12.その救いの手を差し伸べるは黒髪の巫女
カイン・エレクシア・ウル・エレガント。
エレガント王国の3番目に生まれた第三王子。
カインは生まれながらにして女神アリスより祝福を授かっていた。
カインが成長して意思の疎通が出来るようになるにつれ、カインの異様さが際立ってくる。
子供だましには引っかからず嘘を見破り、玄人顔負けの武器・宝石・美術品の鑑定をし、食事に入った毒を簡単に見分け周りを驚愕させた。
そのころになってようやくカインに祝福が授かったのではないかとAlice神教教会にて調べてもらった結果、真実の目と言う祝福を授かっていたことが判明した。
カインはまだ幼い為真実の目の力を十全に発揮できないが、もし完全に使いこなすことが出来ればこの世に見破れないものはなく、その場にないものでもその物事を関連して真実を映し出すことが出来るほどの力を持っているS級の祝福を授かったのだ。
そのことが判明した時は周囲は大いに喜んでいた。
カインが居れば品々の真偽の鑑定は容易く、内政や外交の交渉事ではその裏にある真実を見破ることが出来る。更には毒殺や暗殺の心配もない。
カインは周囲が褒めてくれるので調子に乗ってどんどん真実の目を使いまくった。
その結果、カインは周囲から畏怖されるようになる。
初めのうちはカインを持てはやしたが、世辞を言っても見抜かれる、邪な気持ちで近づいて来ても拒否される、政治的交渉も裏表なく暴露されるなどと、次第に疎まれてしまったのだ。
そしてカインの方もまだ5歳と言う幼い子供でありながら裏表のある大人に嫌気がさして部屋に籠りがちになった。
唯一気を許していたのは、両親と2人の兄、教育係とカイン専任の近衛騎士だけだった。
教育係のドック=イターナーは宰相のワンダ=イターナーの息子であり宰相補佐を務めるほどの実力を持っていて、これまで2人の兄王子に帝王学等を教育してきた実績を買われ新たにカインの教育係に選ばれた。
「カイン殿下の教育係として選ばれた以上、厳しくお教えするので覚悟しておいて下さい。
例え殿下が自分の事を悲劇の主人公と思っていたとしてもそんな考えはドブに捨てて下さい。ウザいだけです。子供の癇癪に付き合うほど暇じゃありませんので」
王族への不敬罪として捕らわれそうな言葉だが、ストレートな物言いに2人の兄王子や国王陛下が気に入っていたので特別扱いをしていた。
そして何より歯に衣着せぬ物言いが、真実を見抜くカインにとって裏表がないことで気に入られたのが一番の要因と言えた。
もう1人の近衛騎士のイーカナは遥か東の田舎の出身で、簡単に人に騙されるほどの純朴な青年だった。
但し実力のほどは近衛騎士団の中でも上位に位置するほどの技量を誇っていた。
その実力と性格がカインの護衛に適任と言う事で専任の近衛騎士として使えることになっていた。
「自分田舎者ッスからよく騙されるんスよ。
その代わり腕っぷしだけは誰にも負けないつもりッスから殿下の護衛は任せてくださいッス」
こちらも王族への不敬罪として捕らわれそうな態度だが、この裏表のない性格がカインに気に入られたため大目に見られていた。
その気さくな性格が王族としての2人の兄王子とは違い、親しみやすいもう1人の兄としてカインに慕われていたのだ。
そんなある日、ドックの一言がカインを前に進むきっかけを与えた。
「そんなに真実を見るのが嫌のならば目の力を制御すればいいじゃないですか」
それからと言うものカインは、今まで常時発動していた真実の目を任意に発動しようと努力をしてきた。
そしてついに目の力を制御することに成功した。
真実の目を発動している時は金色の瞳だったが、力を制御してからはくすんだ茶色の瞳に変化した。
力を発動した時だけ金色の瞳に戻るようになったのだ。
目の力を制御できるようになってからは、カインは部屋の外へ出るようになった。
力を制御したかと言って人間の裏表が無くなるわけではないので人間不信気味なのは仕方ないが、それでも真実を直接見ることが無くなったのはカインの中では大きな変化だった。
それに伴いカインは城の外、市井の生活に興味を覚え始めた。
田舎出のイーカナが良く自分の子供の時の事を語ってくれた。そして田舎から出てきて王都の暮らしに驚いたことなどを面白おかしく話したのがカインには興味をそそられたのだ。
