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DUO  作者: 一狼
第6章 奴隷勇者
30/81

29.その護衛を務めるのは名も無き勇者

デュオ、トリニティより救援要請を受ける。

デュオ、サーズライ村に向かう。

デュオ、『災厄の使徒』の分身、漆黒竜を倒す。


                       ・・・now loading


「ただいま~」


「マー! おかえりなさい!」


 デュオがクランホームに戻ってくると、弾丸のように飛び出したクオがデュオへと抱き付く。


 『災厄の使徒』を倒しその残務処理にあたっていたデュオは一段落がついたので、後の事は王国軍に任せて10日ぶりにクランホームへと戻ったのだ。


「ただいま、クオ。いい子にしてた?」


「うん! クオいいこにしてたよ!」


「そう、クオがいい子でマーも嬉しいわ」


 そう言いながらデュオは抱き付いているクオの頭を優しくなでる。


「やっと戻って来たか。こっちは色々と仕事がたまっているよ。明日からキッチリ働いてもらうから」


 こう、ぶっきら棒な口調ではあるが、クラン『月下』のNo3のピノもデュオの帰還を喜んでくれていた。

 100年前の大災害規模の『災厄の使徒』との戦闘だったのだ。その身の心配をしてなかったわけでは無い。


「あはは、分かっているわよ。でも今日くらいは休んでもいいでしょう?」


「それくらいは。

 それで、向こうでの引継ぎは大丈夫なのか? これ以上『災厄の使徒』の後始末が来ると対処しきれないぞ」


「まぁ、それは大丈夫だと思うよ。これ以上は王国軍の仕事だからね。あたしのところに来るのは精々聞き取り調査くらいでしょ」


 『災厄の使徒』の討伐が終わった後も、デュオは『災厄の使徒』の従えていた魔物の残党処理、サーズライ村の復興支援、『災厄の使徒』の分身(わけみ)の調査等を討伐軍と合同で行っていた。


 魔物の残党処理は他の冒険者の協力の元ほぼ1日で片付いており、様子見の1日を経て3日目には既に解散して殆んどの冒険者は王都に戻っていた。

 デュオと一緒に先行していた美刃、ウィル、ジャドもこの時一緒に戻っている。


 デュオは直接『災厄の使徒』の分身(わけみ)である邪竜(イビルドラゴン)を倒している為、『災厄の使徒』やその分身(わけみ)に関する調査の協力を依頼されていたのだ。


 討伐軍も部隊再編をして残党処理、調査、サーズライ村の復興等を行っていた。

 特に『災厄の使徒』の調査については今後も継続して行う必要があるので、イートス草原の南にある、セルタルト丘に構えたガルデナ砦を拠点として引き続き分身(わけみ)やこれまでの『災厄の使徒』の調査を行う事になった。


 特に今回『災厄の使徒』が倒されたので、次に生まれてくる『災厄の使徒』の探索調査にはより重点を置かれることになる。

 討伐軍の総司令だったカルヴァンクル王太子が引き続き『災厄の使徒』の調査に乗り出していたのでそれだけエレガント王国の本気が伺えた。


 尤も当の総司令本人は「分身(わけみ)が居ればとてもじゃないが安心できん。これ以上僕の生活を邪魔させてなるものか」と言った理由で動いているのだが、当然王国民たちは王族の使命を全うしていると評価を上げていたりする。


 こうして一通りの調査・報告を終えたデュオは、これ以上は王国軍の領分として冒険者が介入すべきではないとお役目御免とばかりに王都へと戻ってきたのだ。




◇ ◆ ◇ ◆ ◇



「早速だが、デュオに直接依頼が来ている」


 翌日、唐突にピノが仕事の割り振りをしてきた。

 確かに昨日1日は休んでもいいと言われたが、デュオは本当に1日しか休みが貰えないとは思わなかった。

 あれだけの戦闘があったのだ。もう暫くは休めるだろうと思っていたデュオはピノの言葉に苦い顔をしていた。


「何? その顔? 約束通り昨日1日は休んだでしょう。さ、仕事仕事」


「それはそうだけど・・・はぁ、何もそこまで仕事の鬼にならなくても」


「こればかりは仕方がない。依頼主はデュオが戻ってくるのを待っていたから、本当なら昨日の時点で依頼をしたかったはず。

 それを無理を言って1日待ってもらったんだ。だからさっさと行くの」


 そこまで言われて流石にデュオもその依頼主が誰かなのが気になった。


「ブライト商会よ。あたし達のお得意様の」


 スレイ・ブライト。ブライト商会の会長でデュオが駆け出しの頃から色々便宜を図ってもらっている商会だ。

 無論、ブライト商会もデュオ達クラン『月下』に護衛やら特殊素材の調達などの依頼をし、持ちつ持たれつの関係ではある。


 王都から西へ向かったところにあるエスメラルド鉱山はアイアンやスチール、シルバーやゴールド、そしてミスリルなどが取れる大鉱山であり、ブライト商会はその大鉱山を所有する商会でもあるのだ。

