第4話 幼馴染ができました
【6才】
「みなさーん!
【職業】と【スキル】って
言葉くらいは聞いた事あるよね?
どのくらい知ってるかな?
じゃあ……そうね、ロレスくん。
知ってる事だけで大丈夫だから、先生に教えて〜!」
「……はい。
【職業】には【職業スキル】というのが必ずセットになっています。
たとえば……ええと。
【癒術士】という職業には【癒術士スキル】がついていて、
経験を積めば、このスキルのレベルが上がり、
より強力な回復魔法を使えるようになります。
そして【癒術士】から【剣士】に転職したとしても、
鍛えた【癒術士スキル】は
“魂に刻まれて”残ります。
なので、職業は【剣士】だけど、
実際には【レベルアップした回復魔法も使える剣士】になります。
スキルレベルの上限は30。
ギルドにある“鑑定の水晶玉”などで、
現在の数値が確認できます」
俺がそう答えた後、教室がしーんとなった。
「ロレスくん……すごいわね。
とてもよくお勉強していて、先生びっくりしちゃった」
俺が椅子に座ると、斜め後ろからゴミのようなものが俺の頭に飛んできた。
「おい、ロレス!
ちょっと知ってるからって、調子乗んなよ!」
「ガイナス!
ロレスは何も悪くないでしょ!
どうして素直にすごいって言えないの!」
「なんだよアリーア、
お前、ロレスのこと好きなのかよ?」
「はあ!?
な……何言ってんの!
別にそんなんじゃないし!」
「好きだ! 好きだ!
お〜いみんな!
アリーアとロレスが結婚するってさー!」
「ガイナスくん! アリーアさん!
授業中は静かにしてください!」
俺は入学前にちょっと張り切って学びすぎちゃったみたいだ。
まあ、暇だったからね。
なんだかんだ人生2週目ってやつだし、要領よく覚える事ができてしまう。
ガイナスはガキ大将とでもいうか、クラスで一番体が大きかった。
そして何が気に食わないのか入学直後から俺を目の敵にしていた。
アリーアはこの王都学舎で最初に仲良くなった子だ。
キッカケは……なんだっけな?
ああ、そうだ!
アリーアが持っていた本が読みたくて声をかけたんだった。
それからは、授業がぜんぶ終わったら一緒に帰ってる。
アリーアは赤い髪でちょっと猫っぽい目をした可愛い女の子だ。
家は城下町の街道沿いにある、青い屋根の老舗宿屋だった。
将来、宿屋の美人女将になるのがもうすでにわかる。
明るくほがらかで、しっかり者で言うべき事はちゃんと言う子だった。
このまま、ずっと友達だったら、幼馴染って事になるのかな?
とにかくアリーアは自分にとって……はじめての友達だった。
【10才】
ガイナスに木刀での決闘を挑まれた俺は、校舎裏で地面に倒れていた。
「もう、やめて!
これ以上やったら先生呼んでくるよ!
ロレス、大丈夫? 血が出てるよ!」
「うん、
このくらいなら、簡単な回復魔法で治るから。
ありがとう、アリーア」
「ロレス、
いろいろ器用にできたからって
お前は俺には勝てないんだよ!
……俺が一番強いんだ」
ガイナスはツバを地面にぺっと吐いてから去っていった。
「……ねえ、ロレス。
どうして決闘なんて受けちゃったの?
それに……私、ずっと見てたの。
ロレス、わざと手を抜いたよね? 本当は勝てるのに」
「しつこかったからね。
それに、俺が勝ったらもっと面倒になるだろ?
だから、負けでいいんだ。
……でもアリーア。ガイナスは本当に強いよ。
それは間違いない」
俺は回復魔法でガイナスにやられた傷を治した。
この魔法は授業で習ったものだ。
王都学舎では国語や算術以外にも、初歩的な剣や魔法などの授業がある。
俺はすべてが優秀だった。全部ひっくるめれば、俺が抜きん出ていた。
先生の模範の剣の動きがすぐ真似できた。
呪文を教えられれば、あっさり攻撃系魔法が発動できた。
他の生徒が失敗する中ちゃんと傷も回復魔法で治せた。
算術などが優れているのは当たり前だ。
俺はすでに前世で数学をやってきているし……ぶっちゃけ、この世界は数学そのものが未発達だし。
だけど戦いに関係する授業は他の生徒と同じようにゼロから学んだのに、あきらかな差が出ていた。
これが女神様が言っていた「勇者」の才能。
《戦いの能力も、普通の人より優れています。》
だってのは、間違いなかった。
俺はアリーアに支えられて立ち上がった。
「もう大丈夫だよ!
自分で立てるから!
あれ、なんか泣いてる?」
「……心配したんだから。
大怪我とか、そういうのもあるかもしれないし。
そんな事になったら、私は……。
だってロレスは、私の大事な……。
あっ、ええと…………幼馴染だし」
「俺たちって、
6才で会って、いま10才だけど、
こういうのも幼馴染っていうのかな?
幼馴染って大人になってから
私たち、幼馴染だよねーって、
感じのものじゃない?」
「な……何言ってんのよ!
大人になっても、ずっと一緒にいるんだから!
だから、あなたは私の幼馴染でしょ!
ロレスのバカー!」
──幼馴染ができました。
次回『第5話 突然の雨でびしょ濡れの2人』
お読みいただきありがとうございます!
次回は
「アリーアの実家に遊びに行ったり、びしょ濡れになって納屋で乾かしたり」と甘酸っぱいお話です。
明日(2025年9月22日)夜23時くらいにアップします!
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