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トリニティ  作者: かいり
8/10

心穿の声と、封じられた真実

胸の奥に、 まだ息をしている影がある。

忘れたふりをしても。 名前を変えても。 夜に逃げても。

影は、消えなかった。

これは、影と共に生きてきた 一人の女の子の物語

拠点では通信が途切れ途切れに続いていた。


『銀狼!敵側が……“銀狼の名前”を大声で呼んでいます。挑発的な言葉を混ぜながら……こちらを外に出そうとしているようです!』


団員たちは息を呑んだ。


「……紗羽の名前……?」

「そんな……」


紗羽—銀狼は静かに立ち上がった。


「心穿の玲央らしいやり方だ。俺を外に出せば勝てるとでも思ってるんだろう。」


凪が緊張した声で問う。


「銀狼……どうしますか。」


紗羽は金縁のメガネを外し、机にそっと置いた。

その仕草だけで、部屋の空気が一気に張りつめる。


「……乗らねぇよ。あれは“罠”だ。」


団員たちは息を呑む。

紗羽の顔は完全に“銀狼”のそれだった。


震える声で報告が続く。


「銀狼……敵側は“紗羽が出てくるまで続ける”と言っています。」


「続けさせておけばいい。その間に位置を特定する。

銀狼の名前を呼ばねぇのは気に入らねぇけど。

まぁでもボスがあれならそうなるのも仕方ないな。」


狼牙たちは一斉に動き出した。


藍香は紗羽の背中を見つめ、小さく息を呑む。


(……紗羽が遠く感じる

でも……誰よりもみんなを守ってるんだよね)


通信が再び鳴った。


『銀狼!敵側が……“お前の大事なものを知っている”と……繰り返しています……!』


団員たちの顔色が変わる。


「……紗羽の……?」


紗羽の目が一瞬だけ揺れた。

しかしすぐに、冷たい銀狼の目に戻る。


「……焦ってるじゃねぇか、玲央。いい気味だ。

俺が出ないとわかって、言葉を変えてきたのか。」


「銀狼……どう動きますか。」


「……逆に、こっち側から“追い詰める”。位置を割り出せ。」


狼牙たちは即座に動いた。

声の方向を。地形を計算して。


団員たちは、紗羽が“守るために冷たくなる”姿に胸を締めつけられていた。


狼牙たちは挑発の内容をあえて伏せていた。

その状況を団員には教える。


「……詳細は伏せます。銀狼の心を揺らす可能性があるので。」

「この部屋が“防音”なのも、こういう時のためっす。」


団員たちは気づく。


(……紗羽の心が揺れやすい……だから……守ってるんだ……)


通信が続く。


「銀狼。敵側の“2番手”が動き始めました。」


「……やっぱり。」


「3番手の挑発が役に立たないと判断したようです。2番手が前に出てきました。」


団員たちはざわつく。


(2番手……?3番手より上……?)


紗羽は地図を見つめながら静かに言った。


「鷲尾統馬か。

……残念だけど、“たちが悪い”のは玲央のほうだよ。」


狼牙が息を呑む。


「……銀狼……?」


「統馬はまだ理性がある。でも玲央は……“紗羽の心”を狙ってくるタイプだからな。」


狼牙が資料を差し出すと、紗羽はメガネをかけ直し、地図に赤い線を引きながらふっと笑った。


「……あぁ。無理やり突破目当てか。面白いじゃねぇか。」


団員たちは息を呑む。


(……紗羽……笑った……)

(怖い…かっこいい……)


狼牙たちは知っていた。


(銀狼の“ニヤッ”は……敵にとって終わりの合図……)


紗羽は静かに立ち上がる。


「……心穿の玲央。本当にたちが悪いね。まだいる。

今度はなにを狙っているのか。」


外の監視映像には、黒い車列と数名の影が映っていた。


「銀狼!統馬が……拠点の正面ゲートに向かっています!」

「強行突破の構えです!」


団員たちは不安げに紗羽を見る。


紗羽はモニターをじっと見つめていた。


「……無理だよ。何年かかってこの場所を作り上げたと思っているのか。」


その声は静かで、冷たく、確信に満ちていた。


2番手の部隊がゲートに近づいた瞬間、拠点のセキュリティが自動で作動した。

金属音、ロック音、青いレーザーライン。


団員たちは目を丸くする。


「……映画……?」

「え、なにこれ……」

「未来……?」


狼牙は淡々と告げる。


「ここは難攻不落っす。統馬程度じゃ無理です。」


団員たちは震えた。


(“程度”って言った……)

(狼牙…強い…)


「銀狼。玲央は……統馬に“下がれ”と言われたようです。」


「……だろうね。」


紗羽はモニターを見つめながら、ゆっくりと笑った。


「…たちが悪いのは玲央のほうだってのに。統馬は馬鹿だな。」


団員たちは気づく。


(……紗羽……笑ってる……)

(でも……目が……笑ってない……)


藍香は胸を押さえた。


(……紗羽……本当は……悲しいんだ……)


紗羽はほんの一瞬だけ目を伏せた。


紗羽は立ち上がり、地図の前に戻る。


「……統馬も本命じゃないよ。ここからは戦いじゃない。

我慢を覚えろ。」


団員たちは息を呑む。


(……紗羽…どういうこと…?)


