表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/34

Ep5-23 原子炉緊急停止

M−13号人工知能コアの持ち出しは原子炉の暴走を招くかもしれない?リスクを最小限に抑えるため、ノクターナルは原子炉緊急停止を試みる――

「ガジェットの8番だ。放射線防護術式をダウンロードしておいた。起動しておけ」

「はい」

 通路を駆け足で進みながらリーダーからの指示で術式を起動する。放射線をカットするせいか、目に映る光景が全体に緑色を帯びる。

「俺は下だ。おまえの担当するバルブはそのまま奥に進んだところにある」

「了解」

 リーダーがキャットウォークの途中にある梯子を下りて発電機のあるエリアに向かう。俺はM-13号が示してくれた循環系を制御するバルブを見つけてそこに駆け寄った。

「電力停止十秒前、五、四、三、二、一、停止」

 バシィッと大きなスパークが弾けて一瞬あたりがホワイトアウトする。リーダーが何かの術式を使って主電源の母線を切断したようだ。

 ヒュゥゥゥンと力なくうなだれるような音が響いて建物内の照明が裸電球のような黄味がかった色の非常灯に切り替わる。

 想像に任せるしかないが、いま、炉内では制御棒がゆっくりと降りて行っているのだろう。 長い数十秒間が経過して、制御棒が一番深い位置に着いたようだ。

「核分裂反応停止。よし、いいぞ、自然循環系に切り替えろ」

「了解」

 すう、はあぁぁ、と深呼吸を一回。慌てる必要はない。

 ふんぬっ。

 結構固く閉まっていたバルブに両手でつかまって回していく。何回転かしたところでがっちりと止まった。

「よし、自動減圧系の作動を確認。あとは自動で冷却が進むはずだ」

 よかった。うまくできた。

「いったん中央制御室に戻るぞ」

「はい」


 途中で工廠のほうから戻ってきたショーさんと合流する。

「生産ラインのほうも壊しておいたぞ。あれを見たらいくらしつこい連中でもそれ以上奥に行く必要はないと思うだろうよ」

『えー、それ、あたしがやりたかった』

 インカム越しに片梨さんの不満気な声が聞こえる。

「おまえがやったら火の海にしちまうだろうが。地下で火は御法度なんだよ」

『ぶぅ』

「わかった、わかった。今度モノを効果的に壊す方法を教えてやるよ」

『ほんと?約束だからね。あとでなかったことになんかさせないからね?』

「ああ、約束だ」

『やった!』

 機嫌のいい返事が返る。うーん、言っていることは剣呑なんだよなあ。


「おかえりー」

 中央制御室のドアを開けると待ちくたびれたように片梨さんが声を上げた。背中には用意したハーネスでバックパックのように生体演算ユニットを背負っている。

「M-13号、まだ会話可能か?」

『はい。電力をセーブするためにインカムに直接接続しております』

「残りのユニットは持って行かなくていいのか?」

『はい。あれらに自我はありません。私の外部演算ユニットとして使用しておりましたので、私自身のタスク処理能力が大幅に低下することになりますが』

「よし、ではここを脱出する。桔花」

「こっちよ」

 円形の部屋の反対側にある扉を開けて飛び出していく。俺も慌ててその後ろを追いかけた。 くねくねと曲がりながら通路を進む。途中、分岐したところもあったが基本は下へ進むルートを選んでいく。

