40.その巫女神は何を望む
デュオは日課の午前中のクオへの再生水晶の魔力供給を終え、午後には王都の一角にある喫茶店のカフェテラスで優雅――もとい、気難しげな顔をして頼んだ紅茶を飲んでいた。
セントラル遺跡の調査を開始してまだ一日と経っていないのだが、調査は思うように行かずいきなり暗礁に乗り上げていたのだ。
目的地であったセントラル遺跡魔術師協会跡地の地下にある資料庫は、以前紫電が言っていたように強固な封印によりデュオはどうやっても開けることが出来なかった。
昨日調べた感じではあれは力ずくでどうにかなると言うものではないとデュオは肌で感じていた。
となれば、『奴ら』に関して調べるのに取れる方法は4つ。
1、謎のジジイから直接聞き出す。
2、紫電を探し出し資料庫を開けてもらう。
3、紫電が持っている封印の鍵とは別の鍵を探し出し資料庫を開ける。
4、資料庫とは別の世界の秘密の情報を探し出す。
1と2に関してはおそらく情報を制限されて聞き出すことや協力を断られるだろう。
3は別の封印の鍵が存在するのかすら怪しい。
残る4により別アプローチで世界の秘密を探るのだが、そもそも世界の秘密そのものが何であるか分からないためどの情報を捜していいのかすら良く分からず雲を掴むようなものなのだ。
尤もそう簡単に手に入れられないから世界の秘密なのだが。
「さて、どうしたものか・・・イマイチ信憑性が無いけど巫女神を当てにする・・・? そうなるとシフィルの情報待ちね」
より一層眉に皺を寄せながら紅茶を飲んでいると、思いもよらぬ人物から声が掛かった。
「あら、デュオじゃない。久しぶり」
「え・・・・? あ、フェルさん!」
そこに立っていたのは長い黒髪をサイドテールに纏めたミニスカの二刀流剣士の巫女・フェルだった。
デュオはフェルの巫女もどきの姿に少しばかり嫌なことを思い出す。
つい先日、クオの忠告を無視し偶然目に入った巫女姿――フェルを見かけたと思い追いかけて玉藻の前に遭遇したことを。
尤も、あの時巫女姿を追いかけなくても結果的には玉藻の前と遭遇したと思われるから、一概にもデュオが追いかけた所為ではないのだが、気持ち的には納得できるものではなかった。
とは言え、目の前のフェルにはそのことには一切責任は無く、デュオは表情に出さずに笑顔でフェルとの再会を歓迎した。
「フェルさん、お久しぶり。もう、フェルさんったらあの時直ぐに居なくなっちゃってちゃんとしたお礼も言えずにいたんだから」
「あはは、ごめんね。わたしも色々と忙しかったから」
「それで、また王都に来たってことは何か王都に用事があるんですか?」
「ちょっと、ね。噂を聞いたんだけど、今王都に巫女神フェンリルが降臨しているって」
「あ、フェルさんも巫女神が気になるんですか?」
「何の目的で地上に降りたんだかが気になってね。神の力を持ちし者が地上に降りるとなると余程の事かと思って。それにその強さもどれ位か見極めたいところね。
――もしかしたら何か奴らと関係あるかもしれないし」
後半部分は聞き取れなかったが、デュオはフェルほどの強者でもやはり神が降り立つと言う事は気になるんだろうと思いながら自分も巫女神の情報を集めていることを伝えた。
「ああ、あの時の盗賊の子ね。シフィルって言ったっけ。結構優秀そうな感じに見えたわね。
ふぅん・・・ねぇ、良かったらわたしにもその情報を分けてもらえないかしら。勿論情報料は払うわよ」
フェルは第三王子カインが誘拐されたとき、一緒に救出に向かったシフィルの事を思い出していた。
「勿論いいですよ。前回フェルさんにはいろいろ助けてもらったから情報料は入りませんよ」
「そんなに大したことをしていないんだけどね。それならお言葉に甘えさせてもらうわ」
