表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
191/276

ポンコツ設定

「これがリア様の魔力量の推移です」

 わたしの魔力残量がグラフ化された資料を見ると、右肩下がりでギュンギュン減っているのが分かった。消費する一方で、ちっとも回復していない。

 先生が書いたと思われる「魔素を取り込む効率も低い可能性」という小さな字のコメントが、得も言われぬ哀しみを添えていた。


 魔力操作がヘタクソだという自覚はある。

 さすがにここまで下手だと魔力も空になりやすいはずだし、自分の手ごたえとしてもバゴンッと暴発している感があるのだ。だから、減りが早いのは仕方ない。

 でも、まさか体の機能面まで劣っているとは思わなかった。稀代の神薙と名高いリア様は、救いようのないポンコツボディーだったのだ。


 くすん……。

 でも、いいのです。だって、アレンさんを助けるという最大の目的は果たせたのですもの。

 魔法には人一倍興味があるけれども、こればかりはご縁がなかったと思うしかない。

 

「魔力の倉庫が大きいので、今はその貯蓄で食いつないでいる状態です。しかし、このまま魔法を使い続けるのは危険ですので、本日夕方の【治癒】を最後としましょう。しばらく魔法はお休みにして、回復期に入ってください」

「ハイ……わかりました」


 もともと先生からは「魔力残量に限界が来た時点で魔法は使用禁止にする。そのときは諦めるように」と言われていた。アレンさんが回復してくれたおかげで、安心して充電期間に入れるというもの。


 目標とする魔力量に達するまでの間は魔法は使わないことになった。

 ただし、緊急時に限っては「浄化魔法なら二回、治癒魔法なら一回」を上限として使っても良いと言われた。

 そこでうっかり暴発をさせた場合、軽く体調を崩すかも知れないけれども、多少の余裕はあるので「命に別状はない」とのことだ。

 自分でもこまめに残量を測り、記録を付けていくことにした。


「わたしの場合、たくさん寝ても魔力は回復しないのですよね?」と訊ねると、先生は頷いた。

「リア様の場合、魔素は使い捨てに近いのです。飲食で摂取してから排出されるまでの間に偶然睡眠を取っていたならば、多少は回復量が多いかも知れません。しかし、その差はわずかなものだと思います」


「食べてすぐに寝たらウシさんになっちゃいますしねぇ」

 魔力を早く回復させたいからと言って、食っちゃ寝・食っちゃ寝をしていたら、別の病気で早死にしそうだ。


「不便はご結婚までの間だけです。いずれ好きなだけ魔法を使えるようになりますからね?」と、先生はフォトジェニックに微笑んだ。

「へぇー、そうなのですかー」と答えた瞬間、何かが引っ掛かった。


「どうして結婚までなのですか?」


 結婚した途端、ポンコツがハイスペックに生まれ変わるわけがない。

 以前、同僚男子が「人妻って独身にはない魔力があるよな」と言っていたけれども、あれは意味の違う魔力だろう。

 しかし、ここは異世界!

 結婚式で何かの儀式をすると、人妻にしかない魔力がタップリと得られたりするのかも知れない。これは期待しても良い話では? わたしも人妻の魔力を得て、ハイスペック淑女になれるのでは!?


「実はそれが本日の主題になります。これからお話しすることは、本来ならヴィルがお話しする予定でした。私からのご説明になることをお許し下さい」

 先生は申し訳なさそうに言った。


「神薙には劇的に魔力を回復させる方法が一つあります。その方法とは、魔力生成を行う部位に外から魔素を注入する方法なのです」


 ピシッと、わたしの笑顔にヒビが入った。


 ほほう、外からちゅうにゅう……

 しかも結婚後に、ですか?

 これは……あのぅ……わたしが期待していた「人妻の魔力」とはチョット話が違うような気がしますねぇ……。


「あの、センセ? なんだか、とても嫌な予感がするのですけれども……」

 それを肯定するように、先生は頷いた。

「恥じらいのある淑女にはお伝えしづらいことです。しかし、やはり『男性から貰う』という言い方になります」


 はぁーい、もうそれ以上言わなくていいでーーす(泣)


「注入されるものには遺伝情報と大量の魔素が含まれています……」


 んノオオォォォーッッッ!

 わたしの心は叫んでいた。

 事あるごとにソッチ方面の話に繋がってしまう神薙様である。

 魔法をたくさん使う神薙は夫婦の営みを頑張らないと死にます、と? そんな設定、心底要らない(泣)


 先生は動揺するわたしを気遣いつつも「もう少しお話ししておきますね」と言った。

 魔素が注入されると、体内では爆発的な魔力生成が始まる。

 倉庫がいっぱいになって飽和状態になると、魔力は体外へと溢れ出す。

 溢れた魔力は、遺伝情報を含む特殊なもの。『生命の宝珠』はそれを吸い上げて集めるための特殊な魔石だそうだ。


「それが新しい天人族の生命となります」

「なる、ほど、デス……。ハイ……」


 少子化対策に加えて自分の魔力補充もでき、一度で二度おいしいという話なのだろう。しかし、そういうことであれば、わたしはもう魔法なんか使わない。

 うわぁぁん、使わないったら使わない(泣)


いつもお読み頂きありがとうございますm(_ _)m


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