終章 遠き空の下、同じ大地を踏みしめ生きる
それから、約2年が経過した。
「ランシールっ、お前それ逃がすなっつったろ!」
「ろ、ロキシーさんに言われたくありませんっ! もとはと言えば、貴方が逃がしたやつじゃないですかっ」
「つべこべ言うな! 町に向かったらどうするつもりだ」
「す、すいません、副長っ」
ランシールがフォルセに一喝され、引金を引いた。銃声とともに魔物が地面に横倒しになった。
ランシールが地面にしゃがみこむ。
「うわああ」
泣いているわけでも叫んでいるわけでもなく、ただ口からそんな声が漏れた。吐息の一種である。ロキシーが呆れたように剣を収める。
「お前、元に戻っちまったんじゃないの? 旅の間はずっとしっかりしてたのに」
「いや、そうでもないさ。少なくとも、戦いながらロキシーと喧嘩をする余裕はあるようだし」
「副長までからかわないでください・・・・・」
ランシールが非難がましい目をフォルセに向けた。
「まあいい。無事に済んで何よりだ。さ、戻るぞ」
フォルセはそう言い、部下をまとめてキシニアへの帰路へついた。
2年の間に、連合とハルシュタイルは劇的に変化を遂げた。ハルシュタイルでは、国王イスベルが大陸全土を混乱させたことの責任をとる、という名目で退位した。そして即位したのがセオンことアルセオールだった。宰相ガルスはそのままの役に留まり、スファルとアイオラが側近として仕えている。第3王子ケイオスの病は、ユリウスが発見した薬草と彼の手腕により、ほぼ完治した。もともと病弱な人なので健康な生活を送ることはまだできないが、今では1日の大半を起きて過ごしている。平気で2、3日昏睡していたかつてに比べれば、健康を取り戻しつつある。第3王子という立場から王位継承権は最も強かったが、自分でそれを辞退した。そして弟を陰から支えている。彼は非常に博識で賢く、政治手腕は優れていた。セオンの良き相談相手である。
セオンが最優先で行ったのは、魔族実験の廃止である。王城につながれていた魔族は即座に断魔の剣で打ち倒し、スファルに陣頭指揮をとらせて王牙山脈の開拓も行っている。今では魔族の絶対数も減り、通行もしやすくなったそうだ。山をなくすことは不可能なので、少しでも楽に越えられるようにしたいのだ。このおかげで、ほぼ交流のなかった王都と南部の貧しい土地の行き来が簡単になり、セオンはそれらの土地に騎士を派遣したり物資を送ったり、積極的だ。庶民的なセオンは民に強く支持されている。
そしてセオンは国境を開放し、カルネア連合と友好条約を結んだ。貿易も再開し、大量の物資や人が行き来している。
それを受けた連合側では、シリュウが連合の代表としてハルシュタイルと外交を行っている。彼の外交手腕も優れており、セオンに舌を巻かせている。
オルコットはノルザックに戻り、散々部下たちに怒られたという。いつまで放っておくのだ、と。商人のバルフがノルザックをまとめていたが、以前のように一触即発という状態ではなく、むしろ友好的だ。ノルザックは商業都市である。大量の物資が生産され、国内やハルシュタイルに運ばれている。町を離れていた富裕層も戻ってきて、市場は以前以上の活気をつけた。
国境傍にあり、王都とノルザックに挟まれているキシニアは、当然のこと貿易の拠点となった。ここの剣はハルシュタイルに人気で、製造が追いつかないほどだ。ハルシュタイルからの観光客も溢れ、人口が倍増している。おおらかなキシニアの民は「にぎやかだなあ」と楽しんでいる。
キシニアに戻ったフォルセらの生活はなんら変わらなかった。フォルセが隊長になれという意見もあったのだが、フォルセ本人が辞退したし、ハーレイも退けた。「隊長になったら前線に出られず、書類と格闘し、面倒な会合にも出席しなければいけない。それでは宝の持ち腐れ」らしい。とにかく、ある程度気楽な副長という立場がフォルセは気に入っている。気軽に魔物退治に出かけられることも嬉しい。