「銀狼の指示通り動きます!」


「……始めようか。その前に。裏の壁のセキュリティーをオンにしとけ」

鷹臣たちはすぐに動いた。


銀狼の声は静かで、冷たく、誰よりも強かった。


紗羽はモニターを見つめたまま、鋭く言い放つ。


「乗り切れるとでも思ったのか?統馬。

玲央を引き下がらせたように見せても無駄だよ。どうせ来る

。それを予想される上に突破できないとはねぇ。」


狼牙たちは背筋を伸ばす。


「銀狼……玲央は退いたように見えますが……」


紗羽はふっと笑った。

その笑みは冷たく、どこか哀しさを含んでいた。


「退却なんてしてないよ。あれは“下がったふり”。」


紗羽は地図の上に指を置き、狼牙たちに向き直る。


「どこか通信でぶんどれそうなところを探っているはず。

この拠点を乗っ取りたいだろうから。

だから“大丈夫なところ”を一つ与えてやって。」


「了解です。その通信は……どこにつなぎますか?」


紗羽は一瞬だけ目を伏せ、静かに言った。


「……君らの事務所につなげて。」


狼牙たちは息を呑む。


「私が玲央に弱いから。あいつの声を……直接聞くと……判断が鈍る。」


結凛たちは胸を押さえた。


(……紗羽……そんな理由……)


藍香は唇を噛む。


「申し訳ないけれど……その中から“ちゃんとした情報だけ”を回してくれ。」


「銀狼……任せてください。」


紗羽はモニターを見つめながら、誰にも聞こえない心の声を抱えていた。


(……早く……降参してよ。傷つけたくないんだ。

でも……戦うしかないんだよ……)


その言葉は紗羽のものだった。

紗羽には一体何の未来が見えているのか。なぜ戦いではないのか。


その目は笑っていなかった。

むしろ、痛みを押し殺している目だった。



囮通信の回線が開いた瞬間、室内の空気がわずかに震えた。


「囮通信、開通しました。玲央が……反応し始めています」


報告に、紗羽は静かに目を細めた。


「……来たね」


落ち着いているように見えるのに、指先だけがかすかに震えている。

団員たちはその小さな揺れに気づき、胸が締めつけられた。


モニターには、心穿の玲央の通信ログが流れ始める。

声はフィルタリングされ、内容は聞こえない。

だが、玲央が“何を狙っているか”だけは、紗羽には痛いほどわかっていた。


「……大丈夫。届かないようにしてあるから」


そう自分に言い聞かせながらも、紗羽は一度だけ深く息を吸った。


その頃、外では別の動きが始まっていた。


「銀狼!2番手の統馬が……別ルートを探し始めています!」


「……予想通り」


モニターには、統馬が拠点の裏側や側面を丹念に調べている姿が映る。

団員たちは驚いたように画面を見つめた。


「あそこ……ただの壁じゃないの……?」


「ただの壁じゃないっす。“銀狼専用の防壁”です。さっきセキュリティのスイッチを入れたところです。」


「そこまで読んで?!」

藍香たちは驚いている。


統馬が壁に触れた瞬間、青い光が走り、警告音が短く鳴った。

統馬はすぐに手を引き、冷静に距離を取る。


「突破は不可能です。統馬、完全に行き詰まりました」


紗羽は静かに言った。


「……統馬は“力”じゃなく“戦略”で来るタイプ。

でも、ここは読み合いのほうが強い」


団員たちは息を呑む。


(ずったん……全部読んでる……)


