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DUO  作者: 一狼
第3章 遺跡探索
15/81

14.その依頼の主は第三王子

第三王子&孤児院の子供、誘拐される。

デュオ、子供たちの捜索で黒髪巫女フェルの助力を得る。

デュオ&フェル&近衛騎士(近衛影士含む)、子供たちの救出に向かう。

デュオ、子供たちを誘拐した主犯と暗殺者と対峙する。

フェル、呪死人と化した暗殺者を倒す。

デュオ、第三王子に気に入られる。


                       ・・・now loading


 王都エレミアの南に広がるザウスの森。

 その広大な面積を持つ森には様々な動物や魔物が存在する。

 王都近辺の浅部ではそれほどでもないが、深部にもなるとそれなりに強力な魔物が存在する。


 そのザウスの森の深部の一角で赤の女魔導師(ウィザード)と赤い熊が対峙していた。

 赤い女魔導師(ウィザード)は言わずと知れた鮮血の魔女デュオだ。

 彼女は悠然と赤い杖を構え、凶悪な魔物を目の前にしても恐れもせずに呪文を唱える。


 それに対する魔物はスライサーベアと呼ばれ、その両手の長い爪で獲物を斬り裂くB級の魔物だ。

 名前の通り斬ることに特化した爪には生半可な防御は通用せず、己の縄張りに入った侵入者を容赦なく斬り裂く。


「グルル・・・グルァァァ!」


 スライサーベアは威嚇しながらデュオに向かってその自慢の爪を振り下す。

 だがその爪はデュオの目の前に現れた光の盾によって防がれた。


「マテリアルシールド」


 無属性魔法の光の盾を展開する魔法だ。

 この光の盾はどんな物理攻撃でも3秒間ほど防ぐことが可能だが、その強力な分だけ再使用時間(リキャストタイム)が30分と長いのが特徴だ。

 その為、大抵の使用者はこの防御魔法を切り札の1つとして数えている。


 だがデュオは光の盾を惜しげもなくスライサーベアの前に展開して攻撃を防いだ。


「グルアアアアア!」


 スライサーベアはそれでもお構いなしに光の盾に向かって攻撃を続ける。

 そして光の盾が消え、遂にはその爪がデュオへと襲い掛かった。


「グルゥ!?」


 しかしスライサーベアの爪は何故かデュオを素通りして地面へと突き刺さる。


「サンダーブラスト」


 突如スライサーベアの横に出現したデュオから雷属性魔法の雷の奔流が放たれた。

 デュオは光の盾を展開した隙に光属性魔法の幻影――ルクスミラージュを唱え自分の幻を映し出したのだ。

 幻を囮にしてデュオはスライサーベアの隙を狙ったのだ。


 容赦なく襲った雷はスライサーベアを打ち付けるも流石はB級の魔物と言うべきか、その命を奪うまでには至らなかった。

 スライサーベアは雷のダメージが抜けぬまま、己の爪を振り抜きデュオを切り刻む。


 デュオは杖を盾にしてバックステップをしながらスライサーベアの攻撃を躱す。

 先に述べたとおりスライサーベアの爪は生半可な防御は通じないが、デュオの持っている赤い杖はルナメタル鋼と火竜(ファイヤードラゴン)の爪と牙を材料にして作られた、静寂な炎を宿す火竜王(フレアサイレント)と呼ばれる最高峰の杖だ。

