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続・「猫」  作者: 七星瓢虫
2/2

「猫」

「完結」です

最後迄、御読みいただきありがとうございます


すみません

少し加筆しました

集合住宅(アパート)の外階段

二階の角部屋(自室)目指し足を踏み出した

少女は思い出したのか、(おもむろ)に見上げる


外階段の天辺(てっぺん)

其処(そこ)に座り込む、「影」の姿はない


と、咄嗟(とっさ)に振り返る背後

其処(そこ)から自分を追い越して行く「影」もない


小さく息を()

当然だ、少年の行動は(すこぶ)る心臓に悪い


だが


丁度(ちょうど)良い


()えて時間を掛けて外階段を(のぼ)る間

()れから先の事を今一度、考えよう


Uターンする(むね)を前言撤回した後


「同棲」だが

「同居」だがする羽目(はめ)になる


()れで良いの?

()れで彼奴(あいつ)は良いの?


真性(しんせい)の「(クズ)」相手に()れで彼奴(あいつ)は良いのか?


鉄骨の外階段を靴音を鳴らす事なく

一段一段、(のぼ)


彼奴(あいつ)は良い、と言う

彼奴(あいつ)は「()れ」が良い、と言うに決まってる


彼奴(あいつ)の「恋心」に付け込む

自分が()(ほど)、「(クズ)」だろうが

彼奴(あいつ)は「()れ」が良い、と言うに決まってる


自分も「()れ」を望んでいる、途方(とほう)もない「(クズ)」だ


愈愈(いよいよ)、辿り着く「角部屋」の玄関前扉


考えても煮え切らない

考えても考えても煮詰まらない


結果、考えるだけ無駄という結論に(いた)


「第二 (ボタン)目印(マスコット)代わりに(くく)り付けた

「鍵」を(かばん)から取り出すと鍵穴へと差し込む


ぐるりと回した瞬間

手応えのない感覚に思わず舌を鳴らす


此処(ここ)は「片田舎」じゃない、と口を()っぱく言ってるのに(怒)


一間(ワンルーム)集合住宅(アパート)

靴箱を積み重ねた下駄箱 (もど)きの上に置いた

小物入れに自室の鍵を(ほう)り込む


知られた以上、コソコソ隠す意味がない


見れば


縦、横、奥行も窮屈 ()の上ない廊下 台所(キッチン)に立つ

(くだん)の「猫」は一口 焜炉(コンロ)に掛けた鍋の火を消した所だった


只今(ただいま)


安定の無視(スルー)

かと思いきや珍しくも少年が()の顔を向ける


如何(どう)いう風の吹き回しだ?

少女は当然、(いぶか)しがるが「片田舎」の習慣を(ただ)すべく声を上げた


「鍵、閉めて」

此処(ここ)は隣近所、」


(みな)まで言わせる気はないのか

少年が気怠(けだる)そうに(さえぎ)


「牛乳」


「ん?」と不思議顔になる少女が

「ん!」と手にした(かばん)の中、携帯電話を取り出す


鮮明になる液晶画面に少年 差出(さしだし)のメッセージが表示される


[牛乳]


受信時刻は退社直後

途端(とたん)、「回れ右」をする少女が

(ほう)り入れたばかりの鍵を取る(なり)()の腕を掴まれた


足音も立てず

何時(いつ)の間にか背後に(ひか)える

少年の行動は(すこぶ)る心臓に悪い


結果、容易(たやす)

鍵を奪われた少女が(あわ)てて少年を引き()める


「、御免(ごめん)


安定の無視(スルー)

自身の靴を突っ掛けるように()


外出から帰宅した人間に

お使いは頼まない、()れも少年の独自(マイ)規制(ルール)


「、本当に御免(ごめん)


少年の背中に謝罪する

少女は自分自身、何に対して謝罪しているのか分からなくなった


「今日は色色(いろいろ)、考えてたの」


金曜日に「別れ話」をして

土曜日に「片田舎」に帰って

日曜日に「片田舎」から帰って来た


()して月曜日の「今日」


(つと)めて普段通りに挨拶を交わす

(つと)めて普段通りに会話を交わす


合間


「退職願の書き方とか」

「退職願の出し方とか」


検索すれば解決する事を現実逃避の(ごと)く、考えていた


()れに」と、一呼吸置く(なり)

出勤前に言われた少年の用事を思い出し急いで付け足す


貴方(あんた)に頼まれた」

雉猫(キジトラ)の世話は忘れずにしたから」


今少し手懐(てなず)けて「家猫」に迎える

貴方(あんた)の意見には賛成だ


「片田舎」(ほど)此処(ここ)は彼岸( ひがん)ではない


其処(そこ)は安心して」


()うして安堵(あんど)させた(ところ)悪いが爆弾を差し出す


()れに」

()れに「上司」が転勤するんだ」


「上司」という爆弾を見事、受け取り

振り返る少年が玄関扉に()の背を(もた)れて腕を組む


「転勤?」


若干(じゃっかん)、顎を(しゃく)り少女を見下ろす

少年の「目」が問い(ただ)してくる


()う、「にし」さん転勤するんだ」


で、如何(どう)するの?


自分は?

自分は如何(どう)したい?


「だから」

「だから、じゃないけど」


「やっぱり会社、辞めない」

「やっぱり会社、辞めたくない」


()のまま「片田舎」に帰りたくない


貴方(あんた)は?

貴方(あんた)如何(どう)したい?