フェルにとっては大したことではなかったのだろうが、デュオにとってはフェルの強さにいろいろ助けてもらったのだ。
これくらいでは返しきれない恩もある。
尤もカイン王子救出の影響で孤児院の子供たちはデュオよりもフェルを憧れることになったが。
「ところで・・・何か難しい顔をしていたけど何かあったのかしら?」
どうやら先ほどまでの眉を寄せていた思案気な顔を見られていたらしい。
クオの事は一部の人間にしか知られておらず、クオにまつわる話は玉藻の前も関係しており周囲に大っぴらに話せるようなものではない。
しかしフェルの強さはもしかしたらデュオの知らぬ秘密に辿り着いているのではないか。
そう思えばフェルに協力を仰ぐのも間違いではない。
付き合いは短いが、フェルの性格を考えれば進んで協力をしてくれるのかもしれない。
デュオは少し考えた末、クオへ繋がる細い一本の糸を手繰り寄せる為に可能性のあるフェルへ事情を話すことにした。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「うおぉぉぉ~~、久々の王都だ~~~~!!」
「あまりはしゃぐな。見っともない」
「いやいや、かれこれ半年ぶりじゃないか。ちょっと遠出するつもりが気が付けば半年って」
「まぁな。確かに少しの遠出のつもりが気が付けば隣の大陸まで行っていたんだからな。王都エレミアも懐かしく思う。
だが忘れるなよ。私たちが王都に戻ってきたのは依頼の為だと言う事を」
「ああ、分かっているよ」
久々の王都エレミアへ戻ってきて興奮しているジークフリードをブリュンヒルデは嗜める。
そして王都へ戻ってきたのは仕事だと言う事を忘れないように釘を刺しておく。
「ああ、ジーク達は王都は半年ぶりなんや。うちらはエンジェルクエストの為、イーストエンド大陸へ渡ったからそれほどでもないけど」
「・・・そうね。まだ2か月くらいかしら?」
その後ろで2人の様子を伺っていたユーリとアーヤは王都を離れていたのはそれほどでもなく、2人ほどの懐かしさは無い。
「へぇ~、ここがエレガント王国の首都エレミアかぁ~
流石にミレニアムより発展しているね。伊達に五大大国に数えられていないか」
この中で一際小柄な女性は王都エレミアは初めてだったらしく、周囲を興味深げに見渡していた。否、つぶさに観察をしていた。
「あれ? ラルナはエレガント王国は初めてだったのか?」
「あれ? 言わなかったっけ? あたしは生まれも育ちもミレニアムだからね。国を出るのも初めてだよ」
「そっか。まぁ、だからこそ俺達冒険者に依頼したって訳か」
ミレニアムはプレミアム共和国の首都であり、ラルナはそのミレニアムのサンフレア神殿に所属しているお抱え盗賊だ。
サンフレア神殿はある事件を追っており、ジークフリード達にはその解決の協力を求めて冒険者ギルドを通じて依頼をしていた。
ジークフリード達は元々ジークフリードとブリュンヒルデ、ユーリ=ヴァンキッシュとアーヤ=ナミレイの別々のパーティーを組んでいたのだが、およそ1ヶ月ほど前に隣の大陸・イーストエンド大陸に存在するジパン帝国での戦争にお互い参加したのを切っ掛けに知り合い、暫くの間パーティーを組むことにしたのだ。
その道中でプレミアム共和国の首都ミレニアムで冒険者ギルドを通じてサンフレア神殿から依頼を受け、王都エレミアへ戻ってくることになった。
サンフレア神殿の神器を奪った犯人を捕縛と神器の奪還して欲しい、と。
そして事件を追っていた1人――ラルナをサポートに付け王都エレミアへと戻ってきたのだ。
尤もサンフレア神殿では他国へ逃走した可能性は低いと思っており、この冒険者へのエレガント王国への神器奪還依頼は保険的な意味合いでしかなかった。