変わったのはロキシーだ。今まで何かと口実をつけて訓練などをさぼろうとしていた彼が、最近は真面目に参加している。なんらかの心境の変化があったのだろう。定期的に首都のモルザート元帥宛てに手紙も出している。といっても、酒場に入り浸るところは通常通りだ。それに節度ができただけだ。
町に戻ると、聞きなれた声がかけられた。
「フォルセさん」
そちら見ると、セオンがそこにいた。スファルとユリウスもいる。
「セオン。スファル殿も・・・・久しぶりだな」
セオンは年に1度は必ずキシニアを訪れる。そうしてテルファの墓参りをし、ヒンメルの店で食事をし、フォルセらと雑談を交わす。他愛ないが、忙しいセオンにとっては一番の息抜きなのだろう。この町はセオンにとって、もう故郷なのだ。
「私のこと、忘れてない?」
その声とともにアイオラが姿を見せた。フォルセが瞬きをする。
「今回はアイオラも一緒か。・・・・って、ん・・・・?」
アイオラがセオンとともにキシニアを訪れることは何度かあった。しかし―――
「私服ですね。可愛いですよ」
「ありがと。ランシールはよく分かってるわね」
アイオラがにっこりと微笑む。そして、フォルセに向きなおって爆弾的な発言をした。
「騎士団、やめたの」
「は?」
「退団したのよ。で、これからキシニアに住もうと思って。しばらく住むところないから、お世話になるわね」
「なるわねって、ちょっと・・・・」
「ユリウスから許可はもらったのよ」
フォルセがユリウスに視線を送ると、ユリウスは両手を軽くあげて降参ポーズをした。
アイオラはフォルセに積極的にアプローチをしてくる。おもしろがってユリウスはそれを手伝っているのだ。
セオンが笑っている。そもそも、退団などを許可したのはセオンだろう。こうなれば何を言っても聞かないので、フォルセはあきらめた。
アイオラに対して恋愛感情がないのかといえば―――それは否である。否であるが、いきなり進展しすぎだとフォルセは客観的に思っている。
「・・・・そ、それはともかくお供は2人だけ? それで大丈夫なのかい、セオン」
あからさまに話題を変えたランシールの問いにセオンは頷く。
「キシニアへの道はもうだいぶ整備されたからね。そんなに危険でもないよ。それに、他に護衛がついていたら楽しくない」
確かに、スファルとアイオラ以外の騎士が同行していたら話が合わないだろう。
フォルセの部下が一人進み出た。
「副長、我々はこのまま砦へ戻ります。どうぞ、国王陛下とごゆっくりなさってください」
「ああ、すまない。頼んだ」
騎士は頷き、仲間をまとめて砦へ戻った。セオンがそれを見送りながら息をつく。
「国王陛下、か・・・・・キシニアに来てまでそう言われるのはちょっと勘弁してほしいです」
セオンが王になっても、フォルセたちは態度を変えなかった。セオンは何も言わないが、そう望んでいることが分かっていたからだ。それに、堅苦しいフォルセもセオンを王と扱う自信はなかった。
「また少し背が伸びたみたいだな。そろそろ俺と同じくらいか」
フォルセが呟く。彼ももう19歳だ。1年でぐっと背が伸び、まだ若干少年っぽかった体つきもしっかりしていた。なんとなく寂しい。
「セオン、身体の調子は? 最近忙しくてあちこち飛び回っているんでしょ」
「俺は大丈夫です、ユリウスさん。それどころじゃありませんし」
「それどころじゃないって、そういう時にぶっ倒れるんだよ。適度に休憩して、夜はよく寝て、疲れたら甘いものでも食べて。これ基本だよ」
セオンが「はい」と頷いて首をすくめる。次にケイオスのことを尋ねられ、セオンは微笑んだ。
「兄上はとても元気です。ユリウスさんの治療のおかげで、今では頻繁に立ち歩いていますし、本当に良かった」
