第17話 マッスルレンジャー
丘の上の自分の土地で、俺はアリーアを待っていた。
「どうやって石問題を解決するんだ?」とアリーアに聞いたら「あの土地に向かう時、どこに連れてくのか教えてくれなかったから私も教えない」と言われてしまった。
どうするつもりなんだろ。
重機なんてないし……石を浮かす魔法とか? 石が好物のモンスターを連れてこれるとか?
下の方から「えっほ……えっほ……」とかけ声が聞こえてきた。
その声はどんどん近く、大きくなっていった。
そして木のトンネルから……5人のたくましい肉体の男たちが現れた。
「はぁはぁ……待ってよぉぉ」と遅れて、行商人のような籠を背負ったアリーアも来た。
マッチョの男たちを率いていたのは、アリーアの宿屋の馬番のゴテムさんだった。
「やあ! ロレスくん。
筋肉は限界まで
追い込んでるかい?」
「ゴテムさん!
どうしてここに?」
「重い石に困ってるとお嬢から聞いてね。
この筋肉の出番ってわけさ!」
「嬉しいですけど、
あの……。
お返しとか何もできないですけど……」
「はっはっはっ!
僕がお返しをする番なんだよ。
ロレスくんのおかげで
仕事を失わずにすんだんだから!
宿屋の従業員全員が感謝してるよ!
なるほどこの石だね……大丈夫、任せて!」
「うわ! 頼りになる感じだ!
本当に助かります!
それで、あのう……。
その4人のマッチョな皆さんは?」
「僕の筋トレフレンズたちさ!
僕の恩人が困ってるって話をしたら、
ぜひ一緒に手伝いたいってね
すばらしい連中だよ!」
ゴテムさんは4人の仲間の方を見て、拳を高く掲げた。
「さあ、みんなやるぞ!
すべては、マッスルが、解決する!」
4人もゴテムさんと同じように拳を掲げた。
「「「「すべては! マッスルが! 解決する!」」」」
そして5人のマッチョメンはさっそく石撤去に取り掛かった。
俺を助けてくれるのは「魔法」でも「モンスター」でもなく「人」だった。
「俺は……ベリムス。
ひと呼んで、ひとり熊牧場」
毛むくじゃらのベリムスさんは大きな石をベアハッグして「ふんっ!」と持ち上げると、そのまま歩いて移動させた……すごい、あの石ってたぶん100キロ以上はあるのに!
「私の名は、セールでございます。
僧帽筋の貴公子とお呼びください」
セールさんは石を持ち上げながら、上半身をぐっとねじってポーズを取った。いちいち動作のたびに俺に筋肉を見せつけてくる。「運搬作業」というよりは、まるで「ボディビルコンテスト」だった。
とりあえず、セールさんがポーズをしたら俺は拍手をした。
「ライデムっス。
今日は心・技・体が、
充実してるっス!」
今日来てくれた中で一番の巨漢なライデムさんは、まず体重を乗せまくったテコの原理で石を大きく浮かすと、張り手をぶちかまして石を回転させて移動させた。
「どすこい」とか「朝稽古」みたいな単語が頭をよぎる。
「………………ん」
皆さん(何故か)ひとりづつ名乗るんだけど、2m超えの長身のこの人だけは何も言わなかった。無口な人なのかもしれない。
でも力は一番あるんじゃないのか? 石を軽々持ち上げると、なんと肩に担いだ。
なんの漫画かは思い出せないけど、こういうキャラって見た事ある! 無口で怪力の巨人だ!
アリーアは持ってきた水筒からコップに飲み物を注いで、皆さんに提供していた。
おおっ、さすが宿屋の娘!
俺が小さい石を運んだりしていると、ゴテムさんが大石を運びながら話しかけてきた。
「どうだい?
筋肉って素晴らしいだろう?」
「はっ、はい!
どんどん片付いていって……。
本当にありがとうございます!
これで畑が作れます!」
「だけど、この石……。
一箇所に集めるだけじゃなくて
細かく砕けば何かに使えるかもしれないぞ。
どうだい、やってみるかい?」
「石の再利用……いいですね!
やりたいです!」
午前中で庭から石はほぼなくなって、一箇所に集められた。
俺たちは、アリーアが籠で背負ってきた弁当を食べた。
弁当はパンに肉や野菜やレバーペーストが挟み込まれたもので、これはアリーアが朝起きて作ったらしい。
6人で輪になって座って食べた。
ゴテムさんとアリーア以外は、はじめて会った人たちだったけど、一緒に汗を流してもうすっかり打ち解けている。みんな気のいい人たちで、何度も笑い声が出た。
なんだか、すごく楽しい昼食だ。
「ねっ、ロレス。
石はなんとかなったでしょ!」
「アリーアがゴテムさんに
相談してくれたんだね、ありがとう。
それにこの弁当も美味しいよ。
アリーアって料理上手だったんだな」
「えへへ。
じゃあ、今後ロレスに
お弁当持ってこようかな」
──しかし、実はこの土地には「根本的な大問題」があるという事を、俺はしばらく後に知る事になる。
次回『第18話 いつの間にか露天風呂ができていた』
お読みいただきありがとうございます!
次回は
「マッチョさんたちが石をリサイクルして素敵なものを作ってくれたり、大問題が発覚する」そんなお話です。
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