「しっかしこの依頼、保険的な意味合いとは言え幾らなんでも冒険者に任せるのって色々ヤバくね? 機密とかさ。
依頼が完了した途端、お役目御免とばかりに始末されるんじゃないのか?」
ジークフリードはそう言いながら首を斬る真似をする。
依頼の内容が内容だけに、サンフレア神殿では神器が奪われたことを公表はしていない。
それはサンフレア神殿の警備の甘さを露呈することになり、且つ今現在神器が神殿に神器が存在しないとは言えないからだ。
「う~ん、そこら辺は大丈夫かと思うんやけど。
少なくとも冒険者ギルドに依頼したと言う事は記録に残っているんやし、これでうちらが消されるようなことがあれば真っ先にサンフレア神殿が疑われるで」
「神殿と言えど裏表がないとは言えない。けどプレミアム共和国首都ミレニアムのサンフレア神殿本殿は清廉潔白な存在だと聞くわ。
裏で始末するような真似はしないはず」
ユーリとアーヤはサンフレア神殿の清らかさを知っている為、ジークフリードの不安要素を否定する。
そう言う裏での事が存在しないからこそのサンフレア神殿であり、正しき道を示す太陽神サンフレアを信仰する宗教でもあるのだ。
「清廉潔白、ねぇ・・・」
そう言いながらジークフリードはラルナを見る。
ラルナはサンフレア神殿のお抱えの盗賊だ。盗賊と名が付いているものの世間的には認められた職業であり、情報を扱い縄張りを管理する職業でもある。
だが、その為に盗みを働き法に手を染めることも暫しある。それ故盗賊は正しき存在とは言えず、どちらかと言えば悪寄りになる。
そんなお抱え盗賊が居るサンフレア神殿は果たして清廉潔白と言えようか。
ジークフリードはそう言っているのだ。
「蛇の道は蛇、盗賊に対抗できるのはまた盗賊と言う事だ。
サンフレア神殿にお抱えの盗賊は外敵に対抗するための手段でしかない。現に犯人の逃走経緯を調べ上げたのもラルナだからな。
我々が今すべきことは依頼を全うする事だ。もし我らを蔑ろにするならその時に対応すればいいだけだ」
ブリュンヒルデは今はそんな心配をしないでさっさと依頼を片付けろとばかりにジークフリードを嗜める。必要になったらその時に対抗すればいいと。
そしてもし自分たちを消し去るつもりならそれ相応の損害を覚悟しろと暗にラルナに示していた。
「あはは、やだな~。そんなつもりはないよ。こっちとしてはしっかり犯人を捕まえ、例の物を取り返してくれればいいんだし。
ああ、但し事件が解決した暁には守秘義務は課せられるけどね。流石に今回の事件の詳細を公にするわけにはいかないから」
「了解。後腐れが無ければ文句は無いよ。こちとら依頼を受けた身だ。しっかりと依頼者には従うよ。
さて、取り敢えずまぁ、情報を集めることから始めるか。
俺とヒルデは冒険者ギルドへ。ユーリはブルブレイヴ神殿へ。アーヤは所属しているクラン・・・えーと、『残酷な天使のベーゼ』だっけ? そこへ情報を貰いに。
ラルナはエレミアの盗賊ギルドへ」
ジークフリードはそれぞれ指示を出すが、アーヤがすっと手を上げる。
「元、ね。今は何処のクランにも所属していないわ。それに『残酷な天使のベーゼ』は使徒専門クランだから、どちらかと言うと子クランの『ブンター』の方がまだいいかも」
「ああ、じゃあそっちの方に当たってもらえるか?」
「了解」
「それじゃあ夕刻に『踊る舞姫亭』に集合。そこで一旦情報を整理しよう」
ジークフリードの合図とともに示された場所へそれぞれが向かう。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「凄いです! 流石は巫女神様! 地竜なんかあっという間でしたね!」
「あら、あたし1人の力じゃないわよ。前も言ったけど、今のあたしは神の力がある程度抑えれているからね。
