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第18話 いつの間にか露天風呂ができていた

アリーアが連れてきた筋肉男5人のおかげで畑予定地から石はほぼなくなった。

この後は、石の再利用だ。


昼食後に少しの休憩をとってから、集めた大石を砕く作業がはじまった。


まずはゴテムさんが石にくさびを打ち込む、そして寡黙な巨人(ドミンさんという名前らしい)が大型ハンマーを振り下ろして、石をパキっと割っていった。


くさびとハンマーはドミンさんの私物だ。

石が自分でも移動できないサイズだった場合を考えて用意してくれていた。

「できる男」って感じで、かっこいい。


割ったその石をさらに小さく割っていき、その形状によって分別していった。

そしてゴテムさんとドミンさん以外の人たちが、使う石を見繕って持っていく。


俺とアリーアは薄い板状の石を集めて、歩きやすいよう石をリズムよく並べた。

こうすると砦の入り口もなんとなく玄関っぽい感じになっていった。


ひとり熊牧場のベリムスさんは、廃墟の砦と畑にする予定の空き地を仕切るように石の花壇を作っていた。


「石花壇は水はけもいいし

 土の流出も防げる。

 俺は本業は土木関係でな」


「いいですね!

 ここに花を植えたら、

 無骨な砦の印象がやわらぎます!」


「花だけじゃなく

 虫除けのハーブを植えてもいい。

 そうすれば畑からの虫を防げる」


「なるほど!

 覚えておきます!」


巨漢のライデムさんは、割った石と、粘土・砂・藁を混ぜたもので野外にドームを作っていた。ドームの後ろには煙突もある。


「これって……。

 もしかしてピザ窯ですか?」


「そうっス。

 俺は田舎から出てきて、

 王都でピザ職人やってるんスよ」


「ピザ職人って

 こういう窯を作れるんですか?」


「うちの親方の方針なんすスよ。

 窯を作れる人間がいない土地でも

 店出せるようにしとけって。

 ……小さいけどお店じゃないから、

 このくらいで十分だと思うっス」

最高だ! もちろんピザだけじゃなく色々な料理に使えるオーブンだ!

ライデムさんが働いてるお店は話を聞く限り良いお店だし、絶対に美味しいんだろうな。


俺を悩ませていた石が、どんどん生まれ変わっていった。

石はゴミでも不要物でもなく、工夫次第で立派な資材になる。


──そんな当たり前のことに、今さら気づかされた気がした。



あれ……そういえば僧帽筋の貴公子・セールさんは?

あっ、いた! あれは……何を作ってるんだろう?


セールさんは砦の正面入り口とは逆側に、砕石と大石で囲いを作っていた。


「私は美を追求する者です。

 勇者様には常に美しくあっていただきたい。

 これは、お風呂でございます」


「お風呂!?

 しかも露天風呂!」


「内側は粘土で塗り重て防水します。

 浴槽の横に焚き火場を設け、

 焚き火の熱で浴槽を温める方式となってます。

 さあ、どうぞ勇者様。

 まだ作り途中ですが中に入って深さのご確認を」

 

俺は服のまま、水のない浴槽に入ってみた。

深さは60センチくらいかな? 3人くらいなら一緒に入れる贅沢な広さだった。

それになんと言っても景色だ。

この露天風呂からは王都がある大地が見えた。


ああ、なんていいんだ。

まさか露天風呂を持てるなんて想像もしてなかった。


最高だ……。


俺が浴槽の中で(きっとにやけた顔で)これからの新生活をイメージしていると、アリーアがやってきた。


「見てよ、びっくりだよね!

 露天風呂だよ!

 アリーアも入ってみる?」


「ねえ、ロレス。

 素敵な露天風呂だとは思うけど……」


「ん? どうしたんだ?」


俺の向かいにきたアリーアは屈んで、浴槽のふちにちょこんと顔を乗せた。


「そもそも、

 この場所って井戸とか川とか、

 お水ってあるの?」


「……水?

 ああっ! そうか!」



──はい、ないです。



次回『第19話 森の中に隠された時の忘れ物』

お読みいただきありがとうございます!


次回は

「ちょっとだけファンタジーな水を現実的な方法で手にいれる」お話です。


もし少しでも「面白い」「続きが気になる」と感じましたら、ブクマや評価で応援して頂けると励みになります!

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