そして何より力を制御した今、自分の事を知らない人間との相対はとても魅力に思えた。
また王族としての育った自分とは違う同年代の子供との生活にもみて見たいと思い城の外への外出を願い出たが、王族がそう簡単に出歩くわけにもいかずに今度は周りから部屋に押し込められる形になっていた。
だが、カインの外への興味は膨らむばかりで、いても経ってもいられずについには城を抜け出すまでに至った。
カインが町に出るとき真実の目を使ってイーカナや近衛騎士の警備の隙をついてこっそり出かけていたが、出しぬけていたのはあくまで近衛騎士であり、陰で護衛している近衛影士――盗賊ギルドの密偵の存在を知らなかったので彼らを出し抜くことまでは出来なかった。
なので当然城に戻って来た時は抜け出したことでドックやイーカナ達にこっぴどく叱られた。
だが初めて城を抜け出し城の外の世界を見た興奮で今のカインにはドックたちのお叱りの声は耳に入っていなかった。
なにせ一番興味の覚えたイーカナの話す冒険者を見て興奮して思わず話しかけてしまうほどだったのだ。
おまけにその時市井の嗜みとして煙玉の護身用アイテムを貰って夜は興奮して寝れない程だった。
そうして何度も城を抜け出して市井の子供たちと遊んでいる時、事件は起こった。
そう、子供を誘拐して奴隷にして売る野盗に捕まってしまったのだ。
王都の内外には野盗が潜んでおり、女子供又は労働力のある若者を攫っては奴隷商に売買している組織が存在した。
カインは外の世界の光しか見ていなかったため、闇である組織を知らなかったのだ。
カインは突然現れた野盗たちに真実の目を使って正体を見破ったので他の子供たちに逃げるように促して煙玉で逃走を図り直ぐに捕まることは無かったが、流石に逃げ切ることは叶わず最後には他の子供たちと一緒に捕まってしまった。
この時、陰で護衛をしている近衛影士は思わず上がった煙玉に一時カインを見失い、その隙を突かれて何者かによって数人命を絶たれてしまっていたのでカインを守り抜くことが出来なかった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「ちっ、余計な邪魔を・・・!」
上手く後ろからの奇襲に成功したと思いきや、外部からの魔法によりデュオへの攻撃を阻まれた暗殺者は悪態をつく。
「ありがとう、助かったわ。こう言っては何だけど出来ればこのままあの2人を倒すのに力を貸して欲しいんだけど」
デュオは2人の暗殺者から距離を取りながら、助けてくれた黒髪の巫女の隣へと移動し協力をお願いした。
「勿論協力はするわよ。まさか手を出しておいてこのまま見捨てるなんてあり得ないわ」
「普通なら相手が相手だから逃げてって言うところなんだけどね・・・
どうも貴女はかなりの実力者みたいだからこの場合はとても助かるわ」
白色のミスリルとおぼしき胸当てに巫女の白衣、赤色のミニのプリーツスカート、白色のニーハイソックスに赤色のニーハイブーツ。巫女の白衣とニーハイブーツには金の刺繍。
黒髪は左側に纏めたサイドテール。髪留めの部分には金のかんざし。
左右の腰には赤黒の刀と白色の刀を携えていた。
一見するとコスプレ巫女に見えるが、デュオは彼女の醸し出す雰囲気にそれなりの実力者と判断したのだ。
「まぁいいか。獲物が1匹増えたことに感謝しようじゃないか。女はいい声で鳴くからなぁ」
「おい、俺達の任務は目撃者の始末だ。余計な感情は捨てることだ」
暗殺者の方では奇襲をかけた方――金髪の目立つ姿を隠さずさらけ出して暗殺者とは思えない方――が好戦的なようで、黒髪の巫女が乱入してきたのを喜んでいた。
「悪いけどあんた達の思い通りにはならないと思うわよ。こう見えても結構強いと自負してるから」
黒髪の巫女は右の刀を右手で、左の刀を左手で逆手で抜き、そのまま拳銃を回転させるように順手に持ち替える。
「わたしが前に出てあの2人を牽制するから貴女は後方で魔法で仕留めて」
「了解」
次の瞬間、黒髪の巫女が一瞬で間合いを詰めて左右の刀を振るう。
「桜花十字閃!」
どうやら二刀流戦技・十字斬りと刀戦技・桜花一閃を組み合わせた戦技らしく、黒髪の巫女が放つ十字の剣閃の跡には桜のエフェクトが舞い散る。
「!?」
「なぁっ!?」
一瞬で間合いを詰められた暗殺者の2人は慌てて回避する。