 しかもルナメタル鋼の材料に使われる魔力石は、滅多に取れることのない火竜の心臓から生み出される魔血石でもある。


「グァ!?」


 スライサーベアは己の爪が防がれたのが信じられずに思わずその動きが止まる。

 勿論その隙をデュオは逃さずにとどめの一撃を放つ。


「アイシクルランス・プラズマダスト」


 氷属性魔法の氷の槍に荷電粒子を纏わせた一撃が見事心臓を貫きスライサーベアはその場に崩れ落ちた。


「ふぅ、取り敢えずは脅威は排除できたわね」


 デュオはスライサーベアの剥ぎ取りをし、巣の捜索を行う。

 剥ぎ取りと言ってもスライサーベアの爪をはぎ取るだけで、毛皮などの他の素材は今回は放置である。


 巣の周りを丹念に捜索し、デュオは目的の物を見つけた。

 それは木のうろにたっぷりと溜めこまれた蜜だ。


 スライサーベアは別名・熊蜜熊と呼ばれ、特徴である長い爪を使って爪先からミツバチの様に蜜を吸い集める習性があるのだ。

 その集められた蜜は熊蜜と呼ばれ、蜂蜜よりも濃厚で味わいがあり、尚且つ高濃度の魔力を含み食材としても魔法薬としても貴重価値が高いアイテムだ。

 しかも集団のミツバチとは違い、個で蜜を集める為その量は少量となりかなりの高値で取引されている。


 デュオは貴族から受けた直接指名の依頼でこの熊蜜の収集に来たのだ。

 今回のこのスライサーベアは思ったよりも熊蜜を溜めこんでいたので大瓶で3本ほども収集することが出来た。

 これならば依頼をしてきた貴族も満足するであろうとデュオはアイテムを詰め込んだバックを背負い、レンタルした走竜(ドラグルー)に跨って王都へと帰還した。




◇ ◆ ◇ ◆ ◇



「まぁまぁデュオちゃんありがとう~。これで甘ーいホットケーキが食べられるわ~」


 デュオが直接依頼を受けたのは王都でも有力貴族として有名でもあるベルハニーア伯爵の夫人からであった。

 デュオが伯爵夫人と知り合ったのは、それなりに力を付けてきたころのデュオに避暑地への護衛として雇ったことが切っ掛けだった。

 その時に伯爵夫人にえらく気に入られ、度々直接指名依頼を受けたりしている。


 伯爵夫人としてはデュオを娘の様に可愛がり、本当に自分の娘にしようと跡継ぎである息子のボアトと結び付けようと画策していたりする。

 もっとも肝心の息子にはその気が無く、デュオも気楽な冒険者家業を優先して貴族にはなる気が無いので全て伯爵夫人の空回りで終わってる。


「はい~、それでこれが報酬ね~。あと、これはいつも私のお願いを聞いてくれているお礼よ~」


 伯爵夫人は相場よりも多少多い硬貨が入った袋をデュオの前に差しだし、今回の依頼の品である熊蜜の入った大瓶の1つを渡した。


「え? あの、いいんですか? 折角取って来たのに貴重な熊蜜を譲ってもらって・・・」


「いいのいいの。大瓶1本あるだけでも十分なんだから~。

 もし気にするんだったらボアトと一緒になってくれたらおばさん嬉しいな~」


「あ、いえ、それはご遠慮いたします。私はまだ冒険者を続けていたいので」


「も~相変わらずね~。冒険者を止めたくなったらいつでもおばさんに言ってね~。直ぐにでもおばさんの娘になってもらって可愛がってあげるから~」


「あはは・・・」


 何がどうしてこうまで自分の事を気に入ってくれるのか疑問に思いながらもデュオは乾いた笑いをするしかなかった。


 伯爵家を後にしたデュオはそのまま冒険者ギルドへと向かう。

 冒険者ギルドは相変わらず賑わいを見せており、隣の食堂エリアには昼間から酒を飲んでいるおっさんたちで溢れていた。


「あら、デュオちゃんお帰りなさい。ベルハニーア伯爵夫人の依頼は終わったかしら?」


「トリスさんこんにちは。

 うん、さっき終わってきたところ。それで素材を売りに来たついでにこれをおすそ分けに来たの」


 そう言ってデュオは大瓶から小瓶に小分けした熊蜜の1つをトリスの前へ差し出した。


「わぉ、これって熊蜜じゃない。いいのこれ、貰っちゃって」


「ええ、元々今回の依頼が熊蜜の収集だったんですよ。それで量が多かったみたいだから伯爵夫人から報酬の1部として貰ったんです」


「売ればかなりの金額になるのにいいのかしら?」


「いつもトリスさんにはお世話になっていますから。そのお礼ですよ」


「ありがとう。それじゃあ遠慮なくもらうわね」


 実は熊蜜には濃厚な甘みのある食材の他に、美容にいい健康食としてや肌に潤いをもたらす美容液としての効果があるので女性には大人気の品でもあるのだ。


「ところで熊蜜を取ってきたと言う事は、当然スライサーベアの爪も取って来たって事よね? と言うか背中なのそれ、スライサーベアの爪よね?」