「そっか。なら安心したよ」
ロキシーがうずうずしながらセオンの肩に腕をまわした。
「なあ、もうヒンメルの親父のところに行こうぜ」
「えっ? でも、まだ明るいですよ」
「夜じゃなきゃ飲んじゃいけないなんて決まりないだろ。なあ副長、行こう」
フォルセは呆れたように肩をすくめた。口を開いたのはスファルだ。
「お前たちは任務帰りなのではなかったのか? 報告はどうした」
「あ、それなら出てくるときに僕が言っておいたよ。『今日は全員もうあがります』って。隊長は黙って頷いてた」
「気が利くねぇ、ユリウス」
ロキシーが手を叩く。
「てなわけで、行こう」
「あの、俺キシニアの酒苦手なんですけど・・・・・」
「そのうち慣れるさ」
ロキシーがセオンと肩を組んだまま歩いて行ってしまう。やれやれとばかりにユリウスとスファル、アイオラがあとを追い、フォルセが溜息をつく。
「本当に、まだ日も暮れていないのに・・・・・」
「良いんじゃありませんか? こうやって会えるのは年々少なくなっていくでしょうし」
ランシールの言葉にフォルセは頷いた。
「・・・・それもそうだな。行こうか、ランシール」
「はい」
ふたりは肩を並べて歩いていたが、ふとランシールが足を止めた。振り返る。
「どうした?」
フォルセも足を止めた。ランシールは首を振った。
「いえ。・・・・すみません、すぐ行きますから、副長はお先に」
「分かった」
フォルセは追求せず、踵を返した。ランシールは来た道を戻る。
道の端に、ひとりの青年が佇んでいた。ランシールは口元をほころばせる。
「アーシュ従兄さん」
「よく気付いたな」
アーシュが微笑む。ランシールも頷いた。
「来てくれたんだね」
「約束しただろう」
深緑を求めて平原に行ったとき、アーシュに地図を手渡していたのだ。彼はちゃんとここまで来てくれた。
「これが・・・・お前の見ている世界なんだな。目が回りそうだ」
「僕も最初はそうだったよ」
アーシュは微笑み、ランシールに向き直った。
「・・・・叔父貴は、少しずつ平原を出ようと試み始めたんだ。手始めに、平原に入った人を殺すようなことはやめた。というのも、1か月ほど前に、お前たちと一緒にいたシリュウという男が集落にたった一人でやってきて、長いこと叔父貴を説得していたんだ。たいした奴だな」
「シリュウさんが・・・・・」
「で、お国の最終的な目標は平原を横断する街道を造ることらしい。俺たちの文化が失われることになるが、利点もある。流れに乗らなければ生き残れないしな。だから叔父貴はそれを受け入れていた」
「・・・・わざわざ報告に?」
「馬鹿、んなもんついでだ。弟分の顔を見に来ちゃ悪いか」
アーシュが頬を膨らませる。意外と子供っぽいんだな。ランシールはそう思いつつ微笑んだ。
「そうか、ごめん」
「まあいいさ。俺はもう戻るよ。あまり留守にもしてられないからな」
「えっ、もう? せめて食事くらい一緒に・・・・・副長たちにも、きちんと紹介したいし」
「そういうの、俺の柄じゃないから。ほんとは声かけるつもりもなかったんだ。もっと外に慣れたら、遠慮なく行かせてもらう。それに、お前たちの輪に割り込みなくないからな」
「・・・・・有難う、従兄さん。いつかまた、絶対」
アーシュは手を振り、夕闇の奥へ消えた。それ以上引き留めようとは思わなかった。
ひとりヒンメルの店へ向かっていたフォルセの視界に、佇んでいるスファルが入った。
「スファル殿。・・・・すまない、待っていてくれたのか」
「まあな。・・・・・お前と、少しゆっくり話をしてみたかった」
スファルは腕組みを解き、フォルセとともにゆっくりと歩を進める。
「あれから2年が経ったが・・・・・早かったな」
スファルの言葉にフォルセが頷く。