統馬は焦りを見せず、別の角度から状況を分析しようとしていた。

だが、その動きが潜んでいた玲央の視線を引き寄せた。


玲央は統馬の動きを“利用しよう”とした。

その瞬間、拠点の影に潜んでいた狼牙たちが動いた。


「……銀狼の読み通りだ」


彼らは統馬と玲央の“視線の流れ”を逆手に取り、

二人の位置を正確に把握する。


統馬はすぐに状況を理解し、抵抗せずに身を引いた。

仲間を置いて。

玲央は揺さぶりの言葉を投げつけようとしたが


「銀狼から言われてる。“何を言われても信じるな。全部揺さぶりだ”って」


その狼牙の一言で、玲央の言葉は空気に溶けた。


玲央は静かに息を吐き、姿を消す。


狼牙たちは紗羽の前に戻り、深く頭を下げた。


「銀狼……言われた通り、揺さぶりに負けませんでした。

しかし、統馬と玲央本人は逃しました。」


「……問題ない。強くなったな。信じてくれてありがとう。」


紗羽の声は静かで、どこか誇らしげだった。


外にはまだ、動かずに潜む“影”の狼牙のメンバーがいた。


「……まだだ。銀狼の指示があるまで。」


そう、辛抱し続けている。

紗羽はモニターを見つめながら呟く。


「外に“誰もいない”と思わせるためだよ」


団員たちは息を呑む。


(怖いくらい頭が回る……)


紗羽はモニターの光を反射させながら、低く呟いた。


「……あいつ、そろそろ動かねぇかな。早く」


(誰のことなんだ、?)

結凛たちに疑問が募る。


その声には焦りはなかった。

ただ、“来るべき相手を待つ覚悟”だけがあった。


「来るなら……来いよ」


その一言で、部屋の空気が冷たく沈む。


モニターに小さなノイズが走った。


「銀狼……モニターのノイズが……」


「……来たか」


紗羽は立ち上がり、金縁のメガネをはずした。


外の暗がりで、ずっと動かなかった“影”が一歩前に出る。


「……銀狼が動いた」


紗羽は静かに目を細めた。


「……やっとだね」


その声は、嬉しさと寂しさと覚悟が混ざった複雑な響きだった。


モニターの中央に“影”が映り込む。

その瞬間狼牙たちが銀狼が誰を相手にしていたのか全てを悟った。

なぜ玲央が銀狼ではなく、紗羽に語りかけていたのかも全て。


「全員、私の部屋へ。全部開けていい。外の影は……後ろからまだだ」


扉が閉まる音が、戦いの始まりを告げる鐘のように響いた。


「藍香さんたちはこの奥へ。出てこないで。……まぁ出てこようとしても無理だけど。鍵、外からしか開かないから」


団員たちは押し込まれ、怒りと恐怖が同時に走る。


「なんで……ずったんだけ……!」

「危ないのわかってて……!」

「私たちも行く……!」


防音室で隼人が必死に説明する。


「銀狼は……あなたたちを守るために。相手は“元仲間”です。普通の敵じゃない」


「元仲間……?」


「銀狼の“父の友人”。かつて銀狼を導いた人物。

……そして、銀狼の力を妬んで離反した人間です」


団員たちは震えた。


(そんな相手と……ずったんが一人で……?)


銀狼の部屋の扉が、わずかに揺れた。


紗羽は部屋の中央に立ち、静かに息を吸う。

モニターには男が一人なんの苦も無くセキュリティの承認を突破し入ってくる様子が見られる。


扉が開き、男が一歩踏み入れた。


「……久しぶりだな」


「銀狼……いや、紗羽か」


その呼び方に、背後の狼牙たちが眉をひそめる。


「なぜ突然こんなことを?勝算もないだろうに」


男は懐かしさと歪んだ感情が混ざった笑みを浮かべた。


「きれいな顔をして……本当にきついことを言うね、君は。相変わらずだ」


紗羽の声は冷たかった。


「答えろ。巻き込んでいるんだぞ。たくさんの人を」


男はふっと目を伏せた。


「……俺はもう長くねぇみたいなんだ。で、最後に“バラし”に来たってわけだ」


「病気か?同情でも得るつもりか。バラしってなにをだ。」


「そんなつもりはない。この世界の人間らしく……対立させてくれ」


紗羽の目が細くなる。


「話すことがある」


背後の狼牙たちは、紗羽を守るために全神経を研ぎ澄ませて整列していた。


男は静かに告げた。


「君をこの世界に入れたときのことだ。

引き入れたのは、君を救いたかったからだ。

私のもとで協力してくれればと思った。

俺は罪滅ぼしがしたかった。

…その理由は、君の姉と祖母は“死ぬはずじゃなかった”からだ」


紗羽の呼吸が止まった。


「……どういうことだ」

読んでくれてありがと。

方向性違う話になってきてる、、。どうしよう。

一気に解決まで動くよ。全部で十話!気に入ってくれたら、次も覗いてみてな。

感想とかあったら、遠慮せんと教えて! めっちゃ嬉しいし、まじで力になる!

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