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竜王の怒り? 何が起きたのか?

『神器『ターヘル・アナトミア』があれば、異世界なんて楽勝です〜杉田玄白、異世界に転生する〜は.毎週月曜日と木曜日の更新です。定期更新です。

 大空洞と村をつなぐ街道を馬車で駆け抜ける。

 

 マクシミリアンたちは、レオニダスらを説得し、急ぎ天翔族と玄白の待つ霊峰へと向かう。

 大空洞まで辿り着けば、あとは半日程度で竪穴を越えて霊峰中腹には到達する。そうすれば、あとは彼らと合流しカースドフェザードラゴンを討伐できる。

 焦る気持ちをグッと堪えて、セッセリは目の前に聳える霊峰を睨む。

 そこで起きた惨劇、それを知るのはあと少し先。


………

……


 天翔族の集落から大空洞の竪穴に流れた翌日。

 入り口外で待機していた天翔族の戦士であるナズリは、信じられないものを見た。


「あ、あれは……姿を消した黒竜の女王……クイーンオブノワール……」


 森の向こう上空を、伝説の竜がゆっくりと旋回している。

 何かを探しているのか?

 まさか、あのカースドドラゴンを探している?

 希望を込めて、ナズリは槍を掲げて天を見上げる。

 ここから森の向こうへは遠く、もっと近寄らなければ声など届くはずがない。


 だが、黒竜の女王はゆっくりと降下し、森の中に着地した。

 

「あ、あのあたりは、俺たちの集落? 長老、大変だ、長老〜」


 ナズリは急いで扉を開き、竪穴の上にある広い空間に駆け込む。

 そこは天翔族が万が一のために用意した避難所で有り、玄白もその奥でゆっくりと体を休めている。


「長老、大変だ!!」


 ナズリが大声で叫ぶので、まさかカーサドフェザードラゴンがここまできたのかと、避難していた人々は不安になる。

 それと同時に戦士たちも覚悟を決め、武器を手に取り立ち上がったが。


「どうしたナズリ! 何が起こった!!」

「クイーンが、クイーンオブノワールが現れた!! 俺たちの集落あたりに降りたんだ!!」

「なんじゃと!!」


 天翔族の民が、次々と竪穴空洞から外に飛び出す。

 それを見て玄白も外に出ると、そこでは信じられないことが起きていた。

 遠くの空、そこでカースドドラゴンと巨大な黒竜が戦っている。

 いや、戦っているなど烏滸がましく、黒竜が一方的にカースドドラゴンを蹂躙していた。


「こ、これはまさか天の助け?」

「長老や、あれは何者じゃ?」


 事態が掴めない玄白が、長老に問いかける。

 すると天翔族は翼を広げ、空に向かって飛び上がる。


「クイーンオブノワール、黒竜の女王じゃ。かつて勇者が討伐し、精霊の加護を得て『エセリアルドラゴン』に進化したもの。それがクイーンオブノワール」

「黒い竜は戦闘狂ではなかったのか?」

「クイーンは別じゃよ。精霊の加護を受けてあるが故に、ヒト族の仲間である。それが、まさか我らに助力するとは!!」

「落ちた!! カースドドラゴンが落ちたぞ!!」


 空から見ていたものが叫ぶ。

 そしてナズリは玄白を抱き抱えると、上空に舞い上がった。


「うおお、お、お? 黒竜が何処かに行くぞ?」


 玄白が空高く見下ろした時。

 ちょうど黒竜は羽ばたき、霊峰を降って行く。

 

「カースドドラゴンが倒されたのか? 我らは助けられたのか?」

「分からん、片一方だけかもしれない。そうなるとまた、厄介なことになりかねないが」

「まずは一度、集落まで戻るぞ。互いであっても、卵を放置して降りてくることなどないからな!!」


 抱卵中のドラゴンは、卵を放置して離れたりはしない。

 狩りなどでもどちらか一方のみが出かけ、もう一頭はけっして卵から離れない。

 その修正ゆえに、片親が事故などで死んでしまった場合は、残された竜が死ぬまで卵を抱える。

 この理不尽な摂理により、全滅したドラゴン種も存在するらしいと玄白は説明を受けた。


「急げ!! 偵察隊は集落を確認するのだ! 女子供は洞窟に戻れ!!」


 長老からの命令で、急遽、偵察隊が編成される。

 玄白はというと、無理を言って偵察隊に加わり、集落まで一度戻ることにした。


 

 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯



──天翔族・集落跡

 転がっているのは、巨大な竜の骨。

 集落から少し離れた場所に落ちている骨は、まさしくカースドフェザードラゴンのものである。


「ふむ。これは雄の骨じゃが。見事なまでに浄化されておるな」


 玄白は恐る恐るドラゴンの骨に触れ、解体新書ターヘル・アナトミアを開いて情報を確認する。


『ドラゴンの骨……錬金術によりエリクシールを生み出す原料の一つとなる。また、一対の巨大な牙は剣に加工することで、【竜殺しの大剣】を作り出すことができる』


「ほう? なあ、この骨、少し貰って良いか? エリクシールの原料になるのじゃが」

 

 ポンポンと骨をたたきながら、玄白がナズリに話しかける。

 するとナズリも腕を組んで考えてから。


「まあ、特に問題はないと思うが、一旦は長に報告させてくれ。何名かは安全が確認できたので洞窟まで戻るが、玄白さんはどうする?」

「わしか? そうじゃなぁ……」


 手にした解体新書ターヘル・アナトミアをチラリと見てから、玄白はナズリに一言。


「こっちに残るものがあるなら、わしは彼らとここで待っておるよ。この骨を色々と調べたいからな」

「わかりました。では、私たちはすぐに戻ってきますので、くれぐれもお気をつけください」


──ブワサッ

 ナズリたちが翼を広げて舞い上がる。

 そして二、三度旋回してから、洞窟のある方角へと飛んでいった。


「さて。カースドフェザードラゴンの呪いか。死して呪いは解けておるし、いつまでもこの場に止めることはできぬじゃろ?」


 解体新書ターヘル・アナトミアのページを開く。

 そこには、古代の竜言語が浮かび上がってくる。


『肉体は滅んでも、魂は滅ばず……我に、汝の力を……』


 死んだ竜は、転生して新たな肉体を得る。

 それはカースドフェザードラゴンとなってしまっても変わらず、寧ろ、それしか彼らの苦痛を癒すことは出来ない。

 目の前の骨となったカースドフェザードラゴンの魂は、その転生先を世界の摂理ではなく玄白に求めた。


「力……なぁ。まさかエリクシールではないじゃろ?」

『我が骨に、神薬を授けてくれるならば』


 文字が掠れ始める。

 恐らく、魂が転生を始めようとしているのかもしれない。

 そう考えた玄白は、竜の骨、ちょうど右前足の指先にエリクシールを垂らす。


──ブゥン

 すると指先が光り、やがてそれは小さな剣になった。


「……竜の魂が転生した剣か。わしに持っていけというのじゃな?」


──カタカタ

 剣が震える。

 そして玄白は剣を手に取ると、腰のベルトにそれを固定した。


「さて、あとはどうするか……こいつを倒してくれたドラゴンが、もう一体を倒すのに助力してくれたなら、楽なんじゃがなぁ」


 そんなことを呟きつつ、玄白は今晩泊まる宿を探す。

 と言っても、先日のカースドフェザードラゴンの襲撃で壊れていない宿を見つけ出すと、今日はそこで一晩、身体を休めることにした。



いつもお読み頂き、ありがとうございます。

誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。

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