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Ep5-22 選択のとき(2)

 ***


「わっはっはっ、上手くいった。M-13号、なかなかやるじゃないか」

「ショー様の指示通りに実施した結果です」

「ほほう。お世辞も言えるようになったか。さすがに学習が早いな」

 火薬の量を抑え、シャシーを軽く、薄くすることで殺傷力を抑えたドローンを短時間で製造できるようにした。それを狭い通路に配置して絶え間なく爆発させることによって突入してくるレイドチームを押し返す作戦がみごとに当たった。ここまで来れるレイドチームは防御術式を使える者ばかりなので殺傷の危険がない爆発に巻き込みやすい。固い防御が仇になって押し戻されるのだ。連中も制限時間があること知っているはずだ。ここであと五分も粘れば、連中も撤退するしかなくなる計算だ。

「生産ラインを自爆タイプ一本に絞ったからな。玉数も十分だ。このまま押し切るぜ」


 ***


「主電源の母線を切断すると原子炉の電源が喪失します。その結果炉心内では自動的に制御棒が下ります。これにより核分裂反応は速やかに停止します」

 M-13号自らの立案で小型原子炉の停止方法を検討しつつレクチャーを受けた。

「電源の切断スイッチはないのか」

「はい。人為的に電源を切断する機能は実装しておりません」

 そりゃそうだよね。SF映画なら人間が電源スイッチを切って人工知能を停止させる。逆に人工知能は人に電源を切られないように工夫するものだ。自ら設置した発電施設を外部の人間が容易に切断できるようにするわけがない。

 ただ、原子炉そのものはM-13号のオリジナルではなく既製品なので動力が無くなると原子炉が停止するようフェイルセーフに設計されているらしい。

「そうか。母線の切断は俺が受け持とう」

「核分裂反応が停止しても崩壊熱は継続して放出を続けます。これを冷却しなければ停止のプロセスは完了しません。そのため、電源喪失時には自然循環に移行するようバルブを開放する必要があります」

「そこも自動じゃないの?」

「はい」

 ぐぬぬ。

「そこは石守に受け持ってもらおう」

「わかりました」

 大丈夫、バルブをひねるだけだ。場所さえ分かっていれば子供でもできる。……はずだよね?

「自動減圧系は電源喪失後も十分に機能するよう設計されています。炉内の蒸気圧が減圧されることにより、低圧注水系が作動して炉心に大量の冷却水を取り込みます。以上が原子炉停止のプロセスになります」

「つまりやるべきことは、主電源を切る、制御棒が下がったことを確認する、自然循環用のバルブを開くの三つだな?」

「はい。電源喪失後は電子ロック系の扉はすべて開放状態になります。そのため、電力停止は敵レイドチーム撤退後に行うことをお勧めします」

「ほかに注意事項はあるか?」

「電源が喪失すると私は待機状態に移行します。ユニット内のバッテリーは約十二時間で出力が十パーセント以下に低下します。それまでに電源に再接続してください」

 間に合わなかった場合M-13号は消滅、つまり死んじゃうんだよね。責任重大だ。

「放射能漏れの危険はないの?」

「自動減圧の場合、処理はすべて閉鎖系で行われます。問題ありません」

 よし、何とかなりそうだ。残り時間が少ないのが気になるところだけど。

 そのとき、インカムに呼び出し音が鳴り、ユナさんの切迫した声が耳に響いた。

『漣、こちらユナ。緊急事態よ』

「どうした?」

『タイムリミットが早まった理由がわかったわ。米軍が猿島要塞の空爆を計画している。攻撃予定時刻は二十六時ちょうどよ』

「なによそれ。米軍だがなんだか知らないけど、レイドに余計な手出しすんじゃないわよ!

「運営は米軍の介入を容認したのか?」

『抗議したようだけどダメみたいね。三笠はレイド領域の外よ。そこでは運営もアンダーグラウンドな組織に過ぎないわ。ただ、北家は何とかしようとしているみたい。米軍の動きも彼らから特別に横流ししてもらったの。あちらはあちらで空爆を何とかすることを計画しているみたい。だけど万が一を考えると今すぐ撤退したほうがいいわ』

「北家が撤退しろと言ったのか?」

『そうじゃないけど……』

「ほかに北家からの伝言は?」

『よろしく頼む、とだけ。でもそんなの馬鹿げてるわ。ただのレイダースにそんな義務も責任もないもの』

「そうだな」

 話を聞いていた片梨さんとリーダーがアイコンダクトを交わす。

「了解した。26時までに撤退を完了する。通信終了オーバー

『……わかったわ。ご武運を』

「と、言うわけだ。時間がない。すぐに原子炉の緊急停止措置を始める。ショー!」

『了解。自爆ドローンをありったけ通路に送り込んでやりますよ。それで撤退しないんなら、あいつらの自己責任だ』

「あたしは退避ルートを確認しておくわ」

「任せる。三分後に電源を遮断する。石守、ついてこい」

「はいっ」

 足下に原子炉、頭上にミサイル、そして手元には未知の人口知性体。

 いよいよエクソダスの開始だ!


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