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17話 誰にも内緒で、決意を固めたようですよ?

 

「なんだったんだよ…今の」


 あまりの衝撃に言葉が出てこない。


「わかんない……でも、あれはワタシたちに向けて言ってたんだと思う……」


「トウマの指紋に反応して、トウマへ宛てた伝言だからな。しかし、あいつぁ一体誰なんだよ。オイ、なんか心当たりねぇのか?」


 ケントに問われ、トウマは混乱しながらも思考を巡らす。


「…知らない。血塗れで人相もほぼわからなかったが俺には同年代の知り合い以外はほとんどいないからな。あんな人にはあった記憶がない」


 人との関わりをなるべく避けてきた透真にとって、知り合いは稀だ。

 それこそ親族や学校の関係者を除けばほとんどいない。


 ーー本当に彼は一体、だれなんだ?それに彼が言っていた言葉…。


 落ち着いてきた頭をフル回転させ、透真は思考の海を潜る。その間も、他のメンバーは意見を交わし合っていた。


「じゃあ、あの人は誰なんだろうね」


「誰なのかよりもあの人の怪我が心配だよー。かなり重傷だったよ?早く治療しなきゃ」


「つってもアレは録画なんじゃねーのか?伝言動画って要は留守電みたいなもんだろ??てことは今頃…」


「やめてよー!まだわからないじゃん!」


「そうだよ!もしかしたらあの後病院に行けたのかも知れないよ?」


「病院……あるのかな…?」


「あっ…」


 それきり、沈黙が場を支配する。

 各々が深刻な顔や考え込んだような表情を浮かべる中、透真は話を切り出した。


「男の心配は置いておこう。わかりようがないんだし、少なくとも映像にあった場所はここではないんだ。もしかしたら生きてるかも知れない」


 カオリとセラを安心させるように話しかける。

 2人の表情が少し明るくなったのを見てから、透真は今まで考えていたことを話し出した。


「それよりも気になるのはあの男が言っていた事だ」 


「誰かを殺せって言ってたな。殺し屋紛いのことでもすんのか?」


「いや、そんなことはしない」


 多分な、と心の中で呟く。


「そこじゃなくてな、アイツは俺たちに『いきなり妙な世界に巻き込まれて困惑してると思う』て言ったんだ」


「てことはやっぱりここは異世界か何かなのか?」


「もしくはそれに近い何かかもな」


「でも!そんなことってあるのかな?」


「俺もそんなことはないって思ってたが、今までの出来事を踏まえるとな……」


「たしかに、でもそれがわかったからって何か解決するのー?」


「そうだな、でもアイツは他にも気になることを言ってたんだ。『いきなり~』のくだりの後になんて言ってたか覚えてるか?()()()()()()()()()()()()()。アイツは異世界もどきに来た俺たちに何か申し訳ない事をしたってことだ」


「……それってもしかして……あの男がワタシたちを……?」


「いや、そうとは限らない。でもほぼ間違いなく、関係者か事情を知ってるだろうな」


「ならあの映像の男を探すのー?」


「もしくは男が俺たちに殺すよう頼んだ人物だな。この男は俺たちに頼むくらいなんだからまず、間違いなくこの世界に居ると思う」


「殺せば世界を救えるって言ってたしな!ソイツから探すか」


「殺しはダメ!」


「わーかってるっつーのー」


 ーーこれで次の目標が決まったな。


 透真は内心で気を引き締める。

 元の世界に帰れるのが1番だったがそこまで甘くはないのは想像できていた。

 手がかりが見つかっただけでも透真にとっては収穫なのだ。


 それに


 ーー映像の男の言う通りなら、男を殺せば、俺たちは自由の身になれるんだ。


 透真はあえて口には出さないが、他に手がなければソレをやるつもりでいた。


 透真はそれほどに、元の世界に固執していた。


「トウマさん」


 最悪の場合は人を殺す。

 そんな冷めた決意固めていた透真に、今まで黙って考え込んでいたキョウコが話しかける。

 妙な事に、声を潜めて。


「考えたのだけれど、あの映像で男は時間がないって言ってたわよね?」


「そうだな」


「それに武器は君の手の中にある、とも」


「言ってたな」


「トウマさんやレイがprayのアバターに変身出来てたのと、私たち全員の手元にprayカードがあるのは偶然ではないと思うの」


「たし…かに」


 ーー言われてみればそうだな。


 自分では考え付かなかったことに透真は再び思考を巡らせようとする。しかしキョウコの話はまだ終わっていなかった。


「私やみんなが起きたときに全員が眠っていた箱の隣に服が準備されていたのは誰かが準備してくれたからだと思うの」


「………」


 透真はなにも答えない。

 しかしながら、だんだんとキョウコが言わんとすることが見えてきていた。


「それに…」


 そこで言葉を区切り、キョウコはさらに声を潜める。

 ともすれば話し相手の透真でさえ聞き逃してしまいそうな声は、まるでキョウコがその先を言いたくないように思っているように思えた。


「上でみんなの部屋を回った時、ひとつだけ誰のか分からない部屋があったでしょう?もしかするとーー」


「ああ」


 ーーそういうことか。


 キョウコが言わんとしたこと、そしてその考えに理解が追いついた透真は思わず声が漏れる。


「他のみんなには……」


「言わない方が良いかもな、知らない方がいいと思う」


「ありがとう、私1人ではとても抱えきれなくて」


「いいさ、ずっとしんどそうにされるよりずっといい、キョウコはケントと漫才してるときが一番楽しそうだしな?」


「漫才じゃないし、トウマさんまでカオリみたいな事を言うのはやめてちょうだい」


 おどけるように透真はキョウコをからかう。

 先ほどの深刻そうな顔から照れたような怒ったようなキョウコの顔を見ながら、透真は静かに決意を固めた。




 ならば、

 映像の男が言っていた男を、俺は斬る。と



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