何時(いつ)しか外方(そっぽ)を向く

少年の横顔を(うかが)うも感情 (など)、読める(はず)もない


似た者同士 (ゆえ)

付かず離れずなのか


似た者同士 (ゆえ)

憎たらしくて(いと)おしいのか


()れは当たり前じゃない


()うじゃないと貴方(あんた)を大事に出来ない

()うじゃないと貴方(あんた)を大切に出来ない


嫌われても仕方がない

貴方(あんた)に嫌われても仕方がない


()う思わせてよ



内心、自分勝手な言い分に嫌気が差すも

情けなく(すが)る思いで目の前の少年を見詰(みつ)めれば

自分を見詰(みつ)める目と目が()ち合った瞬間、少年が(のたま)


「嘘 ()きは閻魔(えんま)大王に舌を引っこ抜かれるぞ」


肩透(かたす)かしもいい(ところ)


多少、(いな)

(おお)いに(あき)れながら断言する


貴方(あんた)

「前回の仮病で舌、引っこ抜かれるね」


心做(こころな)し胸を張る、少年


()れは覚悟の上、お前は?」


何が「覚悟の上」だ

何処(どこ)ぞの「武士(もののふ)」だ


()(かく)

自分には「()の覚悟」はないが


「嘘じゃない、本当」


到頭(とうとう)、上がり(かまち)に座り込んだ自分に()いで

(かが)み込む少年が深靴(ブーツ)に手を伸ばす


「「牛乳」ないと駄目?」


「「牛乳」ないと細底幼(シチュー)が作れない」


咖喱(カレー)にしない?」

と、提案した(ところ)咖喱(カレー)粉がない


「、()う」

「、()うだね」


自分の深靴(ブーツ)

玄関 三和土(たたき)(そろ)えて置く、少年を盗み見る


()しかして貴方(あんた)なりに気遣(きづか)ってるの?

()しかして貴方(あんた)なりに誤魔化(ごまか)してくれてるの?


自分の足元で

自分の持参した猫缶の残りに舌鼓(したづつみ)を打つ

素知らぬ顔の雉猫(キジトラ)の姿を思い浮かべる


「素知らぬ顔」と言うのは

知っているのに知らない振りをしている表情だ


「猫」の十八番(おはこ)じゃないか


屹度(きっと)、嫌だよね

屹度(きっと)貴方(あんた)は嫌な気持ちよね


御免(ごめん)

本当に御免(ごめん)


()うして()れた前髪の隙間から(のぞ)いた

目と目が合った少年が笑う


()れは滅多(めった)に御目に掛かれない、事もなく

近頃は度度(たびたび)、御目に掛かれる


「笑う猫」に良く似た、微笑み


「寝ても覚めても「お前」と一緒なんだな、僕」


(など)

(あま)りにも無邪気に笑うものだから自分も笑うしかなかった


()れなら()れで良い


取り合えず深靴(ブーツ)

普段使いのバレエシューズに()き替えて「牛乳」を買いに行こうよ


「一緒に買いに行こうよ」


相手の腕を取る也( なり)、勢い良く立ち上がる

誘いを掛ける自分の前で何故(なぜ)か、そわそわし出す少年


「、なによ?」


(つと)めて冷静に(たず)ねるも

(あわ)てて少年の腕を放す、()の顔を覗き込まれる


「、どうしたのよ?」


案の定、安定の無視(スルー)


(ほん)の少しだが身を退()く自分に構わず

自身の顔を寄せてくる少年の行動に心臓の鼓動が(せわ)しい


少年の息が

少年の熱が


近い!

近い!!

近い!!!


と、身構える自分の横っ面を(かす)める

少年の唇が耳元で(たず)ねた


此処(ここ)、本当に事故物件なのか?」


「?はい?」


心做(こころな)し期待したが

心做(こころな)し期待通りだった


(なに)せ相手は得体の知れない「猫」だ

期待「(はず)し」はお手の物


て、何を期待したんだ?、自分


()れは扨措(さてお)

拍子(ひょうし)()けの頭に浮かんだ疑問を投げ()ける


「なんで小声?」


一層(いっそう)、声を調子(トーン)を落とす少年が(ささや)


「聞かれたら困るだろ?、お()けに」


「!!困らねえよ!!」


盛大(せいだい)に突っ込みたいが

長嘆を(ちょうたん)()いて(こら)えた自分に気付いた

少年が首を(かし)げる


「お()け」といい

閻魔(えんま)大王」といい何処(どこ)(まで)、お子ちゃまなの?


(そもそも)


「んな訳ないでしょ?、嘘よ嘘」


否定しながら(軽く)胸を押し返せば

気怠(けだる)そうに玄関扉に背を(もた)れる

少年が、にこりともせずに()き捨てた


「お前、本当に閻魔(えんま)大王に舌を引っこ抜かれるぞ」


「はいはい」

「嘘を()いた自分が(わる)うございました」


「もう二度と嘘は()きません」


海外法廷映画 (よろ)しく

右手を挙げて宣誓(せんせい)する

自分に半目を()れる少年が執拗(しつこ)くも聞き返す


「本当か?」

「本当なのか?」


「I do」(英語?)

「I do」(何故、英語?)


大袈裟(おおげさ)(うなず)けば

「けっ」と笑う少年が悪戯(いたずら)にも問い()ける


「僕の事、好き?」


開いた口が(ふさ)がらない


()うくるか

()うくるなら自分は「切り(ふだ)」を切るしかない


「「猫」は好き」

「寝ても覚めても一緒に居たいと思ってる」


此処(ここ)ぞとばかり少年の「主張」をお返しした


途端(とたん)、自分の言葉に気怠(けだる)そうに項垂(うなだ)れる

少年が()れは()れは照れ臭そうに笑うと


「にゃー」


と、鳴いた(可愛いかよ!)

自分は死ぬタイプの死神、須永の兄貴が大好きです(唐突)

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