表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

36/55

運命の天秤は、悪い方角に傾いていく

『神器『ターヘル・アナトミア』があれば、異世界なんて楽勝です〜杉田玄白、異世界に転生する〜は.毎週月曜日と木曜日の更新です。定期更新です。


ちょいと体調不良のため、文字数が少なくて申し訳ない。

──ブワサッ、ブワサッ

 大きな翼を広げ、セッセリがゆっくりと降下を始める。

 霊峰へ至る空路をどうにか突破し、マクシミリアンたちから預かった手紙を届けるために、限界を超えた飛行を続けていたのである。

 

 そして幸いなことに、途中の峰に巣食っているワイバーンやスモールロックといった魔物に襲われることなく、大空洞外の村を出た翌日夕方には、どうにか到着したのである。


「ほほう? セッセリ殿ではないか。ドラゴン討伐の依頼は成功したのか?」


 村人たちに紛れ、玄白もセッセリを迎え入れる。

 そして着地して地面に崩れそうな体をなんとか奮い立たせると、セッセリは預かっていた手紙を玄白に手渡した。


「マクシミリアンどのから預かった手紙です!」

「ふむ? 何かあったようじゃな?」


 そう問いかける玄白に、セッセリも静かに頷く。

 そこで状況を知るために、玄白はその場で手紙を開けて内容を確認する。


「……なるほど。呪われし騎士たちを救う為に、エリクシールを寄越してほしいということか」


──ヒュッ

 すぐさま解体新書ターヘル・アナトミアを開き、紫水晶の小瓶に収めてあるエリクシールを三本取り出すと、それをセッセリに手渡した。


「こ、こんなにですか?」

「うむ。少しでも多い方が良いと思うが、今はこれが精一杯じゃな。というか、長期保存の効く小瓶がこの三つしかなくてな。もしも効果があるのなら、今度はわしが直接向かうと話しておいてくれるか?」

「はい!! ありがとうございます。それでは早速、届けてきますので」

「待て待て」


 解体新書ターヘル・アナトミアから別の薬を取り出すと、それをセッセリに突き出す。


「滋養強壮栄養満点な回復薬じゃ。疲労が抜けるし体の活力も漲る。飲んでいけ」

「助かります」


 その小さな便を受け取ってグイッと飲み干す。

 それだけでセッセリの全身が輝き、活力がみなぎってくる。


「では、行ってきます!!」

「うむ。気をつけてな」


 手を振りセッセリが飛び上がるのを見送ると、玄白は彼女の姿が小さくなるのをじっと待っていた。

 そして、その姿が見えなくなると、それまでの優しい表情から一転して、険しい表情に変化する。


「長どの。カースドドラゴンのこと、間違いはないのじゃな?」


 偵察に向かった天翔族の戦士たち。

 どうにか無事に戻ってきたものの、その報告を聞いて状況が最悪な方向に進んだことが理解できた。


「うむ。カースドドラゴンはつがいで巣を作っている。しかも、卵が一つ、巣の中にあったらしい」

「ブラックフェザードラゴンが呪いによってカースドドラゴンに変化する。それが番などを作るというのか?」

「おそらくは、元々、番だったのでしょう。それが呪いによってカースドドラゴン化したと言うことだと思われますが、それよりも問題は」

「卵が孵化すると、やつらは餌を求めてここまでやってくる可能性がある、と言うことか」


 生まれたばかりのドラゴン種は食欲が旺盛。

 とくに、幼少期に食べた餌の質により、その後の成長度合いに変化が現れるらしい。

 そして天翔族はいわば、この霊峰の守護者。

 潜在的な魔力強度、戦闘技術などは多種族に遅れをとることはない。

 つまり、カースドドラゴンにとって最高の餌場が、目の前にあるようなものである。


「対策は?」

「卵と親、どちらも同時に処分しないと不可能。最低でも親さえなんとかできれば、卵はその後で破壊すればいい」

「難易度が倍になったようなものじゃからな。しかし、セッセリにそれを告げなくてもよかったのか?」


 あの場でそれを説明し、援軍をさらに増やしてもらうと言う選択肢はあった。

 だが、托卵中のドラゴンの討伐など、依頼難易度では最高峰に位置する。

 王国などが国を挙げて行うクエストなどでしか見たことがなく、自由貿易国家では未だ見たことがない。


「告げたところで、状況は変わりません。むしろ、他の霊峰に住まう天翔族の元に逃げてくれるなら……」

「ふむ。勇気ある天翔族は、最後まで戦うのではなかったのか?」

「援軍が間に合わず、私たちが全滅したとしても。マクシミリアン殿やミハルどのが、セッセリを諌めるでしょう」

「そういうことか。まあ、わしもここまで付き合ったのじゃから、最後までは付き合うとするか」


 そう呟きつつ、玄白は霊峰の更なる頂を見上げる。 

 いつ、この集落が襲われるやもしれない恐怖感はあるが、それよりも、このまま天翔族を放ってはおかないという気持ちが優っていた。

 


いつもお読み頂き、ありがとうございます。

誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