地竜を倒したのは皆の力があってこそよ」
王都エレミアより西にあるエスメラルド山脈に複数の地竜が現れ、林業を営む商会やら鉱山を経営するブライト商会らに害を及ぼしていた。
地理的には第三衛星都市ナレミアや第四衛星都市ハレミアが近く、本来であればそちらからも各業者から冒険者ギルドへ依頼が舞い込んでいたのだが、諸事情により王都の冒険者ギルドに一括して依頼をすることになった。
一番の大きな理由はブライト商会の依頼料が大きく、エスメラルド鉱山を持つブライト商会はエスメラルド山脈の大部分の面積を保有している為だ。
それらの経緯があり王都の冒険者ギルドで依頼を発行し、そしてその依頼を受けたのがフェンリル達だ。
地竜は竜と名が付くが、翼が無く地を這う岩のような肌を持つトカゲと言える。
とは言え、伊達に竜を名乗ってはおらず、その機動性や防御力によりB級下位の魔物とされている。
大きさにもよるが、複数の地竜討伐には通常ならB級以上の冒険者数人が必要とされる。
フェンリル達のパーティーはフェンリルを筆頭に剣と魔法を扱う魔導戦士と棍を武器とする武闘士である武棍闘士の接近戦2人にマジックアイテムの戦闘特化である魔動機を扱う魔動機術師の女性、後は最近パーティーに加入した弓道士の少女とフェンリルを崇拝する細剣等を扱う盗剣士のイークフィだ。
冒険者ランクは判定不可能のフェンリルを除き、新人の2人はC級で残りの3人はB級となっている。
些か地竜を倒すのには実力も人数も足りないのだが、殆んどがフェンリルだけで地竜を倒してしまっていたのだ。
それをイークフィが自分のことのように大はしゃぎしていた。
「イークフィもあまりはしゃがないの。帰ってギルドに報告するまでが冒険者の仕事なんだから」
「はぁーい」
フェンリルが周囲を警戒し、残りのメンバーで地竜の剥ぎ取りを行う。
特に戦闘では役に立っていなかった弓道士の少女――トーコとイークフィは積極的に剥ぎ取りし金になる素材を集める。
「フェンリル様は凄いね。硬い地竜なんかもろともしないんだもの」
「そうよ! 巫女神様は凄いのよ! トーコちゃん、分かってるじゃない」
年齢も近く、最近パーティーに加入したと言う事でイークフィはトーコと仲良くなっていた。
イークフィは積極的にトーコに話しかけ、トーコもあまりのフェンリルの崇拝に弱冠引きながらもイークフィと会話をする。
「おい、喋るのは構わないがちゃんと手も動かせよ」
「良いじゃないの。女の子がいると華があって賑やかでさ」
「おい、それは私が女じゃないとでも言うのか? あ゛?」
魔導戦士のガイストが2人を嗜めれば、武根闘士のレーヴェが賑やかな方が楽しいと言う。
そんなレーヴェに魔動機術師のアマンダが女扱いされていない事に怒りをぶつける。
「はいはい、はしゃぐのは王都に戻ってからにしなさい。ちゃっちゃと剥ぎ取りして仕事を終えらせるわよ」
イークフィとトーコのはしゃぎに加え、3人も騒ぎ出したのでフェンリルは注意をしさっさと王都へ戻ろうと催促をする。
「何で俺まで怒られるんだよ・・・」
ただ自分は注意をしただけなのにと、ガイストは不満をぶつぶつ呟きながらも手早く剥ぎ取りをし、剥ぎ取った素材を闇属性魔法のシャドウゲージで影の中へ収納する。
残りの4人もそれに習い、さっさと剥ぎ取りを済ませ帰る準備を行う。
「そう言えばイークフィの相方のフェッツは良かったの?」
帰路の途中、フェンリルは思い出したかのようにイークフィのパートナーの事を尋ねた。
昨日、フェンリルに話しかけてきた2人のうち1人――イークフィはフェンリルを巫女神様と崇拝し、もう1人のフェッツはフェンリルが胡散臭いと戦いを挑んだ。