 ブライト商会は他の事業にも手を出しているが、ブライト商会と言えば鉱山商会と言われるほどの資産を持っているのだ。


 デュオや美刃が駆け出しの頃はよくブライト商会から鉱山の魔物退治やら採掘の手伝いなどでお世話になっていたりする。

 そのお蔭で今でもスレイ会長との付き合いがあり、こうして直接依頼を受けたりするのだ。


「スレイ会長か~ それは蔑ろにできないわね。1日待ってもらっただけでもありがたいか」


 こればかりは仕方がないと、デュオはたった1日の休日で諦めて仕事に向かう事にした。


「依頼内容は獣人王国で商品の仕入れに向かう馬車の護衛よ」


「うーん、じゃああたしの他にはウィルとスティードと・・・ミュウミュウを連れて行こうかしら」


「スティードを・・・? 大丈夫なの、それ」


 ブライト商会の商業柄、以前スティードは持ち前の正義でトラブルを起こしている。

 ピノはそれを心配していたのだが、デュオは大丈夫だと言う。


「ま、前と同じ失敗はやらかさないでしょう。少なくとも以前よりはスティードの正義の視野も広がっているし。

 それに彼の祝福(ギフト)絶対幸運(クリティカルラック)は意外と役に立つのよ」


「まぁ、確かにスティードが居れば大きな失敗は無いだろうね。但しその反面、どんな迷惑が掛かるかは知らないけど」


「そこはスティードの成長を期待しましょう。さて、早速準備に取り掛からないとね」


 デュオとピノは護衛依頼の為、他のメンバーへの声掛けや準備を行う。

 そして出発の際には、恒例(?)となりつつあるクオの駄々を捏ねる姿があったりするが。

 無論、危険な目に遭わせたくないデュオは大人しくクランホームで待っているように宥めるのだが、前回の『災厄の使徒』に引き続きともなると宥めるのに一苦労をする羽目になる。




◇ ◆ ◇ ◆ ◇



 約束の時間の正午に北門にデュオたちが向かうと、そこには10人乗りの2連結の馬車が停まっていた。

 馬車の前には小太りの男が如何にも秘書と言った格好をした女性と話をしていた。


 デュオたちに気が付いた小太りの男は喜びの笑みを浮かべながら挨拶をしてきた。


「やぁ、デュオさん。この度は護衛の依頼を受けて下さってありがとうございます」


「いえいえ、スレイ会長には駆け出しの頃からお世話になってますからね」


 話しかけてきた小太りの男はブライト商会の会長のスレイ・ブライトだった。

 そしてその隣に立つのは秘書のアイヒ・ショパンでスレイ会長の右腕とも呼ばれる女性だ。


「それで、折角護衛の依頼を受けてもらったんですが・・・ちょっとトラブルがおきまして・・・」


 先ほどまでのにこやかな笑顔から一転、スレイは少々困った顔をしていた。


 そこへ新たな人物が現れた。

 いや、初めからブライト商会の馬車と一緒に並んで立っていたのだが、デュオたちとスレイとの会話に割り込んできたのだ。


「初めまして。君がA級クラン『月下』のサブマスター・『鮮血の魔女』デュオだね。

 噂通り可愛らしい女性だ。

 僕はフェルト・グランガッシュ。今回のブライト商会の護衛依頼を受けた者だよ」


 デュオはA級冒険者となってから綺麗、カッコいい、美しいなどと言われることが多くなったが、可愛いと言われたのは初めてだった。

 それ故デュオは顔に朱が差しながらも、フォルトが言った護衛依頼と言う言葉に驚きながらスレイの方を見た。


 スレイはデュオに目を向けられながら少々バツが悪い顔をして事情を説明する。


「デュオさん、申し訳ありません。本来であれば貴方方に護衛依頼をしていたんですが、デュオさんが『災厄の使徒』の討伐により王都を離れていたので私としては戻ってくるのを待っていたわけです。

