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掌編小説日常シリーズ

娘は右と左が分からない

作者: 屋津摩崎

掌編小説日常シリーズ第三弾です。


 娘は昔から右と左の区別が苦手だ。


「お箸を持つ方が右?」

「カナちゃんは左利きだからお箸の方が左、お茶碗を持つ方が右」


 左右盲という言葉は最近知った。昔を思い出すと、おそらく娘もそれだったと今更ながら実感している。


「向かって右とか言われるのが1番パニックになるんだよね」


 娘は苦労した事をしみじみと思い出している、そう言えば昔は視力検査が嫌だと愚痴っていたな。Cのように穴が空いている方を答えないといけないのだが、少し考えてからじゃないと答えられないらしい。

「全部ひらがなに統一して欲しい」

 確かにそれなら右左は関係ない、だが視力検査をしている所によって仕様が違うから難しい問題だ。


「じゃあ右左をやめて北とか東とか西ってしてもらえば?」

「上が北って事しか知らん」


 この子は地図を読める子だった。


「じゃあ3時とか9時の方向とか」

「何言ってんの? 3時は時間の単位であって方向じゃないよ?」


 固定概念に凝り固まった娘だ。


「そうだな……今までで1番分かりやすかったのは青と赤かな」

「青と赤?」


 意味がわからない、色での方角指針ってあったっけ?

「ヒントはあれ」

 娘が指差すのは我が家の軽自動車だ。


「車? 何? 分かんない」

「これだから頭の硬いおばさんはダメなんだぜ」


 したり顔の娘に苛つく、誰が頭の硬いおばさんじゃ!


「信号の青と赤」


 信号? 青と赤……??


「信号機の青、黄、赤。青は左折、赤は右折、黄色は直進、免許取る時に右折とか突然言われて焦ったけど、信号の赤色の方って言われて1番しっくりきた。だから左右を考える時はいつも信号を思い出してる」


 左右の判断を苦にしない私にはよく分からない理論だ、でもこれが娘なりの解決策だったのだろう。ここが雪国じゃなくて本当に良かった、確か雪国仕様の信号機は縦型だったはず。


 ……だが私を頭の硬いおばさんと言ったのは許さん!


「これから毎日ご飯を酢の物にしようかしら」

「は!? 突然何!?」


 娘は自分の大罪に気付いていない。


「頭を柔らかくするためにはお酢が良いんでしょ?」

「それは頭じゃなくて体を柔らかくする食べ物だ!」


 娘の心地良いツッコミが部屋中に響き渡る。

 だが私の加虐心は止まらない、これから酢の効いたものを毎日食卓に出してやる!



突発での投稿なのに読んでいただきありがとうございました。

掌編小説日常シリーズという事で第三弾です、ちなみに作者である私が左右盲でした(汗)

少し気持ちが落ち込んでいたので、気晴らしと文章の練習も兼ねて書きました。

何とか1000文字以内に収めれました、本当ならこの半分くらいで書けれたら良いのですがやはり難しいですね。内容やオチを考えるのは楽しいのですが、それを分かりやすく簡潔に書くのは本当に至難の技です、書いている人を心から尊敬します。

明日は通常通り連載作の「母は生まれ変わりて騎士となる」を投稿するので、良かったらそちらも読んでみて下さい。

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