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Ep5-10 上陸計画

本番を明日に控え、作戦の最終確認を行うノクターナルの面々。英太も新人なりについて行こうと真剣な表情でリーダーのブリーフィングを聞いていた――

「明日の作戦だが、西の崖側から上陸を試みる」

 ノクターナルのリーダー、玖条漣が会議室のプロジェクターに映し出された文字を背景にブリーフィングを開始する。スクリーンには猿島の航空写真が大きく映し出されている。

「やはり東岸は無しですか」

 ショーさんが顎に手を当てて地図を見ながらつぶやく。

「過去の記録によると島の長手に沿って東側にずらりと砲台陣地が並んでいたことが分かっている。東京湾への侵入に対する備えなのだから当然だが、仮に迎撃システムが設置されているとしたら湾の外側に向けた部分のほうが厚いだろうという予測だ。西側には絶対に銃口を向けてはならない()()もあるしな」

「米軍基地ですな。確かに、豆鉄砲でも虎の尾を踏むことには変わりないか」

「逆に言えば西岸からの侵入は米軍の観測対象になるでしょうね」

「そうだな。レイドの結界があるとはいえ光学的な観測は疎外されない。量子結晶の応用技術は軍事転用に結びつきやすい極秘情報だ。第三勢力との間に遮蔽物がない状況は運営としても機密保持上絶対に避けたいところだろう。が、日本政府ものっぴきらない事情があるらしい。米国との密約はあるのだろうが、そこはそれとして我々としても極力手の内を明かさない方向で侵入を進める必要がある」

 表向きは民間企業からの依頼ということになっているが、裏では政府の意向が強く働いていると玖条さんが言っていた。政府って日本だけじゃなくてアメリカも含んでたのか。なんかヤバくない?

「じゃあどうするの?また空から飛び降りる?」

「それは不味い。基地の飛行禁止区域に抵触しちまう」

 ショーさんの指摘に玖条さんがうなずく。

「それに敵性勢力の対空能力がどの程度か不明だ。ドローンを打ち落とす威力と精度があれば空挺降下中の人間を仕留めるなど朝飯前だろうからな」

「崖側の登攀なら様子を見ながら進められますからね。少数部隊の隠密行動ならそっちのほうが無難ですな」

「ああ。それに今回はラグナロクも参戦することが分かっている。彼らのレイドスタイルは完全な軍事作戦だ。南側の砂浜からの強襲揚陸作戦を取るだろう」

「連中のことだ。一個中隊くらいの戦力は投入してくるでしょうな。そうなると現場は銃弾のバーゲンセールだ。小規模チームはとばっちりを喰って良くて撤退、悪くすれば壊滅ですか」

「そういうことだ。今回、敵性勢力が武力行使をしてくる前提で行動する。規模も継戦能力も不明だ。レイド開始から最初の十五分は様子見をする。ラグナロクが短時間で押し切るようなら我々に勝ち目はない。潔く撤退だ。が、膠着するようなら迎撃の隙を突いて内部に侵入しターゲットを直接狙う」

 全員がうなずく。

「ターゲットのある場所は目星がついているの?」

 片梨さんが質問をする。

「ユナ、地図を」

「はい。これが記録に残っている猿島要塞の配置図よ。過去の地図だけど、遺構を利用して地下施設がつくられたとするとやはり司令所部分に入り口が作られている確率が高いわ。司令所の入り口はトンネル内部と島上部の二ヶ所。島上部の入り口は樹木に覆われていて航空写真でも確認できなかったけれど、電燈照光座への連絡通路が設置されていることが分かっている。電燈照光座、今でいうサーチライトの設置場所は――」

「標高の一番高いところ……展望広場ね!」

 撤退もありうると聞いて顔をしかめていた片梨さんが生き生きとした声で答える。やっぱり高いところが無条件で好きってことなのかな。

「正解。敵の防衛ラインも厚いとは思うけれど、それを言うなら島全体がびっくり箱状態だと思うのよね。敵のホームグラウンドに上陸するんだから開けた場所のほうが選択肢が多い分安全と言えるわ」

 安全という言葉の定義が一般常識と果てしなく乖離していると思うんですけど。

「今回私は東京湾沖に停泊したクルーザーで待機ね。情報管制もここで行うわ。作戦終了後の撤収先もこちらよ」

「レイド開始時刻にクルーザーから潜水推進装置(DPV)で出発、エリア内で様子をうかがう。上陸作戦開始は01:15(マルヒトイチゴ)だ」

「「「了解」」」

「……あのう、DPVって何ですか?」

「バッカねー、水中スクーターのことよ。知らないの?」

「あのダイバーが手でつかまって引っ張ってもらう水中モーターみたいなヤツ?」

「そうそう」

「そうか。英太はDPVを使ったことがないのか。盲点だったな」

 玖条さんが腕を組んで考え込んだ。

「ん?待って。そもそもダイビング経験はあるの?」

 ユナさんがタイピングの手を止めて振り返る。

「水泳は学校のプールの授業程度ですが……」

「ど素人かよ……って、ど素人だった。そうだった……」

 ショーさんも頭を抱えている。

「どうすんのよっ!本番まであと三十時間しかないじゃない!」

 どうすんのって言われても……どうしよう?

「ふむ。一晩対策を考えてみよう。とりあえず今日のところは解散だ」

「そうだな。一晩寝ればいい案も浮かぶだろ」

「そうね」

 そうなの?

「仕方ないわね。あんたはしっかり休んで体調万全で来るのよ」

 沸点の低い片梨さんまで落着きを取り戻している。リーダーへの信頼の厚さが半端ないよ。


ダイビング未経験という致命的な技能の欠落が指摘され万事休す!?リーダーが対策を考えてくれることになったけれど、たった一日で何とかなるのだろうか……。スタート前からつまづいた英太は果たしてレイドに参加できるのか――

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