 ですが、獣人王国での市場の期間の心配もあり、アイヒが別口で護衛依頼をしてしまったのですよ」



 スレイの説明を受けてデュオは今のこの状況を大まかに理解した。

 デュオがいつ戻ってくるか分からないのでアイヒが気を利かせて他の冒険者に依頼をしたのだが、『月下』の方にキャンセルを届け出る前に予想に反してデュオが思っていたよりも早く戻ってきてしまいブッキングをしてしまったのだと言う事に。


「申し訳ございません、デュオ様。本来であれば正式なキャンセル手続きをした上で、別の護衛依頼をするべきでしたのに」


 アイヒは申し訳なかったと深々と頭を下げる。


「アイヒさんはスレイ会長を思っての行動でしたのでしょう? だったらあたしがどうこう言う必要はないわよ。

 まぁ、確かにちゃんとした手続きをしないで慌ててたのはアイヒさんのミスですけど」


「さて、それで護衛依頼はどうします?

 僕としては大商会であるブライト商会の依頼を受けたいんですけど」


「私としてはこれまでの付き合いもあるのでデュオさん達にお願いしたいんですが・・・

 アイヒが私の為を思ってしてくれたことを蔑ろにするのも少々可哀相な気がして」


 フォルトはこの機会にブライト商会と縁を結びたいが為護衛依頼を受けたいと申し出て、スレイとしてはこれまでの付き合いによりデュオたちにお願いしたいのだが、アイヒの気持ちも無下には出来ないと言ってくる。


 まぁ、会長であるスレイに最終決定権があるためキッチリ判断を下しどちらかに護衛を依頼すれば解決する。

 スレイの気持ちが向いていると言う事で、今回はデュオたちが護衛を受けるのが筋なのであろう。

 だが、何故かスレイはその判断をデュオにさせようとしていた。


「スレイ会長には申し訳ないですが、アイヒさんの気持ちを組んでください。元々あたしの予定が不安定な事もあったせいですしね。

 それにいつもあたし達ばかりだけではなく、他の冒険者との縁を結ぶのも悪くは無いですよ」


 デュオがそう言うとアイヒはホッとした表情をし、スレイは申し訳なさそうな顔をして「デュオさんがそう言うなら分かりました」と決断を下しフェルトに護衛を依頼しようとした。


 だがそこで待ったをかける人物が居た。


 フェルトだ。


「待ってください。本来であればこの依頼はデュオのものです。なのでデュオが良ければですが、合同で護衛をしていきたいのですが、どうでしょうか?」


 フェルトの思わぬ提案にデュオはスレイの方を見る。

 確かにスレイ側としてはA級クランの『月下』と、最近台頭を表して来たB級冒険者のフェルトとその仲間たちの2組の護衛ともなれば心強いのはこの上ない。


 だが、依頼料としてみれば倍以上の出費になってしまう。

 デュオたちはA級クランだが、これまでの付き合いもあるため依頼料はかなり低めにしてもらっている。

 低いと言っても相場と比べればだ。護衛の依頼料は決して安いものではない。

 それがもう1組分ともなれば尚更だ。


 そのことを心配したデュオはスレイを見たのだが、提案した当の本人はそんなことは承知の上だったのでもう1つの提案をしてきた。


「心配されている依頼料に関しては当初デュオたちに払う額の半分でいいですよ。無論、デュオたちが了解してくれればですが」


 これにはデュオも驚いた。

 依頼料が半分になると言う事はほぼも何も儲けが無いに等しいからだ。

 自分たちはこれまでの縁があるから今回のように半額までとはいかないがかなり安めで依頼を受けたことがある。

 だがフェルトたちはスレイと縁を結ぶにしても依頼料が安すぎるのだ。


「確かにスレイ会長をこの機会に縁を結ぶという目論みもありますが、一番の理由はデュオ、貴女ですよ。

 僕は貴女に一目ぼれをしました。是非一緒に仕事をしたいのです」


 それを聞いたデュオは顔を真っ赤にして思わず距離を取ってしまった。


「なななななな! 何を言っているのよ、貴方は!」


「僕が貴女を好きになってしまった、と言っているのです」


「そそそそそ! そんなことを聞いているんじゃないわよ!」


 今まで冗談交じりで好きだと言われたことはあるが、面と向かって真摯に告白をされたのは初めてで、そう言った経験のないデュオは挙動不審になりながら顔を真っ赤にさせていた。