 最後に丸いハッチのある行き止まりにたどり着いた。

「この下が外につながっているわ」

「よし」

 ショーさんが錆びついたハッチのハンドルを回して引き開ける。そこは天然の洞窟のような竪穴になっていて、潮風に錆びてボロボロになった短い梯子がついているだけだった。

 ショーさんがサッと穴に飛び込んで最初に下に降りる。

「クリア」

 着地音からして高さは二メートルほどか。慎重に行けば大丈夫だろう。

「おさき」

 片梨さんの次に俺がハッチを下りる。

「わっ」

 着地の瞬間に足を滑らせて尻餅をつく。下は潮だまりになっていて派手に水しぶきをあげた。

「どんくさいわねぇ」

 片梨さんがニヤニヤ笑いながら手を差し伸ばす。

 くっそぉ、悔しいがシロウト丸出しだ。

「いくぞ、俺とショーが先行、桔花と石守は後衛だ」

「はい」

「ちぇっ、また後衛?」

「背中にお客さんを背負ってるんだ。大人しくしてろって」

「ぶぅ」

 軽口を叩きながら天然の洞窟を進む。真夜中だから明かりはないが、潮騒が聞こえるから出口は近いようだ。そのせいか、ついつい気が緩んでしまっていたようだ。

敵襲エンカウント!」

 最初の銃声が先だったのかリーダーの警告が先だったのかもわからなかった。気づけば片梨さんに突き飛ばされて硬い洞窟の地面に転がされていた。

「全周に防御結界を張って!跳弾が来るわ」

 ダダダダッと絶え間ない銃撃が続く。合間に辛うじて敵チームの声が聞こえた。

「ひゃぁっはっはっはあ!ここで網を張っていて正解だったぜぇ!」

「上はドンパチやらかしてて逃げ場がないからなぁ。要塞の出口があるとしたらこの天然の洞窟のほうだと目星をつけたオレ様の慧眼に恐れ入りやがれ!」

「オラオラオラァ。死にたくなかったらお宝置いて帰んなあ!」

 どうやらターゲットの横取りをもくろんだ待ち伏せにあたったらしい。

「まったく、ランクAのレイドにどうやってこんなチンピラが紛れ込めたのかしら」

 岩陰から覗き込むようにして洞窟の出口を見る。

 相手は少人数のようだがここまで戦闘をしてこなかった様子で弾薬が潤沢にあるようだ。絶え間ない攻撃に前衛の二人も有効打を打てずにいる。

「連中、あの様子じゃタイムリミットのことも知らないようね。英太、ガードお願い」

「何をする気だよ?」

「こっちもうっぷんが溜まってんのよね。時間もないことだし、ドカンと一発、かましてやるわ」

 言いながら片梨さんがすくっと立ち上がる。

 赤いプロテクティブスーツが暗闇の中でマズルフラッシュの明かりに照らされて浮かび上がる。途端にこちらに銃火が集中するが、俺の術式が弾丸を逸らして届かせない。

 片梨さんがすくっと前に伸ばした右手の周囲に五つの火炎方陣が浮かび上がる。

「ぶっとべ!」

 掛け声とともに無数の火炎弾が尾を引いて洞窟の入り口へと飛んでいく。

「どわぁっ」「ひえっ」

 火炎弾は入り口の陰に隠れていた敵を追尾するように曲がり、その場で大きく爆ぜた。

 数名の敵が吹き飛ぶ姿が影絵のように夜闇に浮かぶ。

「はん、口ほどにもない。雑魚はしょせん雑魚ね」

 一撃で敵チームを屠った片梨さんが仁王立ちでねめつける。

「ち、くしょ、おぉ。化け物め、これでも喰らいやがれ」

 満身創痍の敵が最後の意地でアサルトライフル型デバイスの引き金を引く。

 ボヒュッ

「グレネーード!」

 ショーさんの警報が洞窟に響く。

 まずい。俺の防御障壁は風の層で銃弾の運動エネルギーを逸らすことで成り立っている。炸裂弾のような爆発力には効果が薄いのだ。

「ちぃっ」

 片梨さんが左手をふるう。そこからナイフのような炎の刃が放たれた。

 グレネード弾がまだ放物線の上の位置にあるうちに炎の刃がそれを洞窟の天井に縫い付ける。さすが、と思った次の瞬間だった。

「危ない!」

 炎に縫い留められたグレネード弾が炸裂する。

 その衝撃で柔らかな砂岩でできた洞窟の天井が崩落した。

 ガラガラガラ……、パラパラ。

「桔花、石守、無事か?」

「けほっ、けほっ。大丈夫です」

「でもかなり崩れちゃったわね。これ、出られるかしら?」

「難しいな。下手に掘るとさらに崩落する危険性がある」

「そっちは出られるの?」

「ああ、大丈夫だ。敵の排除も完了した」

「なら二手に分かれましょう。M-13号、他に出口はない?」

『少し戻ることになりますが、地上に出るルートがあります』

「わかったわ。そちらに迂回しましょう」

「議論している時間はなさそうだな。急げよ」

「了解、リーダー。さ、行くわよ、英太」

「ああ、うん」

 俺は目まぐるしく変わる状況について行けずに親鳥を追う雛よろしく言われるがままに片梨さんについて走り出した。

敵の不意打ちのより分断されたノクターナル。英太と桔花は仕方なくもと来た道を戻って別の出口を探すが――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