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8.正体見たり、枯れ尾花


あ、しまった。

思うより早く、青年は悲しげに顔を歪めた。

青年はヤマトと瓜二つだ。罪悪感が増す。

いや、別人だろう。まとう気配が全く違う。

しかし、どこかで見た覚えのある気配の気がする。どこだろ?

うーんと悩みながら、青年を凝視していたらしい。

表情がさっきより一層沈んで見える。


「ははは」

突然上がった笑い声は背後から。

「ロウ、なんで笑うんだ」

「あ、すまん。つい。だってお前、誰はないだろ」

「だ、だって別人じゃないか!それで、ヤマトはどこなんだ?」

おずおずとヤマトと瓜二つの青年が口を開いた。

「あ、あのシェンナさん。俺が、正真正銘ヤマトです」

「え!?だって、全然気配が……」

「恐らくコールブランドのせいでしょう」

フランツだった。ヤマトのそっくりさんに気を取られて気づかなかった。

「お前……なんで」

捕らえられた条件反射か、身を固くしてしまう。

睨みつけた視線は、あっさりと柔らかい笑顔にのまれてしまう。

「シェンナ師にはお詫び申し上げます。事情を説明もせず手荒な真似をしてしまいました」

フランツは深々と頭を下げた。

後ろに控えていた男たちも一緒に頭を下げている。よく見れば、あの場にいた奴らだ。

「なんで、こいつ等が?」

「言っただろ?アイゼンの召喚者だって」

そういえば聞いていた。が、納得はしてない。

「私は仕事もありますのでこれで失礼します」

「え!」

思わぬロウの言葉に声をあげる。冗談だろ、と願うように見上げた視線に、返事はない。

混乱するなかで、ロウの一言は追い打ちをかけた。

「ロウ!わ、私も行く!」

「馬鹿。もう無理だ」

ロウはすげなく、扉へ向かってしまう。

ここで一人残されるなんて無理だ。むりむりむり。

自分のことで必死だった私は周りがよく見えていなかった。

「シェンナさん、あなたと話したいんです!」

突然、ロウとの間にヤマトが割り込んできた。

ヤマト?なんだろう、気配だけじゃなく、違和感が拭えない。

「……あ、そーいえば言葉が」

「そうですよ!分かるんです!!俺、シェンナさんに伝えたいことがいっぱいあってーーシェンナさんに一番に会いたかったんですよ!」

あれ?

なんかヤマト、イメージが変わってないか?

ヤマトはきらきらと期待に満ちた瞳で迫ってくる。

なんだこれ……少し、鬱陶しいんだが。

「シェンナ、俺は言ったからな」

見透かした声が上から降ってきた。

『シェンナなら一目散に逃げたろうにーー』

あれって、まさか。

「ロウ!ロウ!待ってよ!」

思わずヤマトを押しのけ、向けられた背中に駆け寄る。

私の大の苦手な人物像。

空気の読めない、超前向き野郎で……

まさか、まさか!

「耐えろ」

ばたん。扉は閉まった。


『ご名答』


そう、聞こえた。

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