表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/34

Ep5-19 地下工廠

大編成による正面突破を企図したラグナロクとは別にノクターナルは少人数での侵入を試みていた。要塞の戦力がラグナロクに集中する中、ノクターナルは要塞深部へと先行していた――

 古びた螺旋階段の手すりに沿うようにファイバースコープがするりと滑り降りてくる。左右に首を振って階下の様子をうかがう。

「クリア」

 ショーの合図に四人が順に階下に降りる。上の階もそうだったが、古い要塞跡は機材がすべて取り除かれてがらんとしている。部屋の隅にはそれなりに土ぼこりが積もり、長く人の活動があった気配はない。

「何も無いわね」

「でもあんなにドローンが出て来たんだからどこかに出入口があるんじゃないかな」

「わかってるわよ、そのくらい」

 余計なことを言ったみたいで睨まれてしまった。

「ここですな」

 床に残されたひっかき傷のような痕跡を辿っていたショーが立ち止まってマグライトの明かりで一点を示す。

 巧妙に偽装されてはいたが、その場所から無数のドローンの足跡が放射状に延びていて、踏み荒らされていない床が円形にせり上がる構造になっていることがうかがえた。

 その場所から壁に向かって視線を這わせていたリーダーが俺を振り返っていった。

「石守、このあたりに量子結晶の気配はあるか?」

「はい、えーと、探ります」

 急に振られて慌てながら目を閉じて集中する。周囲に気を配るイメージ。円形の領域を少しずつ広げて……。

「あ、このあたりです。触れるほどの大きな結晶は感じないですけど、何かありますね」

 俺は左手の壁に近づいて手を当てた。

「ふむ、ここだな」

 リーダーと入れ替わって壁の脇から少し下がる。リーダーは何かしらの方法で奥を探っているようで、グローブを着けた手で壁に触れていく。

 探る手が不意に止まって周辺を少し強めの力で押す。すると、壁の一部が中の軸を中心にくるりと回って開いた。

 テンキーが現れる。電源は生きているようで、ディスプレイ部分の脇に小さく緑のLEDが点灯していた。

「すごい、なんでわかったんだろう?」

「量子結晶は人の意識が向けられるところに生えやすいっていうからな。隠し扉のたぐいを探すときに量子位相観測機ソナーを使うってのは割と知られた裏技だよ」

「そうなんですね。へー」

「本当にすごいのはそれをガジェット無しでやっちまう英太なんだがな」

「いえ、そんな」

「ビギナーの勘がたまたま当たっただけでしょ」

 手厳しい片梨さんの意見が飛んでくる。

「口数が多いぞ」

 リーダーにも叱られてしまった。

 リーダーが手にしたマグライトのお尻の部分のリングをひねる。光量を抑えた白色の光が消えてブラックライトに切り替わる。リーダーがそれをテンキーにかざすと一部の数字キーだけが淡く光った。

 光った数字に触れて何度か暗証番号を試す。三度目のトライで床下から機械音が響いた。

 円形に切り取られた床の一部がせり上がっていく。内部を確認していたショーさんがアイコンタクトでリーダーに合図して先に下りる。

「クリア」

「拍子抜けね。ドローンはもう打ち止めかしら」

「塁道のほうに戦力を向けているんだろう。ラグナロクは相当な戦力で来ているようだからな。だがトラップが仕掛けられている可能性はある。気を抜くな」

 床下の階はリノリウム張りの通路になっていた。薄暗いが照明も生きている。俺たちは明らかに戦後以降に作られたとわかる通路を進んでいった。階段を何段か下りた先にあった扉は施錠されておらず、普通にドアノブを回すだけで開いた。

「なんだ、ここは?」

 ショーさんが思わず声を漏らす。

工廠こうしょうのようだな」

 縞鋼板のタラップを下りた先はそこそこ天井高のある広い空間になっていた。そこに大小さまざまな種類の3Dプリンターが設置されている。それらの装置の間を車輪の付いたテーブルワゴンのような台車がせかせかと動き回っていた。

「凄いな。金属成形ができる3Dプリンターまでありやがる」

 通り過ぎるワゴンの上には甲殻類とマシンガンの銃身が合体したような造形のドローン筐体が載っていた。自動運転のワゴンは侵入者に対して攻撃を行う機能はないようだ。俺たちが近づいても迂回して通り過ぎていく。

「これ、OZのドローンに似てますね。ほら、ここに量子結晶を取り付けるホルダーがある」

 俺は作業台の上にほぼ完成品の状態で置かれているドローンに近づいて言った。

「英太が何でそんなこと知ってるのよ」

「トオノさんが見せてくれたんだよ。『天使の遺灰』のときに鹵獲したドローンを分解して技術調査してたんだ」

「OZのドローン技術がなぜここに……」

「ヤバいな。これが完成すると敵戦力に術式を使うドローンが加わるってことか」

「準備は万端といったところか。幸いなことに肝心の量子結晶を手に入れていないようだが……それも時間の問題だな」

 リーダーが別の作業台に並べられた四角い箱状のガジェットをショーに放り投げる。

量子位相観測機ソナーですね。量子結晶は……空か」

「ああ。最初の量子結晶を入手した段階でこの量子位相観測機ソナーを使って採掘を始めるだろう。あとはネズミ算式に増えるということだ」

「そうならないようにコアを確保しに来たんでしょう?さっさと捕まえに行きましょうよ」

 俺たちが組み立て途中のドローンを観察している間に片梨さんんはすでに次の部屋の扉に手をかけて待っていた。

 俺たちが急いでそちらに向かう途中、片梨さんがあきれたように言葉を漏らしていた。

「ったく、男どもときたら。メカを目の前にするとすぐ寄り道しちゃんうんだから」


猿島要塞の地下に兵器の生産ラインを発見したノクターナル。果たしてこの島には何があるのか――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