第3話 学校ってどんなとこ?
【3才】
俺は母さんと一緒に家を出て、城下町で買い物している。
城下町には何ヶ所も市場があって、どこもとても賑わっていた。
「奥さん、
相変わらずべっぴんさんだねぇ。
サービスしちゃおう。
そこの箱のタマネギ全部持っていっていいよ」
「まあ、ありがとう!
でもこんなにたくさん……持って帰れるかしら」
「じゃあ時間かけて、
良いやつだけ選んでよ。
ゆっくり……時間かけてね……」
……母さん。
母さんはちょっと天然入ってるから気がついてないと思うけど……。
その八百屋さんはいい人じゃないですよ。
なんでいっつもそんな胸元ゆるゆるの服着てんの!?
かがむと危ないんだよ!
20代前半のかなりの美人だって、自覚持ってよ!
八百屋のおっさんは、母さんにタマネギを取るために屈ませて、隙間から見ようとしています!
ほらほら! あの覗きこむイヤラシイ顔! ギルティ!
あ〜もう! そんなタマネギ吟味しなくていいからさっ!!
指摘したいけど3歳児じゃ、どう伝えればいいのかわかんねー!!
買い物が終わって、俺と母さんは城下町を散歩した。
俺が住んでいる家は、ハーライト王国の王都の城下町にあった。
王都の人口は7万人程らしい。
この国には貴族と平民という階級制度があって、住むエリアが違っている。
貴族の屋敷は、城を取り囲むように建っている。
そして貴族の居住区の周りには区画壁があって、区画壁の外に平民が暮らす城下町が広がっていた。
区画壁にある門は「銀獅子門」と呼ばれ、門の前には常に兵士が立っている。
貴族はこの門を自由に抜けて城下町に行けたけど、平民は特別な理由がないとこの門は通れない。
そして母さんは俺をある建物の前に連れていった。
壁には灰色の石が積まれていて、屋根は赤茶けた瓦。
古さはあったけど、なんとなく温かみを感じる石造りの建物だった。
「ロレス、見てごらん。
ここがあなたが6才になったら通う
王都学舎よ。
私もここに通っていたの」
「お勉強、するところ?」
「そうよー。
お友達もいっぱいできるのよ!
もしかしたら、ロレスは
未来のお嫁さんと出会っちゃうかも?
きゃあ!」
「およめさんとであう……。
ねえねえ、
母さんと父さんってどこであったの?」
母さんはしばらくの無言の後にしゃがんで、俺と目線の高さを合わせて腕をがっしりと掴んだ。
「か……母さん? どうしたの?
顔がこわいよ……」
「……ロレス。
覚えておきなさい。
人にはね、
どうしても言えない事ってあるの」
なに? なんですか、その予想外の返答と真剣な顔は?
どんな出会いなの? やばい気になる! でも聞けない、この顔は本気だ!
まあ、俺も「別の世界の日本って国で28歳で過労死して、転生してきました!」とは言えないけどさ。
いつか誰かに言う日がくるのかなあ?
……それは誰になるんだろう?
俺は母さんにこの世界の学校とはどういうものか尋ねた。
母さんは「理解できないかもしれないけど」と言ったけど……大丈夫です、理解できます。
6才から15才までは、王都学舎に通うらしい。
これは小学校と中学校が合わさったようなものだ。
貴族の子は貴族専用の王都学舎に通い、平民の子は平民専用の王都学舎に通う。
王都学舎を卒業した後に通う学校もあるけれど、上級貴族の子だけが通うとんでもない授業料の場所らしい。
王都学舎の卒業の後に、王都内の16才が集まる「才覚の儀」の日があって、そこで自分の職業が決まる。
16才とはいっても実際には15才9ヶ月もいれば、16才3ヶ月もいる。
……まあ、成人の日みたいな感じだね。
「王都学舎に通うようになったら、
楽しいお話聞かせてね」
「うん、母さん! 毎日お話しするよ!」
どうせもう6年もこの世界で子どもやってんだ。俺はプロの子どもだ。
大人ぶって浮いてもしゃーないし、せっかくだから俺は楽しもう!
そして6才になり、俺は「王都学舎」に通いはじめた。
──俺が勇者になるまで、あと10年。
次回『第4話 幼馴染ができました』
お読みいただきありがとうございます!
次回は
「赤い髪のかわいい女の子と友達になった……これが噂の幼馴染ってやつ?」というお話です。
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