 トリスはデュオが背負っているバックからはみ出している爪を見て言ってくる。

 特段隠すつもりも無く、冒険者ギルドに素材の売却を行う予定でいたのでデュオはトリスの問いに正直に答えた。


「ええ、ここで素材の買取をお願いしようと思っていたから一緒に持ってきたけど、爪がどうかしたんですか?」


「丁度タイミングよくスライサーベアの爪の採取の依頼が出てたからね。依頼主はエルフォード君よ」


「あら、エルの奴珍しくわざわざ冒険者ギルドの方に依頼を出したのね」


 錬金術ギルドの研究バカエルフのエルフォードとはお互い駆け出しの頃からの知り合いなので、大抵の錬金術の素材はデュオに直接依頼をしていたりする。

 こうして冒険者ギルドの方へ依頼を出すことは最近は稀だ。


「何でも緊急を要するらしいからこっちに依頼に来たみたい。デュオちゃんは丁度いなかったみたいだしね」


「まぁこっちも直接依頼を受けてましたからね。でも結果的にはエルの依頼をも兼ねてたみたいだから丁度良かったと言えば丁度いいんですけど。

 分かりました。それじゃあエルの依頼を受けて爪を届けてきます」


「ありがとう。それじゃこっちで手続きをしておくね」


 デュオはトリスに依頼の受領の手続きをお願いし、スライサーベアの爪をエルフォードへ届けるべく錬金術ギルドへと足を運んだ。

 受付のマリーにいつものエルフォード様子を聞いた挨拶をし、そのままエルフォードの研究室へ向かった。


「エル、冒険者ギルドへ依頼を出していたスライサーベアの爪を持ってきたわよ」


「あれー? 何でデュオがスライサーベアの爪を持って来てるのー?」


 相変わらずの煤汚れた白衣を着てずり落ちそうになる眼鏡をかけたエルフは、突然スライサーベアの爪を持ってきたデュオにビックリした様子で見てきた。


「何でも何も丁度熊蜜採取の依頼を受けていたのよ。で、ギルドに来てみたらあんたがスライサーベアの爪の依頼を出しているって言うじゃない」


「えー、だってー、デュオに頼もうと思ったら居ないんだもんー。でもデュオが丁度スライサーベアの依頼を受けていたから良かったかもー。

 今受けている依頼でどうしてもスライサーベアの爪が必要だったんだー。あの爪って便利だよねー。中に管が入っていて細工しやすいもんねー」


 スライサーベアの爪は蜜を集めるために爪の中に細い管が通っているのだ。

 その為、加工の仕方次第では色々な道具になりうる。例えば注射の針や毒を送り込むためのナイフなどだ。

 もっとも管が無くとも爪そのものにも錬金術の素材としての価値が存在する。


「あー、そう言えばこの間の試薬品の覚醒ポーションはどうだったー?」


 デュオからスライサーベアの爪を受け取ったエルフォードは早速加工するための細工に入る。と、そこで思い出したかのようにデュオに渡した試薬ポーションの効果について尋ねた。


 渡した試薬ポーションは本来飲んで体力を回復するポーションとは違い、患部である傷口に降り掛けて治癒効果を高めるポーションだ。

 現在傷を治癒するポーションが存在しないため、このポーションが完成すれば画期的な治癒アイテムとなる。

 だが試薬と言った通りこのポーションは実験段階で完成までには至っていない。


「うーん、あれは微妙ね。潜在能力を引き出して治癒能力を高めても、体の一部分だけじゃ劇的な効果は見られないわね。精々気休め程度くらいかな?

 かと言って体全部に掛けると余計な効果が出るみたい。美刃さんにも渡して試してもらったんだけど、知り合いに全身火傷で使ったら変な風に暴走しちゃったみたい」


「暴走ー? うーん、『覚醒の使徒』の特殊スキルの効果を応用したから突然の力の覚醒で制御できなかったのかなー?

 まだやっぱり研究が必要かー」


 エルフォードはブツブツと試薬の覚醒ポーションの構成を練りながらも手はスライサーベアの加工へと動いていた。

 そんな様子を研究バカと呆れながらも見ていたデュオは、傍にあった複数のポーションを見つけた。

 見たところ覚醒ポーションとではなく、一般のポーションのように見える。中にはキュアポイズンポーションやキュアパラライズポーションも混じっていた。


「エル、そのポーションの束は何? 見たところ普通のポーションっぽいみたいだけど」


 疑問に思ったデュオはエルフォードへと尋ねる。研究バカのエルフォードが普通(・・)のポーションを作るとは思えなかったからだ。


「んー、それはねー、王宮のお偉いさんからの緊急の依頼なのー。

 何でもお偉いさんが遺跡の探索をするからって回復薬が欲しいんだってー。それも僕が作ったポーションをだってー。僕のポーションが欲しいなんて変わっているねー?