結果としてフェッツは敗れフェンリルが本物である信憑性が増したのだが、まだ納得しないのか、それとも負けた悔しさなのかフェッツはフェンリルのパーティーへとは加入しなかった。
イークフィは憧れのフェンリルに話しかけるだけで嬉しかったのだが、パーティーに誘われ加入をした。
勿論、フェッツも誘ったのだが、上記の理由で加入を断りイークフィと袂を別れた。
「いいんですよ、あんな奴。巫女神様の素晴らしさが分からないなんてこっちから願い下げですよ」
「あらら、貴女たち恋人同士とかじゃないの?」
「はぁぁ!? やめてくださいよ、巫女神様。あいつはただの冒険者のパートナーでそれ以上でもそれ以下でもないですよ。
まぁ、別れた今はパートナーでもなんでもないですけどね!」
「あらそうなの。彼、結構強かったから仲間になってくれれば随分と助かったんだけどね」
「何を言っているんですか、巫女神様。あの程度の奴は掃いて捨てるくらいいますよ!」
つい昨日までパーティーを組んでいたにも関わらずこの言いよう。
流石に酷いと思い、トーコは口を挟んでくる。
「もう、イークフィちゃん、言い過ぎよ。今までフェッツさんと一緒にパーティーを組んでいたんでしょ?
それまではお互い助け合ってきたんだし、蔑ろにするのは良くないよ」
「そうだぞ。冒険者は横の繋がりも大事だ。あまりそうやって人を貶しているといつか自分に返ってくるぞ」
実体験でもあるのか、ガイストの言葉には少しばかり重みがあった。
その雰囲気を感じたイークフィは流石に言い過ぎたと思ったのか、しおらしくなり反省した。
「う・・・少し言い過ぎました。帰ったらフェッツと少し話してみます。
そうですね、巫女神様の素晴らしさを教え共に戦うようにと!」
さっきまでのしおらしい態度は一変、話している途中からかつてのパートナーをフェンリルパーティーに引き込もうと燃え上がるイークフィ。
「おい、コイツなにも分かってないぞ」
「あはは、それがこの子の良いところなのかもね」
「私たち・・・フェンリルに迷惑を掛けなければ何でもいいよ」
燃え上がるイークフィを見ながら呆れる3人。
「イークフィも程々にね」
フェンリルも無駄だとは分かってはいたが、一応やんわりと抑えるように言う。
道中、色々な事を話しながらパーティーの絆を深めつつフェンリル達は王都へ帰還する。
冒険者ギルドの報告を終えてから無事依頼を達成した宴会を開き、フェンリル達は互いに労をねぎらう。
因みに、一番最初に酔いつぶれたのはフェンリルの前ではテンションが高すぎるイークフィだったりする。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
暗闇の一室で、複数の男女が言葉を交わしていた。
「例の件はどうだった?」
「途中邪魔が入ったが、問題なく侵入できた。
だがお前が予想していた通り、神殿にあるものは偽物だった」
「やはりね・・・ならば予定通り次のプランへと移行する」
「ま、その為に名を売っていたようなものだしね」
「羊も用意したし次のプランに移行するには問題ないだろう」
「纏わりついている野良猫はどうする? こいつも羊にするか?」
「そうね・・・野良猫の信仰心を上手く誘導すれば美味い羊になるでしょう。
一時でも追跡を逃れられればあたしらにはそれで十分だからね」
「野良猫の番はどうだ?」
「話を聞く限りじゃ問題は無いな。あの後追跡もしたが繋がりは切れているとみて間違いないかと」
「それよりターゲットはどうする? 候補としては第三王子が妥当なのだが」
「第三王子か・・・奴の祝福は厄介だな」
「何、問題ないでしょう。常に祝福を展開しているわけでは無いらしいからね。
それに誤魔化す手は幾らでもあるわ。祝福に頼っているうちはあたしらを見抜けないよ」
次回更新は2/26になります。




