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魔王は回復なんてしちゃいけません

 昨日は酷い目にあった…… 。

 気分を良くした魔王の自分語りからこの異世界のことまで色々と聞かされた。途中、帰ろうとしたら何度も転移されて庭に戻るし寝かけたら軽め(スタンガンレベル)の電撃で目覚まし。


 だが、有益な情報もいくつか手に入れた。

 四人の魔王のこと、魔界のこと、人間界のことなどだ。特に有益だったのは戦闘に関することだ。

 俺がウサギ相手に剣を折られた話をしたところ魔力を纏いさえすれば折られる事はなかったという。

 ただ、どうやるのか聞いたのは意味がなかった。この魔王、感覚派だった。自分ができることを他人に説明するのが下手すぎるのだ。なんだよ、ぐいっと引っ張ってピシッとするって。


 そして笑えない情報も手に入れた。

 この城で魔王とクソメイド以外見かけないと思ったらそれもそのはず。俺含めて三人しかこの城にいないらしい。

 魔王軍は?と聞いたらそれぞれの魔王について行ったとか。元々大魔王だった親父さんの元で四天王みたいにいた奴ららしいが死後離散したとの事。

 魔王の人望のなさに笑えるね。


 そんな魔王から離れならないとわかった俺はというと再び森に足を踏み入れていた。


 一張羅だった服はバラバラになったので親父さんの服をもらった。そこそこ背の高い方だと思っていた俺でも大きかったので少し丈を詰めたが良いよな?

 ただ一つ文句を言うなら大抵の服が黒でものすごい厨二臭くなったくらいか。

 文句を言ってもしょうがないので探索を開始するとしよう。昨日は戦闘のゴタゴタでよく見れなかったからまずはステータスを見るか。見間違いかもしれないし。


「ステータス」


 俺の声に反応して透明な板が現れる。とは言え、その大きさは物凄く小さい。なぜなら、




識 長十郎

人間


スキル

看破



 これだけなのだから。

 おかしいだろう!?よくある異世界なら魔力量だとか攻撃力だとか色々載っているのが当たり前だろう。女神もう少し頑張れよ。

 もしかしたら魔王の説明下手はこれのせいかと思った。


 ともあれ俺にも対抗する力があるのに気がついたのは収穫だ。ちょっとハズレな気もするがこれから増えてくれることに期待しよう。


 閑話休題。

 【看破】コイツはよくある鑑定スキルとは少し仕様が違う。もちろん見たものの情報を手に入れられる事は同じなのだが例えばこの前のウサギ。

 奴は首の傷が割と重症なことを悟らせないよう無理矢理筋肉で止血してバレないようにしていた。

 そう言った隠していることを見破るのに特化しているのがこのスキルだ。

 強いのかもしれないが使い勝手が悪い。

 もしリンゴに使ったりすると鑑定スキルなら品種とかが見えるのだろうがこのスキルの場合「りんご 少し腐りかけ」と言った具合になってしまう。

 意思の持たない物に対して使いずらいことこの上ないのだ。


 ステータスボードをしまって森を探索する。幸い毒などの人体に害のある系は隠しているに含まれるのかわかるので食糧難でひもじい思いはしない。


「いたいた」


 本日のメインターゲット様の姿を見つけ俺は息を殺す。木の幹に身体を隠し気配を悟られないよう慎重に覗く先にはクソッタレのウサギがいた。


 昨日の経験を活かして忍び寄った後、脳天から真っ二つにするつもりで振り下ろす。


「よしっ!上手く行った」


 吹っ飛んで勢いを殺されない限り倒せるのは収穫だった。未だに魔王の言っていた魔力を纏わせる事はできないが当面は問題ないだろう。

 

 これで今日の晩飯確保だ。

 この後クソメイドとの訓練があるから戻らないと。対人戦闘なんてしたことないからな。


 俺が城に戻ったちょうどその時、裏門に鳥人間?のような物たちに囲まれた魔王を見た。


「巻き込まれたら敵わん。隠れとこ」


 魔王の戦いを見れるチャンスとあってよく見ておく。




「死ねぇ!」


 鳥人間たちが一斉に羽を魔王に飛ばす。まるで矢のように飛んでいく羽根を一瞥した魔王は人差し指を噛み血を滴らせていた。

 一滴。

 たった一粒の血が指先から落ちたその瞬間、自身に飛んでくる羽根全てを赤い刃が撃ち落とした。


(血を操ったのか?今。アレが魔王のスキルか)


「忌々しい落とし子のくせして居座るな!」


 鳥人間の中でも一際デカい奴が既に懐に潜っていた。まずい!俺が死ぬッ避けろ魔王〜〜!


 精一杯の応援虚しく鉤爪のような脚が魔王の胸を貫いていた。アレは致命傷だ。


 だが、何やら魔王が光っている。


「落とし子ォ?父上と母上の墓荒らしの分際でほざくな鳥頭」


 自身に突き刺さった脚を切り裂いて引き抜いた魔王はそのまままるで竜巻のように乱回転した血の渦で鳥人間たちを吹き飛ばした。


 俺は急ぎ魔王に駆け寄る。死んでもらっては困る。俺が死ぬ。


 魔王がいた場所まで来たところで俺に気がついた魔王は元気そうにこっちを見た。


「おぉシキ。今度は無傷でウサギを仕留めたな、偉いぞ」


 若干の子供扱いは気になるがそれよりも魔王の命(俺の命)だ。


「それよりお前怪我は?」

「それならとっくに治っておるぞ?我は回復魔法は得意なのだ!」


 魔王のくせしてベホマが得意とか言い出す状況をよく飲み込めないがそれよりも大事なことがある。


 見える。

 鳥野郎、いや鳥パイセンはよくやった。

 服を貫通したのだから当たり前ではあるがその豊かな果実が溢れそうになっている。

 そんな状態で胸を張るとか見ない方が失礼ではないだろうか。


「死ね、変態」


 俺の意識は背後から現れた口の悪いクソメイドに刈り取られーーー


「てたまるかぁ!ほんとに容赦ないなお前!?」


 間一髪。身体を捻って避けた一撃は地面に亀裂を開けるほどの威力だった。

 こともなげに亀裂から手を引き抜いて手をパタパタさせて土埃を払いながらこのメイドはのたまう。


「魔王様の玉体を見ていいのはお世話係の私だけだ。次見たら右目を抉り取る」

「一々怖ぇよ。悪かったからさっさと着替えてきてくれ、さっきの奴らが何者なのかとか聞きたいし」


 魔王は今更見えていることに気がつき顔を真っ赤にしながら城に消えていった。




 

 

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