第11話 最初の犠牲者
残酷描写あり。
コードがピンと張った瞬間、全員が硬直した。
そして、夏菜の体が首輪に
引かれるようにして椅子から引き剥がされる。
羽賀 夏菜
「――やだっ、いやぁぁあああああああ!!
やめて!!助けてえぇぇぇぇ!!」
絶叫とともに、彼女の身体が宙に浮かび上がった。
ゴキィ――ッ……
首に巻かれたコードが食い込む。
くぐもった喉の音がホールに響く。
目が見開かれ、足が虚空をもがく。
全員が動けない。
その刹那――
安住 奏多
「やめろっ!!っ!!」
奏多が叫びながら駆け寄ろうとした瞬間、バチィィッ! と音がして、彼の身体に電流が走る。
安住 奏多
「ッ……ぐああああっ……っ、く……ッ!!」
彼の身体が床に叩きつけられたように
崩れ落ち、痙攣する。
目は開いているのに
まるで金縛りにあったかのように
身体が一切動かない。
久住 翔斗
「ひっ……ひぃっ……ひいぃぃぃっ……!」
久住は顔を覆いながらしゃがみ込み
涙と涎を流しながらうわ言のように繰り返す。
久住 翔斗
「ほんとだった……本当に殺される……
ゲームじゃない……これ、ほんとに……」
宇川 謙
「くそっ……くそっ、止めろ
もう止めろってんだよ!!」
宇川も椅子を持ち上げて
投げつけようとしたが、寸前で立ちすくむ。
大咲 朱里
「いや……いやぁ……うそ、やだ……うそ……」
朱里は泣きながら、口元を押さえ
言葉にならない悲鳴を漏らし続ける。
その横で岬は無言で顔を青くし
両手で頭を抱えていた。
指が震え、口が何度も
「うそ……」と動くが、声は出ない。
戌井 正太
(なんで……なんでこんな……。
人が、死んだ。目の前で、羽賀が……)
羽賀 夏菜の身体は小刻みに痙攣していたが――
それも、しばらくして止まった。
――足の指が、ぴくりとも動かない。
――首からは、細く赤黒い筋がつたっていた。
沈黙。
誰も、何も、言えなかった。
そのとき、ゆっくりとコードが緩み
彼女の身体がドンッ……と音を立てて地面に落ちた。
ゴトリ。
その衝撃音が、全員の胸に杭のように突き刺さる。
久住 翔斗
「う……動いてない……。
……死んでる、……死んでるぅ……!」
絶叫。
嗚咽。
呻き。
崩れ落ちる身体。
そして、誰も動かぬ彼女を中心に
ホールにはただ重い沈黙だけが降り積もっていた。
モニターが、無機質な音声で告げた。
モニターの音声:
「処刑が完了しました。」