 そんな2人を見ていたスレイとアイヒは良縁を見つけたとばかりに思わずニンマリし、2人の仲を取り持つことに決めていた。


「そうかそうか、フェルト君はデュオさんを好きになってしまったか。なるほどなるほど、それなら一緒に仕事をして中を深めたいよな」


「ええ、それなら依頼料が半分で言いと言うのも頷けます。いいえ、寧ろお互いが一緒に仕事をして依頼料を半分に分けると言うのは恋人や家族みたいじゃないですか」


「スレイ会長、アイヒさん、ありがとうございます。この機会を逃せば次にデュオと一緒に仕事をするのはいつになるやら・・・

 これほど可愛い女性を他の男性は放っておかないでしょう。なので是非とも一緒に護衛依頼を受けたいのです」


 スレイとアイヒも包囲網に加わってデュオは更に慌てふためく。


 A級冒険者であり二つ名を持ち、A級クランのサブマスターと地位も確立して、容姿も決して悪い方ではない。

 寧ろ女性としての身だしなみを整えれば美少女と言っても過言ではない。

 (生来の性格と冒険者気質が故におしゃれと言うのにはざっくばらん過ぎたのだ。)


 それにも拘らず、年頃の娘なのに浮いた話が1つも無いのだ。

 最近では子供が出来たと言う噂も出ているが、好いた惚れたの話は皆無と言ってもいい。


 それ故、昔からデュオを知っているスレイは親・・・ではないが、親心としてこの機会にと、デュオに色恋をさせてみたかったのだ。

 無論、相手のフェルトが優良物件であるのは言うまでもない。


 B級冒険者として名を上げてきて仕事の内容も決して悪い物ではない上、二つ名まで付いているのだ。


「ちょちょちょちょっ、ちょっと待ってよ! あたしを好きなのと護衛をするのとは別の話でしょう!

 第一依頼料の半額なんてあたしが良くても仲間が納得しないわよ」


「いえいえ、もしウィル君たちが渋るようでしたら『月下』には正式な依頼料を出します。

 フェルト君には申し訳ないですが依頼料の半額と言う事で宜しいでしょう。恋には障害が付きものですからね」


「ちょっと! スレイ会長!?」


 思わぬフェルトへの援護射撃にデュオは抗議の声を上げるも、当然それは却下される。

 せめてもの一縷の望みを賭けて今回の護衛を受けないでくれることの願い、デュオはウィルたちに依頼状況を説明した。


「へぇ~~~~~~、デュオさんに一目ぼれ、ねぇ・・・・随分と面白そ・・・もとい面倒な状況になってますね」


「見た感じ、フェルトはイケメンにゃ。紳士的な態度だしこのまま付き合ってみるのもいいんじゃないのかにゃ?」


 端から相談する相手が間違っていたのか、スティードとミュウミュウは降って湧いたデュオの恋バナに興味津々だった。

 そしてその恋バナを聞かされたウィルなのだが、当然面白くなさそうにしかめっ面をしている。


「俺は反対だな。スレイ会長がわざわざ俺達の方がいいと言っているのに何で依頼料を半額にしてまで合同で受けなければならないんだ?

