表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人狼GAME 第1章  作者: 山犬
26/34

第26話 裏切ったのは誰か


今日は、昼になっても誰とも話さなかった。


ホールにも行かず、食堂にも顔を出さず、

ずっと個室で時間を潰していた。


朱里も岬も、同じだったのではないか。



何を話せばいいのか、思いつかなかった。


言葉が、浮かんでこなかった。


……たとえ口を開いても

誰も聞きたくなんてないだろう。



だって──昨日、俺は。



戌井 正太

「……奏多を、裏切ったんだよな」



呟いた声は、誰にも届かない。


壁の向こうにも、天井にも


もうあいつはいない。



いや、最初から、

ほんとの意味では味方だったのか

どうかすら分からないけど。



あいつが言った最後の言葉──生きろ。

信じてた。そういう顔だった。

そう思い込んでいた。……信じたかった。



戌井 正太

「後悔、してないわけがないだろ……」



目の奥が、じわりと痛んだ。



なのに。

胸の奥では、醜い感情が渦巻いている。




──あいつは、何もかも持ってた。

恵まれた家庭、親友、才能、余裕。

人に優しくする余力すら持ってた。

俺とは、違った。


だから、どこかで思ってしまった。

譲ってくれてもよかったんじゃないか?って。


……自分でも、

そう思った瞬間が最低だと分かってる。


でも、本当にそう思ってしまった。

あのときの自分は、確かに、そう思ってた。


だけど、だけど──



戌井 正太

「たぶん……あいつは

敵陣営だったんだろ。

そうじゃなきゃ、あんな動きは……」


自分に言い聞かせる。

冷静に過去の議論を反芻する。


もしあいつが本当に敵だったなら……

どのみち、二人で帰ることなんて、できなかった。


信じていたかもしれない。

でも、信じているふりをしていたのかもしれない。


だったら──。


──だったら、あれでよかったんだ。



戌井 正太

「……これで、終わりにするしかないんだ。」



一度だけ、ぎゅっと目を閉じて、静かに息を吐いた。



今日は、夜が来たらすべてが決まる。

自分が選ぶ、最後の1票。


それが――地獄への鍵か

解放への扉かは分からない。


だが、それでも。

進まなきゃいけないんだ。




今夜全てが終わる──。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