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求めるものは、なんであるのか

『神器『ターヘル・アナトミア』があれば、異世界なんて楽勝です〜杉田玄白、異世界に転生する〜は.毎週月曜日と木曜日の更新です。定期更新です。

 カースドフェザードラゴンの呪いを解き、魔族の呪縛から解放した玄白。

 

 一旦霊峰の山頂付近にあった道具から外にでて、天翔族の集落へと戻ってきたのだが。

 集落の近くでは、マクシミリアンとミハル、そしてレオニダスとステリオスの四名が、森を歩いて玄白のいる方角へとやってくる姿が見えてきた。

 真っ直ぐに向かえば合流できる距離であるので、玄白も高速で森を走りジャンプし、一気にミハルたちの元へと辿り着いた。


「す、スギタ先生!! 無事だったようで」

「どこに行っていたのですか! みなさん、心配していたのですよ?」

「……」

「……」


 レオニダスたちは何も語らなかったものの、やはり心配していたのは肌で感じる。だから、玄白も頭を下げてから、話を始めることにした。


「済まなかったな。ちょいと思うところがあってな、フェザードラゴンの元に行ってきたのじゃが」

「なんだって? 無事なところを見ると途中で引き返してきたようだが。無茶をするにも限度がありますよ」

「マクシミリアンの言う通りです。流石のスギタ先生でも、単独での討伐なんて不可能ですから」

「いや、話し合いもしてきたし、呪いも解いだからもう安全なのじゃが?」


 一瞬の沈黙。

 そして。


「またまた、ご冗談を」

「いくらなんでも、呪いを解くって……あ〜、エリクシールですか?」

「ミハルの言う通り。呪いを解除して、聖域のある洞窟から立ち去ってもらった。じゃから、もう安心なんじゃが」

「本当にですか?」 

「うむ」


 どこまでも訝しんでいるマクシミリアン。

 だが、玄白が笑いながら頷く姿を見て、それが真実であると理解した。

 理解はしたのだが、問題はその先。


「では、天翔族の元に戻りますか。彼らは、勝手に居なくなってしまったスギタ先生を心配していますし、同時に、単独でドラゴン討伐に向かったのではないかと憤慨もしています」

「もしもドラゴンの怒りを買いでもしたら、再び集落が襲われるのではないかと危惧していますよ」

「その時には、我らが戦うまで。と思っていたのだが、スギタ先生がドラゴンと心を通わせ、この地から立ち去るようにと話したと言うのなら、それは正しい答えである」


 レオニダスが最後にそう締めると、マクシミリアンもミハルも何も言えなくなる。まあ、これ以上は玄白を責める気もなく、逆に心配していると言うのが心情である。

 それをわかっているからこそ、玄白も何も言わない。


「それじゃあ、戻るとするか。まあ、戻ってもそのまま、わしはパルフェノンに戻る予定じゃが。二人はどうする?」


 ミハルとマクシミリアンに問い掛けるが、二人はお互いの顔を見てから一言だけ。


「パルフェノンまで同行しますよ?」

「そもそも、私たちの拠点もパルフェノンですからね。そろそろマチルダさんやスタークさんにも合流したいと思っていますし」

「その後は、またどこかに向かうのか、それともパルフェノンでのんびりとするのか。その辺りは、帰ってから考えるとしましょう」

「明日は、明日の風が吹く……か。そうじゃな」


 たとえ何を言われようとも。

 恐らくは、天翔族は玄白の独断行動を許さないだろう。

 だが、玄白自身も信念を持って動いていたので、お互いに平行線になることは理解している。

 だから、玄白は何も弁解せず、状況を説明した上で天翔族の集落を離れると決めていた。

 そして、集落へと戻った玄白は、向かった先の洞窟で何が起きたのか、玄白がどう解決したのかを懇切丁寧に説明する。

 