 デメリットだらけでメリットが一つもないじゃないか」


「スレイ会長はあたし達には通常通りの依頼料でいいって言ってくれているけど・・・

 後、メリットとしては他の冒険者との交流が深められる・・・って事になるけど・・・」


 流石に体裁が悪いと思っているのか、最後の方はデュオも口が窄んでぼそぼそと小声になっていた。


「何の交流を深めるつもりだよ・・・」


「何のって、冒険者としての交流に決まっているじゃない・・・」


「はぁ~、勝手にしろ。決定権はサブマスターのデュオにあるからな。俺がどうこう言ったところでどうしようもないさ」


 ウィルの目には明らかに冒険者以上としての交流を深めるつもりでいるのが見て取れるのだが、これ以上は何も言わずに勝手にしろと言わんばかりに離れていく。


 デュオとしてはそんなつもりはないのだが、やはり傍から見ればそんな風に見えるのだろう。

 惚れた腫れた云々は別にして、デュオはこの依頼を受けるつもりではいたのだ。

 ブライト商会の商品の仕入れには少なからずデュオの『鮮血の魔女』の二つ名が必要になってくるのだ。

 スレイはデュオに気を遣わせない様に敢えてそのことは言わないが、デュオとしては折角護衛に間に合ったのにブライト商会に損をさせる訳にはいかなかったのだ。


「ごめんね、ウィル。この後の埋め合わせは後でするから」


 ウィルに一言謝罪を入れて、スレイにフェルトのパーティーと合同で護衛を受けることを了承した。

 依頼料は流石に通常通りとは言えなかったので、7割を依頼料として貰う事にした。




◇ ◆ ◇ ◆ ◇



 獣人王国へ向かう道すがら、デュオたちとフェルトたちでお互い自己紹介をする。

 フェルトたちはデュオたちと同じ4人パーティーで、前衛後衛のバランスが取れていた。

 内訳は刀戦士(ブレイドファイター)重戦士(ウォーリア)盗賊(シーフ)僧侶(プリースト)となっている。


 フェルトは刀を使う刀戦士(ブレイドファイター)で、身動きのとりやすい竜鱗を使った胸当てや籠手、脛当てを、左腕には籠手と一体型の円盾(バックラー)を装備していた。


 重戦士(ウォーリア)のジェイクは全身をルナメタル鋼の鎧で覆われており、背中にマウントしてある大盾がパーティーの壁役(タンカー)であることを示している。


 紅一点のアリッサは俊敏な動きで遊撃を担う盗賊(シーフ)だ。

 どちらかと言うと戦闘よりは、情報収集や消耗品・金銭の管理とパーティーの活動を統括しているとの事だ。


 このパーティーで唯一の魔法職であるペンテルはAlice神教の司祭でもあり僧侶(プリースト)として参戦していた。

 Alice神教の神官が何故冒険者として活動しているのかまでは教えてくれなかったが、フェルトたちとの仲間としての絆は強固なものと見て取れた。


「フェルト君はこう見えて『勇者』の二つ名を持っているんですよ」


 スレイはデュオとフェルトをくっ付けようと色々と好感度が上がるような情報を提供してくる。

 最早親戚の叔父さん叔母さん化したスレイとアイヒに「早くくっ付いちゃいな攻撃」に少々うんざりしながらもスレイのもたらした情報に耳を傾ける。


「へぇ~、凄い二つ名ね。『勇者』って」


 デュオはただ単純に『勇者』の名に関心をしていた。だが、それ故に疑問も残る。


「でもフェルトさんの名前はあまり聞いた事が無いですね。『勇者』って言ったらそれなりに広まっててもおかしくないはずですが」


 スティードの言ったように『勇者』と言う割にはフェルトの名がそれほど有名ではないのだ。

 最近でこそB級冒険者として名を上げてきているらしいが、それまで無名なのがおかしいのだ。

 ただ単純に逆で、『勇者』の二つ名が付いたからこそ名を上げてきたのかもしれないが。


「ははは、持ち上げてくれるのは嬉しいですけど『勇者』って言われても限定的な者に過ぎませんからね。

 僕には過ぎた二つ名ですよ」


 どうやら『勇者』と言っても限定的な二つ名らしい。

 まぁ、それならとデュオは納得はしたが、少々何処か気になってしまう。


「それにしてもたった4人で商売しに行くのに10人乗りの馬車2台ってちょっと無駄過ぎないか?」


 そう言うのはフルアーマー状態のジェイクだ。

 2台の馬車の1台目にはスレイとデュオ、スティード、フェルト、ジェイク、そして御者の6人が乗っており、2台目にはアイヒとウィル、ミュウミュウ、アリッサ、ペンテル、御者の6人。

 護衛であるデュオたちとフェルトたちを除けばブライト商会からは4人しか来ていないのだ。

 それなのに馬車は10人乗り2台とスペースが余り過ぎてどう見ても無駄な経費でしかないように見えた。


「あれ? えーと、フェルトたちはスレイ会長が・・・と言うより、ブライト商会の扱う商品・・・って言い方はちょっと失礼なんだけど、それが何だか知ってて護衛の依頼を受けたんじゃないの?」


「どうも僕たちは田舎者らしく王都の事情に疎いらしいんだ。ブライト商会が大商会だと言うのは知ってはいるが、その業種まではちょっと、ね」


「この仕事を取ってきたのもアリッサだしな。俺達は護衛以外の説明を受けていないんだ」


 それでいいのか、と思いながらもデュオは隠すことでもないので説明をする。


「馬車がガラガラなのは帰りには満員になる予定だからワザと大きめの馬車にしているのよ」


 そしてデュオの説明を引継ぐ形でスレイが自分の商会で取り扱う商品を何なのかを話す。


「良いのか悪いのか・・・本来の業務より鉱山業としてのブライト商会の名が大きいみたいですね。まぁ、こればかりは仕方ありませんね。こちらの利益の方が大きいのですから。

 さて、何故大きめの馬車なのか、ですが・・・余り大っぴらに人様に言えるような事ではありませんが、これから仕入れる商品が奴隷だからですよ」







次回更新は10/24になります。

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