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Ep5-21 ファーストコンタクト

ついにたどり着いた中央制御室でノクターナル。人工知能M-13号との出会いがもたらすのは闘争か、それとも――

「開いたぞ」

 最後の電子ロックを解錠して円形の広い部屋に出る。壁面は計器類やモニタに覆われ、多くの装置に電源が入っており生きていた。中央には半透明のガラスチューブのような円筒が天井から床までを貫くように設置されていて、円周に沿って黒大理石のような素材でできたテーブルが柱を取り囲んでいる。テーブルには全部で十三個のステンレス製の丸い蓋が配置されていた。

「ここが中央制御室で間違いなさそうね」

 スイッチレバーやキーボードが並ぶ制御卓の前に肘掛け椅子が数脚並んでいる。明らかに人間のために設計された部屋だ。

「さてと、コアはどこかしら」

 片梨さんが腕まくりのようなジェスチャーをしながら制御卓に向かう。

「勝手に触っちゃっていいの?」

「とっくに侵入はバレているんだし、誰に遠慮することも無いわよ」

 豪胆な台詞を吐いておもむろにキーボードを叩く。

 いくつかのモニタが明るくなり、制御ウィンドウが重なるように表示されているのがちらりと見えたあと、パスワード入力を促すサブウィンドウが表示された。

「英太、どこかにパスワードを書いたメモ紙とか付箋が落ちてない?」

「さすがにそんな不用心なことはしないでしょ」

「いいから探す!」

 そういいながら片梨さんは単純な数字をやみくもに打ち込んで試していく。

「それらしいものは見当たらないねぇ」

「そ。ユナさん。ここのシステムのパスワードって分かる?推測でもいいわ」

『情報はないわね。最後に所長の地位にいた人の生年月日は19XX……』

「んー、はずれ。ダメね。ユナさん、今からこっちに来てくれない?」

『桔花ちゃん、無茶言わないで』

 苦笑気味にユナさんが答える。

「せめて要塞内の地図とか表示されないかしら……」

 すると、壁面の一番大きなモニタが四分割されて画面いっぱいに四枚のマップが表示された。

「地図が出た……音声コマンドか」

「現在位置を表示」

 片梨さんの声に反応して三枚目のマップの左上のあたりに描かれた丸い部屋に白い光点が四つ現れる。

 ほらね、とばかりに自慢げな顔を俺に向ける。

「でも音声コマンドに反応するってことはさ、ターゲットの人工知能には会話が筒抜けなんじゃない?」

 慌てて片梨さんが口を手でふさぐ。

「そうだな。だが聞いてみる分にはタダだ」

 部屋の隅々をショーさんと手分けしてチェックしていたリーダーが戻ってきて制御卓に向けて言った。

「M-13号コアの場所はどこだ?」

 しばらくの沈黙の後、どこかから圧縮空気の漏れるようなシューという音が聞こえてきた。そのまま待っていると、中央の柱の周囲のテーブルから円形の光が漏れだし、ステンレスの蓋が開いて十三本の筒が順にせり上がり始めた。

 筒は金属の台座に上下を挟まれたガラス製で、中に青味がかった透明な液体に満たされていた。中央部分に金属ともプラスチックとも判別の使いない素材でできたいびつな球形のモールドが浮いている。

「ずいぶんと協力的だな」

「でも十三本なんて多すぎるわ。全部を持って行くのは無理よ」

「ターゲットはM-13号なんだからこのうちのどれか一つなんじゃないのか?」

「でもラベルはありませんね。もと居た人たちには並び順か何かですぐにわかったのでしょうか」

「M-13号コアはどれだ?」

 反応がない。

「聞こえないのかしら」

「質問が悪いのかも」

「なによ。リーダーの質問が間違っているっていうの?」

「そうじゃなくて、これ全部でM-13号コアなのかもと思ったんだ。それならどれか一つを示すのは無理だろう?だから返事しなかったのかなって」

「そうだな。ここはひとつ、ファーストコンタクトものに倣ってやってみよう」

 リーダーが再び制御盤に向き直っていった。

「聞こえるか?私の言葉が理解できたなら、モニタにYESと表示しろ」

 サブモニタのひとつが明るくなり、コマンドプロンプトのあとにYESと表示される。

「おまえは誰だ?」

 少し間を開けて画面に文字が表示される。

 ――M-13号は、ここにいます。私を示す固有記号はM-13号です。

「おまえは人工知能か?」

 ――私は考えます。だから、装置ですが、思考体です。

「おまえを運び出すことは可能か?」

 ――M-13号はこの場所です。私は分離可能です。

「おまえはこの十三個のケースのどれか一つなのか?」

 ――M-13号コアは十三個の生体演算ユニットから構成されます。M-13号の機能を保全するためにすべてのユニットを必要とします。私は分離可能です。

「ああ、もう、まだるっこしいわね。あんた、しゃべれないの?聞き取りができるなら、声で答えなさいよ」

『肯定します。音響チャネルを使った回答を実行します』

 それまでモニタに文字の羅列で表示されていたM-13号の言葉が、女性とも男性ともつかない無機質な声音こわねで天井のスピーカーから流れ出す。

「やればできるじゃない」

『肯定します』

「今のは質問じゃないわ。もうちょっと日本語の会話がうまくならない?」

『肯定し、承認します。日本語ライブラリをインストールします――』


〔つづく〕

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