「そうであったか。スギタ殿、おつかれさまじゃ」

「さて。これでここでのわしの仕事は終わったのでな。パルフェノンへと帰ることにした。もしもまた、急病などでわしの手が必要になったなら、またセッセリを寄越してくれると助かる」

「えええええ!! スギタ先生は、ここに住んでくれるのではなかったのですか?」


 玄白の説明を聞いて、セッセリ本人が驚いているのだが。

 そもそも、玄白はこの地に住み着くなどとは言っておらず、流行り病の治療に来ただけである。


「わしは、セッセリに頼み込まれて流行り病を癒すためにきただけじゃよ。それも終わったし、ドラゴン絡みの事件も解決したのじゃから、帰るのは道理ではないのかな?」

「そ、そうですね。では、麓の村まではご同行します。それぐらいはさせてください」


 その言葉を突き放すことなどせず、素直に感謝として受け取った玄白。

 そして10日後には、大空洞を抜けて麓の村まで戻ってきた。


「……ふむ、なにやら騒々しいのじゃが?」


 ふと、出発した時とは違い、妙に村の雰囲気が違う。

 大空洞で発生した大暴走が止まったので、冒険者たちも普通に洞窟の調査などを繰り返しているようで。

 いつ、村が襲われるのかと言う緊張感でもなく。

 

「はて、何が起きたのやら?」


 そう考えて宿に向かい、セッセリとも別れを告げる。

 そして荷物を置いて酒場で話を聞いていると。


「ほう。西のバーバリオス王国から商人がやってきたのか」

「しかも、クイーンオブノワールに乗っていたって? あれって伝承竜だよな?」

「わ、私も御伽噺で聞いたことがありますよ。黒竜でありながら、法と秩序を重んじる優しい女王だって……それが、この地にやってきたって?」


 ここまでの話で。

 玄白は、そのドラゴンについてはおおよそ想像がついた。

 ナズリが見た黒い竜。

 カースドフェザードラゴンの一体を殺したのは、おそらくそのドラゴンであろうと確信した。


「まあ、それで、異国の不思議な衣装を着ているのか」

「それに、美味い酒と肴もあるぜ。これは、サバノミソニーっていうつまみでな。バーバリオス原産の味噌ってやつで味付けしたものらしい」


 酒場の冒険者が、自慢しながら玄白たちに話している。

 まあ、その程度の珍しいものなら、長年あちこちを旅しているマクシミリアンたちにはそれほど珍しいものではないのだが、玄白は目を爛々と輝かせている。


「み、味噌? しかも今の話では、つまみは鯖の味噌煮? それはまだあるのか!」

「お、おおう、お嬢ちゃん、サバノミソニーのことを知っているのか?」

「知らない訳があるか。それは、わしの故郷の食べ物じゃよ、それで、まだあるのか?どうなのじゃ?」

「も、もう食べ終わった、俺たちも追加で欲しいんだが、その商人はドラゴンに乗って王都に飛んでいったんだよ」


──ガタッ

 その説明だけで、玄白は立ち上がった。


「マクシミリアン殿、ミハル殿。わしは急いでパルフェノンに戻らねばならぬ」

「それならば、我らの同志の呪いを解いてくれるのならば、我ら騎士団がスギタ先生の護衛を務めよう」

「よかろうレオニダス殿。わしが全力を持って呪いを解いてやろうぞ」


 話し合いは終わった。

 ガッチリと握手をした玄白とレオニダス。

 彼の仲間たちは、途中の宿場町で待機しており、レオニダスの帰還をじっと待っている。

 それならばと、玄白たちは乗合馬車に乗り、一路、王都へ向かう途中にある宿場町へと向かっていった。


 なお。

 とある貴族の娘の病を癒すために、玄白から霊薬エリクシールを回収しようと企んでいた冒険者ギルドのギルドマスターであるが。

 彼が玄白の帰還の話を聞いたときは、すでに玄白は次の街に到着する少し前であった。


いつもお読み頂き、ありがとうございます。

誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。

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