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人狼GAME 第1章  作者: 山犬
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第10話 第1回投票結果


岬は静かに深呼吸すると、

まっすぐに前を見て口を開く。


声は落ち着いていたが

瞳の奥には張り詰めた緊張が浮かんでいる。



升田 岬

「……今の状況で一番感情が不安定で

発言が理論的じゃない人に投票するつもり。


間違っても、人狼に踊らされないように……

自分の目と感覚を信じて、選ぶ。」



続けて朱里が発言する。


大咲 朱里

「……本当に怖い。

でも、わたしは……一番落ち着きが無かった人を選ぶ。


本当は誰も選びたくないけど……。」




小刻みに肩を震わせながらも

何とか自分を保とうと必死だった。


顔色は青白く、唇は乾いていた。




奏多は一歩前に出ると、腕を組んで皆を見回した。

表情は冷静を装っているが

どこか切なげな揺らぎがあった。


安住 奏多

「俺は、占い師だし、元々人の嘘を見抜くのが得意だ。


……今日の一手は、明日に繋がる。

生き延びたければ、“違和感”を見逃すな。」





久住は目を泳がせながら

ぎこちなく立ち上がった。


声は震え、足元もややふらついていた。


久住 翔斗

「ぼ、僕が占い師です!


だから、今日は僕を信じて…

…できれば、生きさせてほしい……」




言葉の最後はほとんど聞き取れないほどかすれていた。




宇川は椅子の背にもたれたまま、低く笑った。


だがその目は鋭く、他の全員を

値踏みするように見ている。




宇川 謙

「俺は騙されねぇ。


取り乱しているやつ、焦ってるやつ、

そういうのが一番信用できねぇんだよ。


ビビってる奴が“嘘つき”だろ?」




夏菜は椅子から立ち上がる際につまずきながら

顔は蒼白で、唇がわなないている。

その目は焦燥で揺れ、視線は定まらなかった。


羽賀 夏菜

「わ、私じゃない!ほんとに、私じゃないってば!


怪しいのは…

…そ、そこにいる戌井の方でしょ!?


あんなに黙ってたのに

最後だけ喋るなんておかしいじゃない!」



発言の途中で声が裏返り

まるで自分でも何を言っているのか

分からなくなったような混乱ぶりだった。



静かに席を立った正太は

周囲の目を受け止めながら、ゆっくりと口を開いた。


その声は掠れているが、不思議と落ち着いていた。




戌井 正太

「……誰が人狼かなんて、本当に分からない。

けど、“嘘をついてる人間の目”だけは……


見える気がした。」



言い終えると、正太は再び席に腰を下ろした。


彼の言葉に、何人かが無意識に息を呑む音が

静かなホールに微かに響いた。




モニターの起動する音がした。




《議論時間終了。これより投票を行います。

各自のスマートウォッチから投票を行ってください。》



重苦しい静けさがホールに満ちる。




誰もが息を潜めるようにスマートウォッチを見つめ

指を震わせながら操作を始めた。



岬は口を真一文字に結び、無言で投票を終える。


朱里は視線を泳がせながらも

ややおずおずと腕を操作。


久住は唇を噛みしめ汗を垂らしながら

指がなかなか動かせない。


誰かの息が詰まるような音。


全員が投票を終える。



……




一瞬、何の音もしない。


ただ、誰かの鼓動だけがやけに耳に残る。




数秒後、モニターにゆっくりと文字が浮かび上がる。



《【第1回 投票結果】


 安住 奏多 → 羽賀 夏菜

 宇川 謙  → 羽賀 夏菜

 大咲 朱里 → 羽賀 夏菜

 久住 翔斗 → 羽賀 夏菜

 戌井 正太 → 羽賀 夏菜

 羽賀 夏菜 → 戌井 正太

 升田 岬  → 羽賀 夏菜


【最多得票:羽賀 夏菜】》





その瞬間、椅子に腰かけた夏菜の首輪に

静かに太いコードが接続された。


羽賀 夏菜

「……は、は?


ちょっと、ちょっと待って。


これ、嘘でしょ……?


何で私!? 私、何もしてないんだけど!!」




夏菜の顔がみるみる紅潮し、目を見開いて叫ぶ。



羽賀 夏菜

「あんたら本気であたしに投票したの!?


バカじゃないの!? 私、村人だから!!


ただの、ただの村人なんだってば!!


ふざけんなよ!!」


椅子を蹴り、立ち上がろうとするが

すでに首輪にコードが接続され逃げられない。



安住 奏多

「……羽賀!…落ち着け!

まだ、まだ何かあるかも……」



羽賀 夏菜

「岬!?朱里!? あんた達!?

あんた達もあたしに入れたの!?


戌井!! あんたは!?


……何黙ってんのよ!! 私、違うってば!!」



絶叫がホールに響き渡る。


コードがガコンと音を立てて少し動いた。


その一瞬で、誰もが「次」を悟った。



空気が押し黙る。




戌井 正太

(……何も感じないわけじゃない。


誰かが選ばれることに、胸が痛まないわけでもない。


でも……誰かを選ばないといけないんだ。

誰かを、見捨てないと……)



夏菜の呼吸が早くなり、足元がふらつく。



羽賀 夏菜

「お願い……誰か……

誰か止めて……お願いだよぉ……!」


その場にいる全員が凍りついたまま、

一歩も動けなかった。



そして――


コードがピンと張る。

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