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人狼GAME 第1章  作者: 山犬
31/34

第31話 最終結果




そして、ホールの照明が変わった。











──【人狼の勝利です】


その文字が、モニターに浮かび上がる。





朱里は、それを理解できずに、しばらく瞬きを繰り返していた。





大咲 朱里

「……え?」



呟きに色はなかった。ただ、空白に浮かぶ声だった。

彼女の目が、モニターと正太の間を何度も行き来する。


血の気が引いていくのが、見て取れるほどに顔が蒼白になっていく。




戌井 正太

「……」



朱里の視線が、ゆっくりと正太に向けられる。

信じたくないという思いからか瞳の奥が揺れていた。



大咲 朱里

「……そんな……嘘……でしょ……?」




戌井 正太

「…………ごめん」



正太の呟きに、朱里の顔が絶望に染まっていく。

そのたった一言が、全てを崩した。

朱里の目が見開かれる。肩が大きく揺れ、口元がわななく。



声は掠れていた。呟きではなく、祈りのようだった。



大咲 朱里

「……あなたが……人狼だったの……?」



正太は、何も答えない。ただ、俯いたまま動かない。

彼の影が、静かに床に落ちていた。



朱里は、自分の膝に力が入らなくなったのを感じた。

喉の奥から何かが込み上げる。息が詰まり、胸が焼けつくように熱い。


大咲 朱里

「……どうして、こんなことに……」


立ち上がろうとするも、身体は震え、足がもつれ、立ち上がれない。

床に這いつくばりながら、朱里は正太に手を伸ばした。


大咲 朱里

「戌井くん……お願い、助けて……助けてよ……!」


その声は、少女の命のすべてを絞り出すような哀願だった。

涙と嗚咽が混ざり、朱里の口元から崩れ落ちていく。


だが、正太はただ黙って彼女を見ていた。

その目に、感情はなかった。

怒りも、悲しみも、喜びさえもない。ただ、沈黙。

そこにあるのは、終わったことを見届けるだけの無機質な目線だった。



何も言えなかった。


何も伝える意思がなかった。


その場に立っていることさえ、まるで「罰」を受けているかのような気配を帯びていた。



コードが伸び、コードが、機械音とともに蛇のように伸び、

朱里の首輪にカチリと音を立てて接続された。


彼女は泣きながら、叫びながら、最後まで助けを求めた。



大咲 朱里

「お願い、いやだ……死にたくない……!

どうして……こんなの、間違ってる……戌井くん……っ!」




振り絞った叫び。掠れる声。目の奥に浮かぶのは、信じた相手に殺されるという、

どうしても受け入れがたい――でも現実として突きつけられた、絶対的な裏切り。



――巻き上げ音が鳴る。



朱里の身体が吊り上げられ、両足が宙を蹴るが、もう地面には届かない。

喉が締めつけられ、声が、消えた。


その瞬間、瞳の奥に走る理解。


すべての裏切りが、自分の目の前に立っているこの人物によるものだったと――



その気づきと共に、彼女は、死んだ。



静かに、力なく、床に落ちる。



ドサッ。


音が、命の終わりを告げた。

軽く、淡く、だがあまりにも重たく。



ホールには、もうただ一人。



人狼、戌井正太のみが、立っていた。





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