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第11話 王様に会いました

夢を見る事もなく朝を迎えた。


朝食を食べながら母さんと父さんと、勇者に選ばれた事と今後について話をした。


2人からは「ロレスの好きにすればいい」と言われた。

父さんと母さんは今までと何も変わらず、父さんは城下町の見回り、母さんは服の修繕の内職を続けるらしい。


そして俺は家を出て……城内の謁見の間へ行った。


謁見の間には重厚な静けさが漂っている。

赤い絨毯の先、玉座に王と王妃が並んで座り、その下手に王女、大臣や騎士団長がいる。


王様は王冠をかぶり、金糸をふんだんに縫い込んだ深紅のマントを肩にかけていた。立派な黒髭に太い眉毛と強い眼力……威厳があって、「ザ・王様」って感じだ。


隣の王妃様は、淡い水色のドレスに白いレースを重ねていて、清楚なのに豪華だった。


「顔を上げよ、勇者ロレス。

 余がハーライト王国国王、レオーネルである。

 天に選ばれしその名を聞き、余は安堵しておる。

 この日を、どれほど待ちわびたことか……。

 余がこの場にて、

 正式に“勇者”として認めよう!」


その瞬間、壇上脇に控えていた楽団が、太鼓をトトトト……と細かく連ね、空気を張り詰めさせる。

次いで高らかなラッパの音が鳴り響き、重厚なファンファーレが謁見の間いっぱいに広がった。


すごい……タイミングとか完璧で、めっちゃゲームっぽい。

ファンファーレが終わると、王妃様が優しい口調で話しはじめた。


「ようこそ、勇者様。

 そなたの旅路には危険が待ち受けましょう。

 どうか、ご自身のお体も大切になさってくださいませ。

 そなたもまた、この国の子のひとりなのです」


「お父様お母様、私もご挨拶よろしいですか?」


王と王妃の横に立っている王女様の声はとても可愛らしく、透明感があった。


髪は銀色なんだけど、光の加減でほんのり紫がかって見える。動くたびにきらきら光っていた。

ドレスは白っぽい色で、胸や袖のあたりに金色の模様が入っている。


顔立ちは整っているというか……整いすぎている。目を合わせると、意味もなく恥ずかしくなってしまうほどだ。

まさに「絵に描いたような、お姫様」って感じだった。


「ハーライト王国王女、ファリィと申します。

 私の才覚の儀は去年でした。

 ロレス様と同い年でしたら、

 勇者選定の瞬間に立ち会えたのですが

 ……まったく残念でなりません。

 いつかロレス様の才覚の儀の時の話を

 お聞かせくださいますか?」


「わかりました、ファリィ様。

 そんなに上手に話せるかわかりませんけど

 それでもよろしければ」


「わあ! 嬉しい! 約束ですよ!

 これからの冒険のお話もぜひ!

 ちなみに王都の外には

 いつ頃出られるご予定なのですか?」


「王都の外にですか?

 出るだけでしたら

 この式典後すぐに出ますけど、

 理想の土地さがしの……」


「おおっ! なんと!

 やはり勇者である!

 さっそく魔地に挑まれるのだな!」


「え? あのう、王様……。

 俺は魔地に行くんじゃなくて……」


「聞け! 皆の者!

 勇者ロレスはこれから

 魔王討伐の旅へ出立する!

 この記念すべき時を、

 盛大に送り出そうではないか!」


人の話を最後まで聞かないオッサンだ……。


そして城から出た俺は、バルコニーから手を振る王様と王妃様、そしてファリィ姫に見送られながら、鎧を着た騎士たちがずらりと整列する石畳の道を進んだ。


まるでRPGのイベントシーンみたいだった。

終わった後にセーブし忘れて敵にやられると、もう1度頭から見る羽目になる出陣ムービーだ。


王都の外には出るけど……王都まで歩いて帰れる場所をウロウロするだけなんですけどね。



──さあて、歩くぞ! 


 

次回『第12話 理想の土地を見つけたぞ!』

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