003
ケンタウロスを検挙してから一日が経った。
「二人共、ケンタウロスの件は良くやってくれたな」
デスクに座っている署長はご機嫌な様子で鼻を伸ばしている。
「いえいえ、私共にかかればあのような敵など」
「お茶の子さいさいですよ」
ジョセフとカレンの二人は胸を張っている。
「そこでだ。君達に事件を解決してもらいたい」
「またですか」
「アメリカは常に敵と戦っている。無論、私達も例外ではない」
「で、今度の標的は」
単刀直入のジョセフが聞いた。
「メドゥーサだ」
「メドゥーサって、あのギリシャ神話に出てくる?」
「そうだ。蛇の髪の毛を持ち、見た者を石にしてしまうメドゥーサだ」
「ジーザス。今回の敵は捕まえるのが難しそうだぜ」
「なお、今回の事件は既に被害者が出ているため、上から射殺許可が出ている」
「うおおおおおお。マジですか署長」
デブのカレンは喜びのあまり、拳を上にあげた。
「ああ。今回は派手にやってもよい」
「で、場所は何処です?」
「ウエスト・ハーレムの住宅街だ。これ以上、住人に被害が出ないように迅速な対応を頼むぞ」
「あいあいさー!」
二人は署長に敬礼をした後、パトカーに乗り込んでウエスト・ハーレムに向かった。
ウエスト・ハーレムに到着すると、二人は目的地の住宅街ではなく、そこから五百メートル離れたビルの屋上で双眼鏡を覗き込んでいた。
「あいつが目標か」
双眼鏡にハッキリとメドゥーサの生首が見えている。直接メドゥーサを見ていないため、二人は石にはなっていない。
「母ちゃんが朝起きた時の顔とソックリだ」
カレンは注文したピザを食べながら喋る。
「ああ、俺も同感だぜ」
メドゥーサの周りには石化した人が何十人も溢れている。素人ではメドゥーサの進軍を止められないようだ。
「あいつを倒せば石化した人々も元に戻るのか?」
「そう祈るしかねーな」
ジョセフはそう言うと、カバンの中から対物ライフルを取り出して、スコープからメドゥーサの顔を覗き込んだ。
「ユー、恐ろしい武器持ってるじゃん」
五十口径の対物ライフルを見ながら、カレンが言った。
「近づけば石にされるからな。遠距離からライフルで仕留めるしかねーよ」
ジョセフはメドゥーサの額に標準を合わせて、弾丸を発射した。弾丸は一直線にメドゥーサに向かって伸びていき、額に真紅色の穴を開けた。
蛇の髪の毛をうねらせて、メドゥーサはまもなく倒れる。すると、石化していたウエスト・ハーレムの住人が起き上がり、恨みを晴らさんとしてメドゥーサの死体に蹴りを入れる住人達。まるで、サッカーを楽しんでいるようだった。
「イヤッフオオオオオ!」
「これが、アテナの怒りだぜ!」
二人は固い握手を交わして本部に戻って行った。