「セオンさまは変わられた。以前の王子殿下ではない・・・まったく別のお人だ。だが、良い変化だと思う。すべては―――お前と過ごした日々のおかげだろうな。フォルセ、感謝する」
「前にも言っただろう。礼を言われるためにセオンと過ごしたわけではないと」
「そうだったな。だが、言わずにはいられんのだ」
フォルセは微笑んだ。
「・・・・不思議だな。出会いは最悪だったのに、こんな風に話をすることができるようになったなんて」
「グラウディとも、顔を合わせるたびにそんな話をする」
「はは・・・・今更だから正直に言うが、俺は最初、貴方が嫌いだった」
本当に正直なフォルセにも、スファルは笑って頷いた。
「だろうと思う。覚えているぞ、牢越しに初めてお前と顔を合わせたときのこと。殺される、と・・・・・本気で恐怖した」
「すまないな」
フォルセが息をつく。
「スファル殿。貴方と共に戦えて光栄だった。これからも、連合とハルシュタイルの架け橋になってくれ」
「そのつもりだ。・・・・・っと、フォルセ!」
急にスファルが声をあげる。驚いて振り向きかけたとき、首筋に一撃加えられた。いつかと同じだ。フォルセはよろめいてスファルに抱き抱えられる。
「うっ・・・・!」
「まったく、お前は本当に背後からの接近に弱いな」
そこにいたのは紛れもなくシリュウと、オルコットもいた。フォルセは立ち上がり、非難の眼をシリュウに向ける。
「教官・・・・・もっとまともな登場の仕方ができないんですか?」
「うむ、できない」
フォルセは深くため息をついた。
「キシニアにご用でも?」
「ああ、少しグラウディに話すことがあってな。ついでだから寄った」
スファルがオルコットに視線を向ける。
「オルコットまで、どうしたのだ?」
「私のところにもシリュウさんが話をしに来まして、これからキシニアに行かれるというので同行させていただきました。久しぶりですからね、そろそろセオンさんもいらっしゃる頃かと思って」
オルコットは笑いを抑えきれず、微笑みながら言う。
「またノルザックを放り出してきたのか? 散々部下やバルフ殿に叱られたのだろう?」
フォルセの言葉にオルコットが照れたように笑う。
「叱られるのは慣れましたよ」
と、ランシールが追いついてきた。シリュウとオルコットを見て目を見張る。
「シリュウさん、オルコットさんも」
「ああ、ランシールさん。お久しぶりです」
オルコットが微笑んで挨拶する。シリュウが手を打つ。
「よし、これで全員そろったな。酒場に行こうではないか」
「良いんですか、隊長へのお話は」
「別に構わん。で、誰のおごりだ? 私は出さんぞ」
「教官・・・・・」
シリュウは意気揚々と歩を進める。元々酒はロキシーに負けないくらい好きな人だ。宴会ごとは大歓迎なのだろう。
なんとなくシリュウと連れだって歩く。シリュウが弟子に声をかける。
「ところでフォルセ、お前今年で幾つになった?」
「・・・・・28です」
「三十路が近づいてきたな」
「言わないでください、気にしているんですから・・・・・いつまで現役で通せるか、とね」
「お前は50過ぎになっても現役で通せるだろう。人生はこれからだぞ、フォルセ。最も、お前は早熟だから伸びはせんだろうがな」
「・・・・・いつもに増してきついです、教官」
「ほめているんだぞ」
フォルセは苦笑し、尋ねた。
「教官・・・・・【凍牙】の民で250歳って、俺たちに換算すると幾つなんですか?」
「そうだな・・・・・40代半ばか。だいたい500年が寿命だからな」
「では、あと250年はお元気に過ごせるのですね」
「何ごともなければな」
フォルセは少し俯き、呟くように言った。
「俺はそんなに長く生きられませんし・・・・・教官の生涯の中では一瞬の出会いに過ぎないのかもしれませんが・・・・・どうか教官、忘れないでくださいね。それが俺の最大の願いですから」
