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呪いを解ける存在と、欲に駆られたもの

『神器『ターヘル・アナトミア』があれば、異世界なんて楽勝です〜杉田玄白、異世界に転生する〜は.毎週月曜日の定期更新です。

 大空洞手前、宿場町。


 大氾濫を鎮圧した上半身裸の騎士たち。

 その中でも隊長と副隊長の二人が、冒険者ギルドにやってきていた。

 本来の彼らの任務は、大氾濫の鎮圧及び第一回廊の奪取であり、それが終わった時点で作戦行動は完了。

 そのまま王都へと帰還する手筈となっていたが、ここに来て大きく方針転換を余儀なくされている。


 セッセリが玄白から預かってきた霊薬エリクシール。

 それを道中の宿場町で体を休めていた隊長及び副隊長に投与したところ、【無力化の呪い】が解除されたのである。

 さらに、余剰分のエリクシールを渡してほしい、報酬は支払うという隊長に、マクシミリアンが取り合えず同行してほしいと説明。

 朝日が登るのを待ち、騎士団は大空洞手前の街まで戻ってきたのである。


「では、改めて自己紹介をしよう。私はレオニダス。彼は副官のステリオス。私と私の戦士たちは、こことは違う世界からやってきた」


 突然の勇者宣言に、マクシミリアンやミハルはもちろん、ギルドマスターまで呆然としてしまう。

 勇者が姿を現したということは、つまりは魔族が活性化し魔王が蘇った証拠。

 以前から、魔族が活性化し世界各地の聖域に手を伸ばしているという噂は聞き及んでいたが、まさかこの地にまでやってきたとは予想外である。


 だが、マクシミリアンとミハルは、かつて滞在していた王国に勇者が召喚されたという事実を知っている。

 しかも、玄白とも仲が悪く、一方的に玄白を毛嫌いしていたことも理解している。

 それゆえに、更なる勇者がこの地にやってきているという事実を聞いて、半絶望的ない顔になっている。


「どうした二人とも。なぜ、そんなに暗い顔をしている?」

「魔王を討伐するには、四人の勇者が必要。それも、唯一魔王を倒すことができる聖剣の使い手である勇者、魔導の真髄を学んだ大魔導師、神の加護を持ち癒しの神技が使える聖女、神と魔、二つの魔導を理解し操る大賢者。この四名がいなくては、魔族と戦えても魔王を討伐することはできないのです」


 その聖剣の使い手は行方不明。

 さらに今、目の前にあらわれたレオニダスとステリオスは、自分達を重装歩兵と名乗っている。

 詳しく聞くと、彼らの部下もまた重装歩兵であり、魔導はおろか神聖魔法すら操ることができない。


「ま、まあ、今は魔族ではなくカースドドラゴンです。レオニダスさんは、ドラゴンを討伐したことはありますか?」

「ないな。我らの世界には、そのような伝承はあっても見たことがない。まあ、神託を受けることができるならば、神からドラゴン討伐の加護を受けられるかも知れぬが」


 堂々と告げるレオニダス。

 これならば、あのカースドドラゴンすら屠ることができるのではないかと、セッセリは淡い期待を抱いていた。


「それなら、私たちの村を、天翔族の集落を助けてください。私たちの集落が、カースドドラゴンに襲われる可能性があるのです」


 悲痛なまでのセッセリの頼み。

 それを聞いて、レオニダスは天を見上げる。

 

「ふむ。そのドラゴンとやらは、この槍で打ち倒すことは可能か?」


 そう問いかけるが、レオニダスの手にした槍はミスリル製のものであり、いくつかの強化魔法が付与されている。

 普通に考えるなら、そのような強大な武器ならばドラゴンを屠ることぐらい容易いと考えるのだが、相手はカースドドラゴン。

 その硬い鱗を貫けるかどうか、そこに勝機が掛かっている。


「……わかりません。ですが、槍ならば私たちの集落にも宝具があります。それを使いこなすことができるのなら、あるいは」

「……報酬は?」


 ドラゴン討伐の報酬。

 それは国家財産に等しい金額を請求されてもおかしくはない。

 そして、天翔族には、そんな予算などない。


「我が集落の宝具を差し上げます」


 その言葉に、レオニダスがギルドマスターを見る。

 金額として適切なのかどうか、そう問いかけているのだが。


「桁が足りなさすぎる」 

 

 その一言で、レオニダスは考える。


「では、もしもドラゴンを討伐できたなら、我が軍勢の呪いを解いて貰いたい」


 つまり、398本のエリクシールを要求した。

 当然ながら、セッセリにはそれを用意するツテはあっても代価は払えない。それに、玄白がエリクシールをそれだけ持っているのかどうかも知らない。


「それは無理です……私たちでは、それを用意できる人を紹介できますが、エリクシール自体を用意なんてできません」

「では、紹介してもらおう。案内を頼む」


 レオニダスが立ち上がると、それに合わせてステリオスも立つ。


「ちょ、ちょっと待て、あのエリクシールをそんなに揃えられる錬金術師がいるのか? まさか、あの【北方の聖女】なのか?」


 玄白の噂は、エリクシールすら自在に作り出す【北方の聖女】とひて知れ渡っている。

 かといって、ここでギルドマスターにそのことを告げたところで、ていよく利用されるに決まっていると、マクシミリアンたちは理解した。


「さあ? それはなんとも」

「答えろ!! そうでなくば、今回のドラゴン討伐の依頼を受けることはできないぞ」

「それなら、個人的に依頼するまで。どうせあなたのことだ、エリクシールを独占したいのでしょう?」

「では、レオニダスさんいきましょうか」


 そのままレオニダスとステリオスを連れて、マクシミリアンとミハル、セッセリはギルドを後にする。

 そして急ぎ、天翔族の集落へ向かうべく、大空洞へと馬車を走らせた。

いつもお読み頂き、ありがとうございます。

誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。

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