気を抜いていたわけではないが、あの距離を一瞬でゼロにするとは思わずに懐に入られたことに驚愕していた。
辛うじて回避した2人はそれぞれの行動に移る。
1人は反撃とばかりに金髪の暗殺者はショートソードで襲い掛かり、もう1人は空気に溶けるようにその場から消え失せた。
金髪の暗殺者の攻撃を左右の刀で躱しながら黒髪の巫女は消えた方の暗殺者に驚いていた。
後方で魔法を放つタイミングを計っていたデュオも驚く。
暗殺者の基本は奇襲。闇に紛れて寝首をかく様に急所などに一撃を入れて速離脱が普通であり、敵対者と正面からぶつかるは愚の骨頂だ。
そう言う面では黒髪の巫女と正面からやり合っているのは暗殺者としては失格だ。
デュオと黒髪の巫女が驚いたのは直接相対したにも拘らず、目の前で消え失せた事だ。
一度己の姿を認識されてしまうと姿を隠すことは難しい。
にも拘らずナイフの暗殺者は2人の前から姿を消した。
それは暗殺者としての技量が優れていることを意味していた。
暗殺者の目的は目撃者を消すことなのでそのまま立ち去ることはまずない。
ならば金髪の暗殺者を隠れ蓑にしながら闇に紛れてデュオと黒髪の巫女を暗殺するはず。
最初の狙いはデュオか黒髪の巫女か――
「スネークボルト!」
デュオの放つ雷属性魔法は蛇のように曲線の軌跡を描きながら金髪の暗殺者を絡め取ろうとする。
直前でデュオの魔法に気が付いた金髪の暗殺者は咄嗟にショートソードを放し避雷針代わりにして躱した。
黒髪の巫女はその隙をついて再び複合戦技を放つ。
一方でデュオが魔法を放った隙をついて横から暗殺者が姿を現した。
好戦的な金髪の暗殺者とは違い、口を閉ざしたまま左右のナイフで二刀流戦技を放つ。
だがデュオは杖を振りかざしながら輪唱呪文で唱えていたもう1つの魔法を放つ。
デュオは敢えて隙を作り消えた暗殺者を誘い出したのだ。
もっとも後ろから現れると思っていたので少し慌てたが、棍戦技の旋風棍を使い杖を回転させナイフの攻撃を防ぎつつ魔法を解き放つ。
「フリーズバインド!」
デュオの放つ氷属性魔法により氷の蔦が暗殺者を絡め取り動きを封じる。
そしてそのまま無限想波流で戦技の連続技を放つ。
「薙ぎ払い! スクエア! 穿纏棍!」
杖戦技の薙ぎ払いで顎を揺らし脳震盪を起こさせ、そのまま四方を描く様に剣を振るう剣戦技、止めに棍戦技の突き技を鳩尾にお見舞いする。
おまけとして雷属性戦技のスタンボルトで麻痺状態にして身柄を確保する。
「桜花四連撃!」
刀戦技・桜花一閃と二刀流戦技・四連撃を合わせた複合戦技を黒髪の巫女は金髪の暗殺者に向かって放つも、その攻撃は陽炎のようにすり抜けてしまった。
次の瞬間、目の前の金髪の暗殺者は消え失せ、少し離れた位置にニヤニヤしながら立っていた。
「こういうのは初めてか? 俺のオリジナルのファントムステップだ。
お前が切ったのはステップによって作り出された幻影だよ。そしてファントムステップを応用したのがこのステップだ。
――ミラージュステップ!」
何処からともなく新たに取り出したダガーを構えながらステップを刻む。
その姿がぶれたかと思うとその場には幾つもの暗殺者の姿が現れた。
『ははっ、覚悟しなっ!』
幾つもの金髪の暗殺者は一斉に黒髪の巫女へと襲い掛かる。
勝利を確信した金髪の暗殺者はミラージュステップによって幾つもの斬撃を黒髪の巫女へとお見舞いするが、すり抜ける様な手応えしか返ってこなかった。
気が付けば黒髪の巫女は金髪の暗殺者の背後にいた。
「へぇ、なるほどね。こうやるのね」
「てめぇ、今のは・・・!」
金髪の暗殺者は今のすり抜ける様な攻撃の手応え、目の前から消え去るようにして数歩先に移動に思い至るものがあった。
それは先程自分が見せたファントムステップだった。
だがそれは自分が独自に開発した唯一無二のステップのはずだ。信じられない現象を目の当たりにして内心穏やかではいられなかった。
「そうね、たった今見せてもらった貴方のファントムステップね」
「ふざけるな! あれはそう簡単に真似できるものじゃねぇ! 俺がどれだけ苦労して編み出したと思っているんだ!」
「悪いけど・・・ステップに関してはわたしの方が上手だって事ね。その証拠に・・・
――ミラージュステップ」
なんと驚くことに黒髪の巫女はミラージュステップまで使い出した。
しかもその数は先程の金髪の暗殺者よりも多かった。