「馬鹿者、死期を悟った老賢者か、お前は。言われずとも、忘れるわけがなかろう。私は記憶力がいいからな。お前の槍の軌跡、構え、癖・・・・・・姿も声も、それ以外にも、忘れられそうにない」
「そうですか・・・・・」
「お前が死んだあと、お前の子孫に言い聞かせてやる。フォルセと言う男はこんな人間だったとな。だからお前、早く伴侶を見つけたらどうだ」
フォルセは急な展開にむせ、咳き込んだ。
「い、いきなりなんて話を・・・・!」
「聞いているぞ、お前アイオラから猛アタックされているそうではないか。それにさっきアイオラが同棲すると言っていたではないか。とっとと籍を入れてしまえ」
後半の「聞いた」は、盗み聞きである。
しかしシリュウは大真面目だった。
「人の義務は子孫を残すことだ。私には縁のなさそうなことだからな、お前の子供を孫のように思ってみたいのだ」
「教官・・・・・・・」
フォルセはシリュウを見上げ、それからふっと笑みを浮かべた。
ハーレイに話なんて、本当はなかったんじゃないか。ただ、彼の遠耳がセオンとスファルのキシニア訪問を知り、オルコットを誘って来ただけではないのだろうか。フォルセはなんとなくそう思っていた。
★☆
ヒンメルも加わって大規模な宴会が催され、セオンはいやいや強い酒を飲まされていた。そのさなかで、セオンはふっと姿を消していた。気づいたフォルセも席を立ち、その場を離れた。
予想通り、セオンは店の裏にあるテルファの墓の前にいた。近づくと、すぐセオンは気付いた。
「どうしたんですか?」
「いや、王陛下に何かあっては事だと思ってね」
「あ、フォルセさん酔っぱらってますね。冗談でもそんなこと言わないのに」
そういうセオンも頬が赤い。フォルセなどよりずっと酔っているだろう。おそらく酔いざましで外に出たのだ。
「・・・・辛くないか、セオン?」
フォルセに問われ、セオンは首を振る。
「辛くはありません。自分で選んだことですから」
「そうか。だが、兄さんの言葉になるが・・・・・無理はほどほどにな」
「はい。・・・・フォルセさんこそ、ずっとキシニアにいるんですか?」
「ああ。俺はここを離れない」
フォルセは断言し、微笑んだ。
「だからいつでも良い。何かあれば来い。これからは気軽に国境を越えられるのだからな」
「有難うございます」
セオンも嬉しそうに微笑んだ。
「ハルシュタイルでは最近、緑が芽生え始めたんです。少しずつ、あの荒野をなくしていきたいと思います」
フォルセは無言で頷いた。ハルシュタイルに緑が復活したら、見に行ってみたいものだ。
「もう、そんなに会えないかもしれませんね・・・・・」
さみしそうにセオンが言う。フォルセは肩をすくめた。
「そうでもないだろう。会おうと思えばいつでも。俺からそっちへ行っても良い」
「ですが」
「ああ、立場の話か?」
セオンが押し黙る。きっと一番嫌な話なのだろう。一介の騎士と国王だ。フォルセがどれだけこだわるか、知っている。
「良いか悪いか分からないが、俺も少し考えが変わった」
「そう・・・・ですか?」
「訓練生時代に暴れた分、騎士になってからはずっと規律や上官命令を第一にしてきたが・・・・・たまには、また自分のわがままを通すのも悪くないんじゃないか、とな」
フォルセは微笑む。
「俺たちは家族だ。たとえ生きる場所が遠く離れても、同じ大地を踏んで、同じ空を見ていられる。だから心配するな」
セオンの瞳に涙が浮かんでいた。セオンはそれを拭い、微笑んだ。
「はい」
この世界は良くなる。人が生きる限り魔物は消えないだろうが、それでも良くなる。フォルセはそう確信していた。
以上、「遠き空の下」終了です。
長々と拙い文章にお付き合い下さり、ありがとうございました。
次回作もよろしくお願いします。




