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3/10

メイド

「我は寝る。後はそこの従者に任せるから好きにしろ」


 自称魔王は長い黒髪を翻して去っていった。

 え、ちょっと待って。俺即殺マシーンみてぇなやつと二人きりはないだろ!?あ、ほら!心なしかこっちを見てるし!


「……………」

「……………」


 気まずい……。何か喋ってくれ、頼むから!


「……来い」

「お、おう」


 良し!どこに連れてかれるかわからんけど空気の死んだこの空間から抜け出せるならどこでも良い!





 最悪だ……どこ連れてかれるのかと思ったらここ食堂ですよ。しかも廊下を歩いていく間誰ともすれ違わなかった。魔王の部下の一人くらい会うかと思っていたのに一人もいなかった。もしかしてこの死んだ空気でアイツとメシ食うの、俺?


「少し……ここで待ってろ」

「あぁ……」


 どっか行ったなアイツ。にしてもこの城やけにボロい。隙間風は入り放題だし全体的に暗い。カーテンとか装飾も経年劣化してんのか見るも無惨な有様だ。

 さっきいた場所も暗かったしそういうデザイン?確かに魔王城っぽい雰囲気はしてるけど流石にボロ過ぎないか?


「魔族のセンスだとカッコいい……のか?」

「なんな訳あるか」


 うおっ!?ビックリした……いつの間にかメイドさんが居たのか。魔王と逆で真っ白な髪だな。それにしてもアイツ遅いな。もしかして本当にここに案内しただけ?


「早く食え」


 めっちゃ無愛想。もっと愛想いいもんじゃねぇのかなメイドって。いや、会った事ないけど。


「あの、暗黒騎士さんってどこ行ったのかな?」

「は?いるだろここに」

「ゑ?」


 食事をテーブルに置いていたメイドはどこぞの猫型ロボットみたいにメイド服のポケットに手を突っ込んだ。

 モゾモゾした後にポケットから取り出したのはアイツの兜だった。それを顔に持っていった瞬間、暗黒騎士とメイドの雰囲気が同じなことに気がついた。


「本業はメイドだ。魔王様は何故かこれをつけさせたがるがな。わかったらさっさと食え」

「そんなに急がせなくても……」

「お前の世話なんかさっさと終わらせて魔王様の元に行きたいんだ。別に何も食べず餓死してくれるなら放置するが?」

「わかった、食べるよ!」


 コイツ、魔王と俺の命が繋がってることわかってる?本当に俺のこと嫌いそうだな!見たことねぇ色してるけど美味しいのか?コレ。


「うま!これ美味いなぁ!お前が作ったのか?」

「当たり前だ、ここには私しかいないからな」


 見た目はすげぇけど美味い!なんか異世界って感じを実感したかも。元の世界で見たことない食材しかないぞ。


「これも美味いんかな。……ん!?辛ッ〜〜〜〜!?」

「おぉ凄いな。嫌がらせで入れておいた魔界一辛い実を一口とは。流石勇者」

「褒めてねぇだろ!本当に俺のことが嫌いだな、お前!」

「当たり前だ、魔王様が命を繋いでなければ今すぐにその首を断ち切っている」


 ナイフを持って首を見るなよ!怖いから!

 今の所はコイツの好感度上げが最優先だな。死なない程度に嫌がらせされそうだ。


「ふぅ美味かった。ごちそうさまでした」

「礼などいらん。さっさと立て、部屋まで連れて行く」


 一人で皿を片付けたメイドは俺のことなどお構いなしに歩いていきやがった。本当に可愛げがねぇな。顔は悪くないが目つきが殺し屋みたいだ。


「少しは待てよ!」

「お前に時間を少しでも割くのが惜しいと何度も言った。別に廊下で野宿してもいいぞ」

「してたまるか!ったくそういえばお前の名前聞いてなかったな、俺は識長十郎。お前は?」

「メイドでもなんでも好きに呼べ」


 あーこれ教えてくれないやつか。もっと好感度上げたら教えてくれるかな。


「着いたぞ、ここがお前の部屋だ」


 メイドが連れてきた部屋は一人で使うには少し大きすぎるくらいの広さがあった。部屋にはベットや家具、その他色々置いてあった。このメイドが用意したにしては上等な部屋だ。意外とデレたのか?


「客室の開いてある部屋をあてがっただけだ。だからそんな顔でこっちを見るな」

「またまたーそんなこと言って」

「これより小さい部屋が良かったのか。なら犬小屋があるぞ、お前にはちょうど良さそうだ」

「いやーありがたいなぁ!こんな部屋をくれるなんて」


 このメイドいつか目にもの見せてやるからな!?今はまだ敵わないけど!


 それからアイツはさっさとどこかに消えていった。多分魔王のところに行ったんだろう。ベットに寝転がって落ち着いてきた。


 異世界、しかも魔王の元に召喚されて想定外のことだらけだ。取り敢えずやる事を決めよう。

 まずメイドの好感度上げが最優先。魔王に「アイツ使えねぇから殺そうぜ」とか告げ口されたら終わりだ。

 次に強くなる事。魔王よりもとは言わないけどそれに近いくらいにはならないと生き残れない気がする。

 それから異世界を見る。これが大事だ。城でヒキニートするなんてもったいねぇしせっかくならいろんな場所を見てみたい。そうなる為には魔王の好感度を上げて外出許可を貰えるまでにはならないとな。

 …………いや犬じゃねえからな、俺は。


「取り敢えずはこんなところか」


 寝るか。目が覚めたら夢オチでしたとか嫌だなぁ。


 

 


 

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