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Ep5-18 張り子の虎(2)

レイド境界の外で起きた予想外の事態に、米軍第七艦隊が介入を決断した。英太たちに残されたタイムリミットは――

「状況報告!」

 戦闘態勢に切り替わった司令官の語気に鋭さが加わる。

「B-21到着まで三十分。現場の気象状況は晴朗クリア、問題ありません」

 モニタの男の眉がピクリと動く。

「ずいぶんと手回しがいいのですね」

 第七艦隊の作戦圏で戦略爆撃機を配備しているのはグアムにあるアンダーセン空軍基地だ。直線距離でも横須賀までは三時間はかかる。

 初めて男の顔に浮かんだ驚きの表情を見て艦隊司令官は溜飲を下げた。

「たまたまこの時刻に訓練飛行の予定が組まれていたものでね」

「降参です。このあとは観客に徹することにいたしましょう」

「うむ」


 あいさつの後、音声を切って映像だけに切り替えた男は椅子に深く腰かけると含み笑いを浮かべてつぶやいた。

「第七艦隊司令ゴードン・マーキュリー中将。優秀な方のようだ。B-21ですか。あれなら日本国の防衛網にも痕跡を残さずに侵入できるでしょう」

 第六世代ステルス戦略爆撃機B-21。通称レイダー。次世代機初の実戦投入がレイド現場になることに奇妙な縁を感じる。

 男はデスクの上の受話器を取り上げると言った。

「『運営』のエージェントにつないでください」


 ***


「イテテテテ。ちくしょう、機械のくせにやりやがったな」

「じっとしてろ。まだ機銃が狙っている」

 ラグナロクの中にも先天的に術式が使えるいわゆる術師タイプの隊員がいた。チームの方針として均一の装備と均一な技量をもった兵士を大量投入する戦術を是としている。そのため本人に素養があっても普段の戦闘ではガジェットを利用した防御術式を展開している。が、術師の素養がある者なら今回のような非常時にはガジェットによらない術式を展開して自分の身を守ることくらいはできる。ただし、積極的に訓練を積んでいない者は防御術式の発動が遅れて四肢にいくつか被弾してしまっていた。

「なるべく壊さずに制圧するっていうところに無理があったんだ。こんなやつら、グレネードをバカスカ放り込んでやりゃあ、どうにでもなるってのに。くそっ」

「何人動ける?」

 残った隊員の中で一番階級の高い班長クラスの者が状況を確認する。

 いくつかある擁壁のくぼみに身を隠している隊員が各々に合図を送ってくる。

「六名です」

 要塞の機銃は侵入者の殺戮までは望まないらしく、負傷して床に這いつくばる隊員たちへの追撃は行わなかった。負傷者たちはお互いに助け合い、匍匐前進で弾薬庫内や壁のくぼみに退避した。

 このまま時間切れまでにらみ合うか……。

 そう考えたとき、班長のインカムが鳴った。

「こちら本部、状況は?」

「負傷者多数。動けるのは六名ですね。現在敵の攻撃は止んでいます。が、こちらもトンネル前の塁道で足止めをくらっており動けません」

「了解、少し待て」

 なんだ?こういうときの本部の決断はいつも早いのに。

 違和感を感じつつ待つこと三十秒。インカムが再び鳴った。

「『運営』からミッション達成条件(メルクマーク)の変更通達があった。コアの回収は不要。要塞内部の施設を破壊し機能停止を最優先とする、とのことだ」

「なにっ!」

 レイド途中でミッション達成条件が変わるなんて、そんなの聞いたことないぞ。

「さらに制限時間の短縮も通告された。26時までに島を退去すること。制限時間を超えた場合、命の保証はないそうだ」

「なんだって!?」

 馬鹿げた話だ。あと三十分弱で要塞を機能停止させて負傷者全員を退避させるだと?

「どうする?班長」

「そんなの決まってらぁ。機械どもに目にもの見せてやる。俺がありったけのグレネードを放り込んでやるから、動けるおまえらで突入してぶっ散らばせてやれ!」

 脚から血を流しているが目はギラギラと燃えている。

「そうだな。陽動を兼ねて動ける者で突入する。怪我が軽微な者は重傷者をサポートして浜辺まで撤退。遠藤、援護射撃は任せた。いくぞっ」

「了解」

「へっ、そう来なくっちゃ」

 脚から血を流したまま擁壁の端まで這いずっていき、手にした連装式グレネードランチャーを連射する。

 ポコン、ポコン、ポコン……ドーン、ドーン、ドーン

「もう一丁!」

 ポコン、ポコン、ポコン、ポコン、ポコン、ポコン……ドドーン、ドドーン、ドドーン

「けっ、ざまあみろや!」

 もうもうと土煙が舞う塁道を煙幕代わりにしてラグナロクの生き残り六人がトンネル入り口まで一気に駆け抜ける。

 ピン、カコン、コン、カラカラカラ……ドーン

 手榴弾を何個かレンガのトンネルに放り込み、ドローンや壁の銃口を潰して先に進む。

「ここから中に入る」

 事前に目星をつけていた入り口からトンネルの裏手にあたる要塞内部の部屋に侵入した。

 どうせここには人間は居ない。動くものはすべて敵だ。

 ここまでいいようにやられてきたうっぷんを晴らすように、六人の兵士は手際よく要塞の防御施設を無力化しながら奥へ奥へと進んでいった。


ミッション達成条件が変わった!さらに時間を限られたなかで攻撃の制約を外された兵どもが最奥部目指して進撃を開始する。果たして時間内にたどり着けるのか――

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