無数の黒髪の巫女の分身が金髪の暗殺者に襲い掛かる。
「桜花十字線:夢幻!」
「ぐぁっ・・・!?」
黒髪の巫女の戦技により金髪の暗殺者はその場に崩れ落ちた。
「安心して、峰打ちよ。・・・って聞いてないか」
黒髪の巫女はデュオとこの金髪の暗殺者が何かしらの事件に関わっているのではと気を利かせ気を失わせるだけに済ませていた。
デュオは黒髪の巫女の戦闘も終わったのを確認して改めて暗殺者を締め上げようと振り向いたところには誰もいなかった。
「また逃げられたっ・・・!?」
思わず黒髪の巫女が相手していた金髪の暗殺者を見るとそちらも姿が消え失せていた。
黒髪の巫女も目の前で金髪の暗殺者が消えたのを見て驚いていた。
「まさかあの状態で逃げられるとはね。少し侮っていたかな?」
「それはこっちも驚いていますよ。スタンボルトを使って逃げられたの2度目ですよ」
「あ~、相手は暗殺者っぽかったから、もしかしたら麻痺対策をしているかもしれないわよ」
そう言われてデュオはそのことを失念していたことに思い至った。
確かに暗殺者ともなれば異常状態に対応していて当然とも言えた。
「逃げられたのは少々痛いわね。後で命を狙われないかしら?
あいつらの目的は目撃者の始末って言ってたから、事件そのものを解決してしまえば狙われる理由が無くなるんだけど」
「それに関してはあたしの方で何とかしますよ」
「もしよかったらわたしも手伝うわよ? 暗殺者に狙われるんだもの、事件の顛末も確認しておきたいし」
「そう言ってもらえると助かります。何か巻き込んでしまったみたいで、すいません」
「気にしなくていいわよ。自分から首を突っ込んだんだし」
黒髪の巫女は気にしないでと手を振ってデュオの気持ちを和らげていた。
「あの、改めてありがとうございます。さっきはお蔭で助かりました」
デュオは助けてくれた黒髪の巫女に改めて礼を言う。
先ほどの黒髪の巫女の戦闘を少し見ていたが、敵の技をあっさり真似できる技量に驚いていた。
ステップは接近戦に対して有効な技であり、突き詰めていけばステップにも存在する戦技が使えるようになる。
ターンステップ、ハイステップ、クロスステップ――暗殺者のステップは明らかにそれらを超えるものだった。
今さらながらにデュオはこの黒髪の巫女に興味を覚えた。
「あの、あたしデュオって言います。名前を教えてもらってもいいですか?」
「ええ、わたしはフェルよ」
「えっと・・・助けてもらってなんですが、何でこんなところに・・・?」
子供たちが誘拐された後を追ってきたところがこのスラムだ。
普通の人が来るような場所じゃない。
「あ~・・・え~っと・・・まぁなんていうか、エレミアも久々だったのよね。それで知っているつもりで歩いてたんだけど・・・」
「・・・もしかして迷子・・・?」
フェルは少々気まずげながらも頷いた。
「ぷっ・・・! まさか助けてもらった原因が迷子って・・・!」
「まぁ、結果的にはデュオを助け出せたし? 迷子も悪い事じゃないわ」
デュオはひとしきり笑った後、フェルを今後の対策を立てる為クランホームへと案内した。
だがクランホームで待ち構えていたのは思いもよらぬことだった。
フェルをクランホームに案内した後、孤児院の子供の誘拐事件のあらましを説明し、その後の調査にも協力してもらった。
そして半日ほど経過した後シフィルに頼んであった調査が終わったと言う事でデュオはクランホームの一室で調査報告を聞く事にしたのだが、その場にはシフィルの他にもう1人軽装に身を包んだ男がいた。
「手を引けですって・・・!?」
「そうだ、お前はこの誘拐事件に首を突っ込むことは許さん。事件に関して口外することも調査することも禁ずる」
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「ほう、こいつが第三王子か。ふん、生意気そうな顔をしているな」
カインは他の4人の子供たちと同様にロープで縛られて部屋の隅に置かれていた。
但しカインだけは真実の目の力を使われない様に目隠しをされていた為、周りの様子が分からなかった。
「パドロック様、何もこんなところまで足を運ばなくても・・・
それに第三王子がパドロック様を転落させる原因となるならば、後始末を終えた今、早急に始末した方がいいのでは?」