 だからそこにあるのは普通のハイポーションとかだよー」


 エルフォードはこう言っているが、彼の作るポーションは他の一般的なポーションに比べてかなり効果が高い事で有名だ。

 特にキュアポイズンポーションになると、汎用性が高いのでかなり重宝されている。

 毒には様々な種類があり、それぞれに対応したキュアポイズンポーションが必要になってくる。

 無印のキュアポイズンポーションは様々な毒に対抗できるポーションなのだが、あくまで毒に対する抵抗力を強めるだけであって完治することは出来ないのだ。

 だがエルフォードの作る無印キュアポイズンポーションは抵抗力を高めほとんどの毒の効果を抑えることが出来るのだ。


「あんたの作るポーションは普通とは言わないでしょうよ」


「えー、そんなことないよー」


「と言う事はそのスライサーベアの爪も王宮からの緊急依頼?」


「そうなんだよー。スライサーベアの爪を使った武器ー。普通、こう言うのって鍛冶屋の仕事じゃないのかなー? まぁギミックを仕込むのは楽しいからいいけどー」


 そう言いながらもエルフォードの作業の手は止まらない。


「ふーん、王宮からの依頼ねー? 貴族とかの道楽じゃないんだから・・・何で遺跡の探索なんかするのかしら?」


 デュオは王宮と言うと最近関わった第三王子の事を思い浮かべてしまう。

 第三王子とその近衛騎士、果てはいきなり締め出しを突きつけた近衛影士のハスクの事などを。


「まぁ、あたしには関係ないからいいけど。それじゃあ王宮からの依頼を頑張ってね」


「あいあいー。爪ありがとねー」


 そう言いながらデュオは錬金術ギルドを後にする。

 だがこの話はデュオには全く関係ないとは言えなかった。

 何故なら次の日、デュオに王宮から第三王子の名前で指名依頼が発生したからだ。




◇ ◆ ◇ ◆ ◇



「え? あたしに指名依頼? しかも王宮から?」


 次の日、冒険者ギルドから呼び出しが有ったので朝一で顔を出すと、トリスから告げられたのは思いもよらぬ所からの指名依頼だった。


「そうなのよ。デュオちゃんをご指名。依頼人は第三王子のカイン殿下と近衛騎士スモルタ=イオサの連名出来ているわ」


 デュオにはスモルタの名前は聞き覚えがあった。

 カイン王子を救出する時に指示を出していた小隊長だ。


 昨日のエルフォードの話を聞いたばかりなので、嫌な予感を覚えながらもトリスに続きをお願いする。


「何でもA級冒険者としてのデュオちゃんに護衛兼冒険者指導をして欲しいらしいわ。詳しい内容は直接話すそうよ」


 護衛はまだ分かる。だが冒険者指導となるとますます昨日の話が関わりある気がしてならなかった。


「これって受けなきゃだめですかね?」


「指名依頼を蹴るってあまり聞かないけど、出来ないことはないわね。後で名声に響くけど。

 と言うか、王宮からの依頼を蹴る方がどうかしているわよ?」


「ですよねー」


 デュオは半ば諦め、どう考えても面倒な事にしかならないこの依頼を受ける為王城へと重い足取りで向かった。


 門番に身分証明書としてギルドカードを見せて王城のある一室へと案内される。

 テーブルを挟んで向かい合うソファだけの部屋だったが、流石は王城と言うべきかテーブル一つとっても高級品なのが素人目にも分かった。

 デュオはおっかなびっくりソファに身を沈め暫く待っていると、近衛騎士のスモルタ=イオサが現れた。


 スモルタ=イオタは35歳と決して若くはないが、歴戦の経験により落ち着いた風格を漂わせている。

 流石に今は鎧姿という訳ではなく騎士の制服に身を包んでいたが、制服の上からでも鍛え抜かられた体なのがより一層見て取れた。


 最初にあった頃は緊急事態と言う事もあって些か礼のない態度で接していたが、流石に今はいい加減な態度はとれない。

 デュオは慌ててソファから立ち上がりスモルタに礼をする。


「ああ、いやそんなに畏まらなくてもいい。確かに近衛騎士とも言えば位は上なのかもしれないが、デュオ殿はA級冒険者だ。私たちよりもずっと凄い存在なのだよ」


「そう言ってもらえると助かります。何分粗野な冒険者なので失礼な態度を取ってしまうのではないかと」


 スモルタはソファに座りながらデュオにも座るように勧める。


