』は26の使徒でもあるが、王族に仕え影武者として王族を守っている為にその所有権は王族にある。
その為、『模倣の使徒』にエンジェルクエストを挑むとなればエレガント王国からの許可が必要になってくるのだ。
それ故に冒険者ギルドのギルドマスターや有名クランの紹介などが無ければクエストに挑むことすら敵わない。
その理由の一つとしてクリア後に得られるCの使徒の証の特殊能力が関係していた。
Cの使徒の証の特殊能力は触れた相手の姿をコピーすると言うものだ。
戦闘面としては役に立たないが、諜報面ではこれほど便利な能力は無い。そしてそれは悪用もされやすいと言う事でもある。
その為に身元がはっきりした者で、王国に縁がある者か権力等を有している実力者の保証が必要になっている。
鈴鹿はその保証人にデュオになってほしいと言っているのだ。
「まぁ、なんだかんだ言いながらカイン殿下とは交流があるからね」
「大分気に入られているみたいじゃないか」
「最初の出会いがインパクトあり過ぎたのかしら?」
思えばプレミアム共和国の第二都市シクレットの陰謀に巻き込まれた孤児院の子供を救出する時に出会ったのがカイン王子にとってデュオの印象が強かったのだろう。
そう思ったデュオはこんな事ならもう少し慎重に救出を行うべきだったか?と当時を思いだしていた。
「話は分かったわ。上手くいくかどうかは別として口添えはしてあげるわ」
「頼んだぜ」
「お姉ちゃん、お願いね」
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
デュオは早速王宮へと向かった。
元々気分転換に外に出るつもりでもあったので、王宮へ向かうのはやぶさかではなかった。が、それがカイン王子に会うと言うのも些か壮大な気分転換ではあるが。
鈴鹿達は王都に住むもう1人の26の使徒である『XXXの使徒』の攻略へと向かって行った。
デュオは王都に住んではいるが『XXXの使徒』についてはそれほど詳しくは無い。
何故なら大多数の人が関わらない方がいいと言っているからだ。
特にシフィルは盗賊ギルドで情報を手に入れているせいか、絶対に行かない方がいいと言っていた。
デュオは特にエンジェルクエストを攻略している訳じゃないのでその言葉を素直に聞いて関わらないようにしていたのだ。
デュオは最早何度も足を運んで慣れてしまった王宮へ足を踏み入れる。
デュオは何時ものように門番をしている兵にカイン王子への面会を要望する。
暫く待っていると1人の騎士が現れた。
「デュオ殿、よく来た。早速カイン殿下の所へご案内しよう」
「ナイトハートさん、よろしくお願いします」
ナイトハートはカイン王子誘拐事件以来何度も足を運んだことで顔見知りになった水晶騎士団第三部隊所属の騎士だった。
「ナイトハートさんも大変ですね。幾ら持ち回りとは言え、騎士が門番もするのって」
「そうでもないさ。実際に門の外に立って番兵をするわけじゃない。私達騎士はエントランス内の守衛室で兵士たちを纏めているだけに過ぎないよ。
まぁ、騎士も城門守衛に当たるのは、兵士だけだといざと言う時対応できない時もあるからな。そう言った点から考えても騎士が居ても不思議じゃない。
それに来訪者はほぼ身分のある貴族だから礼節を以て対応するのは騎士が相応しい時もある」
「言われてみればそうですね」
「特に貴族派の騎士達はそう言った対応が優れている。まぁ貴族特有の傲慢さ故、中には腐った貴族派の騎士も居るがな」
そう言われてデュオが思い出すのは九尾事件の時に責任をデュオに負わせようとした貴族派の黒曜騎士団団長であったノブレージュ元伯爵だ。
貴族派のそう言った高貴な振る舞いは必要不可欠でもあるのだが、ノブレージュ元伯爵のような過激派は当然他の騎士団との軋轢を生んでいた。
「そして我々庶民派はデュオ殿のような冒険者や商人などの貴族派に卑しいと言われる者の相手をさせられるわけだ」
「でもだからこそあたしはナイトハートさんに出会えたってわけでもあるでしょう?」
「ははは、そうだな。今を時めくクラン『月下』のサブマスターにしてカルヴァンクル王太子やカイン殿下とのつながりのあるデュオ殿とこうして顔を覚えてもらえるのは幸運と言えるか」
今やデュオの王宮での立ち位置はかなりの高位の権力を有していることになっている。
実際王宮内で命令を出来るわけでは無いが、その繋がりや影響を鑑みればほぼ同じことだと言えよう。
そう言われてしまえばデュオも自分の王宮内での置かれた立場がかなりのものではないかと気が付いた。
尤も気が付いたところでデュオにとっては王宮の堅苦しいところより、冒険者として自由な暮らしを望むので今回のような事でもない限り権力を使う気は更々無かったりする。
「さて、着いたぞ。
カイン殿下、失礼します。デュオ殿をお連れしました」
会話をしているうちにカイン王子の部屋まで案内されたデュオは、ナイトハートと共に扉の前に立ち中から開けられるのを待つ。
部屋の中からカイン王子付きの侍女が扉を開け、中へ入るように促す。
その間、ナイトハートは扉の外で周囲を警戒し、デュオが中へ入るのを確認するとその場を辞して自分の持ち場へと戻っていった。
「デュオ殿、先日は世話になったな。デュオ殿のお蔭で我はこうして生きていられる」
部屋の中には机に座り、教師役のドック=イターナーから教えを受けているカイン王子の姿があった。
カイン王子は祝福の真実の目の能力を使いこなし始めた為、それに付随して王宮の仕事が増え始めていた。