「ふん、こんな小僧1人に儂の人生がメチャクチャになるんだぞ? ならばその怨みを晴らさなくてどうする。
それに王族としてのうのうと暮らしている小僧に世間での厳しさと言うものを直に教えねばな」
自業自得であるにも拘らず、まだ起きてもいないことに対してカインに逆恨みもいいとこだった。
この太った男はプレミアム共和国第二都市シクレットの議員の1人だ。
数日前、『神託の使徒・Oracle』により自分の人生の転落を神託され、その原因であるカインの殺害を目論んだのだ。
同じ議員でもあり暗殺者ギルドのギルドマスターに協力を要請して、1年も前から王都エレミアに忍び込ませていた暗殺者の1人スタンリーを使いカインを暗殺する計画を立てていた。
直接の殺害を悟られぬために王都郊外の野盗を使ってまずは誘拐する事にした。
その為スタンリーは王城ではパイスと名乗り、幾つもの策を王城でばら撒きカインを外へ出るように促した。
そして見事外に出たカインを他の子供たちと合わせて誘拐することに成功したのだ。
その時多少冒険者からの妨害があった為、暗殺者の存在に気付かれた恐れがあるのでスタンリーは早急に事態を終わらせエレガント王国から引き揚げたかった。
「パドロック様、お気持ちは分かりますが今はこの場から立ち去るのが賢明かと。
杞憂であればよいのですが、子供たちを攫う時に妨害に会った冒険者に我々の存在が気付かれた恐れがあります。
パドロック様も表向きはエレガント王国へ外交で来ておりますが、第三王子の事が公になるとパドロック様にも疑いの目が掛かる可能性がありますので・・・」
「ふん、冒険者の戯言など誰も聞きやせん。それにここの野盗の始末や目撃者の始末も上手く終わらせているんだろ?
なら何も心配などいらんわ。心配するだけ馬鹿らしい」
スタンリーとは違い、パドロックの頭の中は既にカインをいたぶることで一杯だった。
パドロックはカインの苦痛に満ちた顔を拝むため目隠しを取る。
「よう、クソガキ。儂によくも盾突いてくれたな。お前はこれから地獄を見ることになる。精々儂を楽しませるくらい足掻いて見せな」
「・・・・・・我の力を恐れての犯行か。なるほど、お主は余程悪事を重ねてきたと見える」
カインの瞳は力を抑えていた茶色ではなく真実の目の金色に輝いていた。
「自分の悪事の暴露を恐れて我を捕まえたと・・・これだから大人は嫌いだ。
我がお主の悪事を暴かなくてもいづれ自ら破滅へと向かっていたんじゃないのか?
大人は嘘を付くのが大好きだからのう。特にお主は嘘を付き過ぎて嘘が滲み出ておる。ここまで嘘で塗り固められた大人――いや豚か、こんな豚は珍しいかもしれん」
「このクソガキッ!」
パドロックはカインの悪態に思わず殴りつける。
一緒に居た子供たちは突然の暴力に怯えていた。
「いいか、お前が次に生意気な口を聞いたらそこのガキどもを殺す。逆らっても殺す。
お前のせいでガキどもが死ぬんだ。
あぁ、なんて可哀想なんだろう。お前に関わったせいでしんでしまうなんてなぁ」
「生憎だが我には嘘は通じぬ。もともと全員殺すつもりなんだろう」
「ちっ! そう言えばこのガキ真実の目を持ってたんだな」
パドロックは忌々しげにカインの目を睨みつける。
「それに我の所為? 勘違いしては困る。
我の所為ではなく貴様の所為だろう! 貴様が起きてもいない出来事に怯えた所為だろう!」
カインに自分の器の小ささを指摘されパドロックは頭に血が上り思わず何度も殴りつけた。
「我はエレガント王国国王フィロア・エレクシア・ジオ・エレガントの子、カイン・エレクシア・ウル・エレガントなるぞ!
この者らの命を取るより我の命を取れ!
だが我はお主の様な悪者に決して心までは屈しはしない!」
「はっ! 無様に捕まって置いて何を言っている! クソガキが強がってんじゃねぇ!
誰か助けに来てくれるのを期待しているのか?
残念だったな。見ろ、こうして王族が捕まっているのに誰も助けに来やしない。
お前は見捨てられたんだよ!」
大人の裏表を知っているカインはもしかしたらそれもあり得るのではないかと思った。
だがそれでもカインは国王である父や教育係であるドック、近衛騎士のイーカナ達は自分を助けてくれると信じていたかった。
「さて、それはどうかしら?」
そんなカインの思いを叶えるかのように謎の声と共に突如部屋の扉が吹き飛んだ。
次回更新は3/8になります。