「先日はカイン殿下の救出に尽力を下さり助かった。デュオ殿とフェル殿が居なければどれ程の被害が出ていたのか・・・今思うとゾッとするよ」


「いえ、あたしは殆んど何もしてませんよ。あたしもフェルさんに助けてもらった方ですし」


 当然カイン王子の誘拐事件は公表されていない。

 本来であればその救出に貢献したデュオや謎の黒髪巫女フェルに多大な褒賞を授けるのだが、公にされていない以上表立った褒賞は出されなかった。

 スモルタはそれを申し訳ないと思いつつも、今回の依頼も半ば強制なのでデュオにはまた迷惑な事だと思いながらも話を進めた。


「早速で悪いが依頼の話をさせてもらう。

 依頼内容はカイン殿下の護衛と冒険者としての指導だ。まぁ、指導と言ってもカイン殿下を満足してもらうだけの簡単なものでいい。

 私等は戦う事に関しては引けを取らないと思うが、冒険者としては素人同然でな。そこで白羽の矢が立ったのがデュオ殿という訳だ」


 デュオはああやっぱりと半ば予想していた結果に諦めを思いながらも何故カイン王子が遺跡探索をしたいのか、その理由を聞いてみた。


「うむ、元々冒険者の話に憧れて城を抜け出して市井を回っていたのだが、流石に先日の事件があり抜け出すことは無くなったのだがな。

 だがその時のフェル殿の活躍が目に焼きついたらしく更に冒険者への憧れが高まったらしい。

 それで陛下に許可を頂いて冒険者の真似事をすることになったのだ」


「ちょっとそれは・・・幾らなんでも王族が冒険者って無理がありません? 万が一のことがあればそれこそ取り返しがつかないような・・・」


「まぁ言いたいことは分かる。だが何も殿下の望みを叶えるだけでなく別の理由もあるのだ。

 殿下の祝福(ギフト)真実の目(トゥルーアイズ)は知っているな」


「ええ、有名ですから」


「だが殿下はその目を完全に使いこなしているわけではない。今の段階では嘘を見破るのと鑑定が出来るくらいだ。

 今の環境のままだとこれ以上の成長は見込まれないと踏んでいる。

 そこで今回の件を利用して外の世界や実戦を経験させて祝福(ギフト)の成長を促させようという訳だ」


 確かに訓練と実戦とじゃ成長の具合はかなりの差がある。デュオはそのことに納得しつつもカイン王子を実戦に身を置くことにそれなりの配慮をしなければならないなと頭を悩ませる。

 安全策を取って離れた場所から見ていても祝福(ギフト)の成長は見込まれなさそうだし、かといって流石にカイン王子に剣を持たせて魔物と戦えとは言えない。


「今回のこの遺跡探索、他に知っている人は?」


「今のところは陛下と近衛騎士団長と私、後は直接護衛のイーカナと近衛影士数人だな」


 前回の件もあるようにカイン王子の暗殺にも注意を払わなければならない。

 まぁそのあたりは近衛影士が重点的に警戒するだろうからデュオは遺跡探索時の注意を払えばいいだろうと頭の中で遺跡探索の計画を練り上げる。


「そう言えば探索する遺跡の場所は決まっているんですか?」


「殿下の強い要望でセントラル遺跡となっている。なんでも噂でのセントラル遺跡に眠っている財宝を見つけるのだと張り切っていてな」


「セントラル遺跡・・・これはまた厄介なところを突いてきましたね・・・」


「デュオ殿には迷惑を掛けるが、出来ればお願いしたい」


 セントラル遺跡はC級の魔物が出現する遺跡だ。冒険者初心者のカイン王子を連れて行くのには流石に躊躇われる場所だ。

 とは言え、ザウスの森浅部での簡単な冒険をしたとしてもスモルタの言う通りそれでは真実の目(トゥルーアイズ)の成長が見込まれないだろう。


「分かりました。謹んでこの依頼を受けさせていただきます。

 当然こちらからも数人の冒険者を連れて行きますのでその点はご容赦を」


「冒険者家業としてはそちらがベテランだ。必要な事が有ったら何でも言ってくれ」


 デュオはスモルタと依頼報酬や遺跡探索時の戦利品の配分、戦闘時の近衛騎士や冒険者の配置、カイン王子の取り扱いなど依頼内容の審議を行い、早速準備の為にギルドホームへと戻った。








次回更新は5/4になります。

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