その為、カイン王子の教育が徐々に遅れてきたため最近ではドックが付きっきりで教えを施していることが多くなっていたのだ。
そして部屋の壁際ではそんなカイン王子をおろおろしながら見守っている護衛役の近衛騎士・イーカナが控えている。
その反対側にデュオを部屋に招き入れた侍女と、見習いなのか子供と思える背丈の低い執事も同様に壁際で控えていた。
「いえ、殿下。あたし一人の力じゃないですよ。シフィルやフウリンジのお爺ちゃんやネコネコが協力してくれたからですよ」
「謙遜しなくても良い。シフィル殿に関してはデュオ殿の指示があったからだろうし、フウリンジ殿やネコネコ殿もデュオ殿が居たからこそ我の救出に協力してくれたのであろう。
彼の者達はいかせん我が強いと聞くからな」
デュオはカイン王子のその言葉に苦笑いで返した。
A級クランのトップや幹部クラスであれば確かに纏まりを持たせるのには一苦労せざるを得ないだろう。
デュオとしてもそのつもりはないのだが、デュオの存在が纏まりを生んでいると言われればそうなのだろう。自惚れているわけでは無いので返答に困ってしまうが。
「それで、今回わざわざデュオ殿の方から訪ねて来たのは『模倣の使徒』についてなのだとか?」
「はい。あたしの妹とその仲間がエンジェルクエスト攻略の為、『模倣の使徒』のクエストに挑戦したいと」
「ほう、デュオ殿の妹殿か。さぞかし強いんだろう」
「あたしに言わせればまだまだと言いたいところですが、エンジェルクエストを攻略し始めて約1か月半で19個もクリアしていれば少しばかり認めざるを得ませんね」
「ほう! 1か月半で19個とは!」
「あと1つクエストをクリアすればB級ですか。確かに開始時期を考えれば脅威ですね」
「凄いッス! 流石はデュオ殿の妹ッス!」
流石に1か月半でのその攻略数にカイン王子は感嘆の声を上げる。
それまで会話に口を挟まないでいたドックとイーカナもそれには驚いていた。
冒険者ランクの昇格は通常であれば冒険者ギルドが発行する試験をクリアして上がるものだ。
だが、通常の方法とは別に冒険者ランクが上がる方法がある。
それがエンジェルクエストだ。
エンジェルクエストの攻略数に応じて自動的に冒険者ランクが上がるのだ。
とは言え、普通であればエンジェルクエストの攻略にはそれなりに長い時間が必要となる。
通常で1年くらい、短くて7か月~8か月、長ければ2年~3年以上、それくらいかかるのだ。
それを約1か月半で8割方攻略しているともなれば驚くなと言う方が無理だろう。
「まぁ、尤もそれは妹の実力と言うより、仲間の実力があったからこそだと思いますけど」
確かにトリニティは強くなったとデュオは思う。
だが、それは鈴鹿やアイと共に行動をしていたからであり、エンジェルクエストの攻略速度はその2人によるものが大きいだろうと。
トリニティもここまで付いてこられたから決して実力は無いわけでは無い。それこそデュオの妹らしくそれなりに秘めた力があるのだろうが、鈴鹿とアイに比べれば見通りしてしまうのは否めない。
「いや、例え仲間とともにあったとしても1か月半でのそれだけの攻略は凄いと思うぞ。
それに付いて行けるだけの実力があったと言う事だろう」
「ありがとうございます、殿下。妹も殿下にそう言ってもらえると喜ぶでしょう」
「うむ。それほどの実力者とは・・・会うのが楽しみだな。
我はこの者たちの挑戦を受けようと思うが、許可の方は貰えるか? 身元もはっきりしているし保証人もこれ以上にないくらい借りがある」
そう言ってカイン王子は壁際に控えている少年の見習い執事へと声を掛けた。
「え?」
これにはデュオは目を疑った。
『模倣の使徒』の挑戦の決定権はカイン王子が持っているのだが、そのカイン王子が少年執事へどうだろうかと問いかけているのだ。
「そうだな。デュオ殿の妹の仲間・・・その2人の身元もはっきりしているのだろう?」
少年執事は先程まで鳴りを潜めていた態度を一変し、目を引くような堂々たる姿を晒していた。
よく見ればそれはカイン王子だった。
デュオは思わず机に座るカイン王子と壁際のカイン王子を見比べた。
「・・・あ、影武者」
そう、それこそ机に座るカイン王子こそ王族の影武者である『模倣の使徒』だったのだ。
デュオは見事それに引っかかったのだ。
カイン王子はデュオを騙せたのに満足し、鈴鹿達3人の『模倣の使徒』への挑戦を許可した。
「そうですね。妹の仲間は異世界から来た異世界人です。身元の方は女神アリスが保証しています」
「うむ。ならば問題は無い。訓練場の使用を許可しよう。明日の午前中に城へ来るように伝えておいてくれ。
我としてはその戦いぶりを見たいが、『模倣の使徒』のクエストは第三者には見ることが出来ないらしいからな。それに・・・」
「これ以上勉強をさぼると言うのなら容赦はしないですよ?」
そう言ってくるドックの表情は笑ってはいるが、目は笑ってはいない。
影武者を置いてデュオ(来訪者)の目を欺く事で身の安全を確保していたわけだが、それによって勉強の進行が停滞した訳だ。
必要不可欠な事だったが、そこにはカイン王子のデュオを驚かせる意味合いもあった為、ドックにはこれ以上はならぬとばかりにカイン王子に圧力を掛けまくっていた。
「・・・伝えておきます。え~と、それではあたしはお邪魔みたいなので失礼させていただきます」
「う、うむ」
デュオはカイン王子の少しばかり同情しながら部屋を後にした。
次回更新は4/24になります。




