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第23話 不用品は宝の山

種まきと苗の植え付けを終えた俺は、すごく汗をかいてたから服を脱いで、樽に貯めてある水で体を拭いた。


ノーラさんが急に戻ってきたら……とビクビクしながら……。


さて、もう夕方だ。今日もロニーの勉強を見てあげないといけない。

今日は魔法の基礎を教える予定だ。


王都の雑貨商店に着いてロニーの部屋に行き、昨日渡しておいた宿題の採点をした。


「おしかったぞロニー。

 1問だけ間違ってる」


「えええ?

 あっ、ほんとだ!

 くやしいー!!」


「でも頑張ってるよ。

 勉強のコツが掴めてるって感じだ。

 さあ、今日は魔法の勉強だ!

 このロウソクに火をつけてみよう。

 ゆっくり自分のペースでやってごらん」


「ようし! 集中集中!

 燃えろ……ロニー・ザ・フレイム!」


ロニー・ザ・フレイム? なんだそりゃ……ま、いいか。


するとロウソク……ではなく、机の上の宿題の紙の束が燃えはじめた。


「あっ……マズい。

 火事になるぞ、ロニー!

 すぐ消さないと!」


「大丈夫です!

 大魔導師になる予定の

 僕が消しますから!

 吹け……ロニー・ザ・ストーム!」


宿題の紙はその炎を、ぼぉぉぉっと高くさせた。


「あれ? なんで風で消えないの?

 ようし、もう一回!

 吹け……ロニー・ザ……」


「ロニー! ストォォォプ!

 火に風を送るのは

 すごくダメだー!!」


結局、部屋にあった濡れ雑巾を被せて火を消した……魔法で消すより早いし。

魔法を教えるなら、科学や物理の最低限の知識も教えないといけないという事がよくわかった。


勉強が終わって実家に帰ろうとすると、封筒のような紙を持ったロニーの父親に呼び止められた。


「勇者さま!

 いつも息子の勉強を見ていただき

 本当に感謝しております。

 勉強が楽しくなったとあいつも言ってまして」


「別にたいした事はしてませんけど……。

 ロニーは勇者に憧れてるから

 素直にやってくれてるだけで」


「いやいや。

 最初はそうだったかもしれませんが、

 勇者様の教え方がすごく良いって

 ロニーは言ってるんですよ」


俺も前世の小学校の頃はそんなに勉強ができたわけじゃなかった。

だから、ロニーの気持ちがなんとなくわかるから……それがよかったのかな?


「それで……こちらなのですが、

 これまでのご指導の礼金を

 お受け取りください」


「え? いらないですよ。

 帰り途中にちょっと寄ってるだけだし……」


「そっ、それは困ります!

 勇者様をタダで使ったなどと

 世間に知られたら

 この雑貨店の評判はガタ落ちです!

 なにとぞ! お納めください!」


「……う〜ん」


「ならば勇者様!

 これならどうでしょう!」


そう言われた俺は雑貨店の奥にある倉庫に連れてかれた。

広い倉庫には棚があり、様々な日用品や道具が置かれていた。


「勇者様は現在、

 拠点作りをなさっているとお聞きしました。

 この倉庫にあるものをお役立てください。

 どれでもいくつでも

 持って帰っていただきたいです!」


そこまでいうならお皿でも貰っていこうかな……と思いながら棚を眺めていると、倉庫の隅の方に粗大ゴミのようなものがゴチャっと山積みになっているのが見えた。


「あれって

 なんですか?」


「ああ、あれはですな。

 ゴミといいますか、回収した不用品だったり、

 家を建てる時のあまった資材などです。

 片付いてなくてお恥ずかしい限りです。

 どうにも溜まってく一方でして……」

 

俺はその不用品類を、近くに行ってじっくりと見た。


「もし、それほど大事でないのなら

 こちらのものから頂くというのは

 どうですか?」


「え? それは構わないどころか、

 処分できて助かってしまいますが。

 ……そんな中古品でよろしいのですか?」


翌朝。

俺は店主さんが用意してくれた手押し荷車に不用品を乗せた。

この荷車も、もう古いものなので貰っていいらしい。ラッキー!


荷車に積んだのは、

使用済みカーテン、錆びたランタン、古絨毯、毛布や反物の端切れ、底が歪んだ鍋、使い込まれた工具や古い皿やコップ、沢山の木板、石灰粉末の袋だ。


俺は不用品で満載になった荷車をゴトゴト引っ張りって丘の下まで行き、そこからエウレカまで何回かに分けて運び込んだ。


雑貨店からは砦の改修で使えそうな良いものがたくさん貰えた。

中古品でぜんぜん問題ない。


そもそもこれから住む場所も、とんでもない骨董品なんだしね。



二階建ての石造りの砦は外壁はまだ頑丈だったけど、中はひどい有様だ。


建物の間取りは日本的なサイズ感で言うなら、1階には8畳と5畳の部屋、2階には6畳の部屋がふたつと小さい物置部屋……みたいな感じ。


扉は外れてるし、床は剥がれかけていて踏むと軋んだり沈んだりする。

埃と蜘蛛の巣もひどい。壁の漆喰は崩れ落ちて地肌の石がむき出しになっていた。


「これはこれで廃墟マニアなら喜びそうな状態だけど、

 さすがに、このままじゃ暮らせない」


ここがちゃんと住めるようになるまでは毎日実家に戻るし、ロニーの勉強も見る。


少しづつ快適な家を作っていこう。



さあて、やるぞぉ!



次回『第24話 廃墟の砦の激変ビフォーアフター』

お読みいただきありがとうございます!


次回は

「アリーアも手伝いにきて、一緒に生活の拠点を改修していく」お話です。


もし少しでも面白いと感じましたら、ブクマや評価で応援して頂けると嬉しいです!

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